「My Humanity」長谷敏司著:「人間性」を中心に据えた、近未来SF短篇集。 [本:SF]
7.3点
タイトルから推測できるように、「人間性」をテーマにした近未来SF短篇集。
「地には豊穣」脳内に擬似神経系を構築することができる「擬似神経制御言語ITP」の開発により、
経験などを簡単に他に人の脳に、移すことができるようになった近未来。
最初にアメリカ人によって開発されたそれは「英語」をベースに行われており、
他の文化から「英語圏文化」への洗脳との批判も多かった。
日本語をベースにしたITP開発を行っているケンゾーは、日本文化の継続保護よりも、
より合理的な方向を目指していたが・・・。
現在もグローバル化によって均一化しつつある世界だが、それが技術革新により、
それがより進むことになったら、各国が持っている文化は消えてしまうのか?
ということをテーマに、「日本人らしさ」に関しても触れている話。
「allo,toi,toi」幼い少女を殺した小児性愛者チャップマン。
無期懲役で刑務所に収監された彼は、「性犯罪者」として、刑務所で一番下の扱いを受けていた。
ITPを移植することにより、その小児性愛の嗜好を矯正する実験に協力することなった彼。
死ぬまで出られない刑務所での過酷な生活の中、彼の脳内には、幼い声で話しかけ、
励ましてくれる存在が出現する・・・。
小児性愛者チャップマンの、自己中心的過ぎる気持ちが延々と語られ、それが脳内に作られた
少女の幻想との会話により、どう変わっていくかが描かれている。
チャップマンの自己弁護と自己中心的主観に満ち溢れた考えを延々と聞かされる(読まされるのは)、
不快だし、嫌悪感も強いが、酷い事をした人間だからと、チャップマンが刑務所内で、
リンチされたりするのを傍観する「倫理観のある人」(自分もこちらの立場だ)の思考もまた不快。
実録犯罪史などに比べると、人間の心の闇が浅い感じも。
「Hollow Vision」人々の多くが、宇宙コロニーに移住し、人工知能によって、統括されている世界。
貧富の差が拡大する中、軌道ステーションで起きたテロ。
盗まれた高度コンピューターの技術が拡散すれば、世界を揺るがしかねない自体になる。
国際人工知能(IAIA)に勤務するヘンリーは、奪われたコンピューターを取り戻す為に、
辺境のコロニーに降り立つ。
どんな事態が起きても、合理的に迅速に判断できる「人工知能」が統括する世界。
以前読んだゾンビが世界に溢れる世界を描いた「WORLD WAR Z」で、
被害を食い止める為に、多くの人を敢えて見殺しにする選択を、人々は葛藤しつつも行うが、
人工知能は、葛藤無くそういう決断を下す。
それが是なのか否なのか・・・すごく難しい。
「父たちの時間」放射線を吸収して低減させる自己増殖機能を持つナノマシン
「クラウズ」。
原発事故や、古くなった原子炉を廃炉にするために使われているそれらに突然変異が。
世界各地に広がり、自己増殖する「クラウズ」は、恐ろしいほどのスピードで、進化していく。
「クラウズ」に対抗するためのナノマシンの開発を行う洋一。
急がれる研究と秘密保持のため、監禁状態に置かれている彼は、入院している
息子の事が心配だったが・・・。
ナノマシン禍ものは、好きなネタなので、一番おもしろく読んだ。
ただ、テーマである「父親」の存在、立場に関しては、あまり共感できず、
ストーリーの流れは面白いけど、テーマはどうでもいい・・・って感じに(^^;)。
さて、この短篇集、ちゃんとまとまっており、秀作揃いだと思う。
でも、でもすごく気になった部分が。
この短篇集のテーマ「人間性」。
それぞれの作品で、文化について、罪について、倫理観について、父親という立場について・・・
登場人物の心象が、深く語られている。
その部分が、とても「今」なのだ。
近未来で変化した人の意識ではなく、SF的なガジェットを使わなくても、
「現代を舞台にした普通の小説」でも、同じ事が語れそうな内容と思えた。
舞台は未来でも、登場人物の考え方は完全に「今風」というのは、スペオペなど、
他のSFでもよくあることだけど、この短篇集の作品の場合、その部分に非常に
ページを割いているため、違和感が強かったというか。
文化が変わると人の考えも全く違ったりする、時代が変われば、同じように
今当たり前のことが当たり前ではなくなったりする、そういう価値観の変化・違いが、
作品にうまく反映されているものが好きなので、その辺、メインの部分が「今」過ぎたのが、
ちょっと物足りなかった。
SFを通して、現代社会の歪を再認識させるってのが狙いなのかもしれないけど。
タイトルから推測できるように、「人間性」をテーマにした近未来SF短篇集。
「地には豊穣」脳内に擬似神経系を構築することができる「擬似神経制御言語ITP」の開発により、
経験などを簡単に他に人の脳に、移すことができるようになった近未来。
最初にアメリカ人によって開発されたそれは「英語」をベースに行われており、
他の文化から「英語圏文化」への洗脳との批判も多かった。
日本語をベースにしたITP開発を行っているケンゾーは、日本文化の継続保護よりも、
より合理的な方向を目指していたが・・・。
現在もグローバル化によって均一化しつつある世界だが、それが技術革新により、
それがより進むことになったら、各国が持っている文化は消えてしまうのか?
