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「中国がひた隠す毛沢東の真実」「餓鬼-秘密にされた毛沢東中国の飢饉」ただただ恐ろしい・・。 [本:歴史]

中国がひた隠す毛沢東の真実

中国がひた隠す毛沢東の真実

  • 作者: 北海 閑人
  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2005/09/25
  • メディア: 単行本
8点

餓鬼(ハングリー・ゴースト)―秘密にされた毛沢東中国の飢饉

餓鬼(ハングリー・ゴースト)―秘密にされた毛沢東中国の飢饉

  • 作者: ジャスパー ベッカー
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1999/07
  • メディア: 単行本
8点

新年、最初の感想にに何をアップしようか少し悩んでいたのですが
(コステロさんお勧めの「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」-タイトル的にはピッタリ-は観てないし(^^;))、
丁度BSジャパンで放送していた、
池上彰の信州大学での講義「現代史講義-歴史を知ればニュースがわかる」で、
中国毛沢東の「大躍進」と「文化大革命」をやっていたので、この2冊に。

「中国がひた隠す毛沢東の真実」「餓鬼-秘密にされた毛沢東中国の飢饉」と、毛沢東関連の2冊。
毛沢東支配下の中国って、「なんじゃこりゃーーーーΣ( ̄ロ ̄lll)!」と思うほど悲惨なのがわかります。
支配してた期間が長いだけ、ポル・ポトよりも酷い気も・・・。

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ベトナム戦争・カンボジアのポルポト政権などの話を読むと、必ず出てくるのが毛沢東支配下の中国。
ベトナムやポルポト政権への資金・武器などの援助もしている。
ポルポト政権の人民の弾圧・虐殺の体制への思想的影響が非常に大きかったという
「文化大革命」に興味を持ったのが、「中国がひた隠す毛沢東の真実」読んだきっかけ。

まず、参ったのが人名・地名の漢字の羅列。
自慢じゃないけど、私は漢字の名前が苦手で、日本史を敬遠しちゃってるぐらいなのだ。
中国名は、日本名より、もっと難敵(-_-;)。
その上、どんどん人が粛清されていくので、どんどんニューフェイスが登場し、より混乱。
名前似てたりするし。
読むのにちょっと苦労してしまった。

でも、それでも毛沢東が行った「大躍進運動」や「文化大革命」がある意味凄い、
いや、すごすぎるというのはわかった。

数だけで見ても、ポルポト派支配下のカンボジアで虐殺された人は推定200万~400万、
ナチスドイツによる虐殺が2500万人、そして、毛沢東支配下で亡くなった人は、
4000万とも8000万とも言われている(これは政策の失敗などによる餓死なども入るらしい)。
桁が違う・・・。
粛清に次ぐ粛清、人民を煽り、地主層が虐殺されただけでなく、生徒が恩師を辱めた上に殺す・・・
そういう虐殺が正義の名の元に公然と行われ、その上、毛沢東の指示で虐殺に走った学生達も、
結局悲惨な境遇に追い込まれていく。
政策の失敗で飢餓が蔓延し・・・・、ポル・ポトや北朝鮮の実情より、
ナチスドイツやルワンダのジェノサイドより酷いと思われる状況が、何年も何年も続いた中国。

最初は、いまだに真相が明らかになっていない1930年前後の「富田事件」。
まだ中華人民共和国設立前、毛沢東一派が支配していた地区で起きた、
一説には10万人が、自白するまで拷問され殺されたという大規模な粛清事件であり、
早い時期から、捏造により敵を作り出し粛清を行なっていた事が窺い知れる。
自分の罪を認めるだけでなく、仲間を言うまで拷問を続けるというのは、
中世の魔女狩りとも共通するものが。
そして、その後も、この方法は続けられる事になる。

1957年反右派闘争、1958年大躍進運動、1959年反右傾運動、
1960~1961年数千万が犠牲になった大飢饉、
1966年~76年2千万人もの人が死んだ文化大革命・・と、悲劇・惨劇は続く。

全国どこにでも置かれた無記名で密告できる「告発摘発箱」、自分の身や家族を守る為には、
隣人・知人を密告しなければならない相互密告組織の確立と、
毛沢東は中国を、恐怖と疑念渦巻く「密告社会」へと変貌させた。

また目の上のタンコブであった老幹部達は、「治療」と称した拷問のような手術などで、
次々に「病死」。
長期に渡って陰惨な「治療」が続けられた幹部もいたという。

そして、数千万とも言われる餓死者を出した「大躍進」での失敗で立場が危うくなった毛沢東は、
自分の地位を脅かす幹部を葬り去るため「文化大革命」を起こす。
最初は、地主、富農、資本家(黒五類)などの出身者が迫害された。
迫害する側の中心は、学生達であり紅五類(革命幹部、革命軍人、革命烈士、工人、貧農・下層中農)
出身者だった為、「紅衛兵」と呼ばれた。
学校は荒れ果て、黒五類出身の生徒や恩師を、殴り殺しても、何の咎も受けない状況に。
北京ではじまったそれは全国に波及し、多くの黒五類の家庭や人々(多くは文化人や知識人)が
襲われ、家財を略奪されたり、暴力を受けたり、殺されたりした。
その後、ターゲットは変わり、工人・貧農、下層農民階級出身者による、
紅五類の中の高級幹部へとなった。
この文化大革命により、毛沢東は、資本家、文化人、地主、そして政敵を潰すことに成功した。
毛沢東の扇動によって操られた「紅衛兵」は、目的が達せられた後は、お役御免とばかり、
逮捕されたり、農村へ追いやられたりした。

