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「伊藤計劃記録」伊藤計劃のファンなら是非!! [本:SF]


伊藤計劃記録

伊藤計劃記録

  • 作者: 伊藤計劃
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/03/19
  • メディア: 単行本

8点

虐殺器官」「ハーモニー」などの傑作を残し、34歳の若さで逝ってしまった伊藤計劃の、
短編、未完の作品、対談、インタビュー、映画評などを集めた本。

短編は「The Indifference Engine」「セカイ、蛮族、ぼく。」「From the Northing With Love」。
また未完の「屍者の帝国」も掲載されてます。

「The Indifference Engine」は、シエラレオネやルワンダの戦争(内戦)を
モデルにしたと思われ、敵民族を殺すのが当たり前と教育された少年兵が主人公の物語。
大人の残酷さ、先進国が施す援助の身勝手さ、純粋だからこそ恐ろしい少年兵の内面。
現実で起きていることの恐ろしさを、仮想の国の事として描いている作品だけど、
伊藤計劃の書きたいものというのはもっと別にある気がする。
人間の理性、正義のあり方とか・・・「虐殺器官」へつながるような作品。

「From the Northing With Love」は、ある特別な立場の男が主人公の話。
意識に関することがテーマで、こちらは「ハーモニー」につながる作品だと思う。

「屍者の帝国」は、ほんと、さわりだけで、これが完成しないままなのが本当にもったいない(T_T)。

小説以外の、コラムや対談、インタビューを読むと、伊藤計劃の考え方がいろいろわかって面白い。
「虐殺器官」や「ハーモニー」に関する、著者インタビューも。
ウィリアム・ギブスン&ブルース・スターリングの「ディファレンス・エンジン」の書評や、
円城塔との対談も。

自分が何で伊藤計劃や円城塔が好きなのかもわかった。

小説を書く時、ディテールを積み上げ、展開だけでつないでいく伊藤計劃。
構造を積み重ねていくいく円城塔。
スタイルは違えど、長期的視野を持たずに書いているらしい。

エピソードの積み重ねで話が進んでいく、先の展開が見えない小説、
そういうのがすごく好きな私にはぴったりマッチしてるんだと納得。

伊藤計劃がこよなく愛する「ディファレンス・エンジン」。
彼が言うには、この話は、物語読みには辛いが、
「世界観」読みにはたまらないという。
この「世界観読み」というのも、自分に当てはまる。

伊藤計劃も指摘しているけど、魔法があっても、宇宙空間に出ても、
単に舞台や小道具が変わっただけで、人々の意識は、今の私たちとあまり変わらない・・っ
ていうのはつまらない。

伊藤計劃の作品は、テクノロジーの発達により、
人の常識や生活が変わった世界を見事に描いていて好きなんだけど、
本人にも、そういう気持ちがあったんだなーと納得。

「虐殺器官」は、イーガンの影響を受けているのははっきりしているけど、
本人は、「イーガンはオプティミスト、自分はペシミスト」だと言っている。
「バラードの心でスターリングのように書きたい」との事。
うううう、是非そういう作品をたくさん書いて欲しかった。
きっと、それはすっごく私の好みだったはず。
バラードの作品、特に破滅三部作の持つ、静かな悲壮感はすごく好きだし。
それが読めないと思うと、本当に本当に残念(T_T)。
きっと、年齢を重ねるごとに、いろいろなテーマで読ませてくれた作家だと思うのに・・・。

読んでて、うんうんと思っちゃう部分は多かった。
もちろん、違う部分もあったけど。

伊藤計劃が最初にSFだと意識して読んだ作品は、ギブスンの「ニューロマンサー」だとか。
すごくカッコいいと感じたらしい。
私も「ニューロマンサー」が日本で出版され、
サイバーパンクサイバーパンクと騒がれていた頃に読んだけど、全くカッコ良さがわかりませんでした(^^;)。
どちらかというと、日本を扱ったSFなら、ベイリーの「禅銃」読んで、
侍で「小姓」と呼ばれている主人公とか、そこで描かれる怪しいジャパンに興味が行ってたし(^^;)。
「ニューロマンサー」がいまいちだったので、その後サイバーパンクにはあまり手を出さなかったし。

