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「世界で一番命の短い国-シエラレオネの国境なき医師団」平均寿命35歳・・ [本ノンフィクションいろいろ]

世界で一番いのちの短い国―シエラレオネの国境なき医師団

世界で一番いのちの短い国―シエラレオネの国境なき医師団

  • 作者: 山本 敏晴
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2002/11
  • メディア: 単行本
8.5点
 
とてもいい本だ。
アフリカにあるシエラレオネという国は、平均寿命が35歳、世界で一番平均寿命が短い国としてだけ知っていた。
何故こんなに平均寿命が短いのだろう??と疑問に思い、この本を手に取った。
 
この本で書かれているのは3点。
1.シエラレオネの医療の現状
2.NGO団体である、「国境なき医師団」が現地でどんな活動をしているのか
3.国際援助とはどうあるべきなのか、著者の意見と、実際の行動
 
私が知りたかったのは、シラレオネの平均寿命が何故こんなに短いのか、またダイヤモンドを巡る内戦(?)の実態(誘拐した少年達を麻薬を使って兵士にしたてあげる)だったのだが、それに関しては少し触れられているだけで、期待した情報は得られなかった。
 
しかし、それでも、この本を読んで良かったと思った。著者の暖かいそして真摯な人柄が滲み出ている本なのだ。
 
著者は医者として、シエラレオネに派遣される。紛争地帯への派遣なので、危険なのは当たり前なのであるが、現地での状況は私の想像を遥かに越えていた。
 
怖いのは、爆弾や銃などでの攻撃だけではない。
エイズが蔓延する現地での医療活動は、いつも感染の危険をはらんでいる。
車で移送中、大出血した女性の止血を、素手で行った著者は、自分の手の傷を気にしつつも、2時間その状態でいる。
女性のHIV感染者であれば、自分も感染する可能性が高い。それを知りつつも、女性の命を助ける為、危険な行為に及ぶ作者の覚悟は凄まじい。
 
劣悪な食事、電気の無いトイレの中では、壁一面についていた羽虫を刺激してしまい、寄生虫を含んでいると思わる糞尿まみれの羽虫の大群に襲われる。
トイレでの処理に紙ではなく水を使う現地では、水不足から、みなちゃんと手を洗っていない。その手にも寄生虫の卵などがついている。それを知りつつ、現地の人と交流する為に、握手を求められれば握手する著者。
 
紛争地帯などでの医療活動というのは、生半可な根性では務まらないというのがよくわかった。
 
しかし、そのような過酷な状況にも関わらず、著者の口調は明るい。自分の置かれた過酷な状況を笑い話のように書いている。そして、どんな状況でも、明るく目的に向かって一歩一歩努力していく著者の姿は感動的でもある。
 
著者の目的、それは、自分がいなくなってもちゃんとした医療活動ができる状況を作る事である。
援助で高い医療器具が贈られても、満足に使える者がおらず、放置されている現状というのは、いろいろな国で見て来た。
お金を出せばいい、手伝えばいい、ではなく、現地の人を教育し、援助が無くなった後でも機能する、そんな医療機関の設立を目指し、奮闘する著者。
また、相手の文化を理解せず、自国の文化を押し付けるやり方にも反対している著者は、現地の言葉を覚え、その国の状況に合わせた活動をしようともする。
この著者の思想は、NGOのあるべき姿として、共感できるものであった。
それが押し付けがましく書いてあるのではないのも、好感が持てる。
 
そして、NGOの活動の実態にも触れている。NGOを傍目から見ていると「何で?」と思う事もあったりするのだが、この本を読むと、そういう部分が、なるほど~と思えたりする。
NGOでは無いかもしれないが、ルワンダの虐殺の際、ルワンダにいた白人の牧師とシスター達は、助けを求め協会に来たツチ族の目の前で、迎えのバスに乗り逃げてしまったというのを、「ルワンダ大虐殺 世界で一番悲しい光景を見た青年の手記 」で読み、なんて薄情なんだろう!と思ったりした。
だが、この本に、NGOでは、派遣されている人間の安全が第一であり、自分の無謀な行動は、危険に陥った派遣員の救助活動などにより、他の派遣員をも危険に晒す事になる為、厳禁であるという事が書いてあった。もしかしたら、逃げた宣教師達も、そういう事に縛られていたのかもしれないと思った。
ある視点から見れば問題のある行動でも、別の視点から見れば納得できる事もある。
NGOの活動を詳しく知るのにも、この本はとても良いと思う。
 
読みやすく、楽しく、しかし大切な事がたくさん書いてある本。お勧め! 
 
 

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