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「凍る体-低体温症の恐怖」船木上総著:錯乱、運動障害・・想像以上に早く発症するらしい [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]


凍る体―低体温症の恐怖

凍る体―低体温症の恐怖

  • 作者: 船木 上総
  • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
  • 発売日: 2002/02
  • メディア: 単行本

7点

大学生の頃、モン・ブランでヒドンクレバスに落ち、
重度の低体温症に陥りながらも九死に一生を得た著者が、
自分の体験と、低体温症について詳しく解説した本。

前半は、遭難とリハビリの話。

著者は、ヒドン・クレバスに落ちたが運良く途中でリックが引っ掛かり、16時間後に救出された。
それだけを聞くと、「助かって良かった良かった」という感想で終わってしまいがちだけど、
救出されるまでは、生存はほぼ絶望視されていた状況。
また救助後も、想像以上に体のあちこちがダメージを受けており、そのリハビリに1年近くを費やしている。

右腕側のリックの紐で引っかかった為、長期間圧迫されていた右手は重度の麻痺。
回復するかわからない状況。
また、救出された直後は、重度の低体温症に陥っていたが、命に別状は無しという診断だったのが、
その後、リックの紐で圧迫されていた右腕からクラッシュシンドロームを発症し、昏睡状態に。
左手にも麻痺があり、落ちた時に、頭をぶつけ頭蓋骨骨折した為に記憶障害も。

回復するかはっきりしない状態で、リハビリに励む様子や回復の過程を詳細にメモしているので、
リハビリの記録としても参考になる。
著者は、医大生だった為、メモの内容が一般の人が書くより詳しいのもいい。

後半は、低体温症に関する詳しい解説。
著者が医者なせいか、詳しくなり過ぎて、大学の講義を聞いてるみたいな内容になってます(^_^;)。

体が熱を発生する仕組みや、その時使われる栄養素の種類、
その分解の過程とか、その辺りから詳しく解説(^^;)詳しすぎな感じが。

低体温症とは、体のコア部分の温度が35度以下になった状態
(普通体温を測る時は、皮膚表面などの温度「シェル温度」を測る)。

最初は、体の震え、軽度の錯乱、無関心、眠くなる、歩行のフラつきなど。
体のコア部分が35度以下の軽症の状態でもこうなるらしいが、
低体温症になっているのに気がつかない事も多いらしい。

33度以下になると、直前の事が記憶できなくなったり、頭の回転が鈍くなり、
何を言われているかわからなくなることも。
また、体がまともに動かせなくなったりもする。

31度以下になると、精神錯乱(雪山で遭難時、服を脱いだり、幻覚を見たりする例があるがその状態)、
歩けなくなる、反応が無くなるなどの状態に。

29度以下なら、半昏睡状態から意識不明に。反応は無く、死んだような状態になるという。

夏の登山でも嵐・雨などで体が濡れ冷えると、数時間で低体温症を発症してしまったりするらしい。
少し体温が下がっただけで思考力や運動能力が下がってしまうというのが恐ろしい。

水に入っている場合、水温0度以下だと15分以内に意識不明の状態になってしまうという。
タイタニックの沈没の際海に投げ出された人や、飛行機が冬の川に落ちて、川の中で救助を待つ人が、
どんどん力尽きて行ったのは、低体温症を発症していたのだなとこれを読んで思った。

また以前読んだイラクに派遣されたイギリスの特殊部隊が最悪の状況に陥った時の事を綴った話、
ブラボー・ツー・ゼロ」の中で、予想以上に厳しい寒さの中、体を冷やさない為、
兵士達は、無理してでも歩き続けていたがこれも低体温症を警戒しての事だったのだと、改めて思った。

この本では、低体温症の症状から、その治療法や予防法、発症事例などが、詳細に述べられている。
一緒に山に登り、低体温症で亡くなった人と助かった人、
その差は、下着が「綿」だったか「毛」だったかの違いくらいだったりもするらしい。
登山をする人なら、誰でも陥る可能性がある低体温症(特に北海道の夏山で多いらしい)。
登山をするなら、自分の身を守る為にも、読んでおいて損は無い本。

読み物というより教科書みたいなので(特に後半)、取っ付きにくいかもしれないけど(^^;)。



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