「死者は還らず-山岳遭難の現実」丸山直樹著:遭難しない為に・・・ [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]
6.5点
いろいろな山岳遭難を、事件や当事者に取材し、その原因と予防に関して考察した本。
早稲田大学山岳パーティーの4人が劔岳で遭難し3人が死亡した事故では、
リーダーシップと危機管理(特に天気予報とその後の天候の予測)のあり方について。
明治大学山岳部の2人が利尻岳で雪庇を踏み抜き、一人が死亡、
一人が自力で下山しながら、連絡を怠った為、遺体の発見まで時間がかかってしまった事故では、
助かった一人に取材し、当時の心理状態を推測すると共に、今の気持ちも語って貰っている。
吾妻連山スキー場で起きた7人遭難、5人死亡の事故では、
そのグループのリーダーの人となりや、メンバーの和気あいあいとした関係から、
事故の原因を推測している。
「道迷い」による遭難に関しては、いろいろな事例をあげ、道迷いの時、多くの人が陥りやすい罠や、
ベテランですらもちょっとした勘違いで遭難することなど、道迷いの怖さについて語っている。
「沢登り」「ウォータークライミング」による事故では、川の流れ、滝つぼの水の流れの怖さが
水死体が滝つぼの渦に囚われ、引き上げ作業が困難だったという事例を通して語られている。
ヒマラヤトレッキングの途中高山病で亡くなった単独旅行者の話では、
高山病の恐ろしさや、単独であることの問題点が指摘されている。
「道迷い」の章は、ちょっとしたハイキング登山などをする人でも参考になると思った。
人は迷うと、その道を引き返すより、先に進みたがる。
特に下山の時は、坂を登って戻るのは嫌なので、多くの人がもう少し降りれば何とかなるだろう・・
とそのまま進んでしまうという。
しかし、こういう時、上に上にと登って行くのが正解らしい。
下山途中で、道に迷い、ルートもわからず山を下った場合、悲惨な状況に陥る事が多いというのが、
この章を読むとよくわかる。
私も、来た道を引き返すより、そのまま進んでしまうだろうし、
特に坂道を登って引き返すのは、すごく嫌だと思う。
後ちょっと行けば・・・ってのも、日常的によくあるし。
ただ、市街地では、それほど問題にならない事でも、
山ではそれが大問題になるんだなーというのがよくわかった。
川の怖さも、川遊びなどをする人には、参考になると思う。
膝下くらいの水でも流れによっては、溺れる事がある川の濁流。
そういう怖さを認識しておくのは重要だと。
全部の話が参考になるかというと、そうでもない。
でも、道迷いや川や滝の怖さなどは読んで知っておくのもいいと思う。
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