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「WORLD WAR Z(ワールド ウォー ゼット)」マックス・ブルックス著:ゾンビ小説の傑作!! [本:ホラー&ミステリー]

WORLD WAR Z

WORLD WAR Z

  • 作者: マックス・ブルックス
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/04/10
  • メディア: ペーパーバック
8.5点

ジョージ・A・ロメロが、「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」でこの世に送り出した生きる死者「ゾンビ」。
動きは緩慢で、人を襲い、噛まれた者もゾンビと化し、頭を破壊しないと死なない・・・。

多くのゾンビものは、世界がゾンビ禍に襲われたとしても、どこかの「ある場所」での物語を語っている。
しかし、この本はタイトルにある通り「WORLD WAR」、「世界大戦」。
もちろん、タイトルの最後の「Z」は、ゾンビの事である。

物語は、ゾンビが世界中に広がり世界は壊滅、その後「ゾンビ戦争」と呼ばれるゾンビとの戦いが、
多くの犠牲と、過酷すぎる苦難を乗り越え、終了した世界が舞台。

主人公である著者が、世界各国で、ゾンビ戦争を生き延びた人々の体験をインタビューし、
それをまとめた本という事になっている。

ゾンビ禍の発祥の元ともなった中国で、感染者に初期に遭遇した医者、
北へ北へと逃げたアメリカ人の一家、いち早くこの感染症に気がついたイスラエルの諜報部員、
発祥当時アメリカ政府に関わっていた人物、ゾンビと戦った兵士、
引きこもり状態から、どうにか生き延びた日本人、潜水艦の乗組員、船で脱出しようとした人・・・
感染症の「兆候」が見られた時期、パニックが起きた時期、形勢が一変した時期、
アメリカでの国内戦、全面戦争、戦争の終焉・・・それぞれの時期について語られる
人々の体験、そして気持ち。

個人というミクロの視点から、世界というマクロの視点が想像できる、
本書のあとがきの言葉を借りると「さまざまな人物の証言からあるできごとの総体を描き出そうとする
オーラル・ヒストリー」の手法が、最大限に生かされ、ゾンビに襲われた世界が想像できると共に、
普通の人であった個人のドラマが、克明に描かれている。

個人の体験談は、どれも短編として成り立つほど面白いだけでなく、
発祥の地である中国の隠蔽工作の巧みさや、中国マフィアである蛇頭が金さえ出せば、
感染者と疑われる人々ですら、国外逃亡を手助けしたりしたことが、被害をより拡大したり、
即籠城体制に入ったイスラエルの考え方や、保身に走り対策が後手後手になったアメリカの
政治家の話など、今の世界にいろいろな部分がリンクしていて、そういう意味でも、
楽しめる一冊。

「もしゾンビが発生したら」だけじゃなく、「もし世界規模の致死率が恐ろしく高い感染症が発生したら」
この世界のようになりそう・・・と思えたのも怖い←日本の政治家役に立ってないし、
そんな政治家の指示に、「国がなんとかしてくれる」とギリギリまで従ってしまう国民性も、
当たってるっていうか(^^;)。

ゾンビ禍中期には、ホワイトカラーが全く役立たずになり、孤立したグループで自給自足をする為に、
部下だったり、雇っていたブルーカラーに技術指導を受ける事になってしまうなど、
価値観すら変わっていく様も面白かった。

著者は、社会主義が嫌いなのか、中国、ロシア、キューバなどについては、
「体制の不備から、超ダメダメ」というような描き方をしすぎているのは気になったけど
(「北朝鮮」は、「大丈夫」だったんだけど(^^;))。

また、この作品に出てくるゾンビ、動きが遅く愚鈍なのは今までと同じだけど、
その数が数十万、数百万だったら攻防戦はどうなる?(撃ち殺したゾンビの壁ができ、
そこの後ろからも、どんどんゾンビが来る)、水に落ちても死なず、海底にも歩いている
ゾンビが大量にいて、潮に流されたりして上陸してくる、ライフジャケットをつけたまま
ゾンビになった人は、浮いた状態で襲ってくる・・・・etc、と様々なゾンビの状態が
描かれてるのも、新しくてよかった。

陸上だけじゃなく、海底にも大量にゾンビが蠢いてるって・・・・・・・すっごい怖い。
島に非難したって無駄だってことだし。

ラストが、アメリカ映画的大団円、「人間の勇気が、生きる希望が勝利!」ってな部分は、
ちょっと気になったけど、「ゾンビ小説」としては、破格のできで、面白かったO(≧▽≦)O!!
これは、超お勧め!!

ちょびさん、お勧めしてくれてありがと~(^-^)ノ。

ブラット・ピットが版権を獲得して、映画化され、アメリカでは6月中旬、
日本では2013年8月10日公開なよう。
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コメント 4

コステロ

コレは確かに面白そうですね。
発生地が中国と言うのもリアルで良いです(笑
by コステロ (2013-06-17 07:06) 

choko

コステロさん

そうそう、発祥地が中国ってのは、何かリアルですよね。
そのせいで、ワールドワイドに対応が遅れるってのも
ありそうだし(^^;)。

文庫版も出てますし、機会があったら読んでみて下さい♪
その前に映画公開されるかな?
by choko (2013-06-17 21:46) 

ちょび

喜んでいただけてなによりです。
私じたいも、S木さんに大プッシュされたんですよー。
by ちょび (2013-06-18 12:17) 

choko

ちょびさん

おおっ、そちらからのお勧めだったんですね♪
いやー、これはほんと面白かった!
でも、リアルな部分は、ゾゾゾッって思えたりもしますよね。
有り得そうだもん(^^;)。
by choko (2013-06-18 23:33) 

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