「ゼロからトースターを作ってみた」トーマス・トウェイツ著:現代文明のすごさと、個人の無力さを実感! [本ノンフィクションいろいろ]
7.3点
その辺で売っている普通の安いトースター。
それを、0から自分で作って見ることを、卒業研究にしようと決心したイギリス
「ロイヤル・カレッジ・オブ・アート」の院生である著者。
単に、その辺にあるものを組み合わせて作ろうってレベルじゃない。
自分で材料を調達・加工・組み立てする、もっと詳しくいうと、「鉱石を採取し、精錬し、加工し・・」を、
本当に0からのレベルでの挑戦。
多くの先進国の鉱山というのは、掘り尽くされたとか、環境汚染とか、人件費とか、
コストや環境の問題で閉山しているところが多い。
まず該当する鉱石を自分で採取するというのが厳しい。
鉄は、閉山した鉱山には行ったが、爆薬を使ったり、時間もかかる採掘はあまりにも
難しかったため、管理人から鉄含有量の多い鉄鉱石を貰ってくる。
その後、鉄鉱石から、鉄の抽出。
16世紀の資料を元に、お手製溶鉱炉を作るが、できたのは、叩くと砕けるダメダメな鉄。
「金属が語る日本史: 銭貨・日本刀・鉄炮」だったと思うんだけど、
刀鍛冶が鉄鉱石から鉄を抽出する作業のデータを事細かにとっていて、
その職人芸にびっくりした記憶がある。
昔ながらのカマドで、微妙なレンガの積み方、フイゴの風の送り方、燃料の状況などを
微調整しつつ、温度を管理し(温度計なんか無いのに)、鉄を抽出していた。
とても一朝一夕で得られる技術ではないと思ったし、刀用の製鉄は、日本独自の物なので、
同じものとは言えないとしても、古代、ヒッタイトが鉄の技術を隠していて、
それがヒッタイト滅亡まで広まらなかったというのもなんとなくわかるほど、温度管理は難しいのだと思う。
人類史の初期に使われていた銅などに比べ格段に難しいよう(銅は、単体でも結晶するし、抽出も楽)。
著者はどうしたかというと・・
あっと驚く「現代文明の利器」を利用して鉄を抽出」してました(^^;)。
そして、トースターの外枠に使うプラスチック。
鉄などの金属は、熟練さえすれば、大変でも、自力で作れるけど、
プラスチックだけは、絶対無理、これぞ「工業製品」というものなのが、読むとわかります。
「重油」を手に入れようとして、「重油」にどれだけ毒性があるか危険なのか説明されたり、
「タンカー1船分」なら受注できる(^^;)と言われたり、
まず材料の調達すら普通の人には絶対無理。
そして、加工の工程も、大規模な工場で何工程も何工程も経る必要があり、個人では絶対不可能。
ここでも、著者の試行錯誤が続きます。
最後にどんなトースターができたのかは、本書を読んでもらうとして(ある物がどうしても
用意できず、すごく危険な物体になっている(笑))、
古代文明の技術でも、未だ解明されていないものがあるように、
今、もし文明が失われた時、それをもう一度再現するというのが、いかに難しい事なのかを
実感できる本になってます。
今使われている技術の中にも、「偶然の産物」ってものがベースになっているものは多いし。
今私達の周囲に溢れているありふれたものの多くが、人類の進歩の歴史の集大成なのがわかります。
「社会」があるからこそ、自分の今の生活があるというのも。
学生であった著者の試みは、ある意味、無謀(その無謀さが若者らしくていい)、
そして勉強不足も感じるけど、逆にそれだからこそ、身近に、
自分の身に置き換えて考えられる内容なのが魅力(^^)。
準備のための研究を重ね、準備万端で行ったとしたら、かなり小難しい内容になってたと思うし。
気軽に読めて、面白くて、ためにもなる、興味深い本でした(^-^)ノ。
その辺で売っている普通の安いトースター。
それを、0から自分で作って見ることを、卒業研究にしようと決心したイギリス
「ロイヤル・カレッジ・オブ・アート」の院生である著者。
