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「レンズが撮らえた19世紀ヨーロッパ-貴重写真に見る激動と創造の時代」海野弘他著:写真があまり活かされてない・・ [本:歴史]

レンズが撮らえた19世紀ヨーロッパ―貴重写真に見る激動と創造の時代

レンズが撮らえた19世紀ヨーロッパ―貴重写真に見る激動と創造の時代

  • 作者: 海野 弘
  • 出版社/メーカー: 山川出版社
  • 発売日: 2010/12
  • メディア: 単行本
6点

19世紀に発明された写真。
当時撮られた写真を元に、カメラの歴史や、街並み、ファッションの変化や、
激動のヨーロッパの中没落していった王侯貴族達の姿、
万博やスエズ運河開通などの一大出来事、アールヌーボー・オペラなどの文化や芸術、
当時一世を風靡した高級娼婦など、19世紀ヨーロッパの状況を紹介した本。

内容は盛りだくさんだが、一つ一つが短めで内容が薄く感じるものが多かった。
また書き手が多い為、記事のクオリテイにばらつきがあり、
単に教科書的なまとめになってしまっている記事も目についた。

特に、「貴重写真に見る・・」というタイトルと関係ない、
アーティストなどの写真の横に、その業績を書いただけの構成で、
「写真」があっても無くてもになっている記事や、
掲載されている写真に価値が見いだせない(どれも古い写真なので貴重なのだろうが、
普通の本でも行われているような、ちょっとした資料として掲載されている使い方)ものも多く、
全体の印象が本のタイトルとイマイチ噛み合わなかったので、点数低め。

当時のヨーロッパの王族達の写真とその運命の章、当時のファッションの章(短いけど)は面白く読めた。
19世紀、王政が無くなり、各国の最後の王になった王家も多く、
その辺に興味がある人には面白いかも。

「ハプスブルク家の食卓-饗宴のメニューと伝説のスープ」関田淳子著:ヨーロッパ中世の宮廷の食がわかる本♪ [本:歴史]

ハプスブルク家の食卓 (新人物文庫)

ハプスブルク家の食卓 (新人物文庫)

  • 作者: 関田 淳子
  • 出版社/メーカー: 新人物往来社
  • 発売日: 2010/06/07
  • メディア: 文庫
7.5点

政略結婚により、中世ヨーロッパで大きな影響力を誇ったハプスブルク家。
そのハプスブルク家の食事をテーマにした本。

第一章「皇帝たちの食卓」は、ハプスブルク家の歴史を追いながら、
歴代皇帝の経歴と食事のメニューが紹介されている。

政略結婚によりいろいろな国とつながりを持ったハプスブルク家。
ハプスブルク家の歴史を通し、中世ヨーロッパの情勢がわかるだけでなく、
ハプスブルク家と他国とのつながりの影響が、宮廷の食卓に反映されていく様は、
ヨーロッパの食事の歴史でもあり、かなり興味深い。

スペインから、フランスから(フランスはイタリアから)、ハンガリーから、
ハプスブルク家が、それらの国と関係を深める度、変わる宮廷の食事。
現在のオーストリア料理が、様々な国、そして東方貿易などでもたらされた
香辛料や新しい材料の影響で、出来上がったということがよくわかる。

そういえば、現在行われている、フランス料理で一品一品出される給仕方は、「ロシア式給仕方」だとか。
ハプスブルク家では、19世紀になって取り入れられ、それまでは、
コース毎に2~3品同時に出される「フランス式給仕方」だったそう。

ハプスブルク家で愛された30種類を超える食材を使った「オリオ・スープ」の簡単なレシピも載っている。

また一世を風靡したハプスブルク家の悲しい末路についても読める章。
読み応えがある章でした。

第2章は「宮廷料理の舞台裏」。
ウィーン宮廷料理の成り立ちや、料理人の役割分担・役職などについて触れられている。

第3章は「華麗なるウィーンの宮廷菓子」として、
皇帝や皇族に愛されたお菓子やレシピの紹介だけでなく、
ウィーンの代表的なお菓子「ザッハ・トルテ」が生まれた背景などにも触れている。

第4章は「栄華の象徴-食器と銀器の饗宴」として宮廷で使われていた食器や銀器についての章。
大きな晩餐会だと銀器が足りずレンタルしたり、財政がきつくなると銀器を溶かして売ってしまったり、
宮廷というものを維持するのは大変なんだなーと思ってしまった。

メインは1章「皇帝たちの食卓」。
ハプスブルク家がたどった運命だけでも読み応えがある。
ハプスブルク家は、神聖ローマ帝国の君主になったり、
ヨーロッパに一大帝国を築いたカール5世を出したり、ハンガリーやスペイン、
ボヘミアの王様を出したり、あちこちで見かける為、混乱しがち。
その辺を系統立てて追うにも良い本。
ヨーロッパの食文化が、いろいろな国が相互に影響を与えつつ、
形成されていくのがわかるのも面白い。

お勧めです(^^)。

「図説 食人全書」マルタン モネスティエ著:カニバリズムに関する資料がたっくさん! [本:歴史]

図説 食人全書

図説 食人全書

  • 作者: マルタン モネスティエ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2001/03
  • メディア: 単行本
7.5点

カニバリズムに関する資料や写真、絵などを大量に集めた本。

ざっと章の見出しを紹介すると
「胃の記憶」「食人の起源」「なぜ人食い人種は人を食べるのか?」
「人食い人種たちの食人風習」「人食い人種の慣例的料理」「食糧としての食人」「復讐のための食人」
「神々と信者たちの食人」「悪魔とその使徒たちの食人」「食人療法」「食人犯たちのリスト」
「産業化・組織化された食人 21世紀の食糧難に対する答え」
と、こんな感じ。

とにかく膨大。

食人が太古から行われていた事が、「食人の起源」では触れられている。

また、人食い人種が人を食べる理由として、食糧として、相手の勇気を得る為、
死者肉体を滅ぼし魂が悪さをしないようにする為、身内の死体が虫に喰われないように・・・etc、
など部族によって違う様々な理由が記されている。

食人の儀式や料理法、味の感想なども詳しく載っている。
中世ヨーロッパなどにおける、宗教や悪魔崇拝による食人、
人の肉や骨を薬として使用する事についても、触れている。
大航海時代以降、冒険者や宣教師たちが遭遇した食人族に関する記述も多い。

戦争中や飢餓による食人、20世紀に入ってからの集団による食人などの事例や
(第二次世界大戦中のスターリングラードでの食人の話は初めて知った)、
カニバリズムで有名な殺人者たちの紹介もいくつか。

ただ、引用されている文献の信ぴょう性に関しては深い考察はしておらず、
真偽取り混ぜて、カニバリズム関する事例・文献をずらずら並べてあるという感じがする。
カニバリズムで有名な殺人犯に関しての記述も、
この本のテーマにあった部分だけが強調されたり、抜粋されてるものも。
ハードカバーの装丁であることもあって一見学術書っぽく思えるが、
実際はショッキングなカニバリズムの話を集めただけ、コンビニペーパーバックに近い気も。

