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「死体が語る歴史-古病理学が明かす世界」フィリップ・シャルリエ著:ジャンヌ・ダルク、アイスマン・・骨や遺体からわかること [本:歴史]

死体が語る歴史

死体が語る歴史

  • 作者: フィリップ・シャルリエ
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2008/09/12
  • メディア: 単行本
6点

1991年、イタリアとオーストリアの国境で、驚くほど保存状態の良い青銅器時代(紀元前3000年前)の
男性の遺体が見つかったニュースを知っている人は多いと思う。
アイスマン(エッツィ)(リンク先Wiki)と呼ばれるその遺体を調べる事で、
死因や生前食べていたもの、出身地などを推測することができる。

南米でも、ミイラを調査することにより、年齢、性別だけでなく、出身地や食生活、
生前の怪我や病気などを様々な事を解明する研究が行われているという
(「アンデスミイラ」(リンク先感想)に載ってた)。

昔の骨やミイラなどを医学的に調べることを、古病理学という。
この本は、その古病理学の研究者である著者が、書いた本。

ミイラ化した遺体や骨を調べることで、歴史的に言われていた事が裏付けられたり、
否定されたりした例が挙げられている。

古代文明時代遺体・骨を調べ、病気や関節症などの痕跡から、当時の生活を推測したりもする。
埋葬方法や死因などから、当時奇形がどう扱われていたかを考察する古病理学のジャンルもあるという。

またヨーロッパの死体に対する価値観の違いが読んでいると垣間見えて面白かった。
中世・近代ヨーロッパでの、死体泥棒の頻発とか(解剖や薬などに使う)、
高貴な人々は死んだあと、防腐処理された心臓と遺体が別々に保管されたりとか。
日本だと、著名な人だろうが、遺体の一部を持つ事の価値は無いが、ヨーロッパでは違うらしく、
盗んででも持ちたいという人も多かったらしい。

部分部分は面白いんだけど、全体的な印象は中途半端で尻切れトンボ的。
現在研究中なのか結果が出ておらず、読んでて「えっ、ここで終わり??」って感じるものが多い。
長い前振りだけで、盛り上がったところで結果がなく終わっちゃう。
一番読みたいのって、この尻切れトンボで終わってる部分なのに。
もし遺体を調査できればいろいろわかるのではないか・・・という見解も多い。

何年も前に埋葬され腐敗していなかった遺体に関する伝承がたくさん挙げられているが、
伝承が載せられているだけで、何故腐敗していなかったのかの著者の見解があまり無いのも残念。

内容が多岐に渡っている分、一つ一つが浅い気も。
学術書としては内容が浅すぎ、でも読み物としては、変に詳しく書きすぎていたり、ある程度知識が
ないとわかりにくい部分があったり、簡潔にはまとまってなかったり、エッセイみたいな内容があったりと、
対象とされている読者がちゃんと想定されてないような。

古病理学についての概略や、中世ヨーロッパの死体の扱いなど興味深い情報は多かったけど、
読後、知りたかったことは結局知ることができなかった感、すっきりしない感が強く残る一冊。
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