SSブログ

「影が行く-ホラーSF傑作選」ディック、クーンツ、ライバー、ゼラズニイ等のホラーSF短編、表題作は「物体X」の原作! [本:SF]

影が行く―ホラーSF傑作選 (創元SF文庫)

影が行く―ホラーSF傑作選 (創元SF文庫)

  • 作者: フィリップ・K. ディック
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2000/08
  • メディア: 文庫
7.8点

P・K・ディック、ディーン・R・クーンツ、フィリッツ・ライバー、ロジャー・ゼラズニイ、
リチャード・マシスン、アルフレッド・ベスター、ブライアン・W・オールディス等、
錚々たる顔ぶれが揃った、ホラーSF短篇集。
作家の顔ぶれを見てもわかるように、1950年代~1970年代の作品が中心で、
ホラーやファンタジー・幻想と、SFの境が曖昧だった頃、
古き良き古典SFの香りが感じられる良作揃い♪

・「消えた少女」リチャード・マシスン著:映画化された「アイ・アム・レジェンド
(旧題:地球最後の男)」が有名な著者。
アメリカのホラーSFドラマ「ミステリー・ゾーン」の1話として放送された作品の原作。
室内で消えた幼女。泣き声は聞こえても姿が見えない事に、恐れ戦き、必死で娘を探す両親。
「あーー、こういうテレビドラマありそう!」という、小粒な佳作。
マシスンの作品は、正統派幽霊屋敷もの「地獄の家」が好き。

・「悪夢団(ナイト・メア・ギャング)」ディーン・R・クーンツ著:モダンホラーの巨匠クーンツの初期短編。
ルイスという男の支配下に置かれた男たち。
その指示に逆らえば恐ろしい事が起こり、逃げようとすれば、死が待っている。
ある夜、ルイスが出した恐ろしい命令とは・・・?

クーンツというと、ジワジワと迫り来る脅威、ヒーローの頑張り、ヒロインの健気さ、
王道に盛り上がるストーリー展開・・と、エンターティメントモダンホラーとして
楽しめる長編が多いけど、この作品は初期の頃の作品なせいか、
どよ~んとした重い雰囲気で、ちょっと毛色が違うのが面白かった。
モダンホラーの作家として有名だけど、SFを書いてたこともわかる作品。

・「群体」シオドア・L・トーマス著:未知の生物が、それも粘液みたいな生き物が人を襲う話と
いうのは、一般受けもいいらしく、これもそういう作品の一つ。
大きなひねりは無いし、粘液クリーチャー王道パターンではあるんだけど、
それでも読んでて気持ち悪くて、楽しい♪

・「歴戦の勇士」フィリッツ・ライバー著:時間を越えて移動することができ、
過去の有名な戦争も、未来に起きるという戦争も、見てきたように語る男マックス。
誰も本気にしていなかったが、ある夜、闇に光る不気味な真っ赤な目を目撃した
マックスの友人フレッドは、マックスに脅威が迫っている事を察する。

ライバーの連作「改変戦争シリーズ」(「ビッグタイム」+いくつかの短編)の中の一つだそう。
SFより、ライバーらしいというか、ファンタジー色を強く感じた。

・「ボールターのカナリア」キース・ロバーツ著:ポルターガイストの噂がある僧院を撮影した
2人の若者が遭遇した怪異。
特に印象なし。地味。
キース・ロバーツ、一作も読んでいないんだけど、
改変歴史物として有名な「パヴァーヌ 」を買おうか、
イヤ、本を発掘すると出てくるかもっ?と、ずっと悩んでる作家(^^;)諦めて買うべき?

・「影が行く」ジョン・W・キャンベル・ジュニア著:この原作を元に「遊星よりの物体X(1951年)」
「遊星からの物体X(1982年)」(カーペンター監督)が作られ、
「遊星からの物体X」の前日という設定の「遊星からの物体X ファーストコンタクト」も2011年に制作。

カーペンターの「遊星からの物体X」は、クリーチャーものの名作として有名で、
私も最初に見た時は、「物体X」の異形な姿と動きの素晴らしさに、感動しまくった!
本物そっくりに擬態する宇宙生物が入り込んだ南極基地で、人々が疑心暗鬼にかられる様など、
映画と似てる!・・・・って読んで思ったけど、こっちが原作なんですよね(^^;)。
「物体X」の怖さを盛り上げている、閉塞感や不信感などが、原作でもしっかり描かれていて、
とても面白かったし、これが映画「遊星からの物体X」の原作なのかーとしみじみもしてしまった。
映画を既に見ていても、小説版も楽しめます♪
さすが表題作になってる作品!と思える一作。