それでも、この本を読む事でカニバリズムに関して、いろいろ考えさせられるのは確か。

人肉を食べるのと、獣肉を食べる事の違いは?
なぜ、その行為は現代社会で忌み嫌われるのか?
先入観が無いとしても、人肉を食べる行為に嫌悪感を感じるのか?
この本で、その明確な回答はなされていないが、何度も繰り返し問いかけられる疑問である。

また、遭難などで生き延びる為、人肉を食べた事件をも取り上げて、
「人を食べるために殺すのは罪だが、生き延びるために死体を食べるのは罪なのか?」
と、緊急の場合なら許されるのか?とも問いかける。

そして、最後に著者は、地球の60億人の内40億人が飢えている現状を打破するのは、
食人かもしれない・・・という考察を最後の章で展開している。
食用肉1人分を作るのに7人分の飼料が必要であり、アメリカで10%肉を食べるのを減らせば、
6000万の人が餓死から救われるとなっている。
ハンバーガー一個の為に、平均5m2の熱帯雨林を焼き払わなければならず、
家畜を飼育するために、多くの土地が焼畑地となっているという。
世界中の人に家畜の肉を提供するのは、水の問題、飼料の問題から考えて無理。
(全員が菜食主義になるというのは、あまり検討されずに数行で却下されてるのは気になるけど)、
しかし、手っ取り早く手に入る肉がある・・・それが人肉だという事だ。
それは、映画「ソイレント・グリーン」(原作ハリイ・ハリスン「人間がいっぱい」-リンク先感想-)の世界。
「食糧危機を救う=食人」の論理展開はつめの甘さも感じるが、価値観なんて変化するもの。

鯨捕鯨反対や、食用犬の反対など、価値観が違う食文化に対する反発に対しては、
いろいろ考えていたけど、

食人=それは最も嫌悪すべき行為

と、当たり前のように受け入れていた価値観を、そして食のタブー全般に関して、
もう一度考え直させてくれる本。
カニバリズムに興味がある方、食のタブーに関して考える事がある方にお勧め♪

「世界の民族地図」高崎 通浩著:歴史上の民族移動と今の世界とのつながりから見えてくるものは!面白い!! [本:歴史]


世界の民族地図

世界の民族地図

  • 作者: 高崎 通浩
  • 出版社/メーカー: 作品社
  • 発売日: 1997/12
  • メディア: 単行本

8点

「世界の民族地図」というと、現在の民族地図を思い浮かべるけど、
本書の場合、紀元前までさかのぼり、現在に至る民族の移動、定住、
侵略、民族や文化の融合、宗教的影響・・・・民族という視点から、世界の歴史、
そして、現在の民族紛争の原因や現状を考察しており、大変興味深く面白い内容になっている。

こうやって民族の歴史を眺めていくと、日本というのは、特殊だなとも思う。
多くの場所では、他民族により侵略を受けたり、侵略したり、
その中で、民族や文化が融合し、新しい文化へと変貌している中、
文化の影響はあっても、侵略されるという経験をほとんどしないまま発展した国なんだということが、
改めて認識できた。

そういえば、フランスはラテン系。
ゲルマン系とは別だと思ってたんだけど、ゲルマン民族が侵攻した地で、
文化的にラテン語系の言葉を使うようになったんですね(^^;)。

元々、ヨーロッパはケルト民族が広がっていたけど、ほとんどが駆逐され、
イギリスなど一部にしか残っていないとか、フランスのノルマンディーは、
バイキング達が入植した地域で、のちに文化がラテン化した場所だとか、
ヨーロッパの歴史でもいろいろ目新しい事が多かった。

最近では否定されている説も展開されているけど、ヨーロッパだけではなく、スラブ、アジア、
アフリカ、インドなど、世界各国の民族の移動とその影響が語られている。

結局、人類の歴史や文化は、侵略と切っても切れない仲なんだなーとも思う。
最初に入植した民族が住んでるところは少なく、他民族による侵略が行われている事が多いし、
他地域を侵略した民族の中には、元々住んでいた場所が侵略されて、別の地域に・・という例も多い。

現在、民族紛争が世界各地で起きている。
国という概念の中に、民族という概念が入ってきた時、
多民族国家の場合、軋轢が生じやすい事や、内乱、独立運動になりやすいのが、
この本を読むとよくわかる。

民族、宗教、言語などに関する情報が、教科書的にギーっしり詰まっているので読みづらいけど、
興味深い内容が多く、すごく面白かった一冊!

図書館に返したあと、自分で欲しくて、絶版だったのでネットでわざわざ古本を購入しちゃいました。
学生の頃勉強したヨーロッパ史などは、知識の穴埋めができてよかったけど、
詳しくないスラブ史などの話は、あまりちゃんと理解できず、またあとで読み直したいと思ったから。

「ルネサンスの巨匠たち」杉全美帆子著:「西洋絵画よみとき66のキーワード」 [本:歴史]

イラストで読む ルネサンスの巨匠たち

イラストで読む ルネサンスの巨匠たち

  • 作者: 杉全 美帆子
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2010/04/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
7.5点


すぐわかる西洋絵画よみとき66のキーワード

すぐわかる西洋絵画よみとき66のキーワード

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京美術
  • 発売日: 2008/11
  • メディア: 単行本
6.5点

西洋絵画あれこれ2冊。

「イラストで読むルネサンスの巨匠たち」は、ルネサンスを、
プロトルネサンス、初期ルネサンス、盛期ルネサンスの3期に分け、
それぞれの時期の代表的な芸術家を、その芸術家を代表する作品、絵画史上における影響、
人となりがわかるエピソードなどをイラストを交えた内容で、
簡単にわかりやすく、そして面白く紹介した本。

プロトルネサンス期では、ルネサンスの幕開けのきっかけを作ったというジョットが紹介されている。

かなりデフォルメされた可愛い似顔絵には、「ルネサンスの始祖」
「近代絵画(西洋絵画では?)の父」などの特徴以外にも、
「見た目はいまいち」「愛想はいい」「皮肉屋」「愛嬌もある」・・・などの注釈が。

そして、何故彼が「ルネサンスの始祖」と呼ばれるのかとか、
ジョットの絵が、その前のビザンチン様式とどう違うのかなど、ちょっと真面目な説明のページがあり、
その後は、コママンガで、彼のちょっと笑えるエピソードがいくつか紹介されている。

「ドナッテロ」「フラ・アンジェリコ」「ミケランジェロ」「レオナルド・ダ・ヴィンチ」「ラファエロ」・・
など他にも有名なルネサンス時代の巨匠が、「ジョット」と同じような形式で紹介されており、
それぞれの作品の解説を読むだけでなく、性格やその作品が作られた背景がわかることにより、
とても身近に感じられるし、今まで名前だけ知っていて曖昧だった芸術家の特徴がすごくよくわかる。

「パオロ・ウッチェロ」は、遠近法遠近法遠近法、とにかく遠近法に拘った画家で、
「遠近法はなんて可愛いんだ」と言ったとか、
フィリッポ・リッピは、修道士なのにスキャンダルまみれ、でも彼の書く女性はピカイチだったとか・・。

絵画の変遷に関しては、実際の絵による比較、解説があるので、絵画の移り変わりがわかりやすい。
今まで「何でこの絵が有名なんだろう?」と思っていたものが、立体感を出したり、
遠近法を使ったり、当時にしては革新的な手法を取り入れているのが、比較によりすごくよくわかった。

