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「伊藤計劃記録:第弐位相」伊藤計劃著:映画評が面白い! [本:SF]

伊藤計劃記録:第弐位相

伊藤計劃記録:第弐位相

  • 作者: 伊藤 計劃
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2011/03
  • メディア: 単行本

7.8点

虐殺器官」「ハーモーニー」という傑作を残し早逝した伊藤計劃の、遺作集第二弾。

感想書いたまま埋もれてたけど、冒頭30Pで絶筆となった未完の「屍者の帝国」が、
円城塔に引き継がれ発刊されたのでV(≧∇≦)V(屍者の帝国)、それを記念してサルベージ。

メタルギア関係の短篇2編、散文、そして残りの大半を占めるのがブログで書かれた日記。
日記のメインは映画評。

伊藤計劃が映画好きなのは知っていたけど、これを読むと「好き」ではなく「中毒」に近いものが。
とにかく数を見ているし、その豊富な映画知識の元で書かれる独断と偏見に満ちた映画評はすごく面白い。

駄作だろうと、自分の視点で映画の魅力を語り、興味の無い人にまで見たいと思わせてしまう。
キャシャーンですら見たくなってしまったよ(^^;)。

また「B級映画のネタをやたら端正に撮る」というシャマラン評には、
おおお!!と目からウロコなほど納得!!
シャマラン映画に私がもやもやと感じていたのはこれだったんだ!
映像がキレイで名作風なのに、途中からあれれ~???と思ってしまうストーリー展開。
なるほど、ネタ的にはB級なものを、映像美によって過大な期待を持って見ていたせいの、
もやもやだったんだ。

ありえないカメラアングルを徹底的に排除して撮られているという「マスター・アンド・コマンダー」は、ちょっと見たい。
内容がタイタニックの人間ドラマを排除した、「船」の部分メインらしいので、ちょっと躊躇しちゃうけど。

主役アーサー王を演じる役者のせいで、「すまんすまんといつも謝っているアーサー王」状態に
なってるらしい、制作・カイマー、監督アントワン・フーワクの「キング・アーサー」もちょっと見たい。

超オタク向け設定な「ヘルボーイはすごく見たい!

「バットマンビギンズ」「ナイトストーカー」「ゾディアック」など、気になってたけど見てない映画も見たい。
トニー・スコット(自殺しちゃいましたね・・・・。お兄さんのリドリーの方が可能性がありそう・・と
思えるタイプだっただけに、びっくり!)を応援する運動をしているという「蓮實重彦」の映画評も読みたい。

スピルバーグの「宇宙戦争」評も、「おおっ!」と思った。
そうそう、あの虐殺のすごさ、伊藤計劃がムスカの言葉を借りて「人がゴミのようだ」というのを、
体現している映画だと私も思う。
スピルバーグは、ポツポツとは見てるけど、「暴力」の人だったとは、
この映画評を読むまで気がつかなかったよ。

トゥモロー・ワールド」の評価に関しての言及についてはちょっと驚いた。
「子供が生まれなくなってしまった世界」を描いたこの映画、かなり好きな映画で、とても面白かった。
しかし、世間では「子供が生まれなくなった理由が解明されていない」と批判する声も多く、
最初から「理由を追求する映画ではない」のがみえているのに、何故そこを批判するのか。
それがわからない人間がたくさんいる」というような事が書いてあった。
えーーー、私もそれはびっくりだ!

武器商人が主人公の「ロード・オブ・ウォー」評では、伊藤計劃が指摘している
「自分の残酷さ」というのも、すごくわかる。
世界中、とにかく悲惨な事は山のように置きていて、それに憤りを感じてしまうけど、
結局「自分とは関係ない」ので、最期は傍観者の立場にいる私。
「武器を売ってるけど、人が死なずに済めばいいと思っている」という主人公の言葉は、
そのまま自分に跳ね返ってくる。
武器商人の視線と、世界の悲惨な出来事を見る自分の視線・距離感は、同じであり、残酷・・・・
本当にそうだと思う。

今の便利な生活だって、突き詰めれば世界中の多くの人の犠牲の上に成り立っていると思う。
でも、それを分かっても、自分は便利な生活を捨てられない。
この辺、考え出すと、本当にぐるぐるしてしまう。

伊藤計劃は、映画の批判はあまりしないスタンスだったらしい。
何故なら、薄っぺらい批判は、「自分がバカである」とネット上で公言しているからだと。
いやー、厳しい(^^;)。
確かに、それはわかるけど、

合間合間に挟まれる闘病記は、長いものではないけど、死と向き合うということが、
どういう事なのかを、がん治療がどれだけ体に負担をかけるのかを教えてくれて、
これだけでも、読む価値があると思う。

円城塔が引き継いだ「屍者の帝国」、作風があまりに違うので、心配だったんだけど、
amazon評を見る限り、かなりいいらしい。
今度読もう(*^.^*)!
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