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「悪の遺伝子-人はいつ天使から悪魔に変わるのか」バーバラ・オークレイ博士:根っからの悪人と遺伝子の関係は?? [本ノンフィクション:実録犯罪・犯罪史]


悪の遺伝子―ヒトはいつ天使から悪魔に変わるのか

悪の遺伝子―ヒトはいつ天使から悪魔に変わるのか

  • 作者: バーバラ・オークレイ
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2009/05/22
  • メディア: 単行本


7点

ヒトラー・ポルポト・毛沢東などの「邪悪な成功者」には、共通する遺伝子があるのか?
彼らほど有名ではなくても、世の中には「邪悪な成功者」がいる。
周囲の人を魅了し振り回した自分の姉から、「邪悪な成功者」の影を見た著者が
「邪悪な成功者」を作り上げるものは環境なのか、遺伝子なのか、
近年の遺伝子研究の結果も交え、推測した本。

といっても、著者は遺伝子や生物、医療の専門の学者ではなく、全く畑違いの工学博士である。
なので、自分の研究ではなく、他の人が研究したことを調べたり、
インタビューしたりしてまとめた本になっている。
このメリットは、本の内容が「専門的で難解になり過ぎないこと」。
専門の人が書くと、重箱の隅をつつくような遺伝子の詳しすぎる話が大量に載っていたりするけど、
そういうのが無く読みやすい。
逆に、より専門的なことが知りたければ、物足りない本になるだろう。

遺伝子の話では、まだまだ全容はよくわかっていない遺伝子ではあるが、
少しは解明している遺伝子の個々人の影響について述べられていて面白かった。

例えば、COMET遺伝子(ドーパミンやその他の神経伝達物質の分解に関係する)には、
VAL型(分解が早い)とMET型(分解が遅い)がある。
VAL/VALだと頭の回転が少し遅く、統合失調症を発病しやすかったり、
反社会的な行動を取りやすい(攻撃的)。

MET/METだと、頭の回転が早く、記憶力は明らかに優れているという。
VAL/METはその中間。

VAL/VALはよくないように思えるけど、気分の切り替えが早く、
状況の急激な変化への対応が優れているという。

逆にMET/METはくよくよ型で、嫌な事や苦痛に対し痛みをより強く長く感じるという。
不安症や神経症になりやすいらしい。

もちろん、他の遺伝子からの影響も複雑に絡まりあい、
この遺伝子だけですべてが決まるわけではない。

でも、幼児期に虐待を受けて育った子供のうち、ある遺伝子のタイプであると、
大人になって反社会的な人間に育つ可能性が高いらしい。
この遺伝子を持っていても、普通に育てばそうはならないらしい。
環境と遺伝子の関係も無視できないらしい。

著者は姉が「パーソナリティ障害」だったのではないかと推測し、
「邪悪な成功者」の一人として毛沢東の行動と「境界性パーソナリティ障害特徴」の
類似点について考察しており、なかなか面白かった。

毛沢東の行い(悪行)についての本は一冊読んでいて、あまりの鬼畜さに
驚いたことがあるのだけど、「境界性パーソナリティ障害」と照らし合わせると
なるほどなーと思うことも多かった。

他にも、サイコパスなどと通常の人の脳の反応の違いについてのデータなども載っている。

各章それぞれ面白くはあるのだが、調べた事柄を羅列してあるだけという感じで、
「遺伝子と悪」(生まれながらに悪人とか)についての、総合的なまとめはない。
いろいろな内容が平行して置いてあるだけという感じも。
結局、今のところまだわからない部分が多いってことなんだろうけど、
ちょっと物足りない感が残る。

でも、翻訳物にしては読みやすいし、雑学的な知識を得るなら(深い話は無い)いい一冊。

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コメント 2

コステロ

学者先生とか、専門家が、その自らの専攻について書いた本を読むと、
専門用語がバシバシ出てきたりで戸惑いますよね。

初出時に一応、説明みたいなことは書いてあっても
コチラとしては、一回読めば理解できるわけでもナシ、
「あれ?コレってどーゆーコトだったっけ?」と、
いちいちページを遡って確認しなくてはならなかったりして
途中で投げ出したくなります(笑
by コステロ (2009-10-09 11:07) 

choko

コステロさん

>一回読めば理解できるわけでもナシ
うんうん、最初の説明にすら専門用語が入っていて、
説明の段階でつまずいちゃったり(笑)。

専門的な本は、ある程度初心者向けの本を読んで
基礎知識を持ってないと、ほんと投げたくなりますよね(^^;)。
頑張って読了しても、消化不良で、理解の度合いが浅かったり・・・
なんてこともあります。

by choko (2009-10-09 14:28) 

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