ルネサンス美術の超初心者向け入門書として、勉強になるし、楽しく読めるしと、
すごくお勧めの一冊(^^)。

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「西洋絵画よみとき66のキーワード」は、西洋絵画に描かれた様々なアイテムの意味を
66のキーワードで解説した本である。

「太陽」「月」「川」「犬」「猫」「枯れ木」・・・etc。

例えば、「百合」は、「聖母マリアの純潔」「受胎告知の際に描かれる事から、
大天使ガブリエルのアトリビュートになった」などの説明が。
「バラ」も、「聖母」と結び付けられ、「ナザレトの家の聖母子」(スルバラン)の絵には、
バラと百合が女性の側に描かれている事から、女性が聖母マリアであることが暗示されていると
解説されている。

面白い記述もいろいろあったけど、例に挙げられている絵画が載っていない事も多く、
(各キーワード2枚ほどの絵しか紹介されておらず、しっかり解説があるのは1枚のみ)
西洋絵画に詳しくないと、「????」となってしまう事が多かった。
また解説も、論説調で読みにくい。

内容的にはそれほど深くないのに、読むにはある程度の知識が必要・・・と、
どんな読者を想定しているのか、悩んでしまう内容。

66もキーワードを設定せず、もう少しキーワードの数を絞って、
解説した方が面白かったような・・・。

「図説 浮世絵に見る江戸の一日」「絵が語る 知らなかった江戸のくらし 庶民の巻」江戸のくらし入門♪ [本:歴史]


図説 浮世絵に見る江戸の一日 (ふくろうの本/日本の文化)

図説 浮世絵に見る江戸の一日 (ふくろうの本/日本の文化)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2008/08/13
  • メディア: 大型本
7点


絵が語る 知らなかった江戸のくらし 庶民の巻 (遊子館歴史選書)

絵が語る 知らなかった江戸のくらし 庶民の巻 (遊子館歴史選書)

  • 作者: 本田 豊
  • 出版社/メーカー: 遊子館
  • 発売日: 2008/06
  • メディア: 単行本
5点

なんとなく知ってる江戸時代の生活、時代劇で描かれる江戸時代の生活、
でも、実際とはかなり違ってたりするし、知らないこともいろいろある。
そんなに難しい本は読みたくないけど、ちょっと詳しくなりたいなーって人向けの2冊。

「図説 浮世絵に見る江戸の一日」の特徴は「時間」に重きを置いたこと。

丑の刻参りとか、草木も眠る丑三つ時って言葉は有名で、
丑の刻って真夜中なのはわかるけど(丑三つ時は夜中の3時~3時半くらい)、
卯の刻とか明六つなんて言われても、何時だかわからないって人は多いと思う。

この本では、「寅の刻」(暁七つ)-今の午前4時~5時頃-から順番に時間を区切り、
その時間に関係ある浮世絵を解説しつつ、その時間の江戸の人々の生活を紹介している。
カラーの絵が多いのも嬉しいし、解説も簡素だけど、
面白いものが多く(商家で下働きの小僧達がお使いの合間に遊んでいたり)、
簡単に読めて、なかなか楽しめる一冊。
今まで曖昧だった江戸の時間に関しても、わかるし。

ざっくり江戸の一日を知りたい人にお勧め(^^)。

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「絵が語る 知らなかった江戸のくらし」は、上の本に比べると、文章メイン。

こちらも浅く江戸の庶民の生活を、いろいろな角度から紹介していて面白いのだけど、
気になる事がいくつかあったので点数低め。

一つは、説明と絵のページがずれていることが多く、とても参照しにくい。
しょうがないと思える部分もあるけど、工夫によっては同じページにおけたのでは??
と思うものも、多かった。

一番気になったのは、以下のこと。
「知らなかった」系は、どうしても奇を衒った内容を狙うためか、
著者独自の主張がさも一般論のように書いてあったり、
詳細を省くので奇抜な説になってしまったりという傾向があるのだけど、
これも、残念ながらそうなってしまっていた。

「生類憐れみの令」が「犬食いをやめさせる為で、犬の絶滅を防いだ」とか
「シャボン玉」の歌が「間引きを歌った歌だとか」(こちらは広く解釈すればありかなとも思えるけど、
この歌が作られた本来の背景が書いていないなら、極論でしかないと思う)、
他にも、一般的に言われていることと、あれれ違うなーということがいろいろ。
一般的に言われているのとは違う自説として展開するならいいけど、
他説を出さず、「これが真実」的な言い方をしているのが気になった。

こういうのがあると、ほかの「あれれほんと??知らなかった~」というのも、
歴史的裏付けがちゃんとあるのではなく、著者独自の主張でしかないんじゃないかと思えてしまって、
読む気が失せやすい。

ただ、江戸の生活に関しては、今の常識とはかなり違う事も多く、読むと面白いので、
興味がある人は、この手の本を読んでみるのは楽しいと思う(^^)たくさんでてるし。

「図説 妖怪画の系譜」妖怪画から現代の漫画へ・「手にとるように民俗学がわかる本」岸祐二著 [本:歴史]


図説 妖怪画の系譜 (ふくろうの本/日本の文化)

図説 妖怪画の系譜 (ふくろうの本/日本の文化)

  • 作者: 兵庫県立歴史博物館
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2009/04/22
  • メディア: 単行本
7点


手にとるように民俗学がわかる本―日本の不思議を楽しもう! (手にとるようにわかるシリーズ)

手にとるように民俗学がわかる本―日本の不思議を楽しもう! (手にとるようにわかるシリーズ)

  • 作者: 岸 祐二
  • 出版社/メーカー: かんき出版
  • 発売日: 2002/05
  • メディア: 単行本

7点

「百鬼夜行絵巻」などから始まる、妖怪の愛玩化。
妖怪は、怖いだけでなく、ユーモラスな存在であり、社会風刺の中でもいろいろ活躍している。
妖怪画から大衆文化を捉えるだけでなく、妖怪画の現代の漫画への影響や、
昭和の水木しげるによる妖怪ブームなどにまで言及した本。

噴出しの元になった絵とか、今に通じるようなコミカルな表現・表情の浮世絵が紹介されていたりと、
「日本独自の漫画文化」の流れがわかるようで興味深いものが多い。

室町、江戸時代の妖怪画を見るのも、画家による作風の違いを比較するのも楽しい。
貸本の話や、最近の妖怪マンガの紹介があり、諸星大二郎の短編漫画も載っている。

「ゲゲゲの鬼太郎」の元「墓場鬼太郎」は、紙芝居の「墓場奇太郎」。
その「墓場奇太郎」は有名な怪談「飴屋の幽霊」が原点であるとか知らなかった。
「墓場鬼太郎」が、諸事情から水木しげる以外にも描いてる漫画家がいるなども、知らなかったし。

少し前テレビでも放送されたけど「墓場鬼太郎」に出てくる「鬼太郎」は、
人を地獄に落としたりする、性格の歪んだ奴だ(「墓場鬼太郎」のアニメは面白かった)。
それが、「ヒーロー化」していく過程なども、面白く読めた。

