「ぼくが見てきた戦争と平和」長倉 洋海著:戦乱や貧しさの中で生きる人々を撮る [本ノンフィクション:戦争・戦記]
7.5点
カメラマンとして30年以上活躍している著者が、世界各国で見てきた、
戦場や難民キャンプ、貧しい人々などについて綴った本。
戦場カメラマンを志した著者。
若い頃は、スクープ写真を撮る為紛争地帯を奔走したが、
徐々にその目線は、難民や、戦乱・貧しさの中生きる人々に向けられる。
被写体が死体から、困難な中でもたくましく生きる人々へ変化した過程や、気持ちの変化、
30年以上に渡る仕事の中で思ったこと、体験したことが本書では語られている。
著者の若い頃の行動や考え方は、「地雷を踏んだらサヨウナラ 」で書かれている、
駆け出しの頃の一ノ瀬泰造と被るものがある。
一ノ瀬泰造も、スクープを追う戦場カメラマンから、現地の人々に目を向けるように変わって行った。
一ノ瀬泰造が若くして逝ってしまわなければ、この本の著者のような、
視点での写真をたくさん撮ったかもしれない。
アフガニスタンの英雄マスードと行動を共にした話は興味深かった。
マスードについては、ほとんど知らなかったけど、
アフガニスタンにこんな強い志を持って平和の為に戦っていたイスラム戦士がいたんだーと感銘。
アフリカの金鉱で働く貧しい鉱夫の温かい人柄の話も良かった。
貧しい人々に向けられる著者の優しい目は、戦いや混乱を引き起こしている原因や、
先進国の対応、特にあちこちで戦争を引き起こしている米国に対しては厳しい
(別の本でも、アメリカは軍事産業での利益が大きく、「戦争が無くなったら困る国」だと指摘されている)。
また、殺伐とした今の日本や企業のあり方にも疑問を投げかけている。
しかし、一方的に責めるのではなく、第二次世界大戦中の日本の国民意識なども振り返り、
誰でも、間違った方向に進んでしまう可能性も示俊している。
今の国際情勢を深く掘り下げたものではないが、
平和を願う著者の気持ち、「生きることの素晴らしさ」などが淡々と書き綴られており、
心に染み入るものがある一冊。
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