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「グラン・ヴァカンス」「ラギッド・ガール」飛浩隆著:「廃園の天使シリーズ1&2」面白いO(≧▽≦)O!! [本:SF]

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

  • 作者: 飛 浩隆
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2002/09
  • メディア: 単行本
8点
ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

  • 作者: 飛 浩隆
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2006/10
  • メディア: 単行本
8点

飛浩隆の「廃園の天使」シリーズの1と2。
文庫版「グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉」「ラギッド・ガール 廃園の天使 2」も出てます。

1作目「グラン・ヴァカンス」は長編。
2作目「ラギッド・ガール」は、「グラン・ヴァカンス」の背景を成すエピソードを集めた中短編集。

ネットワーク内に人工的に造られたリゾート地<数値海岸>の一区画<夏の区界>。
突然ゲスト(人間)が訪れなくなって千年以上、その区画に住むAI達は、
同じような日々をトレースして過ごしていた。
しかし、その区画を恐ろしい厄災が襲う。
<夏の区画>を襲ってきたモノは何なのか?そしてその目的は。
AI達は、不思議な力を持つ硝視体(グラスアイ)を使い、未知の敵に立ち向かっていくのだが・・。

というのが、「グラン・ヴァカンス」の粗筋。

飛浩隆の描写力は、少し前に読んだ「象られた力」でも感じたけど、
この作品でも、そのすごさに舌を巻いた。

夏のリゾート地を思わせる街並みの描写。
突然現れ、その世界を破壊する<蜘蛛>達と、
破壊される街並み、喰われていくAI。
不思議な力を持つ硝視体のパワーの発現。
ネットワーク世界であることを利用した独特の戦闘。

どれもが目を閉じると浮かんでくるように描写されている。

ネットワーク世界で生きるAI達。
思考や感情は限りなく人間に近く、痛みも味も感じる。
それなのに、自分たちがAIであることを認識し、世界が閉ざされている事も、
自分たちが持つ昔の記憶が起きた事ではなく、設定でしか無いことを認識してもいる。
その部分を違和感なく、描き出しているのもすごい。
この辺、一歩間違うと、とってつけたような設定になってしまうのに、
そのAI達独特の思考が、作品の隅々にまで影響を及ぼしている。

最初に描かれるキラキラと眩いような爽やかなリゾート地の描写は、
突然一転し、恐ろしい力を持つ<蜘蛛>達が町を破壊し、喰らうという凄惨な描写へと切り替わる。
そして、その後、硝視体を駆使するAI達と、蜘蛛達との熾烈な戦いが描かれる。
その合間に語られる、AI達の記憶や人生、そして<夏の区界>の秘密。
ストーリーも、、アクション、センチメンタリズムやミステリーの要素を持つ、
刺激的でを飽きさせないものとなっている。

この著者の作品は、どこか硬質でもある。
冷たい硝子のケースの中に収められた物語を覗くような気持ちにさせる。
しかし硬質なだけでなく、全体を覆う官能性と残虐性が、エッセンスとなり、
この仮想の世界を彩り、物語を奥深いものとしている。

ネットワーク内に構築された世界を存分に楽しめる一冊!
お勧めですV(≧∇≦)V!!

2冊目の「ラギッド・ガール」は、この仮想世界を創り上げるのに必要だったある醜い女性の話や、
この世界を襲ってきた敵に関する話、何故<ゲスト>(人間)が区界に来なくなったかの理由、
この世界の他の区界の話など、より深くこの<数値海岸>の世界を
知ることができる作品が集められている。

「グラン・ヴァカンス」が気に入ったなら是非読んで下さい(^^)。

3作目で完結ということだけど、それはいつ発売されるのだろう・・・。
待ち遠し~いっ!!
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コメント 4

ufavan

ネットワーク内に構築された世界に最近入り浸っている僕なので
凄い 興味を惹かれます。
題材的にSFなのでしょうが サスペンスな香りもしますね!
おもしろそうです^^

by ufavan (2010-06-26 07:42) 

choko

ufavanさん

そういえば、ufavanさんは電脳空間で遊んでますよね(笑)。
私はプレイしてませんが、ufavanさんのブログで紹介されている
キャラクターの画像を見ているだけで楽しいです(^^)。

元々電脳空間にいるキャラクターが人間と全く同じような
自我を持っていたら・・・って世界が「グラン・ヴァカンス」の世界だと思います。

飛浩隆が書く世界は、世界観がしっかり構築されているので
別世界の物語を満喫できますよ(^^)。
お勧めで~す(^-^)ノ。
by choko (2010-06-26 13:01) 

rudies

最初の頃、電脳空間にハマってました。(*^_^*)
その時のアバターは、今でも
あの世界で、私が来るのを待っているのでしょうか。

2冊ともに、面白そうですね。

図書館で検索したら2冊ともありましたあ。
今度、借りて読んでみよう〜。(^_^)b
by rudies (2010-06-26 19:07) 

choko

rudiesさん

>その時のアバターは、今でも
>あの世界で、私が来るのを待っているのでしょうか。

そうそう、こんな感覚なんですよ。
特に2作目では、現実世界のことも語られるので、
rudiesさんがおっしゃったような事をすごく感じます。
2作目を読んだら、アバターに会いに行きたくなるかもしれません。

図書館に両方あったとはよかったです(^^)。
楽しんで下さいね~♪
by choko (2010-06-26 19:25) 

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