SSブログ
本:ホラー&ミステリー ブログトップ
前の30件 | 次の30件

「災園」三津田信三著:災いをもたらす狐が憑いているのか?オカルトミステリー! [本:ホラー&ミステリー]

災園 (光文社文庫)

災園 (光文社文庫)

  • 作者: 三津田 信三
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/09/09
  • メディア: 文庫

7.3点

三津田信三の「禍家」(リンク先感想)「凶宅 (光文社文庫)」に続く、
家シリーズ3作目。

2作目「凶宅」は評判がイマイチだったので未読。
3作目の「災園」を読んだ勢いで、今度読むつもり。

どのシリーズも、子供が主人公で、「家」がテーマ。
子供であることの無力さ、弱さが、より恐怖感を煽るものに。

家の裏に祀られていた狐の祠。
いつもそこで遊んでいた奈津江は、脳裏に不思議な声が聞こえるように。
その声により「失せ物探し」で少し有名になった彼女。
しかし、彼女は、幼くして両親を次々に亡くしてしまう。
そこに現れた実姉と名乗る深咲に連れられ、実父が経営するという「祭園」に引き取られる事に。
「祭園」には、訳ありで親が育てられない子供たちが集められていた。
そして、そこには、廃墟と化した「廻り家」と呼ばれる祈祷所が・・・。
奈津江を、災いを呼ぶ者として忌み嫌う祖母寅。
奈津江は、本当に災いを呼ぶ者なのか?
奈津江の、出生の秘密とは?
彼女が来たことで「祭園」は、「災園」となっていくのか・・・・。

オカルト色の強いミステリー。
ストーリーメインで見ると、怪奇現象と現実の出来事を融和させる為、
どうしてもご都合主義的な部分や、腑に落ちない部分が出てしまう。

でも、このシリーズの醍醐味は、「家の恐怖を存分に味わう事!」だと思う。
映画「呪怨」など、「呪いの家」が舞台になっていると、呪われた家の中で過ごしたり、
家の中を探索したりするシチュエーションは、何も出てこなくても怖いし、
何かが出そうな雰囲気があったりすると、ドキドキしてしまう。

この話も、祈祷所として使われていた「廻り家」の中の描写がすっごく怖い。
三津田信三は、伝奇小説の持つ陰惨な雰囲気や、恐怖感を煽る下地を創り上げる事、
そして恐怖シーンの描写、どれも上手いので、背筋が寒くなる気分を存分に味わう事ができます。

ということで、綿密に計算されたミステリーを期待する人には不向き。
ミステリー仕立てのホラーを楽しみたい人なら、楽しめるはず♪
nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「或るろくでなしの死」平山夢明著:浮浪者、嫌われ者・・・平山夢明らしいグロテスクさで彩られた死の数々 [本:ホラー&ミステリー]

或るろくでなしの死

或るろくでなしの死

  • 作者: 平山 夢明
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/12/22
  • メディア: 単行本
8点

平山夢明の「死」をテーマにした短篇集7作。

●「或るはぐれ者の死」は、浮浪者が気がついた、道路で惹かれて干からびている
動物の死体のようになっていた、子供の死体の話。
●「或る嫌われ者の死」数が減り絶滅種となった「日本人」。日本人は大事に保護されつつも、
人々に嫌われていた・・・。
●「或るごくつぶしの死」都合の良いセックスパートナーと思っていた、
知恵が足りなさそうな女との間にできた子。
ネグレクトに至る心理というのは、こういうものなのか・・・と思える短編。
●「或る愛情の死」子供を失った母親の変貌の話。
●「或るろくでなしの死」殺し屋と殺しを目撃した少女。少女は、口止め料としてハムスターをねだるが、
しばらく可愛がった後、ハムスターの頭を叩き潰してしまう・・・。
●「或る英雄の死」昔、我が身を犠牲にしてまで助けてくれた先輩。
昔「英雄」だったとは思えない、呑んだくれてイカレている先輩が遭遇した恐ろしい出来事とは・・・。
●「或るからっぽの死」ある条件が無いと「人が見えない」男。
彼が、はっきりと見える女性に出会った時、悲劇は始まった・・・・。

ツーンとくる体臭、ドブ川や汚物の鼻をつく臭い、酔っぱらいの酒臭い息、路上の嘔吐物、
ドロドロとした血、黄ばんだ歯、うつろな目、陰惨な暴力・・・・・多くの話が、
そういう嫌悪感を感じさせるもので溢れている。

そしてこの本で扱われている「死」というのは、それを通して、人間の無常さや、狂気、
おぞましさ、弱さ、醜さ・・・・などを鋭く抉る。

表題作「或るろくでなしの死」の殺し屋と少女の関係は、少しだけ「ダイナー」(リンク先感想!傑作!)を思い出す。
胸糞悪くなるような描写と、殺し屋と少女の心の機微の対比がいい♪

スプラッタ描写は控えめだけど、愛情あふれていたはずの母親の変貌ぶりや、
赤子を気にしつつも、自分の都合の良いように責任転嫁して見捨てる男の心理、
唯一人間らしい行動をとったのが、人から蔑まれている浮浪者だったりと、
どれも、現代社会を毒をもった描写で風刺していて、面白く読めた。
すごく毒があるけど、どこか切なさもある、そんなホラーが読みたい人にお勧め(^-^)ノ。
でも、残酷描写もあるので、それが苦手な人は注意!
nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「11 Eleven」津原泰水著:幻想と畏怖とエロチシズム・・・美しい文章で語られる珠玉の物語達 [本:ホラー&ミステリー]

11 eleven

11 eleven

  • 作者: 津原 泰水
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2011/06/16
  • メディア: 単行本
8点

何か「第2回Twitter文学賞」で国内作品の一位だったらしい。
いい短篇集なので、それがこの本を手に取るきっかけになると嬉しいな~♪
何かのきっかけで、いい本に巡り合えるのは、自分もすごく嬉しい事だし。
このブログも、そういうきっかけに少しでもなれば・・と思って書いてる事も(気に入った本の場合は)ある。
ちなみに、この本は、本屋で見かけて表紙に惹かれて読みました。
読んで正解でした♪

11の物語が収められた津原泰水の短篇集。
ホラーミステリーカテゴリーに入れたけど、幻想文学寄りで、SFっぽい要素があるものも。
初めて津原泰水の本は読んだけど、「他の本も読もう!」と決心するくらいの粒ぞろいO(≧▽≦)O!

昭和を感じさせる、麗筆な文章。
白い肌、赤い唇、雨に煙る街、薄暗い闇の深さ・・・、どの話も色や、その場所の空気、情景などが、
はっきり感じられる表現の巧さ。
円城塔の文体も好きだけど、彼の文章は、芥川賞の「道化師の蝶」(リンク先感想)などを読むとわかるように、
話し言葉に近い平素な言葉がリズムよく紡がれることで、優しさや、不思議さを出している。
それと比べ、こちらは、かっちりと綺麗に織り込まれた文章で、
情緒や艶美さ、畏怖感などを醸し出している。

●「五色舟」は、体のどこかに障害や奇形がある見世物小屋の一家が、牛の化物「件」と出会う話。
伝奇・幻想文学的でありながら、SF要素も少し入り、物悲しくも、奇妙な世界観の話。
●「延長コード」は、家出し、数年後死体となって戻ってきた娘の、生前の住処を訪れた父親の話。
単に生前の娘の生活を聞くという展開なのに、これまた幻想的でもあり、物悲しくもあり、
趣深い話になっている。
●「追ってくる少年」は、数年ぶりに訪れた以前住んでいた町。そこで起きた忌まわしい過去。
短いながらも、おぞましさや怖さをジワジワと感じさせる話。
●「微笑面・改」彫刻家である男の視界に、突然離婚した妻の美しい顔が浮かぶように。
そして、それは日を追うごとに近づいてきて・・・。
●「琥珀みがき」琥珀を磨くという単調な仕事をしていた少女は、仕事を捨て都会へと出る。
●「キリノ」背が高く美人だったキリノ。彼女はキリノであり、キリノでしかなかった。
●「手」耳の穴から出た白い糸を引っ張ると・・・好奇心を恐れる少女と母親。
しかし、少女は、好奇心から「鴉屋敷」と呼ばれる、持ち主が自殺した屋敷へと行ってしまう。
●「クラーケン」クラーケンというグレートデンを飼う女。家は犬の臭いが染み付き・・・。
●「YYとその身体」殺害された女友達YY。彼女との一瞬の情事は・・・。
●「テルミン嬢」愛する人が側に来るとアリアを歌い続けてしまう女。
●「土の枕」一人の農民の身代わりに戦場に出かけた男。彼の一生はそこから変わっていく・・。
自分が決めた身代わりとはいえ、そこから大きく変貌した運命を受け止める男の姿が胸に来た。

無理やり粗筋を書いたけど、ストーリー自体の展開を楽しむものは少なく、
物語の情景や、細かい心理描写を味わうタイプのものが多い。
粗筋を話してしまえば、どうって事無い話だけど、読むと奥深くて、心に引っかかる、
胸の底にいつまでも凝りのように残る・・・そんな話が多い。
どれも、大事に舐めたい飴玉のような、珠玉の作品揃いで、すごく面白かったO(≧▽≦)O!
nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「エッジ 上下巻」鈴木光司著:SFホラー。物理定数が崩壊したら・・。 [本:ホラー&ミステリー]

エッジ 上 (角川ホラー文庫)

エッジ 上 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 鈴木 光司
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/01/25
  • メディア: 文庫
7.5点

鈴木光司のSFホラーというとリングシリーズ3作目「ループ」(オカルトホラーがSFホラーに
変貌したのが許せず嫌い)を、思い出す。
これも鈴木光司のSFホラー。

無限に続くはずのπ(パイ)を計算しているコンピューターが、
ある桁を超えると「0」が並ぶ解を出し始めた。
そして、宇宙を観測する天文台でも、驚くべき現象が観測される。
その頃、突然人が「消失」したような行方不明事件が多発。
18年前、突然最愛の父親が失踪したことが心の深い傷になっているフリーライターの冴子。
彼女は父親を探した時のノウハウをいかし、メアリー・セレスト号事件のように、
ある一家が忽然と姿を消したように思える「一家失踪事件」を調査しはじめる。
πの「0」、宇宙の変貌、人間消失・・・・それらは、人類を襲う恐ろしい出来事の兆候だった。
物理定数が崩壊した時世界は・・・・。

宇宙の始まりと終わり」(リンク先感想)を読んで、
私の今年の豊富は「量子力学を少しは理解する」になった(全然わからないから)。

最初の方に、量子力学の話があり、「SFホラーなどでも量子力学って使いやすいんだろうなー、
やっぱり流行り?」とか思ったんだけど、本書を読み進めると、量子力学だけでなく、
「原子はスカスカ」「自然界にある4つの力」「原子核と電子」「反物質」「ブラックホール」etc・・・・・
「宇宙の始まりと終わり」で読んだ事柄が大量に出てくる。
「デジャブ?」と思ってしまうほど。
「宇宙の始まりと終わり」で解説されているのは、宇宙論や現代物理。
ということで、この本、現代物理の話が大量に書いてあります。
他にも、整数・虚数などの数学、エジプト文明や中南米の文明など、時代に比べ突出して進んだ
文明の不思議など、いろいろなジャンルの知識が大量に。
それが楽しめるかどうかで、この本の評価は大幅に変わる気がする。

