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「捨てる女-突然あたしは何もない部屋に住みたくなった」内澤旬子著:断捨離とはまた違った「物を処分する話」 [本ノンフィクションいろいろ]

捨てる女

捨てる女

  • 作者: 内澤 旬子
  • 出版社/メーカー: 本の雑誌社
  • 発売日: 2013/11/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
7.5点

道端のガラクタなども拾い集めるような著者が、乳がんからの回復をきっかけに、
物を捨てたい衝動に駆られ、いろいろ捨てまくる話。
単に「物を処分する話」ではなく、物を処分しようとしている人なら共感できるいろいろな葛藤、
そして収集したものにまつわるエピソードから著者の人生が見えてきて、面白く読めた一冊!

また、同著者の自分で豚を育てて食べるというのを一冊の本にした
飼い喰い-三匹の豚とわたし」(リンク先感想-面白いよ!)の中では語られなかった、
豚を飼うために借りた廃屋(に近い物件)のゴミの片付けの壮絶な話なども載ってて、
「飼い喰い」を読んでいると、より楽しめる内容になってます♪

まず著者は、半端無く物持ちだったよう。
ガラクタなどですら拾う、捨てられない、収集癖がある・・・それ以外に、イラストと文章の仕事を
「来たら断らない」のスタンスで行っていたため、「いつか使うかも」「また使うかも」という資料が、
大量に堆積。
物に溢れ、寝るスペースしかないような、生活をしていた著者が、物を捨てようと決心したのは、
乳がん治療が終わったあと、狭い閉塞感のあるスペースが耐えられなかったというのが理由らしい。
大病をすると、価値観が変わる、人が変わる事がある・・とか聞くけれど、こういうこともあるんですね。

まずは、ストックしてある食料。
著者は、「腐らない限り捨てられない」と、10年以上放置してあった梅酒の「梅」(梅酒なし)を
食べてみたり(かなり美味しかったらしい)、やはり10年以上前のいただき物をジャムを食べたり。
食べ物を捨てるというのは抵抗があるけれど、腐ってはいないが、明らかに怪しい物体に
なっているものも食す著者には脱帽。
他にも、ちまちまといろんなものを消費してます。
持て余してるストック食材を使い切ると、達成感があるので、思わす共感した部分も。

次が家具。
本を置くために家具を買いまくり、貧乏症のため、貰えるものは全部頂いたり・・・
その結果、亡くなった家主のおばあさんの、ちゃぶ台、ドレッサー、古着、火鉢など、
大量のものを若い頃もらい、それがそのままあったり。
家賃と面積を考え、それらも破棄。

旅行で使っていた思い出が詰まった靴、愛用していた腰痛用のサポーターや、
便利だったウィンドブレーカーも処分。

物にまつわる思い出と、それと別れるほんのちょっとしたセンチな気分と、さっぱり感、
それらが繰り返され、そこから、作者の人となりや人生がかいま見えます。

放置していて、ボウフラ・イトミミズが湧いた風呂なんてエピソードもあったりしますが(^_^;)。
2ヶ月放置していた風呂に、腐臭がしないからと、水を入れ替えずに入るってすごい・・・。
夏場なんかだと2週間くらいで、ボウフラとかイトミミズ湧くんじゃないだろうか?
自分の家じゃないけど、イトミミズ見たいなのが湧いてる風呂を見たことがある・・・。
著者と同じでシャワーでずっと過ごしてて、風呂桶に水を入れっぱなしの結果でした。

第二章は、「飼い喰い」の番外編と、後日談。
著者が退去したあと、怪しいタイバーみたいなのに、なってて、それを訪問したりしてます。
これは「飼い食い」を読んでると、かなり楽しめる章。
読んでなくても、ゴミ屋敷状態の家をキレイにする大変さは伝わってくるし、
ここでも、虫が湧いてるエピソードがあって、おぞおぞできるので(トイレの描写もまたすごい)、
グロ系ホラーが好きな人にはいいかも(^^;)。

この本に収録されているエッセイ(?)を書いている途中で、東日本大震災があったよう。
その影響で、「トイレットペーパー」をやめて、「ジョウロで水洗い」に移行する話も。
風が吹けば桶屋が儲かる的な、原因と結果(^_^;)。

最期に処分に困ったのが、本!
わかる、わかる、わかりすぎるっ!
私も、一時物を捨てまくったし、本も大量に処分したけど・・・・それでも残ってる本。
そして、増殖を続ける本。

著者がどうしたのか、かなり興味津々で読みましたが、元々資料としての本が多い著者。
しかし、それだけではなく、著者の趣味の一つに「本の装丁」があり、
いつか使えると思った本の装丁の材料大量、海外に行った時、装丁が素敵だと、
全く読めないのに買った何語かすら不明な大量の本などもあるという。
そして、自分の大量の原稿も。

大量にある本、地道に処分もしたけど、なかなか減らない←わかる~。
結局、装丁の凝った本や、原画は、「投げ捨て展覧会」というのを開いて売ることに。

一部を除いて売れた古本や原画達。

著者はさぞかしすっきり!と思ったら、本だけは今までと違ったよう。
ぽっかりと心に穴が開いたような、虚無感。
この辺もすっごくわかる。

片付けのハウツー本では全く無いので、その辺を期待して買っちゃうとがっかりするはず。
どちらかというと、彼女の著作を何冊か読んでいて、彼女自身に興味がある人向け。
著者の生き様、考え方などがよく分かる本です。
ただ、普通の片付け本と違い、これを読んで「うおおおお、私も片付けたいっ!」とは
思えないのが、また不思議。
彼女独自のポリシーの元、片付けをしてるからかも(^^;)。

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