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「暗い夜、星を数えて 3・11被災鉄道からの脱出」彩瀬まる著:被災者達の思いが、原発被害の辛さがヒシヒシと伝わってくる・・・ [本ノンフィクションいろいろ]

暗い夜、星を数えて: 3・11被災鉄道からの脱出

暗い夜、星を数えて: 3・11被災鉄道からの脱出

  • 作者: 彩瀬 まる
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/02/24
  • メディア: 単行本
8点

2011年3月11日東日本大震災が起きた時、実家が埼玉にある著者は、常磐線の中、
福島県相馬郡にある新地駅付近にいた。
列車は止まり、動き出す気配もない。
列車の中で知り合った人の案内で、歩いて避難するが、途中津波に追われ、
命からがら高台に避難する。
先ほどまで自分がいた、人々が行きかい生活していた商店街が津波にのまれるのを目撃し、
避難所でいいようの無い不安に苛まれる著者。
しかし、著者は、その状況で、地元の人の温かい気持ちや、援助の手に助けられる。
南相馬市に住む、見知らぬ女性の家に泊まることになった著者。
しかし、そこで今度は原発事故のニュースをきく。
原発事故の情報は、地元の放送で「屋内退避」との指示と一緒に流されたが、その後すぐ訂正。
二転三転する情報に、著者は、「情報の明らかな隠蔽」を感じ取る。
最初の情報が訂正されなければ・・・・、訂正があった後、安心して外出したのを、
後悔する人達を目の前に、憤りを感じる著者。
数日後、無事自宅に辿りつけた著者は、その後、ボランティアとして福島に戻る。
福島の友人や、震災時助けてくれた人たちとの再会。
そこで、放射能への不安、風評被害、福島県民への明らかな差別、補償範囲から少しでも
外れていれば保証されないという現実・・・・・苦悩する福島の人々の姿を目の当たりにする。

震災関係の本はいろいろ読んだけど、この本ほど、切なく辛く悲しい本は無かった。
優しい善良な人々、真面目に生きてきた人々、その人達を苦しめるのは
原発や東電の無配慮な対応、行政だけではなく、無理解な他の県に住む日本人達。
思った以上に、県外で罵りの言葉を浴びせられたり、嫌がらせをされた人は多かったらしい。

地元に残るも地獄、出るも地獄、それでも敢えてどちらかを選ばなければいけない人々、
何かを食べるにも、毎回葛藤し、日々不安に苛まれ、苦悩しつつも、前向きに生きようとする、
そんな人たちの気持ちが、押し付けがましくなく、切々と書かれている。
そして、その厳しい状況は、解決の糸口すら見えず、まだまだ果てしなく続くのだ・・・・。

著者もいわき市近郊で作られた玉ねぎを貰ったが食べられずに、それを察してくれた
福島県内の友人に渡してしまう。
検査して安全だと言われても、「万が一」という不安がつきまとい、食べられなかった事に、
胸を痛める著者。

声高に原発反対を訴えているわけではない本だけど、この本こそ、
原発の怖さをじわじわと伝えてくれる。
そして、今の政府や東電の対応を考えると、原発は稼働しちゃダメだ・・と強く思える。
原発事故がどれだけ多くの人々を苦しめたのか、真面目に生きてきた優しい人々を、
不幸のどん底に、終わりの無い不安の中に突き落としたのかがわかるし、
それを救うような対策が、ほとんど取られていないというのもわかる。

地元に対しての情報開示が遅れた事(最初の屋内退避のアナウンスは即訂正され、
次にそれがアナウンスされたのはかなり経ってから)、断水で水も出ない、
水道が使えてもそれが汚染されている可能性がある状況なのに、
「外から帰ったら、シャワーを浴びて下さい」と無神経に伝えるアナウンス。

私は、実家が福島だし、南相馬市は、2年半ほどしか住んでいないけど、とても好きな町だった。
南相馬市の旧市名は原ノ町。
隣の相馬市に比べると歴史は浅く、田舎の人情味はあるが、閉鎖性が無い、
温かくて開放的なすごく住みやすい町だった印象で、何箇所も引っ越したけど、一番好きな町でもある。
だから、福島に全く関係ない人に比べれば、福島県の人の気持ちがわかると思っていたけど、
これを読んで、全然わかってなかったんだなーと改めて思った。

私は強固な原発反対者では無いのだけれど(日本の資源の問題、有事の時の問題などから)
これを読んだら、今の政府や電力会社の対応を抜本的にかえられない限り、
原発を稼働してはダメなんじゃないかと思うようになった。
そうはっきり思えるほど、事故直後の対応にしても、その後の保証に関しても、まともに機能していない。
猿に過ぎたる武器を与えちゃいけないというか、今のシステムでは、全然管理できず、
もしまた広域に何かあれば、同じことを繰り返すだけというか。
大きな災害に関しては、それが起きる度に対応が改善されているけど、
原発事故は、相変わらず責任のなすりつけ合いと隠蔽体質、表面的な東京電力の対応など、
見てる限り改善されておらず、その場凌ぎでしか無いと思えるし。

原発事故について、その被害の根深さ、怖さについて、改めて考えさせられる本。
お勧め!!
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