SSブログ

「バレエ・メカニック」津原泰水著:大脳皮質が死滅した少女の見る夢は・・・溢れるほどのイマジネーション [本:SF]

バレエ・メカニック (想像力の文学)

バレエ・メカニック (想像力の文学)

  • 作者: 津原 泰水
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2009/09
  • メディア: 単行本
7.8点

秀麗な文章で綴られる美しい情景と、胸に何かしこりを残すような物語が印象的だった短篇集
11 eleven」(リンク先感想)がとても良かったので、同じ作者の「バレエ・メカニック」を読んだ。

それぞれ物語を語る視点の主は違うけど、繋がりのある3つの中編「バレエ・メカニック」
「貝殻と僧侶」「午前の幽霊」が収録されている本。
「主人公」ではなく「語る視点の主」という言葉がピッタリくるような、構成と展開になってて、
その辺も著者のこだわりや技巧を感じた。

火星人の乗った巨大な蜘蛛型の乗り物が闊歩し、高速道路を突然津波が襲う。
銅像は苦悶の表情を浮かべながら人を串刺しにし、目の前には突然カルスト台地が広がる・・・。
突如、東京を襲った幻想の洪水。
この「砂嵐」と呼ばれた現象は、海で溺れ大脳皮質が死滅し、植物状態で生かされている
少女が見ている夢なのか・・・。

整いすぎて、どこか金属めいた硬質な文章なのにも関わらず、
物語の根底に流れる切なさ、悲しさが、ジワジワとにじみ出てそれに侵食されているような気分になる。
特に本のタイトルにもなっている「バレエ・メカニック」は、「少女」という存在が持つ無邪気さ、
父親の悲哀とノスタルジー、それが洪水のように物語を覆う溢れ出るイマジネーションの中で
描かれている。
幻想に覆われた世界が、厳しい現実と表裏一体である事が伝わってくるのも巧い。

第二章「貝殻と僧侶」第三章「午前の幽霊」は、そこまでイマジネーション溢れる話ではないが、
一章「バレエ・メカニック」の強烈で切ない世界観が、それら2つの物語を覆うような構成になっており、
最後まで、津原泰水の描く幻想と現実が混ざり合ったような世界を堪能できる内容になっていた。

津原泰水描く世界、少女の脳幹が見た夢の世界を堪能して欲しい。
すごくお勧め(^-^)ノ。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。