宇宙やこの世界が成り立っているのって確かに不思議だし、
その物理の法則が壊れるというのは、想像すると怖い。
「宇宙の始まりと終わり」で、太陽が膨張し、太陽系が崩壊しても、宇宙は続くものかと思っていたら、
いつか原子核すら崩壊すると知って怖かったし。
数直線上を道路に見立てて、自然数を並べ、虚数を奈落の底のように表現した部分などもゾッとする。
本書でも、その辺がキモなんだろうけど、それがすごく怖いと思えない展開なのが惜しい。

ただ、物理定数の崩壊の兆候が徐々に現れたり、それを主人公たちが突き止める過程は、
答えが見えていても、面白く読めた。

問題は、登場人物や人間ドラマの魅力の無さ。
現代物理とか、歴史とかへの説明にページを割きすぎて、キャラクターが深く描かれていない為、
登場人物に魅力が無く、感情移入しずらい。
また、壮大な背景なのにも関わらず、メインに来るドラマは「冴子の父親探し」とこじんまり。
未曾有の恐怖が人類を襲う怖さが描かれていないので(だからあまり怖くない)、
パニック映画のような醍醐味は無いし。
結局「物理定数がもし崩壊したらどうなる」っていう設定部分だけが面白い状態に。

冴子が、一家消失現場となった家に、夜単身で乗り込むシーンなどは、
オカルトっぽい雰囲気があって怖いんだけど、実は「雰囲気」だけ。

ラストは、駆け足気味で尻すぼみで終わってる感←これはないだろって思う人は多いはず。

結局「物理定数がもし崩壊したらどうなる」っていう設定部分を面白がれる人には、楽しめるけど、
そうじゃないと、期待はずれになるだろう本。
私は「人類が消えた世界」(リンク先感想)、「+6℃ 地球温暖化最悪のシナリオ」とかを読むような気分で、
それなりに楽しんで読んだけど、読む人を選ぶ本だと思う。
nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「殺人鬼フジコの衝動」真梨幸子著:うーん、雑な印象。 [本:ホラー&ミステリー]

殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫)

殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫)

  • 作者: 真梨幸子
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2011/05/07
  • メディア: 文庫
4点

一家惨殺事件で生き残った少女。
見た目は、平凡な彼女は、殺人鬼へと成長していく。
何が、彼女をそうさせたのか・・・。
ドロドロとした人の心を描いた作品。

少女が成長していく過程なので、最初は小学校。
壮絶ないじめ、無関心な大人・・・友人達の中で、うまく立ち回ろうとする少女・・。
いじめなど誇張されすぎてるとは思ったけど、卑屈な少女の視点から見た世界は、
自己中心的で負の感情と他人への否定に満ち、好きではないけど、
これはこれでありかと思って読んだ。

しかし、中学、高校と進むにつれ、物語の進行は早くなり、心理描写も簡単に、
そして主人公は、単に臆病で愚かな女って感じになってしまう。
見栄っ張りで、打算的で愚かな主人公が、次々に人を殺していく話なんだけど、
何で捕まらないのかも不思議だし、オチも何だかなーと思ってしまった。

主人公の心情は書いてあるけど、周囲の人間は「単なる登場人物」って感じで深みが無い為、
ミステリー的な要素とか、人間ドラマとか、少女の成長の過程とか、そういうのはすごく弱く、
どろどろした女性の愚かで醜い心情、それを誇張して書くというのがこの本の全てな気が。
主人公がサイコパスというには、狂気の心理描写が弱すぎるし、
何で連続殺人鬼になったかも、そんなにうまく事が運ぶのだろうか??
って思えたし・・・、トリック的にもイマイチ。

以前、著者のインタビューを読んだ時、著者が「勝ち組、負け組」にこだわっていて、
周囲にもそういう友人ばかりがいるというような事を言っていた
(最近、そういうどろどろした関係を楽しめるようになった・・と答えていたけど、
それは自分が「勝ち組」に入ったからじゃないかと思ってしまったのは、深読みしすぎ??(^^;))。
そして、この本の主人公は、「勝ち組になりたい、なりたい」と切望しつつ、
これ以上は無いという「負け組」の人生を歩む。
負け組になってしまう女性愚かさ、勝ち組になろうとあがく負の感情の醜さ、、惨めさ、
そういうのが読みたい人にはいいのかもしれないけど、
それ以外だと、きっと期待外れ。

読みやすくてサクサク読めるので、時間つぶしに読むにはよいかも。
全体的に細部が雑なので、漫画の原作だったら、その辺が絵でフォローされて、
それなりにいい気も。

評価がすごく分かれているのも納得。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「霧が晴れた時」小松左京著:名作「くだんのはは」も収録のホラー短篇集! [本:ホラー&ミステリー]

霧が晴れた時 (角川ホラー文庫―自選恐怖小説集)

霧が晴れた時 (角川ホラー文庫―自選恐怖小説集)

  • 作者: 小松 左京
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1993/07
  • メディア: 文庫
7点

小松左京のホラー短篇集「霧が晴れた時」を再読。
と、言っても、以前読んだのは太古の昔なので(^^;)、かなり新鮮でした。

名作「くだんのはは」も、学生時代に読んだ時は、背景になっている第二次世界大戦中の日本の状況・・
というのがあまりピンと来てなかったんだなーというのを、再読してみて実感。

収録作品は
「すぐそこ」-すぐそこ・・・道に迷った主人公に出会う人は、みなそう言うが・・
「まめつま」-赤ん坊や子供だけに見える豆粒ほど小さな魔物の話
「くだんのはは」-戦時中とは思えない屋敷の奥にいるのは・・・
「秘密(タブ)」-黒い不気味な神像。それが夫を豹変させる。
「影が重なる時」-次々と現れるドッペルゲンガーに怯える町
「召集令状」-戦争は昔の事になった時代に届く召集令状。召集令状を受け取ったものは・・
「悪霊」-非業の死を遂げた天皇・皇族の研究をしている男を襲った厄災とは・・。
「消された女」-誰もいないはずのホテルに現れた女の正体は?
「黄色い泉」-雪男の目撃談がある地方で妻が行方不明に。
「逃げる」-以前騙されたポン引きに紹介された女は・・。
「蟻の園」-団地13号棟の住人たちが遭遇した怪異とは。
「骨」-庭から大量の骨が出てきた。掘れば掘るほど出てくる骨・・最後に出てきたのは?
「保護鳥」-外国の寒村で保護されている鳥。村人は、日本のトキをすごく気にかけているが・・・。
「霧が晴れた時」-家族揃っての楽しいハイキングのはずが、霧がすべてを変えてしまった。
「さとるの化物」-バーで出会った青年が、自分の考えを次々と当てる。彼はさとるの化物なのか?

どれも1960年~1970年に書かれたもの。
社会、人間、歴史・・・・いろいろな物に対する著者の見解や恐怖が、
真面目に反映されてる話が多いのは、書かれた時代の影響でしょうか。
どの話も、昭和の香りがした。

「くだんの母」や「召集令状」は、時代背景が昔に比べてわかるので、より面白く読めた。
ただ、オチでまとめる話は、やっぱりちょっと古いなーって感じも。
ホラーだけど、SFテイストを感じる話が多いのは、やっぱり小松左京だからでしょうね。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「爛れた闇の帝国」飴村行著:人間の嫌な部分を見せつけられ、どよよ~んとした気分になる作品。 [本:ホラー&ミステリー]

爛れた闇の帝国

爛れた闇の帝国

  • 作者: 飴村 行
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/01/28
  • メディア: 単行本
7点

著者飴村行は、「粘膜人間」「粘膜蜥蜴」「粘膜兄弟」など、粘膜シリーズの残酷でグロテスク、
そして奇抜というか、突飛過ぎる設定や世界観が有名な作家。
まだ、新人だけど、ホラー小説としての評価も高い。

三作の内、最初の「粘膜人間」を手に取ったんだけど、どうも合わず読みかけで放置中。
元々、好き嫌いがはっきりでそうな作家。
でも、自分は、残酷もエログロも平気なので、何故合わないか不思議だったんだけど、
どうもファンタジーの要素(「河童」が出てくる)が入ってたのが原因な気が。
妖怪物も嫌いじゃないんだけど、人間のドロドロした嫌な面を前面に出した世界観に、
河童が出てくるのがダメだったんじゃないかと(^^;)。

飴村行の作風は嫌いじゃなさそうなので、同作家の「爛れた闇の帝国」で再チャレンジ!

高校二年生の正也。
素行の悪さで有名な先輩山崎と、自分の母親が付き合いだし、「再婚しないのは、正也がいるから」
と言っていた優しかった母親は、正也がいても、家に山崎を連れ込むように。
突然高校を中退してしまった正也を、小学生からずっと一緒である親友二人は励ますのだが・・・。
一方、記憶を失った男が独房に監禁されていた。
そして、憲兵と思われる男が彼の前に現れ、失った記憶を思い出せと、壮絶な拷問を行う。
断片的に思い出す記憶。
第二次世界大戦中の東南アジアの戦場。
逃亡兵を追う自分・・・・・いや、自分が逃亡兵だったのか?
記憶は曖昧で、混乱する男。
記憶がすべて戻るまでと、繰り返される拷問。
絶望の淵に立たされた二人は、夢で出会う。
二人の関係には、恐ろしい秘密があったのだ・・・。

人間の卑屈さとか、厭らしさとか、表面に見えている部分とは全く違うドロドロした部分とか、
そういう部分がこれでもかっ!!って感じで描かれてます。
人間って悪い部分と良い部分があるけど、作中に出てくる人のほとんどが、
少年漫画の悪役のように全部表も裏も全部真っ黒、もしくは、表面は良く見えても、
中味真っ黒みたいなタイプが多い。
主人公の正也も、普通の人間の感性は持っているけど、強いものには巻かれろタイプ。
卑怯だとわかっていても、保身の為には「しょうがない」と助けてくれた人間を、
あまり葛藤もせず、裏切る人間だし。

話しのテンポはよく楽しめたし、読んでる時はどよーんとした気分を満喫できるし、
読後感も悪いんだけど(←これは悪い点ではない)が、そのあと特に残るものが無い話だった。
「何でそんな酷い事するんだろ」→「悪い人間だったから」って単純な解だけが残るというか、
人間の持つドロドロした部分だけが突出しすぎてて、現実感が薄い。
あまりに「心の中が真っ黒な人間」が多すぎて、笑っちゃった(^^;)←それが醍醐味か?