いろいろ盛りだくさんで、なかなか楽しめた一冊。
妖怪画の歴史をざっと追うには最適。

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「手にとるように民俗学がわかる本」は、日本の民間信仰、妖怪話、桃太郎などの昔話、
七福神、招き猫・・・・etc、様々なことの由来や時代による変化などを、いろいろな説をあげながら、
シンプルにわかりやすくまとめた本。

今、日本で信仰されている毘沙門天、夷、福禄寿・・・などの七福神。
夷を除くと、外来の神で、元になった神とはかなり性格を異にしていることなどが、
わかりやすく解説してあったりする。

また「口裂け女」などを例にあげ、民間伝承と現代の都市伝説の共通点などが述べてあったり、
狐、蛇、猫などに対する日本人の持つイメージなどもあげてある。

右ページに解説、左ページに図や絵を用いたシンプルなまとめ、
という構成なので、かなりサクサク読める。

「鯛は何故縁起がよいのか」「子守唄の謎」「便所と便所神」など、
民俗学雑学本という感じで、面白く読めた。

「終わらぬ「民族浄化」 セルビア・モンテネグロ:木村 元彦著 世界は公平ではない・・・・ [本:歴史]


終わらぬ「民族浄化」 セルビア・モンテネグロ (集英社新書)

終わらぬ「民族浄化」 セルビア・モンテネグロ (集英社新書)

  • 作者: 木村 元彦
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2005/06/17
  • メディア: 新書

7.5点

NATOが介入し、一応一段落したように見えたユーゴ紛争。
しかし、悲劇は終わっていなかった。
当時、セルビア人による民族浄化が大々的に報道され、悪役となったセルビア。
私も、このニュースはよく覚えている。
しかし、逆の事も行われていた。
アルバニア人によるセルビア人の虐殺。
NATO介入後も、セルビア人、アルバニア人両方で誘拐され殺害された民間人は多数。
家を奪われ、追い出されたセルビア人も多数。
しかし、マスコミはセルビア人の悲劇に関しては口を閉ざしていた。
セルビア人の子供が、アルバニア人のテロに無差別に殺されても、ほとんど報道されず、
逆にアルバニア人の子供が被害にあえば、セルビアの非道さを宣伝するように世界的に報道される。
昔、敗戦後のドイツや日本の民間人が殺されたりしたことが、何年も埋れていたように、
敗戦したセルビア人は故郷を終われ、家族を殺され、家を略奪されても、誰も注目しないし、助けてくれない。
悪者とされ敗戦した国の人々に国際社会は冷たい。
現地に入っている平和維持軍ですら、追われるセルビアの民間人には救いの手を差し伸べない。
ルワンダで、虐殺されたツチ族に、手を差し伸べなかったように・・・。

また、イラクでも見られる、欧米諸国の介入が、内紛を起こし悪化させた状態が、ユーゴでも起きていた。
当時、欧米で、NATOによる介入に異を唱えた人は、民族浄化を独裁政権を擁護していると
各方面からかなりのバッシングを受けたという。
表面だけのマスコミの報道を信じる大衆の怖さも、ここにはある。

著者は、アルバニア、セルビア、どちらにも偏らないことを意図し取材をしている。
そこから見えてくるのは、被害者側と報道されているアルバニア人だけでなく、
セルビア人も、同じような悲劇に見まわれている事、
国際社会の介入がより状況を悪化させている可能性が高い事・・・・etc。

ユーゴ紛争に関しては、
宮嶋茂樹の「不肖・宮嶋空爆されたらサヨウナラ―戦場コソボ、決死の撮影記 (祥伝社黄金文庫)」と
サラエボ旅行案内―史上初の戦場都市ガイド」ぐらいしか読んでおらず、
今回、この本を読んでも、状況が複雑過ぎて、自分の勉強不足を感じる結果になってしまった。

きっと、ユーゴ紛争を知るには、ユーゴスラビアができた経過、チトー大統領の業績など、
紛争前の状態から、ちゃんと追わないとダメなのだろう。
ちなみに、宮嶋茂樹の「空爆されたらサヨウナラ」も「サラエボ旅行案内」も面白いです。
「サラエボ旅行案内」は、セルビア側に包囲され孤立し、
銃弾飛び交う戦場都市となったサラエボで暮らした著者による、戦場都市サバイバルガイドである。
過酷な生活を、ユーモア溢れる筆で表現している一冊。
絶版なのが残念。

この本の前半のメインになっているコソボ紛争は、セルビア領ではあるがアルバニア系住民が増えたコソボで、
独立運動がおき、それを弾圧したセルビア側に対し、NATOが攻撃をしかけた・・・というもの。

コソボは、古い歴史がある場所で、宮嶋茂樹による上手い例えに、
「京都に他の国の人間がどんどん増え、ある時独立する」と言い出したようなものというのがある。
アルバニア人が多く、アルバニアとも近い為、独立気運が高かったが、
セルビア人にとっても大切な場所であるのだ。
コソボでは、少数派のセルビア人の方が立場上有利であり、その結果裕福、
多数派のアルバニア人は不満を持っていたとも言う。
それが独立気運の高まりにつながったのか??

独立気運の高まりが、隣国アルバニアの影響も大きかったのも事態を悪化させている。
ユーゴより貧しいアルバニアからの移民が、NATO介入後、元々住んでいたセルビア人を追い出し、
財産を略奪している。
追い出されたセルビア人は、食べるものも無い(国際社会はここでも冷たい)難民キャンプに
閉じ込められている。
元々ユーゴに住み、セルビア人と共に暮らしていたアルバニア人ではなく、
外部から入った民族主義組織がセルビアの行った民族浄化と同じようなことをしている。
繰り返される負の連鎖。
NATOが、セルビア政府を倒すため支持した組織は、麻薬密売にも手を染めており、
旧ユーゴではNATO介入後、麻薬が蔓延しだす。
警察の役割を、その組織が担うようになった為、取り締まりが無いも同然になったからだ。

NATOの介入は、欧米では日本のような立場のドイツが自国主導の軍事介入の前例を作る為に
(アジアで日本が軍事行使しようとするのと同じような反発が欧米ではドイツに対してあった)
勇み足で行ったと宮嶋茂樹は書いていた記憶が。

誰が悪いのか?どうすれば良かったのか?今のユーゴはどうなっているのか?

