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「漂泊のルワンダ」何が真実で何が嘘なのか・・ [本ノンフィクション:ジェノサイド]

漂泊のルワンダ

漂泊のルワンダ

  • 作者: 吉岡 逸夫
  • 出版社/メーカー: 牧野出版
  • 発売日: 2006/03
  • メディア: 単行本
  • 6.5点

 

 

1994年ルワンダ大虐殺が起きた直後にザイール難民キャンプ→ルワンダ国内と取材した本。

載っている情報の多くが現地の噂話が元で、裏付けを取っていないものが多いのが気になる。

虐殺の発端になったフツ族のルワンダ大統領暗殺に関しても、ある本ではフツ族が周到に計画したものとなっていて、この本で語られているツチ族によるものだという説と全く正反対である。

どちらが正しいのかは、いまだに答えが出ていないが、別の本の方が、暗殺前の社会変化、大統領周辺の力の均衡の崩れなどにまで言及していて説得力があるものになっていた(後書きで、フランス判事が「大統領暗殺は現大統領でツチ族のカガメが関わっている」と判決を下したという補足があるが、フランスは虐殺前フツ族に武器を提供しており、虐殺をここまで大きくした責任を問われているので、フランスの判断はその分差し引いて考えなければならいとと思うのだが、それも考慮されていない)。

また、フツ族難民が虐殺されているという事に関しても、この本ではツチ族の勢力によるもの、別の本ではフツ族の逃亡勢力が難民が帰国すればツチ族政権を認める事になる為帰ろうとしている難民を虐殺しているとしている。

これは、どちらがより真実に近いのか(両方がフツ族難民を殺しているというのもありえる)、私がいろいろ読んだ限りでは判断できない。

でも、噂を噂として裏付けも取らず載せてしまうのは、虐殺直後なので情報が錯綜していたので仕方がないのかな?と思う半面、もう少し掘り下げた取材が欲しかったと思うのは確か。

フツ族難民キャンプを最初に取材しているのだが、ツチ族虐殺に関してのフツ族のコメントはほとんど取っていないし(難民キャンプの中にも、虐殺に加担したフツ族が混じっていたと思うのだが)、唯一取った軍の将校の「虐殺の原因は数年前に起きたツチ族の行動」というコメントも、ツチ族虐殺が、もっと昔から定期的に行われていたことを知っていれば、突っ込む事ができたと思うのだが、それもしていない。

評価すべきは、まだまだ混乱している危険な現地に乗り込んだ勇気だろう。作中にも、治安も悪く命がけという場面が何度もでてくる。そんな危険を冒して現地入りしていたのだから、もう少し突っ込んだ取材をして欲しかったなぁと残念に思った。 

ルワンダ虐殺の1番恐ろしい部分は、軍隊でもなく、長年仲良く付き合っていたごく普通のお隣さんが、突然隣人を襲って虐殺したという部分だと思うのだが、見た目や態度でいい人悪い人を判断しているのでは、ルワンダ虐殺の本当の姿というのはわからないのではないかと思ってしまった。

取材記として読むなら面白いと思うが、背景が重過ぎる。

 


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