どよ~んとした気分を味わいたいなら、いいかもです。
残酷描写や突飛感など、粘膜シリーズに比べるとかなり弱いようなので、
飴村行作品をちゃんと知りたいなら、粘膜シリーズを読むべきなんだろうなー。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「七人の鬼ごっこ」三津田信三著、「晩年計画がはじまりました」牧野修著:どちらも現代社会の負の部分を書いた作品だけど・・ [本:ホラー&ミステリー]

七人の鬼ごっこ

七人の鬼ごっこ

  • 作者: 三津田信三
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2011/03/19
  • メディア: 単行本
5.5点

晩年計画がはじまりました (角川ホラー文庫)

晩年計画がはじまりました (角川ホラー文庫)

  • 作者: 牧野 修
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/08/25
  • メディア: 文庫
7.5点

三津田信三の「七人の鬼ごっこ」と、牧野修の「晩年計画がはじまりました」を読みました。

いつも、何冊か併読してるけど、長編小説同士を併読することは滅多にない。
でも、この2冊でやってしまって後悔(>_<)。
「晩年計画」(買った)を途中まで読んだところで、図書館で予約していた「七人の鬼ごっこ」が来たので、
「七人の鬼ごっこ」を読みだしてしまったのが敗因。

「晩年計画・・・」は福祉事務所のケースワーカーが主人公、
「七人の鬼ごっこ」は命の電話でのやり取りで始まる。
両方共、不景気や貧しさによる困窮や、世の中の理不尽さ、無常さにあえぐ人たちがでてくる為、
話は全く違うのに、かなり印象が被ってしまった。

スタイルがかなり固まってる(不器用とも思える)三津田信三と、
多彩な作風で、器用に何でもこなす牧野修(下手するとこじんまり綺麗にまとまり過ぎちゃうのだが)。

三津田信三の作品は、回りくどい言い回しと展開、そしてストーリーのそこかしこで語られる怪奇伝承、
そういうものの積み重ねと絡まり合いが、不気味な雰囲気を作り上げてるんだけど、
牧野修と併読したら、今回社会派的要素を持つ導入部分の印象が似ているせいもあり、
牧野修の文章の簡潔さ、上手さとついつい比較し、その回りくどさ、エピソードの扱い、
登場人物の個性の弱さなどが気になってしまって、併読せず読んだ時に比べて、
面白さが一段落ちてしまった気が。
三津田信三の、好き嫌いが分かれそうな文体も、私は、嫌いではないんだけど。

--------------------------------------------------------------------------------------------
「七人の鬼ごっこ」は、命の電話にかかってきた一本の電話から始まる。
「だぁ~れまさんがぁ、こぉ~ろしたぁ・・・」混線なのか、最初に聞こえた子供の不気味な声。
その電話をかけて来たのは、事業の失敗、父親の自殺、そして病魔にも侵され追い詰められた男だった。
自殺を考えた男は、あるカケをする。
一週間毎日、幼なじみ5人に順番に電話をかけ、繋がらなかった時に死ぬ。
運良く5人全員が出たが、かける相手がいなくなってしまい、6人目として命の電話にかけて来たのだ。
自殺の可能性が高い事を察した命の電話のボランティア。
自分の生まれ故郷だったせいでよく知っていた、男がいる可能性の高い「瓢箪山」の「達磨神社」に
役所の人間を行かせるのだが、そこには血痕だけが残り、彼の姿は無かった・・。
そして、それを発端に、彼が電話をかけた相手が次々に殺される・・・・。
最初に聞こえた不気味な声は、連続殺人事件と関係があるのか?

三津田信三のミステリーは、謎解きにオカルト的な現象が絡んでくるホラー要素が強いタイプと、
弱いタイプがあるが今回は後者。
雰囲気的にはホラー要素満点だけど、基本はミステリー。

元々、三津田信三のミステリーは、オカルト的要素が絡んできた方が好み。
何故かというと、オカルト的要素を排除して、ホラーの雰囲気のあるミステリーにした場合、
どうしても、ホラー的雰囲気を盛り上げる為に使われた設定や展開が不自然に思えがちだから。
今回も、謎解きの時点で、突っ込みたくなる点がいくつか。
それが興冷めにつながってしまっていて残念。

最近、少し読みやすくしているのか、延々と語られがちな伝奇・伝承のうんちくは、
かなり少なくなってるので、読みやすいけど、逆に伝奇・伝承のうんちくを読む楽しみが
無くなってしまっている。
もっとオカルト色を強くした方が、設定から考えても怖がれて、楽しめたんじゃないかな?と
思ってしまった作品。

--------------------------------------------------------------------------------------------
「晩年計画はじまりました」は、ケースワーカーの茜が主人公。
茜のもとに「晩年計画が始まりました」という奇妙なメールが。
はじめは気にとめなかったが、茜の担当するクライアントが自殺した現場でも、その言葉を見る。
都市伝説として語られる「晩年計画」は、自分の命と引き換えに、
怨みを持った相手に復讐してくれるというもの。
その頃、嫌がらせとストーカー行為に悩んでいた茜の友人千晶にも「晩年計画」のメールが送られて来た。

ホラーサスペンスなんですが、ケースワーカーが直面する現実の方が怖い!!と思えるほど、
生活保護世帯の悲惨な実態が最初に書き綴られる。
のらりくらりと理由をつけて働かない人、現実を直視せず夢ばかりを語っている人、
ゴミ屋敷状態の部屋に放置され、年金は実娘に使い込まれてしまっている認知症老人、
生活保護受給を頭ごなしに拒否されて途方にくれる母子家庭の母親・・・。
本当に必要な人のところには届かず、必要じゃない人がごねて恩恵を得ている状態や、
親身に、真面目に対応しても恨まれたり、怒鳴られたり・・理不尽な事ばかりが続き、
その上、報われる事が少ないケースワーカーの仕事。

脇役だけど、こういう人いそう・・・という生活保護対象者の個性的な描写や、
理想と現実の狭間で悩むケースワーカー達が語る、諦めと志の入り交じった気持ち・・・。
どれもこれも、かなり現実に近いのが怖い!

また他にも、過干渉の母親の「愛情」という名の檻に包まれている主人公茜や、
ストーカーだけではなく、いじめの因縁、親の失業、就職難・・と悩む千晶など、
現代社会が抱える負の部分があちこちに散りばめられ、それがストーリーにうまく絡んでいる。

「晩年計画」に関しては、ある程度予想ができる内容なんだけど、それがメインではなく、
それを起こしてしまう現代社会の閉塞感、人の持つ負の感情が、話全体を覆っていて怖い。
また、過干渉の茜の母親や、理想的な千晶の両親の、表の部分と、裏の部分の対比が上手い。

主人公茜が、いろいろな悩みを抱えつつも、根本がポジティブで、
幸せと感じるか、不幸と感じるかは、その人の考え方次第でどうにでもなるものだ、
と思わせてくれるのに少し救いがあるのだけど・・・。

景気も右肩下がり、生活がレベルダウンし、将来への不安が蔓延する現在、
その不安、不満、絶望を、社会や他人の責任に転嫁したり、妬んだり、当たりちらしたり、
そういう気持ちが蔓延する社会の怖さが語られている。
妬んだり、責任転嫁することは何も生まないのに。
作中で、ありそうなエピソード(実際近いケースを知ってるのも)ばかりが語られていた為、
そういう社会になりつつあるのかなーとどよーんとした気持ちになったけど、ばったり会った友人が、
仕事で、超クレーマーなどに困らせらているのに「仕事の不満な点じゃく、良い所を見なくちゃね♪」と
明るく言ってたのに、救われた。
そうだよ、世の中、いい人はまだまだいっぱいいると、私も仕事してて思うもの(^^)嫌な人もいるけど・・。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「災転(サイコロ)」霞流一著:立て続けに起きる謎の殺人事件・・・それは呪いなのか? [本:ホラー&ミステリー]

災転(サイコロ) (角川ホラー文庫)

災転(サイコロ) (角川ホラー文庫)

  • 作者: 霞 流一
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/03/25
  • メディア: 文庫
7.3点

交通事故で死んだ金融会社の元社長の墓石が、あり得ない形に曲がっていた。
原因を調査し始めた碑工師飛崎の周囲で、奇怪な現象や、連続して不可解な死を遂げるものが・・。
調査の過程で飛崎が辿りついたのは、社長の元愛人で焼死した女。
彼女の呪いなのか?
飛崎は、巫女で霊力の研究者である九龍空美に協力を求めるが・・・。

粗筋をざっと書くと、普通のホラーミステリーなのですが、あちこちノリが変です(^^;)。
墓碑など石碑を作る職業の主人公は、変にハードボイルドだし、
協力者の巫女は、ちょっと偏執的な上、ビジネスライクで、神秘的な感じはあまり無いし。

本筋がシリアスなのに、B級ホラーによくある、エロ・グロ・ナンセンスの要素がちょこちょこ顔を出し、
その要素が作品を徐々に飲み込んでいって、読み進めていく内に、
どこか現実離れした作品世界観を構築。
普通だったら突っ込みたくなる展開も許せてしまうようになる、独自の味わいを持った作品。

ナンセンス>>>>>>グロ>エロ

という感じで、エロはあまり強くないけど、突飛なところで「エロ」が出てくるのには
びっくりさせられます(^^;)。

「グロ」に関しては、鼠の剥製に刺青をしたもの、ハエや人の肛門を使ったアートなど、
グロというより「悪趣味」と思える描写が多め。

エロ・グロ・ナンセンスというと、田中啓文(リンク先は著作「ミミズからの伝言」の感想)を
なんとなく思い出すけど、どこまでも突き抜けぶっとんでて、
笑うしか無い状況にも陥る田中啓文の作品に比べると、どれもほどほどで、いいスパイスになってます。

文章が簡潔で読みやすい分、ホラーの重い感じが無く、全然怖くないんだけど、
ストーリのテンポが良く、また上記したように、変な味わいがあるので、楽しく読めました。
好き嫌いが別れそうな作風だけど、個人的には好き♪
ナンセンスな要素を楽しめるなら、お薦め(^-^)ノ。
nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「怪談実話 コメカミ草紙 串刺し」平山夢明著:幽霊譚ではない怪異を集めた本♪ [本:ホラー&ミステリー]

怪談実話 コメカミ草紙 串刺し (幽BOOKS 怪談実話)

怪談実話 コメカミ草紙 串刺し (幽BOOKS 怪談実話)

  • 作者: 平山 夢明
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2009/07/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
7.3点

本当は「顳顬草紙」なんだけど、「顳顬」の文字が何かあれらしく、
amazonなどではカタカナの「コメカミ」になってる。
漢字の方が100倍雰囲気がいいのに。

平山夢明の怪談実話シリーズは、”それなり”に面白いんだけど、
怖い幽霊話メインになっちゃうので、どうしてもパターン化しがち。
でも、この本は「摩訶不思議な変な話」「気のせいかな、記憶違いかな?って思えちゃう話」など、
王道をちょっと外れた話を集めた本。
そのせいか、かなりバリエーション豊富。
シチュエーションや展開が目新しく、面白く読めるものも多い。

実話怪談というより、「ホラー短編寄り」の作風だけど、
怖がらせるための(パターンになりがちな)オチが無いものも多く、
そのブツっとした終わり具合が、リアルに思えるのもいい。
摩訶不思議な話の合間に、突然怖い話が入ってて、ぞーっとできる時があるのもいい。
古本の話は、かなり怖かった。
「顳顬草紙」を古本で買ってなくて良かった~。
古本だったら、怖さが倍増した気が。
古本じゃなく、書店で本を買え!という作者の念が入ってるか??