うーん、あまり良く知らないせいで、雑多な情報が頭の中でまとまらず、
ちゃんと整理ができません。
勘違いしてる部分、ちゃんと消化できてない部分が、いっぱいある気がします。
もう少しユーゴ紛争に関しては読んでみようと思います。

「マヤ」「アンデスミイラ」「インカ」NHK失われた文明シリーズ [本:歴史]


NHKスペシャル 失われた文明 インカ

NHKスペシャル 失われた文明 インカ

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2007/06
  • メディア: 単行本
7.5点
NHKスペシャル 失われた文明 アンデスミイラ

NHKスペシャル 失われた文明 アンデスミイラ

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2007/06
  • メディア: 単行本
8点
NHKスペシャル 失われた文明 マヤ (NHKスペシャル失われた文明)

NHKスペシャル 失われた文明 マヤ (NHKスペシャル失われた文明)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2007/06
  • メディア: 単行本
7点

下書きして放置してあった記事のサルベージ。

中南米の古代文明、マヤ・アステカ・インカ。昨年ジャレド・ダイアモンドの「文明崩壊」 を読んだ時、自分がこれらの文明の違いについてかなり曖昧なことに気がついた。

ということで、概略だけでも知ろうとNHK「失われた文明」シリーズのこの3冊を読んでみた。

中米に栄えたマヤ文明を扱った「マヤ」と、
南米太平洋岸アンデス山脈に栄えたインカ文明を扱った「アンデスミイラ」と「インカ」。

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3冊の中では「アンデスミイラ」が一番面白かった。

最初に、未だほとんど解明されていない「オルメカ文明」の話が載っていて、
まず、それに興味を惹かれた。

「アステカ」や「マヤ」の母体ともなった文明らしく、頭部をかたどった巨石が有名。
紀元前1250年頃にメソアメリカで栄えたとされるこの文明で使われているモチーフが面白い。
インド風であったり、中華風であったり(漢字に似た文字もあるという)、アフリカ風であったり。
太古の文明なのに、洗練されたデザインと現実的な文化だったらしいことが伺われるらしい。
が、ほとんど解明されていない謎の文化なのだという。

この文明の詳細がもっと明らかになるといいのにと思ってしまった。

そして、この本のメインテーマは「ミイラ」。
ミイラというとエジプトが有名だけど、ミイラ文化といえばアンデスなのだそうだ。

アンデス地方では、先祖をミイラにして、埋葬はせず一緒に暮らしていたという。
今でも、その文化が残り、毎日ミイラに話しかけたり、いろいろ相談している村があるそうだが、
ほとんどは、この習慣を気味悪がった当時の侵略者スペイン人によって焼き払われてしまったという。

昔、アンデス地方では、ミイラは家の中に一緒に住み、毎日着替えさせて貰い、
食事を用意し、ミイラになった故人に会うために訪れる人も多かったらしい。
死んでからも生きているように扱われたミイラ。

インカ帝国の皇帝などは、死んでミイラとなってからも家来や神殿を持っていた為、
年が経つほど、皇帝の数が増えるという状態になっていたという。

またミイラの副葬品やミイラ自体を調べることによって解明された様々な事も乗っている。
ミイラのDNAを調べることにより食べていたもの、出身地などもわかるという。

他に興味深かったのは、アンデス先住民が纏足ならぬ、頭の形を無理矢理に矯正していたことが、
発見された頭蓋骨によってわかっているという。
変形したその頭蓋骨の写真が載っているが、かなり異様である。

南米でのミイラ思想の広まり、ミイラの扱われ方、ミイラの研究から判明した事など、
ミイラに関して盛りだくさんの本。
興味深い内容が多くて、楽しんで読めました(^^)。

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「インカ」は、マチュピチュ遺跡についてと、インカ文明の特色についてが述べられている。

インカ帝国は、13世紀頃成立し、最盛期にはコロンビア南部やエクアドル、チリ中部まで
南北4000キロに及ぶ広い領域と、80の民族一千万人を統治したと言われている。

金属加工、灌漑、織物などの優れた技術を持ち(麻酔を使った脳外科手術もしていたとか)、
カミソリの刃が入る隙間もない石組みが有名。
各都市は、整備された道路でつながり、異文化を容認したこともあり、
また支配下の様々な文化の交流を促したという。

そんなインカ帝国の特色、滅亡の理由、当時の人々の生活、そして現代に残る文明の名残などが、
数多くのカラー写真と共に紹介されている。
インカ帝国について、概略を知りたいならお勧めの一冊。

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「マヤ」は、ピラミッド状の遺跡訪問をカラー写真入りで紹介している前半は、
ガイドブックや紀行っぽい感じ。

中盤は、ティカルの遺跡を中心に、マヤ文明のピラミッドの作り方(運びやすいサイズの石、土、
そして不燃ごみでできているらしい)、水の利用の知恵、生贄の風習、農業など、
マヤ文明がどんなものだったのかが、述べられている。

遺跡の紹介(訪問記)などが多いので、マヤ文明についてもう少し詳しく知りたいという気持ちが残った。

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3冊ともカラー写真が豊富で、厚くなく読みやすいので、
中南米の文化に関しての入門書としてはいい本だと思う(^^)。

「四大文明-メソポタミア」NHKスペシャル「四大文明」プロジェクト:前半簡単、後半ちと難解(^_^;) [本:歴史]


四大文明 (メソポタミア) (NHKスペシャル)

四大文明 (メソポタミア) (NHKスペシャル)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2000/07
  • メディア: 単行本

7.5点

「エジプト」「インダス」「メソポタミア」「中国」の四大文明。

現在のヨーロッパ文化の元でもある「メソポタミア文明」。
でも、4つの文明の中では、一番印象が曖昧(私の中では)。
図書館で見かけたので、借りて読んでみました。

前半は、湾岸戦争頃の、イラク国内の遺跡の取材がメイン。
メソポタミア文明について、簡単にわかりやすく説明してある。

メソポタミア文明の中にも「シュメール」「アッカド」「バビロニア」「アッシリア」という
4つの傾向がかなり違う文明が存在しており、そのせいで印象が曖昧になっているのかも・・と思った。

NHKの取材では、それらの文明の遺跡を訪れ、
現在の生活にも残る文明の痕跡と照らし合わせて紹介している。
メソポタミア文明を大雑把に知るには、いい内容。

しかし、後半は専門家による「文明論」や「メソポタミアの建築物や石造、ファッションなどに関する考察」
「メソポタミア文字の歴史」「ハンムラビ法典の解説」「アッシリア王シャムシ・アダド一世の研究」など
かなり狭く深い内容に。

あまりに細かく説明されすぎてついて行けないものも(^_^;)。
「メソポタミア文字の歴史」あたりは、言語学についての基礎知識がないとちと辛いものが。
アルファベットにつながる楔形文字の歴史は、ちゃんと系統立ててわかれば面白いと思うんだけど、
今の私の言語学の知識レベルだと、小学校の歴史しか学んでいない状態で、大学の講義を聴くような状態。
多くの民族、国が入れ替わり立ち代り起きた地でもあるので、民族名や国名に加え、
アッカド語だ、ウガリット語だ、西セム語系だ、フルリ語だ・・・ととにかく膨大な固有名詞が。

「ハンムラビ法典」などは、現代の法律よりも進んだ部分があったりして面白かった。

メソポタミア文明は、楔形文字が刻まれた粘土板が大量に発掘されているので、
解読できた文字に関係する文明に関しては、かなり詳細なことがわかっているらしい。

一番印象に残ったのは、シュメール時代に書かれた粘土板に残された当時の人々の気持ち。

「快楽のためには結婚、よく考えてみたら離婚」
「楽しみ、それはビール、いやなこと、それは遠征」
「パンのあるときは塩はなし、塩のあるときはパンがない」
「いつかは死ぬのだ、遣ってやろう。長くも生きたい貯蓄しよう」

