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「八甲田山死の彷徨」「聖職の碑」山岳小説2冊 [本:文芸]

八甲田山死の彷徨

八甲田山死の彷徨

  • 作者: 新田 次郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1978/01
  • メディア: 文庫
  • 7.5点
 
聖職の碑 (1980年)

聖職の碑 (1980年)

  • 作者: 新田 次郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1980/12
  • メディア: -  8点

 

ちょびさんのブログで紹介されてた2冊を読んで見た。夏に冬山の話を読むのは涼しそうでいいかなぁという気持ちもあった。

読んでいる最中涼しさは感じず、痛い寒さを想像しちゃったんだけど、2作とも良作で満足(^^)。

両方とも映画にもなってるけど、「八甲田山・・」の方はテレビで数回、ちょっと見ただけ。

いつ見ても雪の中を歩いていて、まるで正月の駅伝中継のようだ・・・という印象しかない(爆)。

「聖職の碑」はCMをちょっと覚えてる程度で、全く見てない。

でも、この本を読んで、映画も見たいなぁと思ってしまった。


「八甲田山死の彷徨」は、雪山訓練の為、冬の八甲田山を超えようとした旧日本軍が、その認識不足、準備不足、指揮系統の乱れなどから、次々に倒れていく悲惨な状況を描いたもの。

極寒の雪の山で兵士達が、ある者は眠るように、ある者は錯乱し、ある者は突然倒れ、死んでいく。その壮絶さは、言葉を無くす。著者は、何故このような事件がおきてしまったのか、当時の日本軍の体質を踏まえながら、この悲惨な事件を描いている。

本来の責任者を差し置いて、状況をあまり知らない責任者の上官が実質的に指揮を行う事になった事が、大量遭難につながっているが、上官の指示に盲目的に従ってしまった責任者の態度には、当時の階級社会の歪みも垣間見る事ができる。

また、二つの部隊を競争させたという事も、準備不足で雪山に入る事になった要因である。

八甲田山に入った二つの部隊の内、成功した部隊の責任者の行動も興味深い。部隊の中では人徳者と見える行動をとっているのに、農民など一般の市民に接する時は、相手の立場を考えない、軍人の、権力者の顔を見せたりもする。

このギャップに違和感を感じたが、軍などの権力組織にいると、そういう事もままあるのかもしれないと思った。


 教職は聖職である

今では使う人もいないようなこの言葉がぴったりだと思える作品。生徒達の教育方針を日々考え、生徒達の為に命を投げ出した教師。

人々が仕事に責任感を強く持ち取り組んでいた古き良き時代を思い出してしまった。

特に、中盤から後半の遭難シーン、生徒達の為に嵐の山の中を(夏の山ではあるが、気温は非常に低くなっており、雪山にいるのと近い状況)奔走する教師達の姿は感動的だった。

そして、真夏の8月の山でも、一度荒れれば、冬山のような極寒の地に変貌する事、その恐ろしさも感じた。

寒さのために次々に動けなくなる生徒。ちょっとした装備の差、ほんの数メートル先まで辿り付けたかどうか、それが生死を分ける山の厳しさ。そんなものも伝わってくる。

伊藤理佐のエッセイマンガ「ハチの子リサちゃん 」で、超厳しい登山修学旅行の話を読んだ時、伊藤理佐の住んでいた所がとても山の中だったから、登山修学旅行なんてあるんだ・・と思っていたんだけど、長野県ではこれを実施している学校が多いという事を後書きで知った。

さすが、日本の屋根と呼ばれる地帯にある長野県だけのことはある!と変なところで感心。

とてもいい話でした。

 

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