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「ついてくるもの」三津田信三著:怪談仕立ての短篇集!ゾワゾワ来るよ~ [本:ホラー&ミステリー]

ついてくるもの (講談社ノベルス)

ついてくるもの (講談社ノベルス)

  • 作者: 三津田 信三
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/09/06
  • メディア: 新書
7.3点

作中作家が見たり聞いたりした怪奇話を、小説のようにまとめたという構成の
怪談仕立てホラーが6編収められた、ホラー短篇集。
三津田信三は、現代(というか昭和ぐらい)の怪談的な話が巧く、今回の短篇集も、
読み終わった後「ゾッ」っとする話が多かった。
また、憑き物系伝奇ホラーや、現代的ホラー、乱歩の人間椅子をモチーフにしたホラーなど、
バリエーションも豊富。
同作者の別の短篇集「赫眼」(リンク先感想)と傾向が似ている。
「赫眼」の方が怖いけど。

「夢の家」:異業種との交流が目的のパーティーで知り合った女性。
奥ゆかしく、家庭的に思えたその女性と親交を深めるほど、その女性の特異な性格が、
気になるように。
しかし別れを告げた後から、奇怪な現象に悩まされるように・・・。

表題作になっている「ついてくるもの」:高2の少女が、廃屋の裏庭で見つけた雛飾り。
どれも目や手足の片方が潰されていた。
唯一無傷のお雛様を思わず持ち帰った少女だったが、それが恐怖の始まりだった。
ペットが次々に怪死し、少女の家族にも厄災が降りかかりだす・・・。

「ルームシェアの怪」:4人で一軒の家をルームシェアしている「四つ葉荘」に住むことになった真由美。
最初はその生活に満足していたが、同居人の1人が不可解な行動をとるように。
その行動に不信感を募らせる真由美だったが・・・。

「祝儀絵」:歳の近い叔母から送られた、婚礼の絵を描いた掛け軸。
妙にリアルな新郎の顔と、平凡な新婦の顔。
最初見た時から、その掛け軸には違和感を感じていた主人公。
その掛け軸を飾り始めた頃から、主人公の周囲に、怪しい女性が出没するように・・・。

「八幡藪知らず」:近寄っただけでも老人から注意された禁忌の場所「無女森」。
確かに、その鬱蒼とした藪の中を覗きこんだだけで、恐ろしい気持ちになる。
小学5年生の転校生恵太は、そんな恐怖を感じていた「無女森」の探索に、友人たちから誘われる。
事前の下調べとして、その森の事を調べれば調べるほど、その森は近づいてはいけない場所だと、
心底感じているのに、怖がりと思われたくない、せっかくできた友達を無くしたくない・・・
そんな気持ちから、きっぱりと断れず、探索の日は近づいてくる・・・・。

「隣の家の子供」:慌ただしく引っ越した一軒家。
しかし、夜な夜な子どもたちの騒ぐ声に悩まされるように・・・。

「椅人の如く座るもの」:この作品だけミステリーとオカルトを融合させた「刀城言耶」シリーズ
(リンク先感想)の短編。
人間を模した不気味ともいえる家具を作る工芸家の元に取材にいった編集者偲。
そこで、不可解な失踪事件に遭遇する。

「ついてくるもの」と「八幡藪知らず」は、作者が得意の伝奇ホラーの雰囲気満点!
じわじわと恐怖がせまってきて、怖くて、面白かった♪

「夢の家」「祝儀絵」「ルームシェアの怪」「隣の家の子供」は、無難で小粒という感じで、
普通の怪談系ホラーにしてはクオリティは高く(三津田信三は雰囲気作りが上手いので)、
そこそこ怖いが、ストーリー的には普通。

ただ、どの話も、あまりにも前置きが長すぎる(>_<)。
この怪談を知った経緯だけでなく、作中の作家が怪談話を集める時のポリシーとか、
その作家のホラー小説評とかが、くどくどくどくど、新しい短編を読む前に、
必ず語られるので、本編に入る前にうんざりしてしまう事に。

「椅人の如く座るもの」も、江戸川乱歩の「人間椅子」へのオマージュ的な小説で、
素材は悪く無いんだけど、本編でも辟易している、面白くも無いのに、延々と続く、
主人公刀城言耶と、編集者偲とのやり取りシーンがあまりにも長くて、ウンザリ。

三津田信三は、使い捨てキャラというか、一つの作品に出て終わり的なキャラクターの
作り方は悪くないんだけど、いろんな作品に出るキャラクターを作ると、
そのキャラクターの説明というか、基本設定を、毎回毎回ほぼ同じような内容で
くどくどくどくどくどくど語ってしまう傾向があるのが難点。
そのキャラクターが魅力的ならいいんだけど、魅力的じゃないし、
語り口も「そんなの説明されなくてもいいよ」的なことまで説明されちゃうのが・・・。

前置きなどをすっきりさせたり、「またこのやり取りと説明か・・(-_-;)」と思わせる部分が、
もっと短くなれば、怪談本体はそれなりに面白いからもうちょっと高評価なのに・・・。
とにかく、次の短編を読む度に、導入部にウンザリしたので、ちょっと点数低め。
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