一部、王道に近いものも入ってるけど、バリエーションの一つとして楽しめるし、
なかなか満足度の高い実話怪談集でした♪
パターンの実話怪談集に飽きた方にお薦め(^-^)ノ。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「懐かしい家」小池真理子著:怪奇幻想傑作選1、切ないホラー短篇集 [本:ホラー&ミステリー]

懐かしい家 小池真理子怪奇幻想傑作選1 (角川ホラー文庫)

懐かしい家 小池真理子怪奇幻想傑作選1 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 小池 真理子
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/05/25
  • メディア: 文庫

6点

自分の中の小池真理子といえば「墓地を見おろす家 (角川ホラー文庫)」。
これは怖かった!!!
どんどん追い詰められていく主人公の恐怖が、著者の心理描写の巧みさから、
読んでいる方にも、ビンビン伝わって来て、読んでてゾクゾクした。
ただ、ホラー作家ではないので、他の作品は好みから外れており、彼女の作品はこれで2冊目。

表題作を含む8編が収録された短篇集。

・ミミ:家族を交通事故で亡くした老女。彼女のただ一人生き残った孫にピアノを教えることになったが・・。
・神かくし:子供の頃、神社で一度だけやった鬼ごっこ。しかし一緒に遊んだ子が行方不明に。
・首:自慢の兄が突然交通事故に。そして私の前には首が・・・。
・蛇口:中年の男の前に「蛇口」が出現。それは今まで彼を翻弄して来た物だった。
・車影:大雨の日、優しかった祖母は黒いタクシーに乗り消えた。そのタクシーがまた自分の前に・・。
・康平の背中:愛する人を失い、目的も無く生きる自分。その前に現れたのは・・。
・くちづけ:2000年も背負われ続けている夢を見た。その夢の意味するものは?
・懐かしい家:離婚して戻った我が家。かつては親子と愛猫と暮らしていた家に一人。
        しかしそこで待っていたのは?

怪奇幻想というよりは、ホラー仕立ての内容。
ただ、恐怖感は弱いし、アイディアやストーリーの展開も普通。
どちらかというと、失われたものに対する辛さとか、切なさ、悲しさ、そちらが主体の話が中心。
登場人物のそういう心情が丁寧に書かれている。

私としては、もっと「怖い」話が読みたかったので、ちょっと期待外れ。
好みじゃないので点数低めだけど、キレイにまとまっている話が多く、
センチメンタルなホラーが読みたいならいいかも。

※他の人にはどうでもいいことだと思うのですが、
ブログのカレンダーの記事投稿日がキレイな格子になって嬉しい!
先月1日だけ失敗したので、8月は頑張ってみた。
あまりにも意味のない努力だけど、自分は達成感(爆)。
nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「鉄鼠の檻」京極夏彦著:物語の中で語られる「禅」が面白い♪ [本:ホラー&ミステリー]

鉄鼠の檻 (講談社ノベルス)

鉄鼠の檻 (講談社ノベルス)

  • 作者: 京極 夏彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1996/01/05
  • メディア: 新書
7.8点

文庫版「文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)」他、
1冊を薄くして何冊かに分けた、分冊文庫版(4巻まである)も出てます。

箱根の禅寺「明慧寺」に、取材に訪れた関口・敦子など取材陣一行。
滞在先の旅館で、「姑獲鳥の夏」に登場した医師久遠寺や、
「明慧寺」の僧と取引きをする為やってきた古物商の今川などと出会う。
そして、雪に覆われた旅館の庭に、突然座った姿の修行僧の屍が出現。
周囲には足あとも無く、死体は何も無い空間から現れたように存在した・・・・。
それは、発端に過ぎなかった。
「禅寺」という一般社会と隔絶された世界は、関口らを飲み込んでいく。
そして、その禅寺の周辺を徘徊する赤い振袖の童女・・・。
禅寺という異世界の中で、京極堂は絡まりあった謎をとけるのか???

舞台は禅寺。
禅のうんちくが「これでもかっ!!!」というぐらい読めます。

旅館での懐かしい再開、新しい出会い、そして死体の発見、死体出現の謎解き・・・と
話が進んでいくんだけど、様々な情報が次々と羅列される序盤が長く、たるくてしょうがなかった(^^;)。
展開が「面白い!!」と感じられたのは300p過ぎ・・・。
この本、新書で2段組なので、文庫だったら1冊分読み終わってるぐらいの量。
(ちなみに新書版は826p、文庫版は1376p)

ただ「面白い!」と感じてからは、グイグイと引っ張られるように続きを読めて大満足♪
よく序盤で投げずに読み続けたと、自分を褒めたい(爆)。

「禅」や「禅寺」に関しては、以前読んだお坊さんの生活に関する
コミックエッセイ「坊主DAYS」(リンク先感想)で、禅の修行の話や、禅、公案に関して
ある程度の知識を持っていたので、イメージしやすくて助かった(「坊主DAYS」は臨済宗)。
「坊主DAYS」では具体例が出されていなかった公案が、小説内で展開されてて、
「なるほど~こんな感じなのか」とわかったのも良かった。
ちなみに「坊主DAYS2 お寺とみんなの毎日」も出てますが、
1冊目の方が坊さんトリビア要素が満載で面白かった。

また、タイミングよく「図解 ブッダの教え」を読み終えた直後で、
仏教の悟りとか、考え方とかの概略について読んだばかりだったのも、
禅や悟りに関しての話をより興味深く、楽しんで読めた理由か?
でも、「禅」VS「陰陽道」に関しては、面白かったという意見が多いようなので、
そういう背景が無くても楽しめるのかも。

この「鉄鼠の檻」で面白かったのは、元々修行が厳しく閉鎖的な要素を持つ「禅寺」、
それも檀家も無く、世間から忘れ去られ、法ではなく禅の規律に沿って運営されている、
超孤立した禅寺の中が異世界のように描かれている事。
そこで修行をしている僧たちもまた、別の価値観を持った異世界の人のよう。

それと、登場人物から受ける印象の変化。
次々と事件が起きる中、最初持ってたイメージがガラリと変わっていく人もいて、
その変化を違和感無く読者に受け入れさせてしまう部分に、著者の上手さを感じた。
人間の表面に見えている部分と、内面との差、表面も内面も大きな差は無いが、
見る視点を変えるだけで、全く変わってしまう人への印象、自問自答することや、
体験した事で大きく変化する内面や考え方・・・・
そういう要素がいろいろな部分に散りばめられているのも、また面白かった。

難点を言えば、誰が犯人かとか、トリックがどうとかにはあまり興味が持てず、
面白かったのは、禅問答や、上記2点に関してだったこと(ミステリーとしてはどうか?って感じで)

京極堂シリーズは、「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」「狂骨の夢」(リンク先感想)、
そしてこの「鉄鼠の檻」と、4冊読んだわけだけど、「魍魎の匣」に続くヒットでしたV(≧∇≦)V。

「姑獲鳥の夏」と、登場人物が一部重なっているので、「姑獲鳥の夏」を読んでからの方が、
より楽しめると思います。

お薦め(^-^)ノ!

※おまけ
図解 ブッダの教え (歴史がおもしろいシリーズ!)」は、「聖☆おにいさん」(リンク先感想)を読んでいて、キリスト教絡みのエピソードはわかるものが多いのに、
仏教系のエピソードは知らないことも多かった為読みました。
漫画をより楽しむ為に読んだ本が、こんなところでも役に立つとは思わなかった(^^;)。

内容は、ギッチリ・ミッチリ・教科書的で、仏教の教え、仏陀の人生、仏陀の弟子達、仏教の種類・・・と、
仏教に関する事がいーーーーーっぱい書いてあります。
でも、簡単な説明が多いので、ちょっと疑問に思った事への解が無かったり、
知識の羅列が続くので消化しきれなかった部分も。
仏教の基礎知識をザッと仕入れるには良い本だとは思ったけど。

そういえば、「聖☆おにいさん」の作者中村光は、産休に入ったそうですね。
おめでたい事だけど、早く復活して欲しいな~!
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「ダークゾーン」貴志祐介著:戦闘シュミレーション小説 [本:ホラー&ミステリー]

ダークゾーン

ダークゾーン

  • 作者: 貴志祐介
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2011/02/11
  • メディア: 単行本
未採点

ダークゾーンと呼ばれる異次元空間に、ぽっかり浮かぶ島で目覚めた主人公塚田は、
「赤の王将(キング)」になっていた。
そして周辺には、同じように元は人間だったと思われる「一つ眼(キュクロプス)」
「鬼土偶(ゴーレム)」「火蜥蜴(サラマンドラ)」や「歩兵(ポーン)」などが。
その中に、「死の手(リーサルタッチ)」となった恋人理紗の姿も。
彼ら赤の軍は、「青の王将(キング)」の軍と戦い4勝すればゲームは終わるという。
異形の者と化した人間達の殺し合いのゲームが始まる・・・・。

将棋やチェスのコマを人に見立てた戦闘シミュレーション小説という感じ。
コマの種類が「火蜥蜴」「毒蜥蜴(バシリスク)」「蛇女(ラミア)」などなので、ファンタジー色が強い。
主人公は将棋プロを目指しているという設定なので、将棋の戦略についても要所要所で語られる。

読んでないけど、「クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)」も同じようにゲームの設定が
舞台になった小説で、その流れを組んでいるのか??

この手の戦闘シミュレーションがメインの話って、あまり興味が持てなくて、読む気になれない。
でも、図書館でかなり待って(読み始めるまで内容をちゃんとチェックしてなかった)やっと
手元に来た本なので、ものすごく大雑把にななめ読みしてしまった。
なので点数つけてません。

戦闘シュミレーションものが好きなら面白いのかもしれない。
あまり興味がない自分でも、それなりに面白く読めたから。

戦闘シーンの合間合間に入る現世での回想シーンは、普通だったので、
やっぱり戦闘シュミレーションストーリーを楽しみたい人向けな気がする。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「怪しき我が家 家の怪談競作集」東雅夫編:粒ぞろいではあるがまとまりが・・・ [本:ホラー&ミステリー]

怪しき我が家 家の怪談競作集 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

怪しき我が家 家の怪談競作集 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

  • 作者: 皆川博子;福澤徹三;南條竹則;黒史郎;宇佐美まこと;雀野日名子;田辺青蛙;朱雀門出;神狛しず;金子みづは
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2011/02/25
  • メディア: 文庫
7.4点

家にまつわる実話怪談系の話を集めた短篇集。
少し前から、最近までの注目の作家さんが集まってます。

「釘屋敷/水屋敷」皆川博子著-不思議な館にまつわる話
「家が死んどる」福澤徹三著-住むと不幸になる部屋・・そこに住んでしまったものの末路は・・
「押入れヒラヒラ」黒史郎著-子供の頃、押入れには友だちがいた
「我が家の人形」田辺青蛙著-祖母から受け取った壊れた気味の悪い人形の話
「母とクロチョロ」雀野日名子著-家に現れる黒い影。テレビを見るのを邪魔された母は猛然と戦いを挑む
「ちかしらさん」朱雀門出著-近所にある「ちかしらさん」のお宅。そこに住む人には不幸なことが・・
「悪霊の家」神狛しず著-次々と住む人が変わる自宅の隣家。そこは呪われている??
「犬嫌い」宇佐美まこと著-結婚したくてもできなかった従兄弟の家の庭には・・・
「葦の原」金子みづは著-子供の手を引いて家を飛び出した母は、白い手に招かれるように葦の原に・・
「浅草の家」南條竹則著-子供の頃体験した奇妙な話
「凶宅奇聞」東雅夫著-文学上の呪われた屋敷

