「ジェノサイド」高野和明著:ハリウッド映画のような軽快なタッチの社会派風SF風小説! [本:SF]
7.5点
「本の雑誌」2011年上半期ベスト1!
難病「肺胞上皮細胞硬化症」に侵された息子の莫大な治療費の為、
バグダットで傭兵として働くイエーガーの元に、破格の報酬の任務が舞い込む。
それは高度な機密扱いの任務で、アフリカで何らかの暗殺任務を行うらしい。
それもその任務は「人類全体に奉仕する仕事」だという。
その頃、創薬化学を専攻する大学院生研人は、急死したはずの父から、謎のメールをもらう。
二人にしかわからない暗号が散りばめられたメール。
それは、父が秘密裏に行なっていた新薬開発の研究を引き継ぐようにとの内容だった。
しかし、父の死の直後から、研人の周りでは不穏な動きが・・・・。
アフリカと日本、全く別々の場所で行動し、立場も違うイエーガーと研人。
この二人を結びつけるモノ、それは人類の存亡に関わる事柄だった。
マスコミを抑えつけ、戦争を引き起こしたブッシュと、軍事産業で大儲けしたチェイニー。
この作品に登場するアメリカ大統領と副大統領は、明らかにブッシュとチェイニーをモデルにしている。
アメリカの闇の部分、大国の傲慢、資源のある国の紛争には積極的に軍事介入し、
その利益を狙う先進国、ルワンダの虐殺、アフリカの内戦や戦争、少年兵士・・etcと、
現代の国際問題があちこちに散りばめられている(この本で言われている事の中には、
いくつかある中の説の一つでしか無いものもあるので、それには注意)。
でも、重い話かというとそうでもなく、ハリウッド映画っぽい軽快なタッチで、
いろいろな問題提起はされているが、それを深く掘り下げるのではなく、
一つのガジェットとして利用している。
SF的な要素もいろいろあるのだが、これまたガジェットとしての利用で、
SF作品とまでも言い切れないものが。
だから、社会派ではなく「社会派風」、SFではなく「SF風」って感じがした(一応SFカテゴリに入れたけど)。
伊藤計劃の「虐殺器官」は、ルワンダの虐殺やアフリカの少年兵士などの問題など、
似たようなテーマを扱っているが、「虐殺器官」がそれらをテーマと深く関わるところに置き、
深く掘り下げ、人間の残酷さや愚かさ、戦場での心理などを、近未来社会という舞台で、
描き出した重いSF作品。
それと比べると、爽快でテンポよく読みやすく、上記した様々な国際問題、
アフリカ紛争地帯に潜入した傭兵たちの戦闘シーンの緊迫感、
そして極秘任務の裏に隠された秘密、薬の開発に関するトリビアなど、
いろいろな要素がうまく絡まり、最後まで一気に読ませる面白さがあった。
そして全く無関係と思われた極秘作戦と難病の薬開発の意外な関係が明らかになるストーリー展開は、
傭兵の作戦展開と、薬の開発のシーンが交互に描かれる。
話がブチっと切れてしまいがちなこの構成は「いいところで!」ってストレスを感じがちだけど、
どちらの話も面白いので、「いいところで切れた!」と言うより「読みたかった続きが読める」って感じで
ストレスがたまらなかったのもGOOD!
日本人が出てこなければ、ハリウッド映画のノベライゼーション、もしくは原作とも思えるような、
人の善き心に対する信頼感とか、未来に対する楽観的視点に溢れているのは、
扱っているガジェットが重すぎる為、物足りなさ感があったけど
(この辺もハリウッド映画を見た後と似ている)、エンターテインメント作品としては、
とても良いできで楽しめました♪
「本の雑誌」2011年上半期ベスト1!
難病「肺胞上皮細胞硬化症」に侵された息子の莫大な治療費の為、
バグダットで傭兵として働くイエーガーの元に、破格の報酬の任務が舞い込む。
それは高度な機密扱いの任務で、アフリカで何らかの暗殺任務を行うらしい。
それもその任務は「人類全体に奉仕する仕事」だという。
その頃、創薬化学を専攻する大学院生研人は、急死したはずの父から、謎のメールをもらう。
二人にしかわからない暗号が散りばめられたメール。
それは、父が秘密裏に行なっていた新薬開発の研究を引き継ぐようにとの内容だった。
しかし、父の死の直後から、研人の周りでは不穏な動きが・・・・。
アフリカと日本、全く別々の場所で行動し、立場も違うイエーガーと研人。
この二人を結びつけるモノ、それは人類の存亡に関わる事柄だった。
マスコミを抑えつけ、戦争を引き起こしたブッシュと、軍事産業で大儲けしたチェイニー。
この作品に登場するアメリカ大統領と副大統領は、明らかにブッシュとチェイニーをモデルにしている。
アメリカの闇の部分、大国の傲慢、資源のある国の紛争には積極的に軍事介入し、
その利益を狙う先進国、ルワンダの虐殺、アフリカの内戦や戦争、少年兵士・・etcと、
現代の国際問題があちこちに散りばめられている(この本で言われている事の中には、
いくつかある中の説の一つでしか無いものもあるので、それには注意)。
でも、重い話かというとそうでもなく、ハリウッド映画っぽい軽快なタッチで、
いろいろな問題提起はされているが、それを深く掘り下げるのではなく、
一つのガジェットとして利用している。
SF的な要素もいろいろあるのだが、これまたガジェットとしての利用で、
SF作品とまでも言い切れないものが。
だから、社会派ではなく「社会派風」、SFではなく「SF風」って感じがした(一応SFカテゴリに入れたけど)。
伊藤計劃の「虐殺器官」は、ルワンダの虐殺やアフリカの少年兵士などの問題など、
似たようなテーマを扱っているが、「虐殺器官」がそれらをテーマと深く関わるところに置き、
深く掘り下げ、人間の残酷さや愚かさ、戦場での心理などを、近未来社会という舞台で、
描き出した重いSF作品。
それと比べると、爽快でテンポよく読みやすく、上記した様々な国際問題、
アフリカ紛争地帯に潜入した傭兵たちの戦闘シーンの緊迫感、
そして極秘任務の裏に隠された秘密、薬の開発に関するトリビアなど、
いろいろな要素がうまく絡まり、最後まで一気に読ませる面白さがあった。
そして全く無関係と思われた極秘作戦と難病の薬開発の意外な関係が明らかになるストーリー展開は、
傭兵の作戦展開と、薬の開発のシーンが交互に描かれる。
話がブチっと切れてしまいがちなこの構成は「いいところで!」ってストレスを感じがちだけど、
どちらの話も面白いので、「いいところで切れた!」と言うより「読みたかった続きが読める」って感じで
ストレスがたまらなかったのもGOOD!
日本人が出てこなければ、ハリウッド映画のノベライゼーション、もしくは原作とも思えるような、
人の善き心に対する信頼感とか、未来に対する楽観的視点に溢れているのは、
扱っているガジェットが重すぎる為、物足りなさ感があったけど
(この辺もハリウッド映画を見た後と似ている)、エンターテインメント作品としては、
とても良いできで楽しめました♪
コメント 0