「戦場カメラマン」ベトナム戦争を取材したカメラマンの視点 [本ノンフィクション:戦争・戦記]
- 作者: 石川 文洋
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 1986/06
- メディア: 文庫
- 8点
「ベトナム戦争」に関しては、国が南北に分かれて戦った、北爆、枯葉剤、泥沼のゲリラ線、19歳(アメリカ兵の平均年齢がこれだったという歌があった)・・と途切れ途切れに知ってるものの、全容に関してはほとんど知らないに等しかった(^^;)。
この本は、ベトナム戦争初期から終戦まで、頻繁に現地に入り戦場を取材したカメラマンの体験記である。
以前、同じ戦場カメラマン(と言い切っていいのかな?)宮嶋茂樹の本を読んだ時、その軽いノリと、頻繁に出てくるネーちゃん話から、私の持っていた戦場カメラマンに対するイメージとはかけ離れたものを感じたのだが(シリアスに書けばもっともっと緊迫したものになると思うんだけど、このノリが宮嶋茂樹の味なんだろう)、この本は、私が元々持っていた戦場カメラマンのイメージぴったりという感じであった。
最前線で死と向き合い取材する著者の、恐怖、情熱、そして何故こんな所にいるのかという後悔、様々なものが詰まっている。
特に、前半の戦場の臨場感というのは凄い。まるで自分が前線に降り立ったような気分にさせてくれる。
他の兵士と一緒にヘリコプターから飛び降り前線に降り立つ時の恐怖、キャンプが解放軍に襲われた時の恐怖、家族が敵味方になって戦っている前線の兵士達の悲哀、否応無く戦争に巻き込まれた農民達の悲壮さ・・・現地で命をかけて取材しているからこそ書ける内容が溢れている。
また、沖縄出身の著者の、日本と沖縄(琉球王国)の関係に関する記述にも興味深いものがある。これが書かれた1970年代、沖縄出身の著者は、日本=沖縄ではなく、「琉球王国」として存在していた沖縄を強く意識していたらしい。アイヌ問題などは知っていたが、沖縄の人も、それと同じ様な気持ちを感じていたとは、想像していなかったので、ちょっと驚いてしまった。
沖縄侵略の歴史を背負っているのと、戦争に巻き込まれ苦しむ農民達の姿をずっと見ていた為もあってか、アメリカに批判的+北ベトナム側の政策を褒めすぎなのは、ちょっと気になった。
それでも、読む価値がある一冊。
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