SSブログ

「首挽村の殺人」大村友貴美:横溝正史ミステリ大賞受賞作、好きな要素はあるけれど・・・ [本:ホラー&ミステリー]

首挽村の殺人

首挽村の殺人

  • 作者: 大村 友貴美
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/07
  • メディア: 単行本
6点

2007年、横溝正史ミステリ大賞受賞作。

岩手県の寒村、冬の間は雪に閉ざされてしまう鷲尻村。
無医村だった村に自ら志願して来た医者、杉が謎の死を遂げ、後任として滝本が期間限定で赴任する。
しかし、村では、過去に村で起きたおぞましい出来事をなぞったような連続猟奇殺人事件が起こり、
その上、赤熊までが出没するようになる。
過去に「首挽村」という不吉な名前で呼ばれていたこの村の人々は、恐怖と不信感に包まれる。
誰が何のために、殺人を繰り返すのか?

飢饉の時、人を間引くために各家を訪れたという「おつかいさま」の儀式。
人々が、子を川に投げ入れ、首を吊ったという橋。
村人に虐殺されたという娘。
それら、村に伝わるおぞましい言い伝えをなぞったように行われる猟奇殺人。

確かに、帯に「横溝正史の再来」と書いてあるように、横溝的ではある。

しかし、伝承と殺人の動機のリンクが上手く行っていない。
雰囲気を盛り上げるためだけの、伝承になってしまっている。

また、この手の猟奇物というのは、文章から立ち上ってくる不気味さ、陰惨さが必要なのだけど、
この作品の文章からは、それが感じられないのが一番痛い。

文体にも問題があると思うのだけど、次々に事件が起こるので、展開が早く、
それが雰囲気を作れない原因にもなっている。

高齢化、福祉、就職難、・・・過疎の村が抱える問題を取上げていて、意欲は感じるが、
その悲壮感もあまり伝わってこない。

殺人事件と平行して起きる、熊による惨劇も、雰囲気を盛り上げるというより、
話を分断してしまっている気が。

ミステリーにするより、熊害をメインにした話にしたほうが話が面白くなったんじゃないかなと
思ってしまった。

全体的に、いろいろな要素を詰め込んでいるが、
それらが上手くまとまっていないという印象の作品だった。

nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 2

コステロ

ソッチ系の作品でしたら今邑彩の『赤いべべ着せよ…』が
上手くまとまっていてそれなりに面白かったですね。

ちなみに、現在私が読んでいるのが、
法月綸太郎の『生首に聞いてみろ』と言う作品で、
だからどうした、と言うわけではないのですが、
まぁ、“首繋がり”ってコトで(笑
by コステロ (2009-04-27 01:32) 

choko

コステロさん

「赤いべべ着せよ・・」は、伝承と猟奇殺人事件が上手くリンクしてる作品でしたよね(^^)。

「生首に聞いてみろ」とは、すごいタイトルですね(^^;)。
法月綸太郎は、未読なのですが、面白いでしょうか?
タイトルに「首」が入ると、なんとなく禍禍しく感じますね。

by choko (2009-04-27 21:31) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。