完成度の高い話が多く、楽しめる話が多い。
特に「母とクロチョロ」と「ちかしらさん」「葦の原」は面白かった。

「母とクロチョコ」は、豚が主人公の異色ホラー「トンコ」(リンク先感想)を書いた雀野日名子の短編。
コロボックルみたいな悪意があるのか無いのかわからないクロチョコ(主人公命名)と、
それを退治せんと奮闘する主人公の母親のコミカルだけどちょっと突き抜けた行動が面白い。
トンコと同じように、不思議な味わいがある作品。

「ちかしらさん」は、朱雀門出の作品で、よくある呪われた家ネタながらも、
首座布団」(リンク先感想)でも感じた、怪談風の雰囲気造りのうまさが光ってた。

「葦の原」はある女性の一生を追った作品。
短編ながらも、その女性の辿った平凡そうで、悲哀に満ちた運命を、うまく描いている。
特に、その女性が、子供の頃遭遇した怪異と運命の絡みがいい。
この作者ははじめて読んだけど、他のも読んでみたいと思った。

他の作品も、面白いものが多く、一作一作は満足度が高い。

ただ、「短篇集」というまとまりになると、ちょっと考えてしまうものが。

まず最初の「釘屋敷/水屋敷」は、ホラーというよりは、幻想小説より、それも文芸の香りが強い話。
怪しく不思議な田舎の屋敷を描いた作品で、幻想的な味わい深い作品で、これはこれでいい。

しかし、他の作品とはあまりにもカラーが違い過ぎて、2作目を読んだ時、そのギャップに戸惑った。

2作目は、登場人物がイニシャルで印され明らかに実話怪談調の話。

3作目は、著者の子供の頃に体験した「実話怪談」の体裁を取りながらも、
実話怪談というより、ホラー短編的なストーリー。
あまりに現実的では無い要素が多く、実話怪談調の雰囲気とそれが噛み合わず違和感が。
「怪談」ではなく、ホラー短編としての構成の方が楽しめた気がする。

4作目「我が家の人形」は、完全に著者の体験話として語られていたんだけど、
「幻想」「実話怪談」「ホラー短編」の中に混じってしまった為、これが実話なのか、
創作なのか・・・・と読んでて悩んだ。
リアルに地味に怖いので、創作ならあまり怖くない、実話だったらかなり怖い・・・って話で、
全部が実話怪談という中に混じっていたら、かなり怖がれたのに・・・と残念。

ということで、「実話怪談調」というのに縛られてる話、逆にほとんど意識してない話と混じっている為、
その面白さが減ってしまった作品がいくつか。

次の作品を読む度に、テイストの違いに戸惑ってしまった。
何か勿体無いなーと思った。

でも、全体のレベルは高いので、読んで損は無いです♪
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「超怖い話 クラシック ベストセレクション」加藤一著:凡作が多いというか・・・ [本:ホラー&ミステリー]

超 怖い話クラシック ベストセレクション 殯(もがり) (竹書房文庫)

超 怖い話クラシック ベストセレクション 殯(もがり) (竹書房文庫)

  • 作者: 加藤 一 編著
  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2009/10/02
  • メディア: 文庫

5点

勁文社から1991年~2000年まで刊行されていた「「超」怖い話」と、
竹書房が2000年にだした「怖い」、そして書き下ろしを集めたもの。
全部、加藤一の作品。

新作3話を加え91話の実録怪談集。
凡作が多いなーという印象。

著者が怖い場所を探索する怪談オフに参加した話や、霊が見える高校生の話など、
ちょっと面白いものもあったけど、それは少しだけ。

実録怪談の怖さを感じないし、じゃぁホラー短編としてどうかというと凡作だし・・・という作品が多かった。
また「視える人」「こっくりさん」など同じネタの作品を並べたせいか、
金太郎飴的な印象まで受けてしまった。
私が好きな、怖いというより「摩訶不思議」って話もあったけど、他の人のその手の話に比べると、
インパクトに欠け、面白く無いし。
古い話も多いからかな??

敢えて読まなくてもいい感じ。
怪談ものなら何でも読みたい!って人にはいいのかも。
文体が簡潔で読みやすい(そのせいでホラーの雰囲気がでないんだけど)ので、サクサクは読める。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「恐怖箱 怪医」「恐怖箱 怪癒」雨宮淳司著:怖い話、摩訶不思議な話・・面白い!! [本:ホラー&ミステリー]

恐怖箱 怪医 (竹書房文庫 HO 48)

恐怖箱 怪医 (竹書房文庫 HO 48)

  • 作者: 雨宮 淳司
  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2008/02/27
  • メディア: 文庫
7.5点

恐怖箱 怪癒(かいゆ) (竹書房恐怖文庫)

恐怖箱 怪癒(かいゆ) (竹書房恐怖文庫)

  • 作者: 雨宮 淳司
  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2009/02/27
  • メディア: 文庫
7.8点

最近、発見した大のお気に入り雨宮淳司!!!
雨宮淳司は現在竹書房の実話怪談集「恐怖箱」シリーズで、4冊の本をだしてます。

先に読んだ2冊「恐怖箱 怪痾(かいあ)」「恐怖箱 哭塊」(リンク先感想)が面白かったので、
雨宮淳司の残りの「恐怖箱」シリーズも読んでみました。

雨宮淳司、図書館には2冊しか無くて(三つの市の図書館当たったんだけど・・・)、この2冊は購入。
雨宮淳司、すごく面白いのに何故置いてないんだろ?
恐怖箱シリーズって、たくさん出ている上、どれを読んだかわかりにくくなりがちなので、
埋もれてしまってるのかな?
もったいない!
それとも実話怪談の中では異色すぎるのが一般受けしないのか??(^_^;)

著者が現役看護師ということで、病院にまつわる怪談がメイン。

「怪医」は、雨宮淳司最初の単行本。
16編収められています。

・羽音-頭の中に烏が・・
・繭の中-引越し先の隣の空き地には・・・
・ディプロピア-親友の突然の変異に少女は・・・
・刺青-炭鉱近くの病院で働く主人公の遭遇した怪異
・正露丸-炭鉱にまつわる不吉な怪談・・
・おまけ-冷蔵庫にまつわる怪談
・泡音-どこからか聞こえる泡のはじけるような音、それは・・
・ローレライ-入院中のある少女が歌うと・・・
・ぞろびく-原因不明の足の痛みを訴える患者
・八角様-子供の頃見た予知夢
・雑巾様-ボロボロになりながらも歩き続ける浮浪者を人は雑巾様と・・
・ビニールグローブ-連続するビニールグローブの誤飲
・ヘアートニック-精神病院を仕切る男に逆らった結果は・・
・表と裏-父の形見のスライドに写っていたのは・・
・饂飩-病院で出された饂飩は・・
・回廊-研究の為にと脳を集める医者の元で仕事をすることに・・

「怪癒」は10の短編。

・拳骨様-自分の死に様の予知夢を見た男の話
・メドゥーサの頭-精神病院での事件
・シズル-童貞喪失の嬉しさのあまり感動が無くなってしまった男の話
・龍藏-村人に忌み嫌われる龍藏・・その理由は
・戻り蝶-死んだ人が蝶になって戻ってきた?
・マンモ-乳がん検査する幽霊
・もしもピアノが弾けたなら-霊を蔑ろにした結果は?
・誓願図-信仰心の厚い酷い疥癬患者の話
・網-想像を絶する酷い金縛りの話
・蛇の杙-指から白い糸が・・

話の概略を書いたけど、どの話も一筋縄では説明できない話ばかりで、
概略では面白さが伝えきれない(>_<)。

参考に、一作だけストーリーを書いちゃいます。
「快癒」の「戻り蝶」。
この話は、別の病院で死んだおばあさんが、仲良くしていた人に会う為、
長く入院していた病院に、蝶になって戻ってきたのかな???という、
ちょっとほのぼのした展開から一転、ある看護婦さんが「気持ち悪!」って、蝶を叩き落してしまう。
すると蝶が・・・。
って話。

短い話なんですが、ラストは「あらららら~???」ってな展開で、インパクト大!!
突拍子も無い話なのに、実際にあったように思えてしまうのが(蝶を叩いた看護婦さんとかいそう)、
作者の力量って感じがします。
不思議なことに、ホラーの短編っぽいのに、実話怪談の雰囲気を持ってます。
登場人物が「実話怪談」によく出てくる無個性なタイプじゃなくて、
実際に世の中に存在していそうな感じで、親近感を覚えるからかな?

また作者が看護師である為、普通だと知らないような病気ネタ、病院ネタがちょっとだけ盛り込まれており、
それがすごくいいスパイス・エッセンスになってます。
炭鉱を舞台にした話も、そういう炭鉱トリビアがちょっとだけ入っていて、より話を面白く。

「快癒」の方が、「戻り蝶」のようなちょっとコミカルな摩訶不思議話が多かったけど、
その不思議な味わいで、楽しめて印象に残る話が多かったです。
「もしもピアノが弾けたなら」などは、今度から聞いたら、この話を思い出して笑っちゃいそう(^^;)。

とにかく、いい味出してるホラー短編ばかりなので(自分の感想だとそれが伝えきれないのが悔しい)、
普通の実話怪談に飽きた方に、雨宮淳司は壮絶お勧めV(≧∇≦)V!!!
ゾゾーっていう怖さじゃなく、話の面白さを味わって下さい♪
nice!(2)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「鼠舞」田中文雄著:ホラーとしての材料は揃っているが、生かせていない [本:ホラー&ミステリー]

鼠舞(ねずまい) (講談社文庫)

鼠舞(ねずまい) (講談社文庫)

  • 作者: 田中 文雄
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/01/16
  • メディア: 文庫
4.5点

数百年に渡って石材の採掘を行い、町の下に全貌不明の巨大な空洞が走る大迫町。
亡くなった父の跡を継ぐ為帰郷した駒木と、その妻保津美、そして娘の香織。
田舎で平和な家庭を築こうとする駒木一家に、不穏な影が忍び寄る・・・。
ゾロアスター教を信仰している従業員のイラン人の家には、生贄にされた猫の死骸が。
そして、巨大な地底世界に蠢くおぞましい闇と、暗闇の中に棲むこの世のものではない少女。
鼠被害が相次ぎ、殺鼠剤を撒くことを指示した者の不可解な死。
その上、駒木と知り合う前に保津美が付き合っていた犯罪者海老根の脱獄。
諸々の出来事がやがて一つに・・・・。

読んでて、たるかった。
ホラーとしての材料は充分に揃っているし(よくあるネタばかりではあるけど)、
ストーリーも月並みではあるけど、酷い破綻もしてない。
でも、ゾクゾクするような怖さとか、そういうのは全然無かった。
文章や、話の流れが、サスペンスタッチなんですよね。
ホラーの材料を揃えたのに、メインに人間のサスペンスドラマが来ちゃってて、
ホラー部分とちゃんと噛み合ってない。

ホラー小説は雰囲気作りが大切なんだけど、文章もドライだし、
大きな話の流れもサスペンスなので、ホラーの雰囲気が作れないまま話が進む。
その上、ホラーが土台にあるので、人間ドラマサスペンスにも成り切れず、
両者の融合もうまくいかずに、ホラーとしても、サスペンスとしても中途半端なまま、
ラストになってしまった・・という感じ。
登場人物の心理描写も、みんなバラバラで絡みあってなかったし。