数千年前に生きた人々も、今の人も変わらないんだなーとしみじみ思ってしまった。

書かれている内容の難易度に差があるけど、興味がある部分だけ読んでも楽しめると思います(^_^)。

「世界の食文化4-ベトナム・カンボジア・ラオス・ミャンマー」文化の繋がりと広がりがよくわかる! [本:歴史]

世界の食文化 (4) ベトナム・カンボジア・ラオス・ミャンマー

世界の食文化 (4) ベトナム・カンボジア・ラオス・ミャンマー

  • 作者: 石毛 直道
  • 出版社/メーカー: 農山漁村文化協会
  • 発売日: 2005/01
  • メディア: 単行本


7.5点

ベトナム・カンボジア・ラオス・ミャンマーの現在の食文化を調査・比較し、その共通点や違いから、歴史的背景と食文化の広がり方・影響を推測している本。

元々中国南部に住んでおり、追われて南下したと言われているベトナム人の食卓は、中国の影響が色濃く出ているという。
それは、食材や調理方法などだけではなく、調理器具にも現われている。

ベトナム南部は、クメール王国であった時期が長く、逆にタイやインド系の東南アジア文化が色濃く残っている。
なのでベトナム北部と南部では、かなり料理も味も違うらしい。

また、カンボジアの料理は、タイとラオスとベトナムを足して3で割ったような料理と評している。 そして、これは周囲から影響を受けたのではなく、カンボジアの元であるクメール王国の歴史の古さから、カンボジアがその料理の起源であり、その周辺の国々に影響を与えたのではないかと推測している。

東南アジアのこの4カ国は、ほぼご飯文化の国なので、日本との共通点も多い。

いまはそうとも言えないが、「しょっぱいおかずで大量のご飯を食べる」というのは、昔の日本の食文化と同じである。

でも同じご飯文化といっても、もち米が主食であるラオス、米を炊いて食べたり、米粉にして麺にしたり、薄く延ばしてライスペーパーにしたりと食べ方が多様なベトナム、白米を食べる傾向が強いカンボジア、米を食べるためにおかずが存在する・ふりかけのようなものだけでもオーケーというように大量の米を食べるミャンマーと、国毎に違いがあるというのが面白い。

スパイスの使い方も、辛めなカンボジア(激辛ではないらしい)と違い、マイルドなラオス、使う香辛料が少ないミャンマーなど、その違いを調べ、その文化的背景を探ったりしている。

食文化を見る事で、その国の生活や、地理的影響、歴史的背景や文化の繋がり、そして民族の広がりなど、多角的に考察しようとしているのが、とても面白かった。

世界のお弁当」が物足りなく感じてしまったのは、この本を読んだ後に、読んだからかも。

また、各国のいまの食文化についてもかなり詳しく書いてあるので、これらの国に旅行に行くなんて場合にも参考になると思う。
何カ国か回る人は、この本を読んでいくと、各国の料理の違いがよくわかってより旅行での食事が楽しめそうでもある。
日本人の口には合わないと言われているミャンマーの食事について、特にそう言及していないのは、著者が平気だったのか、それとも敢えて書かなかったのか気になるけど(^^;)。


「食と文化の謎」ヒンズーの牛神聖視からカニバリズムまで・・ [本:歴史]

食と文化の謎 (岩波現代文庫)

食と文化の謎 (岩波現代文庫)

  • 作者: マーヴィン ハリス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/10
  • メディア: 文庫

7.5点

ヒンズー教は何故牛を神聖視し食べる事を禁止しているのか?
イスラム教は何故豚を嫌悪し、食べる事を禁止しているのか?
フランス人は馬肉を食べるのに、アメリカ人やイギリス人は馬肉を食べるのを嫌がるのか?
ペットとして可愛がっていてもそれを食べてしまう人々と、ペットを食べることを信じられない事として食べない人々の文化の違いは?
昆虫食は嫌悪すべきものなのか?食べない西洋人の方が少数派ではないのか?
人肉食(カニバリズム)が起きる文化的背景とは?

などなど、いろいろな視点から、食と文化の関係について考察した本。
食といっても、食全般ではなく、主に「動物性たんぱく質」の摂取について書かれている。

この人の著書「 ヒトはなぜヒトを食べたか―生態人類学から見た文化の起源 」を10年以上前に読んだので、何となく知っている部分は多かったけど(読み出してから、同じ著者だと気がついた(^^;))、この本よりいろいろな角度から考察してあり、面白く読めた。

ただ、訳者が後書きで「多くの人類学者が、ハリスを、うさんくさく、忌むべき物とタブー視している」というような事を書いているのに、頷いてしまう側面も。

著者ハリスは、食と文化の関係を、コスト(代価)とベネフィット(利益)で説明しようとしている。
インドの貧しい農民にとって、ミルクを出し、畑を耕してくれる牛を食べることは、経済的損失が大きい・・(他にもいろいろな説明があった)、牛を食べないほうが長期的に見て利益があったことが、牛を食べないにつながったなど、ほとんどの事例に、コストとベネフィットの関係を持ち出している。

なるほど~と思う部分もあるけど、これは強引じゃないの?自分に都合のよい例だけ出してるんじゃないの??って思ってしまうこともしばしば。

それでも、肉食に関する歴史的・民俗学的・地理的、いろんな視点からの膨大な事例や知識が詰め込まれていて、読み物として面白い一冊。

お勧め!

「ヒトは食べられて進化した」 [本:歴史]

ヒトは食べられて進化した

ヒトは食べられて進化した

  • 作者: ドナ・ハート
  • 出版社/メーカー: 化学同人
  • 発売日: 2007/06/28
  • メディア: 単行本

6点

ヒトの進化には、被捕食者であった事が大きく関わっていて、それはどんな影響を与えたのか?
みたいな事が書いてあるかと思って読んだんだけど、ちょっと期待外れ。
 
この本のメインテーマは、太古の人類が勇猛な捕食者であったというイメージを払拭し、ひ弱な被捕食者であったという事を多くの人に認識させる事。
 
その為に、繰り返し繰り返し、人類が被捕食者=狩られる存在であったということを発掘された化石や、現在でも人や霊長類が猛獣に襲われる例を挙げて説明している。
 
鳥に食べられ、猛獣に食べられ、蛇に食べられ・・そんな説明だけで、本の2/3くらいが費やされている。
 
まぁそれはそれで面白いのだけど、逆に「何故人が被捕食者であったことを、ここまで頑張って証明しなければならないのか?」という疑問も残る。
 
この本では、人類の進化の歴史を研究する分野では、人類=捕食者だったというのが定説で、被捕食者であったことを認めようとしない人が多いようなことが書いてあるけど、ほんとなのか??と思ってしまった。
 
本書でも述べられている通り、今だって人が猛獣に襲われ命を落とす例は多い。昔ならもっとあっただろう。
それなのに、被捕食者であった事を認めない人達が、人類の進化を研究しているというのだろうか??
 
