「戦場の村」「北爆の下」本多勝一 [本ノンフィクション:戦争・戦記]
- 作者: 本多 勝一
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 1995/01
- メディア: 単行本
ベトナム戦争当時の、ベトナムの様子を取材したルポ2冊。
「戦場の村」が、南ベトナムでの取材、「北爆の下」が北ベトナムでの取材を中心に書かれている。
「戦場の村」では、比較的戦禍の少なかったサイゴンでの生活や人々の様子、それと対照的に、アメリカ兵や南ベトナム兵による破壊、放火、略奪、虐殺などに苦しみつつも、その中で生きる前線で暮らす人々の姿が描かれている。
ベトナム人民の気持ちを全く省みない、いやベトナム人の命など全く考えていないアメリカ軍側の戦略が、北ベトナム側に着く人民を増やしてしまった理由が、よくわかる。そして、今イラクが置かれている状況とあまりにもよく似ているのにも驚く。
また、自国の兵隊の犠牲を少しでも出さない為、疑わしきは撃つ、捕まえるという行為が、いたずらに何の罪もない民間人の被害者を増やしていった(これもイラクで見られる)事にも、恐ろしさを感じた。
「北爆の下」は、信じられないほど大量の爆弾を落とされた北ベトナムの人々が、そんな悲惨な状況の中でも、したたかにたくましく生きている様子を取材している。
アメリカなどのベトナム戦争映画では、神出鬼没で不気味な存在として描かれているゲリラの、実際の様子なども描かれていて、ゲリラのイメージがかなり変わった。
また北ベトナムの落とされた爆弾が、建物の破壊を目的とするのではなく、より人を大量に殺傷できるよう改良されていった過程には、背筋が寒くなるものを覚えた。
爆弾というのは、爆発してドカーンで終わり!と思っていたが、違うのだ。
爆弾の中に、小さな爆弾が大量に詰め込まれており、親爆弾には子爆弾が数百個、その子爆弾の中には、人の体を傷つける破片や、球などが大量に入れられていて、爆発すれば、その周囲にいる人々の体に突き刺さるようになっていたりする。
爆弾に詰められている球をプラスティック製のものに替え、レントゲンで発見できないようにしたり、爆弾の中に地雷を入れ、大量に地雷をばら撒いたり(紙のように薄いので発見しにくい)、とにかく、人を殺す為に、よくここまで工夫したなと思える程である。
2冊ともベトナム戦争当時のベトナムの様子を知る事ができる貴重なルポだと思うが、あまりにも北ベトナムよりなのがちょっと気になった。
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