「青春を山に賭けて」「処女峰アンナプルナ」 [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]
先日「極北に駆ける」が面白かった植村直己の本の中でも、「面白かった」という評が多い(と思われる)「青春を山に賭けて」を読んでみた。
とにかく冒険談テンコ盛である。
植村直己は、こんなにいろいろチャレンジしていたのか!!とびっくりするぐらいだ。
海外登山の資金を稼ごうと単身アメリカに乗り込み、違法とわかりつつ農場でお金を稼ぎ、逮捕されれば、移民調査官相手に自分の山への情熱を語る事により日本への強制送還を免れ、その後フランスに飛び・・・。
舞台は、アメリカ、フランス、アフリカ、アマゾン、ヒマラヤ・・・とめまぐるしく変わり、そのどれもが冒険である。
アフリカでは、危険なジャングルに山に登る為に入り、アマゾンでは単身でアマゾン川下りをする。
エベレストへの初登頂の話や、グランド・ジェラス北壁への挑戦談も載っている。
短い中にこれだけの内容がつまっているので、「1つ1つが短いなぁ。もっと詳しく読みたい」と思ってしまう部分もあるが、その分どんどん読んでしまう。
凄い冒険の連続の間には、その資金を貯める為、節約に節約を重ねる植村直己の地味な努力の様子が入っているのが、メリハリがあってまた面白い。
自分の夢の為に、必死に突き進み努力する姿、これが一番感動的なのかもしれない。
また植村直己の謙虚な姿勢にも、親しみを覚えた。
自分で書いているから、どうにでも書ける・・と受取る事もできるが、日本隊エベレスト初登頂の時も、日本人初のエベレスト初登頂の名誉を、一緒にアタックした先輩である松浦氏に譲っているのを、松浦氏の手記(ヒマラヤへの挑戦1)で読んで凄いなぁと思っていたので、素直に読む事ができた。
アンナプルナは、標高8091m。
人類史上初めて、標高8000m以上の山の登頂に成功した山でもある。
「処女峰アンナプルナ」は、アンナプルナ初登頂を果たしたフランス隊の隊長エルゾーグにより書かれた本だ。
登頂に成功したのは1950年。
まずびっくりしたのは、この遠征隊が出発した時点では、ダウラギリ(8167m)、アンナプルナのどちらにアタックするか決まってなかったという事である。
それ以前に、どちらの山に対しても山の麓に達する道すらわかっていなかったのだ。
という事で、まずこの隊は現地に入ってから、目指す山へたどり着くルートを探索する。
これから登ろうという山への道を探す・・・って考えると凄い(^^;)。
結局ダウラギリへのルートは無理と判断され、目標はアンナプルナに絞られる。
しかし、まだ8000m以上への登頂が成功していない時代の事である。
今に比べれば貧弱な装備で、頂上を目指す姿は、無謀とも思える部分も多々あるのだが、目的に向かって突き進む姿というのは、やはり感動的である。
一番盛り上がる登頂シーンは「われ生還す―登山家たちのサバイバル 」で読んでしまっていたので、自分の中ではすこーーし盛り上がりに欠けちゃったのだが(初めて読めば面白いと思う)、登頂後、帰国目指しての道のりも恐ろしい程大変で、そちらの方がドキドキしてしまった。
登頂の時、手や足を凍傷におかされたエルゾーグは、シェルパの運ぶタンカにて超危険な難所を通過する。その上、帰路の劣悪な環境から(何週間もかけて大都市までシェルパのタンカで運ばれている)、凍傷におかされた部分もどんどん悪化していき、旅の途中で次々に指を切断されてしまうのである。
何かあればヘリコプターで病院へ・・・というのが無い時代なんだなぁというのを、この部分からはっきり認識した。
人類が8000m未登頂の時代の、勇気ある冒険談であった。
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