とにかく、個人的には当たり前だと思っていることを、さも新事実であるように、繰り返し述べられるので、それに辟易してしまった(^^;)。
 
そして、人が被捕食者であったことと、人類進化の関係は、それほど詳しく語られていなかった為、自分の期待していた本ではなかった。
だから点数低め。

「巨匠に教わる絵画の見かた」「悪魔のダンス」「マリアのウィンク」他、西洋美術に関する本 [本:歴史]

鑑賞のための西洋美術史入門

鑑賞のための西洋美術史入門

  • 作者: 早坂 優子
  • 出版社/メーカー: 視覚デザイン研究所
  • 発売日: 2006/07
  • メディア: 単行本
 
巨匠に教わる絵画の見かた

巨匠に教わる絵画の見かた

  • 作者: 視覚デザイン研究所
  • 出版社/メーカー: 視覚デザイン研究所
  • 発売日: 1996/10
  • メディア: 単行本
 
天使のひきだし―美術館に住む天使たち

天使のひきだし―美術館に住む天使たち

  • 作者: 視覚デザイン研究所・編集室
  • 出版社/メーカー: 視覚デザイン研究所
  • 発売日: 1995/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
悪魔のダンス―絵の中から誘う悪魔

悪魔のダンス―絵の中から誘う悪魔

  • 作者: 視覚デザイン研究所・編集室
  • 出版社/メーカー: 視覚デザイン研究所
  • 発売日: 1996/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
マリアのウィンク―聖書の名シーン集

マリアのウィンク―聖書の名シーン集

  • 作者: 視覚デザイン研究所・編集室
  • 出版社/メーカー: 視覚デザイン研究所
  • 発売日: 1995/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
視覚デザイン研究所が出している、西洋美術に関する本を続けて読んで見た。
どれも、なかなか面白かった。
 

 
「鑑賞のための西洋美術史入門」は、古代から現代まで、その時代時代の美術の特徴を簡単に説明している。
ザーっと西洋美術の流れを追いかけるには、とても参考になると思う(現代美術は説明読んでもよくわからなかったけど(^^;)絵を見てもわからないんだけど・・)。
ただ、画家1人1人についての説明はあまり無く、西洋美術についての情報(「ヘレニズム」についてとか、「印象派」についてとか)が簡潔に大量に詰め込まれているので、少しでいいので基礎知識がないと辛いかも。
 

 
「巨匠に教わる絵画の見かた」は、著名な画家を1人1人ピックアップして、その特徴、西洋美術への影響、当時の評判、他の画家からの評価などを載せている。画家同士の関係や、どの画家が誰から影響をいるのかなどがわかり、面白かった。
画家の可愛い似顔絵に噴出しをつけて、その意見を述べさせているのは、親しみやすい。しかし、頭の中で情報が整理しにくいという難点も。
上記の中では一番お勧め!
 

 
「悪魔のダンス」「天使のひきだし」「マリアのウィンク」は、西洋美術の中でも、キリスト教的な絵画を中心に扱っている(他の宗教も扱っているけど)。
どれも、聖書の物語がマンガとして描かれていたり、宗教画の解説があったりして、面白く読めるのだけど、こちらも情報が整理されているとはいえず、曖昧だったり、前後の脈絡なく突然説明が始まったりと、読みにくい部分も多い。
また、説明の中に、変に軽いのりの文章が入っていて(中世の物語の説明なのに合コンとかの言葉が出てきたり)、雰囲気を壊している気がして個人的にはその部分が気になった。
でも、挿絵もマンガも多いので(個人的には、もっと絵画を載せて欲しかったけど)サクサク読めるし、絵画にまつわるいろいろなエピソードを知る事ができるのも確か。
 
「マリアのウィンク」がキリスト教や聖書に関して一番詳しく載っているので、まずこれを読んでから、他の2冊を読むのがいいかも。
 

「フルトヴェングラー グレート・レコーディングズ」 [本:歴史]

フルトヴェングラー グレート・レコーディングズ

フルトヴェングラー グレート・レコーディングズ

  • 作者: ジョン アードイン
  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 2000/12
  • メディア: 単行本
  • 8点

 

フルトヴェングラーは私が始めて音楽を聴いて意識した指揮者だと思う。

かなり前の事だけど、レコード屋の店頭で聴いたベートーヴェンの「運命」があまりに印象的だったので、思わず指揮者を確認してしまった。それがフルトヴェングラーだったのだ。そんなにクラシックは聴かなかった事もあり、指揮者を意識して曲を聴くなんて事がなかった私にそれをさせてしまったというのが、フルトヴェングラーの凄さなのかも。

この本の中にも、「フルトヴェングラーは、一部の人々を非常に魅了するものを持っている」というような記述があるのだが、私も魅了された一人なのかもしれない。

この本では、前半が第二次世界大戦時代を中心にしたフルトヴェングラー史。ナチス支配下のドイツに残って演奏活動を続けた為、大戦終了後戦犯として一時期演奏活動を禁止されてしまったフルトヴェングラー。その後誤解は解け、1947年には演奏活動を再開する事ができるが、この事が大戦後のフルトヴェングラーの活動に大きく影を落としたのは確かである。

この本では、何故フルトヴェングラーがドイツに残り演奏活動を続けたのか、その葛藤と彼の音楽への姿勢を描いている。

また、フルトヴェングラーの演奏の凄さみたいなものの解説も。曲を1つの大きな流れとして捉え、ドラマチックに演奏するフルトヴェングラー。当時、デオニッソスとアポロンと対比されたトスカニーニとの違い、メンデルスゾーンとワーグナーから始まった指揮法の違いなども解説している。

後半は、フルトヴェングラーの演奏活動や、現在残っている録音に関する「フルトヴェングラーレコーディング史」となっている。フルトヴェングラーの録音は、古い物が多く、音質的によいとは言えない物が多い。フルトヴェングラーファンが、次々に出る同じ演奏のCDを次々に買ってしまうのも、音質がいいCDを求めての事なんだろう(聞き比べて見ると、同じ日の演奏でも、CDによって音がかなり違うのにはびっくした)。

貧弱な再生システムで聴いている私ですら、演奏を聴いていて、もう少し音質が良ければ(T_T)!と思う事があるぐらいだし。

フルトヴェングラーのお墓は、ドイツのハイデルベルグにあるとか。昔そこに旅行に行った時点でフルトヴェングラーを知っていればお墓まいりに行ったのに。そう思うぐらい、フルトヴェングラーは私にとっては特別な指揮者なのでした。


「モノが語るドイツ精神」ベンツ・グリム童話・紋章etcから見るドイツ [本:歴史]

モノが語るドイツ精神

モノが語るドイツ精神

  • 作者: 浜本 隆志
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/09/21
  • メディア: 単行本
  • 7.5点
 
実質堅剛、そんなドイツの精神がどのようにモノに反映しているか紐解く本。
紋章、ソーセージ、グリム童話、ゾーリンゲンのナイフから、車、アウトバーン、ロケットの開発まで、ドイツ人気質が生み出したモノを歴史を辿りながら解説してくれて、とても面白かった。
 
日本人とドイツ人、似てるところがあるとも言われるけど、これを読むと違いのほうが浮き彫りになってくる。
個人的には、前半部分の歴史関係の方が面白かった。

「イメージを読む」【美術史入門】 [本:歴史]

イメージを読む―美術史入門

イメージを読む―美術史入門

  • 作者: 若桑 みどり
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2005/04
  • メディア: 文庫
8点

 