ホラーとしての材料も多すぎて(サスペンスとしての材料も多い)、ちゃんと消化しきれてない。
読後も、消化不良な感じ。
登場人物は同じだけど、ストーリーは違ういつかの話をブチ切れで見たとう読後感が。
敢えて読む必要は無い話。

何度か投げたんだけど、先日時間があった時、どうにか読了。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「恐怖之場所 死にます。」倉阪鬼一郎著:事故・事件物件にまつわるホラー短編集 [本:ホラー&ミステリー]

恐怖之場所 死にます。 (竹書房文庫)

恐怖之場所 死にます。 (竹書房文庫)

  • 作者: 倉阪 鬼一郎
  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2010/01/28
  • メディア: 文庫
4.5点

いわくつきの部屋、一戸建て、場所・・・事故・事故物件にまつわるホラー短篇集。
ホラー作家が、不動産業を営むファンが書いた不動産絡みの実話怪談を読む・・・という設定。
しかし、それがこの本を台無しにしている気が。

一作一作は「実話怪談」ぽい雰囲気を持っているのに、短編の合間合間に挟まれる、
「プロローグ~エピローグ」で書かれている、ホラー作家とファンのやりとりのせいで、
怪談ぽさが台無しに。

短編自体は、普通かちょっとそれより下(伏線の貼り方が下手でオチが見えたりとか多い)んだけど、
それでも、合間のやりとりが無ければ読み散らかし系のホラー短編としては楽しめたと思うのに。

特に、エピローグは酷かった(-_-;)。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「超怖い話ベストセレクション2腐肉」平山夢明著:「実話怪談」というより「短編ホラー」 [本:ホラー&ミステリー]

「超」怖い話ベストセレクション 腐肉 (竹書房文庫)

「超」怖い話ベストセレクション 腐肉 (竹書房文庫)

  • 作者: 平山 夢明
  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2010/04/26
  • メディア: 文庫
7点

少し前から実話怪談シリーズ「恐怖箱」を読んでいる。
こちらは、同じ実話怪談シリーズ「「超」怖い話」のベストセレクション。
著者は平山夢明。
平山夢明は、「ダイナー」「メルキオールの惨劇」などの長編や、
ミサイルマン」「他人事」などの短篇集を出しているホラー作家(リンク先は全て感想)。

「「超」怖い話」シリーズは、以前勁文社で出ていた物で、倒産後竹書房で出されるように。
「「超」怖い話」A(アー)~Π(パイ)までの15冊中、A~Θ(シータ)までの10冊が平山夢明編著。
他に、今回読んだベストセレクションが数冊。
また「超」怖い話ニューエイジシリーズなども出ているらしい。
ハルキ文庫からも「怖い本」シリーズが。
こちらは勁文社で出ていた「「超」怖い話」の再録+描きおろし。
いろいろありすぎて、どれを読んだかわからなくなり、ベストセレクションを読むことに。

読んでみて思ったのは「恐怖箱」が「実話怪談」っぽい体裁を持っている話が多かったのに比べ、
こちらは「実話怪談」というより、どの作品もホラー短編(短いのでショートショートか?)という感じが強い。

理由は、起承転結がちゃんとあるから。
事故の多い交差点の側のマンション、変に安かったアパートやオークションの品物・・・など、
ちゃんと導入があり、怪異が起こり、そしてオチもあるし、怪異の理由もわかるものが多い。
ベストセレクションなので、小説としての体裁が整ってる話が集まってしまったのかもしれない。

でも、「怪談」って、数年平和に暮らしてたのに、理由もなく突然妻がおかしくなって・・・・なんて感じで、
原因も、そして結果もその先どうなるかわからない・・・って方が怖い。

この本に収められている話は、「実話」というより「創作話」って感が強く、
その点では、怪談の持つ、摩訶不思議な不気味さ、もしかしたら自分にも起きるかも的怖さは、
無くて残念。

話的にはちゃんとまとまっているので、シチュエーションとか怪異自体の怖さとかでは楽しめる。
短編ホラー集として読めば、収録作品も多く読み応えもあるし。
ただ、収録作品が多すぎる為か、似たようなシチュエーション・話の流れが多いのが気になったり、
ありそうな怖い話ばかりで印象に残る話があまり無く(金太郎飴的というか)、
その場限りの読み散らかし作品集・・・という気も。

どの話も普通には面白いし、ショートショートみたいに短い短編が多いので、
ちょっと怖い話を読みたい・・・なんて時にいい気が。
nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「ボディ・メッセージ」安萬純一著:変な形に組み合わされた複数の切断死体・・・その意味は?? [本:ホラー&ミステリー]

ボディ・メッセージ

ボディ・メッセージ

  • 作者: 安萬 純一
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2010/10/09
  • メディア: 単行本

7.5点

東京創元社が主催する鮎川哲也賞、第30回受賞作品。

「一晩泊まるだけでいい」という不思議な依頼を受け、孤立したような屋敷に呼び出された探偵二人。
そこには、無口な家政婦、依頼主の女性、そして同業者の女探偵が滞在していた。
夜中に爆発音で目を覚ました探偵二人は、血の海と、切断され不思議な形に組み合わされた
4人の首無し遺体を発見する。
しかし、探偵社に戻り、警察と一緒に屋敷にもどると、血の海も遺体も消えていた・・・。
何故「探偵は必ず二人来るように」と指示されたのか?
何故探偵二人に遺体を目撃させる必要があったのか?
何故遺体を切断し、奇妙な形に組み合わせる必要があったのか?
何故、探偵たちに見せつけるようにした後、遺体は消えたのか?

死体が消えてしまった猟奇殺人事件を追う探偵達の前に、
次から次へと新たなる謎が展開され、戸惑う探偵たち。
そこに、日本人探偵・被砥功児が颯爽と登場!!

テンポがよく、謎が謎を呼ぶ展開も面白く、最期までグイグイ引っ張られるように読めた。
探偵達や他の登場人物も魅力があり、その描写も良い。
物語半ばで、物語の鍵となる謎の一つがわかってしまったけど、
それでも問題無く、物語を楽しめたのもいい。
提示された謎が、最期にはちゃんとまとまって、本格ミステリーとして、楽しめた一冊(^^)。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「悪の教典 上・下」貴志祐介著:サイコパス教師の陰謀!・・・・狂気が見えない [本:ホラー&ミステリー]

悪の教典 上

悪の教典 上

  • 作者: 貴志 祐介
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/07/29
  • メディア: ハードカバー

悪の教典 下

悪の教典 下

  • 作者: 貴志 祐介
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/07/29
  • メディア: ハードカバー
4.5点

貴志祐介は、人間の心の闇に潜む狂気の怖さを思い知らせてくれた「黒い家 (角川ホラー文庫)」や、
SF・冒険エンターテイメントとして素晴らしい「新世界より」(リンク先感想)など、傑作を出している。
他にも面白い小説がいろいろ。

その著者が上下巻として出した本書「悪の教典」。
天才的な頭脳を持つサイコパスである主人公が、高校の教師に。
温厚で頼りがいがありユーモアにも溢れ、生徒達から慕われる主人公。
学園内での問題にもとりくみ、他の教師達からの信頼も厚い。
しかし、心の奥底では、どす黒い野望を持っていた。
野望達成のためには、手段を選ばず、邪魔者を排除する主人公。
高校は、生徒たちは、徐々に闇の中に飲まれていく・・・・。

つまんなかったです(-_-メ)!
「黒い家」や「新世界より」と同じ人が書いたとは思えないくらい。

上巻前半、良い人の仮面をかぶりながらも、徐々に自分の支配力を伸ばしていく主人公の行動や、
それに取り込まれていく周囲の様子は面白かった。

しかし、その行動がエスカレートするにつれ、主人公の思考の幼稚さ、計画の稚拙さ、
いきあたりばったり感、天才的頭脳を持つ・サイコパスであるという設定と、
彼の持つ野望のスケールの小ささ・設定との不整合感・・・・などが露呈。

物語の要である主人公のサイコパス的性格がうまく表現されておらず、
冷酷で普通の人とは違う精神構造を持っているというサイコパスの怖さ、狂気、不気味さが、
物語後半になるにつれどんどん感じられなくなるというスケールダウン感。

能力がありうぬぼれやプライドが高い男が、自分のやった悪行で、窮地に追い込まれ、
自暴自棄になってしまった男・・・って印象が残った。
幼少期の話などは、サイコパスを思わせるんだけど、後半の主人公から受ける印象がそんな感じ。

何でこんな出来が悪い話を貴志祐介は書いたんだろ?
今までの作品と比較して、やっつけ仕事・・・って感じを受けてしまった。

それでも、貴志祐介の作品なので、駄作ではなく、読めることは読めるのですが、
貴志祐介の作品だからこそ点数低め。
nice!(2)  コメント(8)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「恐怖箱 哭塊」雨宮淳司著・「恐怖箱・超1-怪コレクション 鬼灯と女郎花」加藤一編:実話怪談集2冊 [本:ホラー&ミステリー]

恐怖箱 哭塊 (竹書房恐怖文庫)

恐怖箱 哭塊 (竹書房恐怖文庫)

  • 作者: 雨宮 淳司
  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2011/02/28
  • メディア: 文庫
7.5点

恐怖箱 超ー1怪コレクション 女郎花 (竹書房文庫)

恐怖箱 超ー1怪コレクション 女郎花 (竹書房文庫)

  • 作者: 加藤 一
  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2009/09/29
  • メディア: 文庫
7点

恐怖箱 超-1怪コレクション 鬼灯 (恐怖文庫)

恐怖箱 超-1怪コレクション 鬼灯 (恐怖文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2010/09/29
  • メディア: 文庫
6.5点

「恐怖箱 哭塊(こくかい)」は、「恐怖箱 怪痾(かいあ)」(リンク先感想)が面白かった雨宮淳司による、実話怪談集。

実録怪談13編が収められている。
・ヤブガミ-買い取った土地から出てきた忌まわしい石の話
・埋ける
・ウィジャボード、ウィジャボード
・四ツ目
・標本一〇三一-蔵から見つけた頭蓋骨にまつわる怪異
・落ちてくる
・信号の家-信号の上に見えるものは・・・
・麓の湯
・蛇島さん
・標
・腕時計をして
・田舎の事件
・あの女医-怪しい女医にまつわる連作

どれも、一定レベルのクオリティで楽しめた。
「怪痾」の巻末作品、自己責任で読んでくださいという「集団肖像画」の続編も載っていて、
面白いことは面白のだが、続編がでたことで「集団肖像画」の持つ後味の悪さ、余韻が消えてしまった気が。

ガンダムネタがあったのには笑った。
でもちゃんと怪談。

雨宮淳司は面白いと思うのに、図書館にほとんど入ってないのは何でだろ?
----------------------------------------------------------------
「恐怖箱・超1-怪コレクション」の「女郎花」「鬼灯」は、怪談コンテスト応募作品から、
選りすぐりの怪談を集めたもの。
「女郎花」は2009年、「鬼灯」は2010年のコンテスト傑作選。

「女郎花」は43編が収められている為、一話一話は短め。
内容は、不気味な心霊体験、身も凍るような怪異、家に代々伝わる儀式にまつわる恐怖など、
正統派怪談話だけでなく、ほのぼの~、なんじゃこりゃ(笑)、いい話だーと、バラエティ豊か。

・ホットケーキ-焼いたホットケーキの裂け目には指が。
・鏡-鏡に写る自分の顔に異変が!
・ゲストルーム-入居した老人ホームの部屋の片隅には毎晩・・・。
・かしろようこ-人身事故を起こした電車に乗り合わせたら・・・。
・町の散髪屋さん-老夫婦がやってる行きつけの古い散髪屋さん。ある日二人の態度が違う・・
・プラズマ野郎-某教授のように心霊現象を信じない男が、幽霊の出る部屋に引っ越した。
・まんめいさま-お箸を奉納する社に願掛けして家に帰ったら・・・
・白-家に代々受け継がれる儀式の決まりを破った結末は?

