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「証言記録-兵士たちの戦争1」元日本軍兵士達の貴重な証言集 [本ノンフィクション:戦争・戦記]


証言記録 兵士たちの戦争〈1〉

証言記録 兵士たちの戦争〈1〉

  • 作者: NHK「戦争証言」プロジェクト
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2009/02
  • メディア: 単行本


7.5点

兵士たちの戦争3」に続いて「1」を読んでみました。

1の内容は、

・西部ニューギニアの見捨てられた戦場
ジャングルの実情を知らず自給自足を原則とした為、
ほとんどの兵士が戦闘ではなく、飢えや熱病などで命を落とした戦場。

陸軍と海軍が縦割り状態で、陸軍の兵士が飢え死にしていく側で、
海軍の兵士達は普通に食事を摂っていたという状況があったのが衝撃だった。

・北部ビルマ-密林に倒れた最強部隊
最強と言われ、天皇の象徴でもある「菊」の名前を冠した「菊兵団」。
ツワモノ揃いと言われた部隊でも、食料もなく、武器も無い状態ではまともに戦うことすらできなかった。

生き残った兵士達は、毎日何十人もの仲間が飢えや病で倒れていくのを見ているしかなかった。
その無念さが語られている。

・マリアナ沖海戦-破綻した必勝戦法
ミッドウェー海戦での敗戦を隠匿し、それが体質になっていく海軍。
情報管理もずさんで、暗号が敵に解読され作戦が筒抜け状態。
そんな状況の中で、無駄に命を落とす兵士達。

この章では、特に飛行兵と偵察員について語られている。
昔の戦闘機は、偵察員が同乗して進路をとるのが普通だったらしい。
ゼロ戦など偵察員がいない一人乗りの戦闘機は、目印の無い海上で
母艦に戻るのが非常に困難で、戻れず命を落とした飛行兵も多いという。
ゼロ戦にそんな問題点があったなんて、これを読むまで知らなかった。

・ビルマ-退却戦の悲劇
退却支援命令を受けた部隊の悲劇について語られている。
ここでも、死者の1/3近くが戦いではなく、病気などで命を落としている。

撤退が許されず、玉砕への道しかなかった部隊を救ったのは、上官自らの死だったという
エピソードが心を打った。

・中国大陸打通-苦しみの行軍1500キロ
敵の攻撃にさらされ、飢えと病と疲労に苦しみながら、
命令通り中国大陸1500キロを歩ききった部隊。
しかし、その作戦事態が意味を成さないものだった。

生き残り兵の
「作戦を無意味なものだったとしてしまったら、行軍の途中、死んでいった仲間達の死が無駄になってしまうので、そう思いたくない」
という言葉が印象的だった。

・フィリピン最後の攻防-極限の持久戦
ここでも、物資不足、飢えに苦しめられる兵士達。
またブルドーザーなど、敵の新兵器の前に、従来の戦法が全く役に立たず
追い詰められていく様が描かれている。
ここでは、死んだ仲間の肉を食べた者も出たらしい。

・満州国境-知らされなかった終戦
暗号解読表を燃やしてしまったため、終戦の通達がわからず、
終戦後も多数の犠牲者を出してしまった部隊の話。
この部隊は、終戦後もシベリアに送られ、悲惨な体験をすることになる。

「3」と同じく、作戦や状況はかいつまんで説明されるため、詳細を知るには向かないが、
その場にいた兵士達の言葉は、とても重い。

全体的には、本土から机上の論理や、自分自身の手柄、体面の為、命令を下し、
兵士達の命を無駄に散らせて行った上層部への批判が強い内容となっている。

ずさんな作戦、自分の面子を保つためだけの無理な作戦決行・・・そういうものの
積み重ねが、多くの兵士達の命を奪ったと思うとやるせない。

また戦場の生々しい凄惨さは、その場にいたものだから語ることができる臨場感がある。

戦争が「人」を、単なる「歯車」「道具」という立場に追いやるというのが伝わってくる本。
お勧めです!
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