「閉じ箱」竹本健治著:ミステリーよりの幻想・ホラー短篇集 [本:ホラー&ミステリー]
7点
面白かったホラー・ミステリー「かくも水深き不在」(リンク先感想)、
衒学的アンチ・ミステリー小説「匣の中の失楽」(リンク先感想)に続き、
竹本健治の短篇集を読んでみました。
14篇の短編が収められた一冊。
「氷雨降る林には」は見慣れた欅の林に恐怖感を感じる男の話。
その発端は、ちょっとした出来心による浮気だった。
そして、その後起きた出来事が男を恐怖させ苦しめる・・・。
「陥穽」は断崖絶壁の上で偶然出会った男2人の話。
片方の男が語り出したのは、その男が過去に遭遇した、
雪に閉ざされたロッジでの殺人事件の事だった。
その事件とは・・・。
「けむりは血の色」は、余命いくばくも無い少年と、その親友の話。
少年のいる療養所周辺で、通り魔事件が起きる。
そして、その少年に犯行予告が届くのだが・・・。
「美樹、自らを探したまえ」は、自分の出生の秘密を探る女性の話。
間接的にだが、自分の名付け親になった死去した作家の館を訪れた主人公は、
村人の不審な反応に遭遇する。
「緑の誘い」は、絵のモデルを引き受けた女性が知ってしまった、とある秘密の話。
「夜は訪れぬうちに闇」は、暗黒準備委員会か開催する「黒樹祭」に正体された少年達の話。
その怪しげな集まりは、少年達の参加で予想もしない方向に・・・。
「月下の下の鏡のような犯罪」は、呪術を試してみようとした男を描いたホラーSS。
表題作「閉じ箱」は、牧師が霧の中出会った、「閉じ箱」で迷っているという男の話。
不確定性原理とミステリーについて、書いた作品。
「恐怖」は、恐怖を感じない男の話。
「七色の犯罪のための絵本」は、色をテーマにした、ホラーミステリーの連作。
幻想的だったり、ミステリーぽかったり、いろいろな作風の話が混じっている。
「実験」は、人を狂わせる実験に協力した男の話。
そうとは知らず狂気に陥る催眠術をかけられた女性を、監視する役目をおった男。
徐々におかしくなっていく女性を見て、後悔の念にさいなまれるのだが・・・。
「闇に用いる力学」は、自分と彼女である千尋が出演している、しかし自分たちはそんな行動を
取っていないビデオを見てしまった、男の混乱と恐怖を描いた作品。
「跫音」は背後からの跫音に怯える美しい少女千尋の話。
彼女が跫音に怯えるのには、ある理由があった・・・。
「仮面たち、踊れ」は、陰のある美少女千尋と親友になった少女が遭遇した恐怖の話。
千尋を苦しめる為、悪事を繰り返す千尋の弟。
その矛先が少女に向いた時、悲劇は起きた。
一応書いたけど、竹本健治の話は、粗筋がものすごく書きにくい。
というのも、彼の話は、ストーリーの上にいろいろな要素が加えられ、
その加えられた要素の方が重要だから。
だから、粗筋から受ける印象と、実際に読んだ内容が大きく異なってしまうというか。
ミステリーでありながら、ミステリー部分以外が本質であるアンチ・ミステリーと同じ傾向を、
幻想怪奇色が強いこの短篇集の作品のどれもが持っていたりする。
最初の5編はミステリー色が強いが、本質は違うというアンチ・ミステリー系の話で、
小粒ではあるが、楽しめた。
「夜は訪れぬうちに闇」は、怪奇幻想的な話で、怪しげな集会の雰囲気は面白かったけど、
怪奇幻想系の話はあまり好まないので、個人的にはイマイチ。
「月下の下の鏡のような犯罪」「恐怖」「実験」はホラー物だけど、
書かれた時期が古い為か、意外性はあまりなくレトロ感強し。
雰囲気が「ホラー」より、「サスペンス・ミステリー」っぽいから、怖さが弱いのも難点。
「閉じ箱」は、SFっぽい要素を持ちながらも、ミステリーの仕掛けとか謎解きについて、
著者の気持ちを言及した内容。
100%ありえない事は無いという視点で見てしまうと、謎解きも穴だらけ・・・ってのは、
ミステリーを書いている人の悩みなのかな?