ということをテーマに、「日本人らしさ」に関しても触れている話。
「allo,toi,toi」幼い少女を殺した小児性愛者チャップマン。
無期懲役で刑務所に収監された彼は、「性犯罪者」として、刑務所で一番下の扱いを受けていた。
ITPを移植することにより、その小児性愛の嗜好を矯正する実験に協力することなった彼。
死ぬまで出られない刑務所での過酷な生活の中、彼の脳内には、幼い声で話しかけ、
励ましてくれる存在が出現する・・・。
小児性愛者チャップマンの、自己中心的過ぎる気持ちが延々と語られ、それが脳内に作られた
少女の幻想との会話により、どう変わっていくかが描かれている。
チャップマンの自己弁護と自己中心的主観に満ち溢れた考えを延々と聞かされる(読まされるのは)、
不快だし、嫌悪感も強いが、酷い事をした人間だからと、チャップマンが刑務所内で、
リンチされたりするのを傍観する「倫理観のある人」(自分もこちらの立場だ)の思考もまた不快。
実録犯罪史などに比べると、人間の心の闇が浅い感じも。
「Hollow Vision」人々の多くが、宇宙コロニーに移住し、人工知能によって、統括されている世界。
貧富の差が拡大する中、軌道ステーションで起きたテロ。
盗まれた高度コンピューターの技術が拡散すれば、世界を揺るがしかねない自体になる。
国際人工知能(IAIA)に勤務するヘンリーは、奪われたコンピューターを取り戻す為に、
辺境のコロニーに降り立つ。
どんな事態が起きても、合理的に迅速に判断できる「人工知能」が統括する世界。
以前読んだゾンビが世界に溢れる世界を描いた「WORLD WAR Z」で、
被害を食い止める為に、多くの人を敢えて見殺しにする選択を、人々は葛藤しつつも行うが、
人工知能は、葛藤無くそういう決断を下す。
それが是なのか否なのか・・・すごく難しい。
「父たちの時間」放射線を吸収して低減させる自己増殖機能を持つナノマシン
「クラウズ」。
原発事故や、古くなった原子炉を廃炉にするために使われているそれらに突然変異が。
世界各地に広がり、自己増殖する「クラウズ」は、恐ろしいほどのスピードで、進化していく。
「クラウズ」に対抗するためのナノマシンの開発を行う洋一。
急がれる研究と秘密保持のため、監禁状態に置かれている彼は、入院している
息子の事が心配だったが・・・。
ナノマシン禍ものは、好きなネタなので、一番おもしろく読んだ。
ただ、テーマである「父親」の存在、立場に関しては、あまり共感できず、
ストーリーの流れは面白いけど、テーマはどうでもいい・・・って感じに(^^;)。
さて、この短篇集、ちゃんとまとまっており、秀作揃いだと思う。
でも、でもすごく気になった部分が。
この短篇集のテーマ「人間性」。
それぞれの作品で、文化について、罪について、倫理観について、父親という立場について・・・
登場人物の心象が、深く語られている。
その部分が、とても「今」なのだ。
近未来で変化した人の意識ではなく、SF的なガジェットを使わなくても、
「現代を舞台にした普通の小説」でも、同じ事が語れそうな内容と思えた。
舞台は未来でも、登場人物の考え方は完全に「今風」というのは、スペオペなど、
他のSFでもよくあることだけど、この短篇集の作品の場合、その部分に非常に
ページを割いているため、違和感が強かったというか。
文化が変わると人の考えも全く違ったりする、時代が変われば、同じように
今当たり前のことが当たり前ではなくなったりする、そういう価値観の変化・違いが、
作品にうまく反映されているものが好きなので、その辺、メインの部分が「今」過ぎたのが、
ちょっと物足りなかった。
SFを通して、現代社会の歪を再認識させるってのが狙いなのかもしれないけど。
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