SSブログ

「トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか」羽根田治他:遭難の状況、低体温症や当時の気象の解説などを詳しく述べた本 [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか

トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか

  • 作者: 羽根田治
  • 出版社/メーカー: 山と渓谷社
  • 発売日: 2010/07/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
7点

ちょびさんのブログ「自転車に乗って」で知りました。

2009年7月、北海道トムラウシ山の登山ツアーで、ガイドを含む18人の内、
8人が死亡するという痛ましい遭難事故が発生。

本書では、ガイドや参加者の証言から当時の状況を詳細に振り返ると共に、
気象や低体温症、そして運動生理学的視点からの詳しい解説や、
事故の再発を防ぐための考察がされている。

最初、羽根田治の他の著書「ドキュメント気象遭難」に書かれている
2002年トムラウシ山での遭難とごっちゃになってしまった。
「あ、別の遭難事故だ!」と気がついた時、同じ山で、同じ低体温症が原因の、
似たような遭難事故がおきている事に驚いた。

ツアー参加者の証言から、低体温症になった場合の状態や思考の状態が、詳細にわかり、
状況によっては非常に早いペースで低体温症になる事、
なってしまうと運動・思考能力、その両方が阻害され、大変危険であることがよくわかる。

突然意識が朦朧として、ちゃんと話せなくなったり、
あとから考えると明らかにおかしい状態でも、それに気がつかなかったり、
低体温症の思考能力への影響の大きさが、とても怖いものだと知った。

この遭難事故の報道では、「装備の差が明暗を分けた」と言われていたが、
実際には、それほど装備の差は無かったらしい。
ただ、持っていても着ていないというのは、あったらしい。

ちゃんと話せなくなり、思考もおかしくなった状態から回復し下山できた人、
そのまま動けなくなってしまった人、その明暗を分けたのはなんだったのか?

また、ガイド3人の内、2人が体調が悪くなった人に付き添ったりで、1人しかいなくなり、
その残ったガイドも低体温症で行動がおかしくなった、
そんな状況の中、ツアー客が動けなくなった他の客を一生懸命下山させようとする姿は、
感動的でもある。

著者は、ツアー登山のリスクマネジメントに関して、言及しているが、
ツアー会社のスタンスだけでなく、参加者側の意識も大きい為、
ツアー登山の危険を減らすのは、難しいと改めて実感できる内容になってもいる。

低体温症や、運動生理学、気象条件などに関しては、細かいデータも提示され、
ちょっと詳しすぎる内容になってると思ったが、登山をする人なら、読んでおいて損は無いと思ったし、
低体温症の怖さや、ツアー登山に参加する心構えに関しては、読んでおくべきものだとも思った。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。