「文化大革命」に関しては、あまり詳しく知らなかったので、かなり衝撃的な内容だった。
ルワンダの虐殺でもそうだけど、人は理由を与えられたり、優越感を刺激されたりすると
(ルワンダでは虐殺されたツチ族はゴキブリと同じというというような啓蒙活動が事前に行われていた)、
このような非道な行動を平気で起こす・・・というのが恐ろしい。
ポル・ポト派が、文化大革命を参考にしていたというのも、
基本になる概念がとても似ており、納得だった。

大躍進、人民公社、三年大飢饉、文化大革命、紅衛兵運動など、
結局数千万という犠牲者を出したにも関わらず、
「醜い歴史に長い無用、年月に任せて忘却させよ」という今でも変わらぬ中国党中央の基本戦略により、
その歴史は若い人達には知らされず、毛沢東は現在も崇められている事も、また怖い。

以前、テレビだったか本だったかで、ネパールで活動しているマオイスト
(ネパール共産党毛沢東主義派)達に、上記のような毛沢東の失政を伝えたら、
全くそれを知らず、逆に嘘を言うなと激怒したというのを見た。
ネパールの話は、もう何年も前の話なので、インターネットなど情報網が発達した今、
「年月に任せて忘却させよ」は徐々に通用しなくなっているとは思うけど、
ネパールは現在、ネパール共産党統一毛沢東主義派が政権を握っている。
悪いことは隠し、良い事だけを言い続ければ、後者だけが真実として広まる・・というのは、
情報網が発達しても変わらないのかもしれない。
原発事故でも思ったけど、「人は自分が信じたいもの」を「自分の気持ちを代弁してくれるもの」を、
信じやすい。
ネパールでのマオイストの勢力拡大には、貧しい人々の立場を代弁するような思想を、
貧しい人々達が支持したという背景がある(マオイストの勢力範囲では、
反対したくてもできないという状況もあったようだけど)。
知識層や富裕層の批判、農村回帰というのは、貧しい人々にとっては、
支持したいプロパガンダなのだろうし。

この本では、毛沢東の狡猾な政策、性格、粛清や側近達の様子なども詳しく述べられている。
今の中国のトップは、粛清の嵐だった毛沢東支配下で生き延びた人達なんだと思うと、
一筋縄じゃいかない、日本の政治家が全くかなわないのも、理解できる。

毛沢東時代の中国の闇の歴史がよくわかる本。
お勧めです!!

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「餓鬼-秘密にされた毛沢東中国の飢饉」の方は、毛沢東の「大躍進」など、
急激で無理な農業改革で起きた、大規模な飢餓に関しての本。

政策の失敗により、肥沃な大地が、飢餓の大地に変貌する、その構造が詳細に語られている。

最初の方で中国に政策面で先行していたソ連の、1930年代のウクライナ大飢饉(ホロドモール)に
ついて述べている。
地方役人は誇張した収穫高を報告し、収穫高が足りなくても政府に報告した分、
農民の取り分が無くなっても取り立てる。
集団化による農村の荒廃、無理な取り立て、それが大飢饉を引き起こした。
また、ソ連統合後も、ウクライナは愛国心が強く、それを潰すために、飢饉の報告は握りつぶされ、
他の地域に食料援助がされても、ウクライナだけは搾取され続けた。
また、その後、スターリンは、この失政の責任を他の幹部に押し付け、大規模な粛清を行なっている。

このソ連、ウクライナで大飢饉が起きた構造は、中国での大飢饉とほぼ同じだ。
そして、このソ連での大飢饉の軌跡をなぞるように、中国でも、集団化、無理な増産計画、
科学的では無い農業政策(倍植えれば倍採れるとか)、
一時的な飽食(足りなくなったら国が配給してくれると、先を考えず食料を消費する)、
労働者の怠惰、農村の荒廃、実際の収穫高以上の報告と取り立て、
農民を土木工事などにかり出した為、滞る収穫作業とそれによってダメになる作物、
実際は国内に穀物が足りないにも関わらず、架空の数字を信じての輸出量増・・・・。
スターリンが悪い報告を信じなかったように、毛沢東も、党幹部からの飢饉の話には耳を貸さなかった。
そして、それが本当の事だと知った後も、自分の失政を認める事はせず、状況を悪化させた。

大量の餓死者が発生し、人肉食が行われ、妻や子供を売ったり、捨てたり、食べたり、
そういう悲惨な時期以外も、毛沢東支配下の中国が慢性的な飢餓状態であったことがわかる。
ちょっとした食料の盗難などで農民は投獄どころか、拷問され殺されたり(元地主だと殺されるが、
貧農はお咎めなしということも)、状況が少し落ち着けば、今度は拷問した側が訴えられ殺されると、
どんな立場でも安心できない・・・という中国国内の状況、毛沢東支配が中国農民を飢餓に追いやり
追い詰めていたことが見て取れる。

本書ではスターリンがウクライナに行ったように、弾圧の為の飢饉がチベットで起きた事にも
言及している。
他にも、飢饉の最中の農村の悲惨な状況(飢餓が襲う農村の壮絶な描写は、
現在の北朝鮮を思い出す)、ほとんど飢饉の影響が無かった都市部との落差
(北朝鮮でも、少し前までは都市部と農村の落差が激しかった)など、
中国の大飢饉に関して、丹念に詳細に調べ上げられ、とても読み応えのある一冊。
こちらもお勧め!!!

ジャレド・ダイアモンドが書いた「文明崩壊」でも、文明が崩壊する理由というのは似ていた。
ソ連と中国の飢饉の構造、独裁者が行った事なども、ソ連が30年ほど先行していたが、
とても似たような軌跡を辿っている。
そして、現在北朝鮮が後を追っている状態とも言える(毛沢東が亡くなったあと状況が改善したように、
金正日が亡くなって変わるのか?)。
人は同じような道を辿りがちなのだろうか・・・・と思ってしまう一冊でもあった。
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