単に、その辺にあるものを組み合わせて作ろうってレベルじゃない。
自分で材料を調達・加工・組み立てする、もっと詳しくいうと、「鉱石を採取し、精錬し、加工し・・」を、
本当に0からのレベルでの挑戦。
多くの先進国の鉱山というのは、掘り尽くされたとか、環境汚染とか、人件費とか、
コストや環境の問題で閉山しているところが多い。
まず該当する鉱石を自分で採取するというのが厳しい。
鉄は、閉山した鉱山には行ったが、爆薬を使ったり、時間もかかる採掘はあまりにも
難しかったため、管理人から鉄含有量の多い鉄鉱石を貰ってくる。
その後、鉄鉱石から、鉄の抽出。
16世紀の資料を元に、お手製溶鉱炉を作るが、できたのは、叩くと砕けるダメダメな鉄。
「金属が語る日本史: 銭貨・日本刀・鉄炮」だったと思うんだけど、
刀鍛冶が鉄鉱石から鉄を抽出する作業のデータを事細かにとっていて、
その職人芸にびっくりした記憶がある。
昔ながらのカマドで、微妙なレンガの積み方、フイゴの風の送り方、燃料の状況などを
微調整しつつ、温度を管理し(温度計なんか無いのに)、鉄を抽出していた。
とても一朝一夕で得られる技術ではないと思ったし、刀用の製鉄は、日本独自の物なので、
同じものとは言えないとしても、古代、ヒッタイトが鉄の技術を隠していて、
それがヒッタイト滅亡まで広まらなかったというのもなんとなくわかるほど、温度管理は難しいのだと思う。
人類史の初期に使われていた銅などに比べ格段に難しいよう(銅は、単体でも結晶するし、抽出も楽)。
著者はどうしたかというと・・
あっと驚く「現代文明の利器」を利用して鉄を抽出」してました(^^;)。
そして、トースターの外枠に使うプラスチック。
鉄などの金属は、熟練さえすれば、大変でも、自力で作れるけど、
プラスチックだけは、絶対無理、これぞ「工業製品」というものなのが、読むとわかります。
「重油」を手に入れようとして、「重油」にどれだけ毒性があるか危険なのか説明されたり、
「タンカー1船分」なら受注できる(^^;)と言われたり、
まず材料の調達すら普通の人には絶対無理。
そして、加工の工程も、大規模な工場で何工程も何工程も経る必要があり、個人では絶対不可能。
ここでも、著者の試行錯誤が続きます。
最後にどんなトースターができたのかは、本書を読んでもらうとして(ある物がどうしても
用意できず、すごく危険な物体になっている(笑))、
古代文明の技術でも、未だ解明されていないものがあるように、
今、もし文明が失われた時、それをもう一度再現するというのが、いかに難しい事なのかを
実感できる本になってます。
今使われている技術の中にも、「偶然の産物」ってものがベースになっているものは多いし。
今私達の周囲に溢れているありふれたものの多くが、人類の進歩の歴史の集大成なのがわかります。
「社会」があるからこそ、自分の今の生活があるというのも。
学生であった著者の試みは、ある意味、無謀(その無謀さが若者らしくていい)、
そして勉強不足も感じるけど、逆にそれだからこそ、身近に、
自分の身に置き換えて考えられる内容なのが魅力(^^)。
準備のための研究を重ね、準備万端で行ったとしたら、かなり小難しい内容になってたと思うし。
気軽に読めて、面白くて、ためにもなる、興味深い本でした(^-^)ノ。
これは面白そうな本ですね!読んでみます。
by ちょび (2013-10-10 09:40)
ちょびさん
これ、息子さん達にもお勧めです♪
学生さんが書いているので、調査不足・準備不足が感じられるんですが、
その分、小難しい説明の羅列が無く、わかりやすいし、
試行錯誤して前に進んでいく姿勢というのを、若い人に読んでほしいなーと♪
ありがちな、頭でっかちになって、「無理だからやらない」って
姿勢とは対極というか。
家族で、読んでみて下さい♪
by choko (2013-10-10 21:28)