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「父親たちの星条旗」戦争の中で作られたヒーローの悲哀 [映画:その他]

硫黄島の星条旗

硫黄島の星条旗(映画の原作)

  • 作者: ジェイムズ ブラッドリー, ロン パワーズ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2002/02
  • メディア: 文庫

7点

クリント・イーストウッド監督による、硫黄島2部作の内の1作目である「父親たちの星条旗」。
どうしようか悩んでいたんだけど、きっと2作目の「硫黄島からの手紙」は見に行くだろうと、1作目のこちらも見る事に。
この2作、太平洋戦争最大の激戦地とも言われる「硫黄島」での戦いを、アメリカ側と日本側から見た作品である。
↑文頭のリンク先は原作本。
この表紙にある一枚の写真は、硫黄島のすり鉢山に星条旗が立てられた時のもの。この写真に写っている6人のアメリカ兵の内、生き残った3人が主人公である。
3人の主人公の運命を変えた写真。
この写真が撮られた時点で、まだ硫黄島は陥落していなかったし(6人の内の3人は、この後の硫黄島での戦闘で命を落としている)、その上、この写真は、最初に星条旗が硫黄島に掲げられた瞬間の写真ではなく、その星条旗を別の星条旗と取り替えるシーンだったという。
しかし、この写真の持つ勝利の雰囲気にアメリカ国民は沸き立ち、3人は英雄として祭り上げられる。
この映画を見て驚いたのは、英雄として戦争中にも関わらずアメリカに呼び戻された3人が、戦争の資金集めの為のプロパガンダに利用される姿を、シニカルに捉えている点である。そんな切り口で攻めてくるかーーーという感じで、予想外だった。
英雄として扱われる事に対して、3人の反応は様々。英雄として扱われる事に順応が早かったレイニー、複雑な思いを捨てきれないジョン(原作は彼の息子による)、一番拒絶反応が大きかったインディアン保護区出身であるアイラ。そしてアイラは、英雄として扱われながらも、インディアンに対しての差別にも直面する。第二次世界大戦中でも、いまだ差別が根強く残っていた現状がよくわかる。
ただ、この映画では3人を均等に扱ってしまった為、人間ドラマの方が弱いのが残念。3人のバックボーンがあまり見えないのだ。
アイラが、英雄としてアメリカ本土に帰国するのを死ぬほど嫌がるシーンがあるのだが、その後の説明があまり無くて、何故かよくわからなかったり・・・。原作を読むと(まだ途中・・・本がどっかに紛れて見つからない・・・まただ・・_| ̄|○)目立つ事はよくないとされる部族にいたらしい。
他の2人に関しても、その生い立ちや性格が上手く描かれているとはいえず(漠然とわかる程度)、人間ドラマ部分になると、あまり感情移入できなかったのが惜しい。
戦争を体験した者が持つ悲しみや苦悩より、兵士をヒーローに祭り上げる国の狡猾さ、歯車として使われる兵士の姿が浮き彫りになっていた気がする。
映像の方は、アメリカ軍の硫黄島上陸の部分の迫力が凄い。戦争がカッコイイものではなく、泥臭く生々しいものであることを描いている。
上陸時の日本軍の反撃の凄さは、日本兵による硫黄島の戦記(タイトル忘れた上、本が発掘できず(-_-;))で読んでいたので予備知識はあったのだが、ほんとイメージのままという感じ。
このシーン、日本兵による戦記を読んでいたせいもあって、ついつい、映画では敵であるはずの日本兵を応援してしまった。
 アメリカの視点からみた硫黄島「父親たちの星条旗」は、硫黄島での戦いの悲惨さではなく、作られたヒーロー像とそれに踊らされる国民を中心に置いていたが、今度公開される「硫黄島からの手紙」は、戦争の悲惨さを中心にしたものになるんじゃないかと思う。どんな風に描かれるのか期待。

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