本格ミステリーファンには、共感できる内容なのかも。
私は、SF的な視点で最初読んでしまったので、「何が言いたかったんだろ?」
と最初思ってしまった(^^;)。
「闇に用いる力学」「跫音」「仮面たち、踊れ」は、「千尋」という名前の少女が登場する、
「千尋シリーズ」。
ミステリー・ホラーの系譜だけど、これも、サスペンス・ミステリーっぽい雰囲気で、
ちょっと怖さが弱い。
全体的に、ホラー色が強い作品は、小林泰三と傾向が似ているように思えた。
「恐怖」と「実験」は、特に小林泰三を思い出した。
全体的によくまとまっている話ばかりだけど、ミステリーファン向けな話な気が。
私のように、ミステリーよりホラーやSFが好きってなると、ちょっと物足りない。
面白かったホラー・ミステリー「かくも水深き不在」(リンク先感想)、
衒学的アンチ・ミステリー小説「匣の中の失楽」(リンク先感想)に続き、
竹本健治の短篇集を読んでみました。
14篇の短編が収められた一冊。
「氷雨降る林には」は見慣れた欅の林に恐怖感を感じる男の話。
その発端は、ちょっとした出来心による浮気だった。
そして、その後起きた出来事が男を恐怖させ苦しめる・・・。
「陥穽」は断崖絶壁の上で偶然出会った男2人の話。
片方の男が語り出したのは、その男が過去に遭遇した、
雪に閉ざされたロッジでの殺人事件の事だった。
その事件とは・・・。
「けむりは血の色」は、余命いくばくも無い少年と、その親友の話。
少年のいる療養所周辺で、通り魔事件が起きる。
そして、その少年に犯行予告が届くのだが・・・。
「美樹、自らを探したまえ」は、自分の出生の秘密を探る女性の話。
間接的にだが、自分の名付け親になった死去した作家の館を訪れた主人公は、
村人の不審な反応に遭遇する。
「緑の誘い」は、絵のモデルを引き受けた女性が知ってしまった、とある秘密の話。
「夜は訪れぬうちに闇」は、暗黒準備委員会か開催する「黒樹祭」に正体された少年達の話。
その怪しげな集まりは、少年達の参加で予想もしない方向に・・・。
「月下の下の鏡のような犯罪」は、呪術を試してみようとした男を描いたホラーSS。
表題作「閉じ箱」は、牧師が霧の中出会った、「閉じ箱」で迷っているという男の話。
不確定性原理とミステリーについて、書いた作品。
「恐怖」は、恐怖を感じない男の話。
「七色の犯罪のための絵本」は、色をテーマにした、ホラーミステリーの連作。
幻想的だったり、ミステリーぽかったり、いろいろな作風の話が混じっている。
「実験」は、人を狂わせる実験に協力した男の話。
そうとは知らず狂気に陥る催眠術をかけられた女性を、監視する役目をおった男。
徐々におかしくなっていく女性を見て、後悔の念にさいなまれるのだが・・・。
「闇に用いる力学」は、自分と彼女である千尋が出演している、しかし自分たちはそんな行動を
取っていないビデオを見てしまった、男の混乱と恐怖を描いた作品。
「跫音」は背後からの跫音に怯える美しい少女千尋の話。
彼女が跫音に怯えるのには、ある理由があった・・・。
「仮面たち、踊れ」は、陰のある美少女千尋と親友になった少女が遭遇した恐怖の話。
千尋を苦しめる為、悪事を繰り返す千尋の弟。
その矛先が少女に向いた時、悲劇は起きた。
一応書いたけど、竹本健治の話は、粗筋がものすごく書きにくい。
というのも、彼の話は、ストーリーの上にいろいろな要素が加えられ、
その加えられた要素の方が重要だから。
だから、粗筋から受ける印象と、実際に読んだ内容が大きく異なってしまうというか。
ミステリーでありながら、ミステリー部分以外が本質であるアンチ・ミステリーと同じ傾向を、
幻想怪奇色が強いこの短篇集の作品のどれもが持っていたりする。
最初の5編はミステリー色が強いが、本質は違うというアンチ・ミステリー系の話で、
小粒ではあるが、楽しめた。
「夜は訪れぬうちに闇」は、怪奇幻想的な話で、怪しげな集会の雰囲気は面白かったけど、
怪奇幻想系の話はあまり好まないので、個人的にはイマイチ。
「月下の下の鏡のような犯罪」「恐怖」「実験」はホラー物だけど、
書かれた時期が古い為か、意外性はあまりなくレトロ感強し。
雰囲気が「ホラー」より、「サスペンス・ミステリー」っぽいから、怖さが弱いのも難点。
「閉じ箱」は、SFっぽい要素を持ちながらも、ミステリーの仕掛けとか謎解きについて、
著者の気持ちを言及した内容。
100%ありえない事は無いという視点で見てしまうと、謎解きも穴だらけ・・・ってのは、
ミステリーを書いている人の悩みなのかな?
本格ミステリーファンには、共感できる内容なのかも。
私は、SF的な視点で最初読んでしまったので、「何が言いたかったんだろ?」
と最初思ってしまった(^^;)。
「闇に用いる力学」「跫音」「仮面たち、踊れ」は、「千尋」という名前の少女が登場する、
「千尋シリーズ」。
ミステリー・ホラーの系譜だけど、これも、サスペンス・ミステリーっぽい雰囲気で、
ちょっと怖さが弱い。
全体的に、ホラー色が強い作品は、小林泰三と傾向が似ているように思えた。
「恐怖」と「実験」は、特に小林泰三を思い出した。
全体的によくまとまっている話ばかりだけど、ミステリーファン向けな話な気が。
私のように、ミステリーよりホラーやSFが好きってなると、ちょっと物足りない。
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