・「探検隊帰る」P・K・ディック著:宇宙から、やっとのおもいで帰還した宇宙飛行士達。
しかし、それを迎える人々の反応は、彼らを歓迎するものではなかった・・・。
ディックの短編は、一時期読みまくっていたので、何かすっごく懐かしい気持ちになった。
人々の心の奥底に潜む恐怖を上手く描いた、ディックの短編らしい秀作。

・「マスク」デーモン・ナイト著:体中、人工物になり、生きている・・、生かされている男の話。
昔のSFって、教訓めいたもの、考えるべき事を内包しているのがはっきりわかる作品が
多いけど、これもそう。
全身「人工物」になったとしても、生き続けるべきなのか、それは幸せなのか・・を問うている。

・「吸血機伝説」ロジャー・ゼラズニイ著:ロボットの吸血機の話。
ロボットだけが活動する近未来の様子や、「吸血機」という概念を、
オリジナル「吸血鬼」へのオマージュも含め、簡潔に感動的に、
そしてちょっとしたウィットも入れて、短い中にまとめた傑作!
表題作「影が行く」は映画への思い入れもあり、読めて嬉しかった作品だけど、
この短篇集で、純粋に好きな、面白かった話は?と聞かれたら、この作品と答えると思う。

・「ヨー・ヴォムヴィスの地下墓地」クラーク・アシュトン・スミス著:
現地人は決して足を踏み入れない火星の古代遺跡。
そこを研究調査の為に訪れた1団が遭遇したものは・・・。
「太古の呪い」的な要素があって、なんとなくクトゥルフをイメージしてしまう作品。
年代が近いからかも。

・「五つの月が昇る時」ジャック・ヴァンス著:5つの月が昇る惑星で、灯台守りをしている男の話。
幻想小説よりで、ジワジワ来るような怖さと、5つの月のイメージが印象的。
イマジネーションを駆使して楽しむ作品。

・「ごきげん目盛り」アルフレッド・ベスター著:狂ったアンドロイドを所有した男の悲劇。
アンドロイドが犯罪を犯す度、星から星へと逃げまわる男。
何故、アンドロイドは狂ってしまったのか?
狂ったアンドロイドの描写と、所有者の男の不甲斐なさが、
メインストーリーは陰惨なのに、コミカルな印象を作品に与えている。
なかなか面白かった作品。
ベスターの代表作「虎よ、虎よ!」って読んでないんだけど、読みたくなった。

・「唾の樹」ブライアン・W・オールディス著:隕石が落下した農園。
被害はなかったが、家畜たちは次々と子を産み、植物は巨大化する。
異変に気がついたグレゴリーは、農家の主人を説得しようとするのだが・・・。

「H・G・ウェルズ」の長編のモチーフを、要所要所に散りばめたメタSFと解説があった。
ウェルズの作品はそれほど読んでいないけど、「神々の糧」とは同じ系列。
巨大化した生き物話って、映画も小説も好きなので、この話も嫌いじゃないんだけど、
どうもオールディスの作品は、読んでると、まだるっこしくて苦手。
好きなテーマなのに、のめり込めなくて残念。

昔なつかしい香り満載だけど、今読んでも「おおっ!」っと思う部分があったりして、
とっても楽しんで読めました♪
ホラーテイスト(それほど強く無いけど)を持つSFが読みたい人に、お勧め(^-^)ノ。
nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 2

ちょび

つい数日前に書店でみかけて、買おうか悩んだのですが「謎解き 超科学」という単行本を手にしていたので、買わなかったのですが、やはり読もうっと。

「謎解き 超科学」は疑似科学の検証本なんですが、amazonで注文しようとしたら品切れだったので、平積みを見て、ガッチリ握りこんでしまいました。まだ読んでないんですが・・・
by ちょび (2013-11-15 15:30) 

choko

ちょびさん

かなり前の本なのに、書店で見かけたとは、ちゃんとSFの棚をチェックしてるんですね~!
それとも、再販でもされたか?

で、古典SFが好きならお勧めな一冊です(〃∇〃)♪

「謎解き 超過額」、中で扱われているもののなかで、
「実は効果あり!!!!」
とかいうのがあったら、すごいなーって思っちゃいました(笑)。
そんなのがあったら教えて下さい(笑)。
by choko (2013-11-15 18:49) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。