ここのトップに読書の覚書とか書いておきながら、感想を書くのが面倒で、なかなか書かなかったりしています。その上、しばらく書かないでいると何を思ったのか曖昧になっちゃうという・・脳細胞がガンガン死滅中って感じです。

この本も、読んで一ヶ月以上書かずに放置しちゃいました(^^;)。

で、副題にある「美術史入門」というのは、かなり的を射ているんじゃないかと。美術史に興味があるけど、何から始めれば・・と思っている人、これからヨーロッパ旅行で美術館に行くなんて人にお勧めの本。文庫なので値段も手頃♪元々はハードカバーで出ていたようだけど、「ダヴィンチコード」などで絵画の持つ意味に着目する人が増えたたとかそんな理由で文庫として出されたのかな。

内容はミケランジェロ、ダヴィンチ、デューラーなど巨匠の作品が隠し持つ思想を、描かれた時代の思想や社会状況も踏まえて読み解こうというもの。著者本人の解釈だけでなく、いろいろな諸説も列記してあるので、一つの絵からいろいろな解釈が出るものだと思って読むのも楽しい。

最初に取り上げられているのがミケランジェロ作、バチカンのシスティーナ礼拝堂の天井に描かれている「天地創造」のフレスコ画。本書でも言っているけど、天井いっぱいに描かれたこのフレスコ画は、見た人誰もを圧倒すると思う。私も圧倒されました。ただ、私が見た時は、その巨大さに圧倒され、細部まではあまり見ていなかったので、この本を読んで、もっと細部まで見れば良かったと後悔(私が見たのは修復前だったので、修復後のも見てみたい)。海外旅行の時、システィーナ礼拝堂に行く予定の方がいたら、行く前にこの本を読んでいくと、より楽しめると思う。

ミケランジェロの「天地創造」は、旧約聖書に基づき、神が天地を創造した瞬間、アダムとイブの伝説から、罪を多き人類に神が罰を与えるノアの箱舟の伝説と、キリスト教に詳しくない人間でもよく知っているシーンが描かれている。

作者のこの絵の中のノアの箱舟のシーンをピックアップしている。カトリック教会的に見れば、「箱舟は教会であり、風雨の中のテントはユダヤ教、裸体の人々は異教徒であり、カトリック教会を信じる者だけが救われる」となる。

しかし、作者はミケランジェロが生きていた時代とカトリック教会腐敗を強烈に非難したサヴォナローラが活動していた時代が重なる事から、風雨に晒されるテントこそカトリック教会であり、フランス軍(洪水)がイタリアに攻め込み腐敗したカトリック教会は沈み、今こそ新しい教会を作るべきだという事を暗に示しているという。

2章目ではダ・ヴィンチの「最後の晩餐」のドラマ性の高さや「岩窟の聖母」におけるダ・ヴィンチ個人の母性の追及や、当時の聖母信仰のあり方、そして最近話題の「モナリザ」の秘密についての考察などを扱っていて、これもまた面白かった。

3章では、難解と言われているらしいアルブレヒト・デューラーの作品「メランコリア1」を、絵の中に描かれるシンボルの意味と、それが描かれた当時の世相から、解読しようとしている。

想像力と歴史などの知識を総動員させ、絵画の隠し持つ意味を推理するというのが、美術史の一つの醍醐味という事を、いろいろな例をあげ説明してくれている。

作者が既に亡くなってしまっている名画の解釈に正解は無いが、「このような解釈が出来るのね!」と推理小説を読むような気分で読め、なかなか面白い一冊だった。

美術史を学びはじめるにはいいという参考文献なども載っているので、ちょっと美術史に興味があるなぁと思っている人にはお勧め。 


「大江戸庶民いろいろ事情」 石川 英輔 [本:歴史]

「大江戸庶民いろいろ事情」 著:石川 英輔 (講談社文庫) 7点

庶民の生活の様子から、江戸時代の省エネルギー生活の素晴らしさを解き、明治維新以来西洋化し大量消費社会へと変貌した日本に、昔の良い所をもう一度見直そうと問い掛ける本。

あまりに江戸時代の無駄の無い社会を褒め称えるので、少し引いてしまったんだけど、本屋でチェックしてみたら、同じ様なテーマを扱った本が他にも出ており、そういう動きが活発化しているのかな?

確かに、石油が後30年で無くなる無くなると言われて久しい。まだ現実には枯渇していないけど、産出量の減少という状況にはなって来ているし、温暖化の問題などもあり、今の大量消費社会は見直すべき時期に入っているとも言える。何千年という歴史を持つ人間が、水質汚染、大気汚染、砂漠化、温暖化とここまで自然環境を破壊したのは、ここ100年ぐらいの事だと考えると、恐ろしくもある。

そういう状況の今、江戸時代のような生活に完全に戻るというのは無理でも、無駄の無い完璧なリサイクル社会が成り立っていたという事を知るというのは大きいと思う。

エネルギー問題だけではなく、江戸時代の庶民の食事や、結婚事情、言葉の変化に関するコラムなども載っている。江戸時代の庶民の食事には現在でも普通に食べられている物が多く、びっくり。

言葉の変化に関しては今では良い意味で使われる事が多い「こだわり」という言葉を、昔は悪い意味で使われていた言葉で、悪い方の意味でとらえる読者もいるかもしれない・・と良い意味で使うのを頑なに避けている著者の頑固さが印象的だった。

言われてみれば、私が子供の頃は「こだわり」は悪い意味だったなぁ。もうすっかり馴染んでしまったけど。

この本を読んで、日本文化の良い部分、今との違いなどを再認識してみるのもいいと思う。


ハーメルンの笛吹き男 [本:歴史]

「ハーメルンの笛吹き男」著:阿倍謹也(ちくま文庫) 7.5点

有名な「ハーメルンの笛吹き男」という童話は実話が基になっているのは知っていた。

子どもが行方不明になった原因を何となく「アルビジョワ十字軍」だと思ってた私(^^;)。

いやぁどこでそんな間違った知識を仕入れたのでしょう・・(爆)。

ハーメルンはドイツで、アルビジョワ十字軍はフランスの話だし・・。

調べてみたら、年代すらアルビジョワ十字軍は1209~1229年、ハーメルンの事件は1284年と、思いっきりずれてます。

「ハーメルンの笛吹き男」の基になった事件の研究というのはかなりされているらしく、いろいろな説があるらしい。

この本ではそれらの説を取り上げ、曖昧な点、真実に近いと思われる点を指摘しつつ、事件の真相について探ろうとしている。

子ども十字軍説(この辺とアルビジョワ十字軍がごっちゃになったと思われる(^^;))、東方移民説、事故説、誘拐説、狂信的な鞭打ち苦行者(カタリ派なのかな?)に同行説・・・etcといろいろな説があるんだなぁと思った。

そしてこの本の場合、事件の真実だけを追うというのではなく、事件が起きた時のハーメルンの町の庶民の様子、特に歴史的に抹殺された存在である賤民の存在や、中世都市の階級による差別と時代の移り変わりにスポットをあてている。

初期の伝説では鼠の話は無く、子ども達130人が行方不明になった事だけだったのが、時代の移り変わりとともに、「鼠捕り」の話と融合していく様子と宗教改革との関連などは興味深かった。

 

 

 

 

 


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