が、印象に残った。
怖い話より、摩訶不思議話系が印象に残ったし、面白かった。
怖い話も、怖い話を聞いたあとの嫌な気持ちになれる話が多く、楽しめた。
怖い話の間に、摩訶不思議話が入ってるせいか、メリハリがあったのも良かった♪
------------------------------------------------------------------
「鬼灯」は、40編が収められている。
収録作品が多いため、こちらもひとつの話は短い。

闇線歴-古い廃線を探索に行った男が遭遇した恐怖(鈴堂雲雀)
妄執-庭の井戸を埋めたら・・・・(鈴堂雲雀)
ヒトガタ-願いを叶えてくれるヒトガタ、しかし代償も大きかった(つくね乱蔵)
あつい、おもい-嫁いだ家は変に暑かった。その理由は(ぼっこし屋)
・傘・転がるもの-呼ばれるのか?引っ越した先で必ず怪奇現象が・・(連作)(ねこや堂)。

などが印象に残った。
心霊体験、祟ものなど、怖い話系がメイン。
ただ、全体的に完結しちゃってるというか、余韻があまり感じられない話が多く、
あまり実話怪談ぽく無いし、怪談の持つ怖さも弱まってる気が。
怪異だけを切りだしてブチっと終わってしまうほうが、怪談ぽいし、
謎な部分が自分にも起きるかも?と思わせて、恐怖を煽ると思うんだけど。

時間つぶしに読むには、たくさん怪談が読めていいけど、
ホラー短編として、怖いシチュエーションを楽しめる!という作品も少なかった。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「怪笑小説」「容疑者Xの献身」東野圭吾著:うーん、ダメかも・・・ [本:ホラー&ミステリー]

怪笑小説

怪笑小説

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1995/10/26
  • メディア: 単行本
5点

容疑者Xの献身

容疑者Xの献身

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2005/08/25
  • メディア: 単行本

7点

-------------------------------------------------------------------------
「怪」って字に惹かれたのと(今「怪奇箱シリーズ読んでるから(^^;))、
「怪笑」からブラックユーモアものかなーと思って借りてみた「怪笑小説」。
直木賞など、いろんな賞をとってる超有名作家東野圭吾の短篇集。
たくさんベストセラーを出してる作家さんだけど、私に取っては初東野圭吾。

「鬱屈電車」は、満員電車で人々が口に出さず思ってる不満を延々と書いた物。
「おっかけバァさん」は、節約節約でいきてた老婆が、芸能人に大ハマリする話。
「一徹おやじ」は巨人の星のパロディ。
「逆転同窓会」は、先生の同窓会に生徒を読んだら・・・という話。
「超たぬき理論」は、UFO実在論を「たぬき」に置き換えた話。
「無人島大相撲中継」は無人島に漂着してしまった人々の話。
「しかばね台分譲住宅」は、価格が下がった分譲住宅同士の諍いを書いた話。
「あるジーサンに線香を」は、若返りの手術を受けた老人の話。
「動物家族」は、人が動物に見えるようになった中学生の話。
の9編の短編が収められています。

で、どうだったかというと、正直面白くなかった。
社会風刺的な側面が強くブラックな笑いがある短篇集ではあったけど、毒の薄い筒井康隆という感じ。
毒が薄い分、リアルでもあるんだけど(筒井康隆は毒がありすぎて、こんな人いないよ、
こんな状況起きないよってなるので)、オチが「チャンチャン」とキレイに落ちすぎちゃって、
リアルさとぶつかってる。
調べたら、筒井康隆と星新一のファンだという。
あーー、落ち方が星新一っぽいんだ・・と納得。

「巨人の星」を元にしたパロディ物などもあったけど、こじんまりし過ぎてるし。
この辺は、ぶっとんだ作品が好きだから、そう感じるのかも(^^;)。

それだけじゃなく、社会風刺物に関しては、著者の視線が、現象を面白がってるというより、
「こういう人達ってダメだめだよね~」て言う哀れみや軽視する目線に感じられて、
読後感があまり良くなかった。
変な人達って面白い!!ってスタンスが欲しかった。

-----------------------------------------------------------------------------------------------
ただ、この作品、たっくさんある東野圭吾作品の中ではそれほど評価が高くないよう。
この作品だけで、東野圭吾は好みじゃない・・と判断するのは早急だと思い、
直木賞受賞作品でもある「容疑者Xの献身」も読んでみました。

天才的な数学者である石神は、しがない高校教師の職についていた。
そんな石神がアパートの隣に住む女性に恋をした。
彼女が殺人をおかした事に気がついた石神は、彼女を守る為、その天才的頭脳を駆使する。
その石神のトリックに、彼の旧友である物理学者湯川教授(ガリレオ)が挑む!

「ガリレオ」シリーズは名前だけ知ってたけど、ちょっと内容を知ってるだけ。
この作品に登場する湯川教授がガリレオなのは、中盤過ぎて知りました(^^;)。

で、とても読みやすかったです。
文章はドライな感じで、簡潔で、登場人物の心理描写も的確。
でも、逆にそれがダメだったかも。
登場人物の心情とか、考えとか、全部分かりやすく書いてありすぎて、想像する余地が無いというか。
普通なら、行間を読むというか、「ここはこうなのかな??」って想像するんだけど、
それをしなくても、ポイントポイントで、登場人物の心情がしっかり説明されてしまって
(時には読者の考えを代弁するように)、自分で深く物語を創り上げるのではなく、
作者の用意した物語の表面をなぞって終わってしまった・・・という感じ。
言い換えれば、わかりやすい感動もの。
実は「わかりやすい感動もの」って興ざめしちゃってダメなのです
(ノンフィクションは大丈夫なんだけど)。
それに、どんぴしゃりというか(^^;)。

石神の仕掛けたいろいろなトリックはそれなりに面白かったけど、
この話のテーマは「献身」で、その部分にのめり込めなかった為、
ラストも感動できなかったし(^^;)。

人気がある作家さんだけど、自分の好みからはやっぱり外れてた・・・という結果に終わってしまった。
まぁ、自分の好みは、かなり一般からずれてるとは思うのですが(^^;)。
nice!(2)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「恐怖箱 十三」加藤一編著:13人の怪談筆者による、実話怪談集。思ってたより怖い話もあった。 [本:ホラー&ミステリー]

恐怖箱 十三 (竹書房文庫)

恐怖箱 十三 (竹書房文庫)

  • 作者: 加藤 一
  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2009/11/27
  • メディア: 文庫

7.3点

竹書房の実話怪談集「恐怖箱」シリーズの一冊。

竹書房の実話怪談集は、一時期かなり読んでいた。
「超」怖い話シリーズをメインに読んでたけど、たくさんある上、適当に読み散らかしたせいで、
どれを読んだのかわからなくなってしまい中断(^^;)。

で、少し前に読んだ「恐怖箱 怪痾(かいあ)」(雨宮淳司著)(リンク先感想)が面白かったので、
また竹書房の実話怪談集を読むことに。

「恐怖箱」シリーズもいろいろでてるけど、「雨宮淳司」の作品も収録されてる、
この「恐怖箱 十三」を読んでみた。

13人の怪談筆者による実話怪談集。
28編の怪談が収められてます。

「実話怪談」という体裁なので、オチがなかったり、謎解きされぬまま終わってしまったり、
かと思うとキレイにオチがあったり、恐怖というより摩訶不思議話だったり、
かなりバリエーションに飛んでます。

嫁いだ先にいつも飾ってある「女雛」と顔のある芋虫の話「女雛」(鳥飼誠著)、
新居での怪異と耐え切れない悪臭ついて書かれた「山麓の家」(つきしろ眠著)、
引っ越した家の周囲の下水溝から発見された砕かれた地蔵の話「お裾分け」(つくね乱蔵著)、
アンケート調査に行った人間を引き込む家「火守り人」(つくね乱蔵著)、
長年連れ添った妻に起きた恐ろしい現象「掌」(原田空著)、
神棚に宝くじ当選を祈る話「宝くじ」(原田空著)、
墓の土を使った恋のおまじない「成就した恋」(渡部正和著)、
村の御屋敷に住む一家にまつわる話「神とは呼ばず」(松村進吉著)、
心霊スポット巡りの結果がうんだ悲劇「悪趣味の末路」(松村進吉著)、
など、どれも短いので小粒だけど、印象に残った話がいくつも。

特に「掌」は、子供の頃、怖い話を聞いて、ゾーーーっとした記憶、
「意味もなく突然起きる恐ろしい出来事。因果関係が無い分避けられない」という怖さを思い出した。
他にも似たような「意味なく起きる怪異の話」は掲載されているのに、
何故この話は怖かったんだろ?
その時の気分の問題?

夜中に読むと、かなりゾクゾクして楽しめます(^^)。
nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「山魔の如き嗤うもの」三津田信三著:六地蔵にまつわる童唄に添って起きる連続殺人事件・・ [本:ホラー&ミステリー]


山魔の如き嗤うもの (ミステリー・リーグ)

山魔の如き嗤うもの (ミステリー・リーグ)

  • 作者: 三津田 信三
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2008/04/21
  • メディア: 単行本
7.3点

三津田信三の「伝奇ミステリー・刀城言耶シリーズ」。
このシリーズの他の本。
 厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)
凶鳥の如き忌むもの (講談社ノベルス)
 水魑の如き沈むもの (ミステリー・リーグ)
 首無の如き祟るもの (講談社文庫)
密室の如き籠るもの (講談社ノベルス)

「◎」印は読んだ本(感想は「◎」をクリック)。

文庫版「山魔の如き嗤うもの (講談社文庫)」も出てます。

「首無の如き祟るもの」の続編というか、舞台や登場人物が一部被ってます。

神戸地方の一集落に伝わる、三山を独りで辿って礼拝するという「成人参り」。
嫌々ながらも「成人参り」を行った郷木靖美は道に迷い、
地元で恐れられている忌山に入り込んでしまう。
誰もいない山中に響き渡る笑い声、頭上を飛ぶ怪しい影・・・・暗闇と恐怖の中、
忌山から脱出しようと足掻く靖美は、忌山の中に建てられた一軒の家に辿り着く。
そして、そこで暮らす一家と出会うが・・・。
翌日、どうにか下山できた靖美は、数々の恐怖その体験から心理的に不安定になってしまう。
靖美の従兄弟から、靖美の体験した事を解明し、彼を救って欲しいとの依頼を受けた刀城言耶は、
以前事件に巻き込まれた神戸地方を再び訪れる。
そこで再び事件が。
それも、六地蔵にまつわる童唄をなぞるような連続殺人事件が・・・。