でも、伊藤計劃が一番気に入っているらしい
スターリングの「ディファレンス・エンジン」は読んでみようと思ってます♪
調べてみたら、スターリングは、ベイリーを師と仰いでいるとのことなので、面白く読めるかも。

後半の1/2くらいは、ネットに掲載していたという映画評。

かなり独断と偏見に満ちていて、とんがってる部分も。
共感できること、これは違うなーってこと、この映画にはこんな捉え方もあるんだってこと、
いろいろ考えさせられて読み応えはありました。
読んでて面白かったし。
でも、人気のある作品を酷評してることもあるので、カチンと来る人もいるかも(^^;)。

マイケル・ベイは、伊藤計劃もあまり好きじゃないみたいなんだけど(私もいまいち)、
「アルマゲドン」は褒めててちょっと意外だった。

また、ブレードランナーの、細部へのこだわりへの評価とかは、思わず共感。
私はそれプラス、ルトガー・ハウアー萌えもあったんだけど(笑)。
レプリカント役のルトガーは、カッコよかったよ♪
「ヒッチャー」のルトガーも良かったけど。

私は、そんなに幅広く映画を見ているわけではないので(ホラーに偏ってるというか)、
見ていない映画も多かったけど、ここで紹介されている映画でいくつか見たいと思った映画も。

メジャーどころでは「トゥルーマン・ショー」や「プライベート・ライアン」。
他に、「ファイト・クラブ」、スチーム・パンクだと絶賛している「ワイルド・ワイルド・ウエスト」。
バーフォーベン作品ながら、評価が低すぎて見るのをやめてた「インビジブル」も、
伊藤計劃の映画評を読むと、見ようかな??とか思っちゃう。

最近ほとんど見ていない押井守の「人狼」は、
「紅い眼鏡」と同じシリーズだと知って、見ようかな~とちょっと悩んでる。
同じく押井守の「アヴァロン」も悩む。

昔懐かし管理者会萌え「リベリオン」。
かなり微妙でちぐはぐさがある映画らしいので(超管理社会と変なカンフーの組み合わせ)、
見ないような気がするけど、気になったので一応覚書。

「ガメラ3・邪神<イリス>覚醒」も、面白そうだと思ったけど、
ガメラの造形あまり好きじゃないので微妙。

伊藤計劃の「虐殺器官」「ハーモニー」を読んでない人は、まずこの2冊から。
それで伊藤計劃のファンになったら、是非この本をO(≧▽≦)O!!!!
伊藤計劃のファンには嬉しい一冊です♪
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コメント 4

ufavan

虐殺器官をチョビチョビ^^; 読んでいます
言葉の選び方が、センスいいなぁ~っと感じました
面白くなりそうな予感です!!!
未完の作品も有る様で ホントに残念です
題名的に「セカイ、蛮族、ぼく。」が気になるのですが・・・

by ufavan (2010-07-24 08:12) 

コステロ

タイトルをぱっと見て
どっかの会計事務所のハウツーもの、
あるいは何かの資料かと思いました(笑
by コステロ (2010-07-24 09:38) 

choko

ufavanさん

うんうん、「伊藤計劃記録」を読んでいても、
言葉の選び方や、使い方上手いと思いました(^^)。
「虐殺器官」が気に入りましたら、「ハーモニー」もどうぞ♪
「ハーモニー」の方がとっつきやすいと思います。

「セカイ、蛮族、ぼく。」はかなりシュールな話です。
武士が現代で昔ながらの生き方をするのを想像してください。
自分の生き方を貫き、切り捨て御免とかもしちゃう。
で、この話は武士を蛮族に置き換えたような話です(笑)。
インパクトは大でした♪
by choko (2010-07-24 17:23) 

choko

コステロさん

伊藤計劃というペンネームもちょっと変わってますもんね(笑)。
これがもう少し普通の名前だったら、「記録」とつけても
違和感ないんだと思いますが、
「伊藤計劃」だと会社名と間違ってもおかしくないですよね(^^;)。

by choko (2010-07-24 17:25) 

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