「絲的サバイバル」絲山 秋子著:上手いなー!! [本:エッセイ]
7.3点
芥川賞受賞作家である絲山秋子のエッセイ本。
小説の方は全く読んでません。
本屋でちょっと手にとって内容を確認したら、著者が雑誌の企画で
いろいろな所で「1人キャンプ」を行い、それをネタに原稿を書いたというものだった。
タイトルには「サバイバル」とあるし、1人キャンプでいろいろ苦労したり、
サバイバルな体験をしたりする本なんじゃないかと勝手に想像して読んでみた。
予想とは全く違ってました(^^;)。
キャンプ慣れしてる著者の1人キャンプは、のんびり、まーったり、だらだら。
テントを設置するのが大変だった、火が起きなくて時苦労した・・・
なんてネタだけでも、書きようによっては何ページも費やせると思うんだけど、
「テントを設置して、火を起こす」・・・終わり!
みたいな感じ。
キャンプ慣れした著者にとっては、苦労する作業でも、改めて書くものでもないらしい。
いろいろなキャンプ場が紹介されているけど、いろいろと言っても、
交通費が出なかったらしく、著者のお膝元群馬県がほとんど。
キャンプ初心者向けガイド的要素は、全くありません。
とにかく、1人でキャンプに行って、ご飯を食べて(食事と飲んだ酒の種類はちょっと詳しく書かれている)
寝て帰宅・・・ってなことが、キャンプ地だけが変わって、ループするように書いてある。
キノコを採ったり、ワカサギ釣りをしたり、講談社の屋上や、友人宅の庭などでキャンプをしたり、
ちょっとしたイベントがあってそれに関する記述は面白いけど、基本キャンプで喰って飲んで。
と、書くと、面白くない本のように思えるだろうけど、これが読ませる!
ちょっと読んだ時点で思ったんだけど、この人、文章がすごく上手い。
文章が簡潔でわかりやすく、その上、言葉の選び方も、例えに使う事例も、
文章のテンポも、上手いなーと感心。
同じ様な状況なのに、毎回微妙に違う著者の精神状態とか、
キャンプ中に考えたことなんかが、すごく伝わってくる。
また、いくつかの章では趣向が凝らしてあって、純文学風だったり、
対談風だったり(手抜きにしか思えないけど(^^;))、語る視点を変えてみたり、
それがまた上手い。
一話だけ、怪談めいたものが入っていてそれが非常に怖かった。
日航ジャンボ墜落現場近くで1人キャンプした時の話で、他の話が全部「日常」の話だっただけに、
余計に、その怖さが強調されてた。
山の中のキャンプ場でたった一人でキャンプするのを楽しみ、
欝で幻聴なんて慣れっこな著者が、
「これはいつもの幻聴違う!」ってパニクッテ状況って・・・。
著者は、怖い話とか嫌いらしいけど、いつか書いて欲しいなーと、
この章を読んで思った。
怪談話はさておいて、のんびり、まったりが心地よい(でもシニカルな部分も多い)
一冊でした。
お勧め!!
2009-04-22 18:26
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