このシリーズは、三津田信三の作品ではお馴染みの、ミステリー仕立ての伝奇小説。
オカルト要素がすごく強い事もあれば、ミステリー要素が強い事もある。
それがどちらなのかは、最期の謎解きまでわからない。

このシリーズ、回りくどい言い回しがあまりに多く、読むのがたるくなっちゃう事もあったんだけど、
この作品は、今までのこのシリーズの中では、回りくどさが軽減され、
かなり読みやすかったのが好印象。
いつもだとかなりページを割いている伝承関係のうんちくが少なかったのも理由かも。

導入部で語られる、靖美の忌山での恐怖体験は、伝奇ホラーの雰囲気満点で面白い。
その後わかってくる忌山の一軒家の秘密や、それにまつわる過去の事件、
そしてその事件との関連があると思われる連続殺人事件の発生と、
ストーリー展開も吸引力があり、最期のほうまで楽しく読めた。

伝承関係のうんちくが少ない分、伝奇ホラー的怖さが軽減されてたのは残念。
忌山の怖さも、伝承によるものより、忌山で過去に起きたという「6人の鉱夫失踪事件」に起因する、
不気味さにまつわる部分が大きかったし。
でも、過去の事件が発端ということで、ミステリーものとしての緊迫感はちゃんとあった。

相変わらず、刀城言耶の変な癖や、女性編集者との、変に明るいやりとりが浮いてたりはしたけど。
他の作品でも感じたけど、この著者、個性的なキャラクターを作るのがヘタ(^^;)。

最期の方のどんでん返しは、ちょっとくどすぎる気がしたけど、これもこのシリーズの特徴と言えば特徴。
伝奇ミステリーとして私は好きだけど、変なアクがあるので、読む人を選ぶ気がする。
それでも、このシリーズの中では、一般受けしやすい気が(^^)。
近い場所を舞台にして登場人物も一部だけど被ってる「首無の如き祟るもの」を
読んでいなくても、楽しめます。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「恐怖箱 怪痾(かいあ)」雨宮淳司著:ゾッとする話も、ブラックな笑いもある怪奇譚集♪ [本:ホラー&ミステリー]

恐怖箱 怪痾(かいあ) (竹書房文庫)

恐怖箱 怪痾(かいあ) (竹書房文庫)

  • 作者: 雨宮 淳司
  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2010/02/27
  • メディア: 文庫
7.5点

「病院怪奇譚集」ということで、病院を舞台にした怪談が多いけど、ぞーーっとする話だけでなく、
摩訶不思議、なんじゃこりゃ??!なんて話も混じっている。

「七人の禿」なんて、タイトルも凄いが内容もぶっとんでる。
その上、それを感動話として落としてしまう著者のセンスに脱帽!
一歩間違えば、心底「なんじゃこりゃ?!」と思うような話なのに、そうはならず、
思わずニヤっとさせられてしまうのに、著者の力量を感じた。

もちろん、正統派の怖い話も入ってて、それは怖い。

そして、「自己責任で読んでください」と著者が巻頭で述べている巻末の話。
読み終わったあと、ドキドキとした不安な気持ち、そして紙と鉛筆を使いたい衝動に苛まれました。
それと同時に「七人の禿」でも感じたような、してやられて心の中で「ニヤリ」としてしまう思いも。

なかなか楽しませてくれた一冊(^^)。
この本は病院怪奇譚集の3冊目ということなので、前の2冊も読んでみようと思います♪
タグ:ホラー
nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「怪談熱」福澤 徹三著:うーん、オチがしっくり来ない・・・ [本:ホラー&ミステリー]

怪談熱 (角川ホラー文庫)

怪談熱 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 福澤 徹三
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/12/25
  • メディア: 文庫
6点

怪談会で聞いてはいけない話を聞いてしまったホラー作家の運命を描いた「怪談熱」、
高倍率を乗り越え正社員になれた主人公が、初めて会社の花見に参加した。
しかし、何故か他の社員達は余所余所しい・・・一緒に入社した3人とその雰囲気に戸惑う主人公、
そして儀式がはじまった・・・という「花冷えの儀式」など、ホラー短編9編を収めた短篇集。

高熱にうなされて体中に不快な汗がまとわりつく・・・
そんなじっとりした湿度の高い空間を描くのが上手い作家だと思った。

作品の雰囲気はいいんだけど、ストーリー自体ではイマイチ楽しめなかった。
先が見えちゃったり、オチが期待外れだったり・・・。

人間のドロドロした怖さを書いてるのかと思ったら、オカルト的なオチだったり、
日本とは違う異国の価値観の怖さかと思うと、別の部分でオチたり。
せっかく作り上がっていた作中の世界が、それを変に壊す方向でオチてしまう話が多かった気が。
壊さない場合は、途中でオチが見えちゃう流れだったし。

全体的には読める話なので、オチを面白がれるかどうかで好きか嫌いか分かれる気が。
自分はダメだった。
タグ:ホラー
nice!(2)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「汚れた檻」高田侑著:すえた匂いのする怖さ [本:ホラー&ミステリー]

汚れた檻      (角川ホラー文庫)

汚れた檻     (角川ホラー文庫)

  • 作者: 高田 侑
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/02/25
  • メディア: 文庫
7.5点

うなぎ鬼」(リンク先感想)が面白かったので、これも読んでみた。

単調な仕事、安い給料、上司の陰湿な嫌がらせ、プレス工場で働く一郎は鬱屈した思いを抱えていた。
しかし、偶然、幼なじみの牛木に会ったことで一郎の運命は変わりだす。
牛木の父親が経営する会社に、破格の給料で誘われた一郎は、その話に乗る。
ところが、その後、一郎の家や、祖父の形見である牛小屋に、会社の者が勝手に出入りしはじめる。
牛木と関わった人間は不幸になる・・・そんな噂をきいた一郎を不気味な不安が襲う・・。

高田侑の作品は、錆びたトタン屋根のバラックが並び、廃墟みたいな工場が稼働する下町、
漂うドブ川の異臭、そしてそこで生活する人々・・・そんな雰囲気がいつも漂っている。

この作品の主人公も、プレス工場で安い給料で働かされ、将来が見えないジレンマ、
普通の仕事と家庭を持つ同年代の人達への劣等感などを感じている。
不景気の昨今、今はそうじゃなくても、いつそうなっても不思議じゃないと、
誰もが感じているような不安や閉塞感。
そういう部分が、読者の気持ちをより暗い方に揺さぶる気が。

八方塞がり的状態で、目の前に差し出された、破格の待遇。
疑心暗鬼になりつつも、ついついそれに乗ってしまう主人公の心情がリアルに描かれていて、
これまた、自分だってそうなるかも・・・と思ってしまう部分がある。

オカルトものではなく、実際にあるかも・・・・と思える、
現代社会のどこかに口を開けて待っていそうな落とし穴、利益の為なら何でもやる組織の不気味さ、
人は落ちる時は転がり落ちるように落ちる、そんな怖さが、リアルに描かれていて、
読んでいてぞっとする。

現代の実録犯罪物などに載っている、個人や組織に、周囲を固められ、
逃れられず被害者になっていく人の立場と、主人公の立場はすごく似通っているし。
お金にこまっている時に、ポンとお金を出してくれたり、親切にしてくれた相手を、無下にはできない・・・・
そういう普通の人としての感覚が、主人公を泥沼に引きずり込んでいくさまが怖い。

「うなぎ鬼」同様、人の心の弱さや愚かさが克明に描かれ、
人間や、現代社会の怖さを垣間見せてくれる、読んでて、ズーンと暗い気分、
言いようのない不安に包まれる一冊。
お勧め!
nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「そこに、顔が」牧野修著:王道過ぎるホラー、でもあんまり怖くない [本:ホラー&ミステリー]

そこに、顔が (角川ホラー文庫)

そこに、顔が (角川ホラー文庫)

  • 作者: 牧野 修
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/11/25
  • メディア: 文庫
6点

久々の牧野修のホラー。

大学教授だった父親が自殺したあと、高橋は不可解な気配を感じるようになる。
遺品として受け取った、父の日記には「顔が見える」との言葉が。
そして、高橋の周りでは自殺や無理心中が次々に起きる。
その何人かは「邪悪な顔」に悩まされていたらしい。
大学で秘密裏に行われていた実験と、自殺の頻発には何か関連があるのか??

すっごく王道なホラー。
ちょっと科学的要素も入ってます。

主人公の周辺で人がどんどん死ぬけど、主人公本人に、あまり危険が迫らないせいか、緊迫感が低め。
また、謎の解明も、先が読みたい!!と思えるような吸引力が無い上、
ラストは、あらららら~という急展開で終わってしまった感じ。

牧野修は上手いので、それなりに面白く読めるんだけど、
牧野修らしさがあまり感じられなく、「普通なホラー」になってしまっていた感じが。
牧野修だから期待し過ぎたか??

牧野修の他のホラー作品の感想一覧↓。
傀儡后
「リアルヘブンへようこそ」「屍の王」「ファントムケーブル」「スイート・リトル・ベイビー」
記憶の食卓
病の世紀
黒娘
蠅の女」これ大好き!!
楽園の知恵-あるいはヒステリーの歴史」「アロマパラノイド-偏執の芳香

忌まわしい匣 (集英社文庫)」の感想アップしてませんが、これも面白いです!

「そこに、顔が」は今までのホラー作品に比べると、かなり落ちる感じ。
でも、ホラー入門編としてなら楽しめるかな。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

「ひだり」倉阪鬼一郎著:伝奇ホラー、ラストが・・・(-_-;) [本:ホラー&ミステリー]


ひだり (角川ホラー文庫)

ひだり (角川ホラー文庫)

  • 作者: 倉阪 鬼一郎
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2009/04/25
  • メディア: 文庫
5点

倉阪鬼一郎の角川ホラー文庫3作目。
他の作品は「うしろ」(リンク先感想)と「すきま」。

どうも、角川ホラー文庫の倉阪鬼一郎の作品はいまいちなのが多い。
「うしろ」もいまいちだったし、「すきま」も読んだけど、面白くなかったので、感想も書いてないし。

「ひだり」は、「鳥居は必ず右足からまたぐべし」という右に拘った掟を持つ神社「比陀理神社」を祀る、
「比陀理」という街を襲う怪異の話。
校庭を走るのも必ず右回り、バスの運行路も、遠回りしてでも右回り、回覧板も右回り、
そんな細かい決まりがある街で、次々に凄惨な事故が起きる。
「左」を封印していたものが崩れたらしい・・・。
もう一度左を封印するには・・・。
封印された「左」とは何なのか??

伝奇ホラーだけど、読みやすくサクサク読める。
読みやすい割に、雰囲気が軽すぎるほどではないので、それだけなら許容範囲なんだけど、
ラストがなぁ・・・・。

倉阪鬼一郎は、ラストの盛り上がり部分で、それまでの話の雰囲気をぶち壊して、
変な風に盛り上げちゃう事がよくあるんだけど、この話もそう。
伝奇ホラーとして、じわじわ進んでいた話だったのが、最後の最後に、
ちょっと笑っちゃうようなドタバタB級ホラー的な盛り上がりになってしまっている。

がっかり。
nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:
前の30件 | 次の30件 本:ホラー&ミステリー ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。