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「狼は帰らず―アルピニスト・森田勝の生と死」佐瀬稔著 [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]


狼は帰らず―アルピニスト・森田勝の生と死 (中公文庫)

狼は帰らず―アルピニスト・森田勝の生と死 (中公文庫)

  • 作者: 佐瀬 稔
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1998/11
  • メディア: 文庫

7点

夢枕獏の「神々の山嶺」の主人公のモデルと言われている、
アルピニスト森田勝の生き様を描いた一冊。

森田勝は、タイトルにもある「狼」と呼ばれていたアルピニスト。
激しい性格で、周囲と摩擦を何度も繰り返したが、
山に信じられないほどの情熱を傾けた登山家・・・
今まで読んだ彼のエピソードから伝わってくるのは、そんなイメージだった。

しかし、この本には、今まで抱いていた彼のイメージとは全く違う姿が描かれていて愕然。

裏表がなく、思ったことをそのまま口に出し、自己中心的な思考の持ち主でもあった為、
周囲との摩擦が耐えない。
また、自分の不遇を嘆き、強いコンプレックスを持っていた。
我が強い為、一人で登山をする方が向いているタイプなのにも関わらず、
いつも人と一緒にいたい、ガキ大将のように持ち上げられて一番でいたい・・
そんな人物像が描かれている。
「狼」と呼ばれていた事から、「寡黙な孤高のアルピニスト」と勝手に抱いていたイメージが
崩れてしまいがっかり。

しかし、読み進めると、森田勝のそういう部分の魅力や、内面が変化して行く様も描かれていた。

若い頃は、アンザイレンした相手を、自分が助かる為なら即ザイルを切って見捨てられる、
そのためにナイフをいつも持っているとはっきり言った森田が、
登攀途中で怪我をした仲間を思い涙を流す。
奥さんへの愛情、真摯な気持ちも、裏表がない性格だけに、ストレートに伝わってくる。

残された山靴」「みんな山が大好きだった」でも、森田勝の話は読んだが、ここまで深く掘り下げている本は始めて。

森田勝の姿は、夢を追う事はここまでの情熱と覚悟が必要なのだと教えてくれる。

山に対するひたむきな情熱、周囲からは呆れられるほど純真、悪く言えば子どもっぽいその性格、
そんな森田勝の姿、生き様が、彼の登山・登攀経歴と共に、生き生きと描き出されている本。

森田勝がライバル視していた、長谷川恒男の本「長谷川恒男 虚空の登攀者」も
この本の著者は書いている(「残された山靴」もこの著者の本)。
そちらも読んでみたくなった。
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