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「地獄の一三六六日 ポル・ポト政権下での真実」オム・ソンバット著:一市民から見たポル・ポト政権下のカンボジア [本ノンフィクション:ジェノサイド]

地獄の一三六六日 ポル・ポト政権下での真実
オム・ソンバット著・翻訳者:岡田知子訳・大同生命国際文化基金発行
7.3点

珍しく、amazonに書籍情報が無かった。

1975年~1979年、ポル・ポト(クメール・ルージュ)派、支配下のカンボジア。
毛沢東の影響を受け、共産主義、極端な農業主義、過酷な強制労働、
知識階級の人々を中心に大量虐殺、粛清、拷問・・・などで、その政権が支配した4年間で、
当時のカンボジア人口700万の内、200万人が死んだ(諸説あり)という。

ポル・ポト派が、当時の支配者ロン・ノルを退け首都プノンペンに入城。
プノンペンに住んでいた著者は、家族全員で首都を追い出され、過酷な労働と飢えに苛まれ、
そして次々と家族と死別しつつ、地獄のような4年間を過ごす。
その時のことを、事細かに記録した一冊。

ポルポト政権下のカンボジアに関しての個人の手記には、
他に「最初に父が殺された―飢餓と虐殺の恐怖を越えて」(リンク先感想)などもある。

「手記」なので、「最初に父が殺された」と同じく、全体像が見えにくいという難点はあるが、
ポル・ポト政権下の人々の意識や、置かれた状況が、著者の気持ちを通して伝わってくる。

ポル・ポト派の首都プノンペン入城。
支配者であったロン・ノル政権の腐敗に対して不満を持っていた市民が、
それを歓迎していた事がよくわかった。
しかし、それは即、首都からの強制退去、疑問、怯え・・・と変わっていく。

最初に強制退去が始まった場所に丁度居合わせ、ポル・ポト派の有無を言わせぬ
威圧的な態度に慌てる著者。
どうにか、まだ退去を強要されていなかった地区にある自宅に戻り、
それを家族や周囲の人に伝えるが、誰も本気にせず、他人事のように捉え、著者の訴えは無視される。
そして、その周囲の雰囲気に、「ここは大丈夫なのかも」と自分も思うようになり、
強制退去を命じられるまで、何もしなかった著者。
ポル・ポト派プノンペン侵攻の時、首都に住んでいた市民の気持ちを書いたものは読んだことが
なかったので、とても興味深かった。
ポル・ポト派に期待していた著者の父は、このポル・ポト派の蛮行により心を閉ざしていく。
きっと多くの市民が、ポル・ポト派を正義の使者のように期待していたのだろう。

またプノンペンを追い出され、戦場となった村などを通り、その荒れた風景に驚く著者の様子から、
内戦が起き、国内で戦場になっていた場所があっても、自分のところが被害に合わなければ、
内戦を身近に感じていなかったという、当時のカンボジアの人々の様子も伝わってくる。

その後は、著者が経験した強制労働の苦しみ、家族との死別、
差別(ポル・ポト派が政権を把握する前からポル・ポト解放区にいたか-基幹人民、そうじゃなかったかで
-新人民-、明確な差別があったし、知識階級、公務員などはそれだけで処刑されたりもした)に
ついて淡々と綴られている。
若い著者の恋に揺れ動く気持ちなどにも触れられている。

食べ物が足りない時は、餓えに苦しみ、のた打ち回るが、
食料が多く睡眠時間が少ない時は、労働の辛さと、疲労の重さに嘆く。
両方足りていても、水が足りない時は、水を求めて悶絶する。
北朝鮮のルポの場合、慢性的な食料不足が一番の問題であったが、
ポル・ポト政権下のカンボジアでは、食料配給が不足するかと思えば、
労働に行かされた場所が水が足りない場所であったり、
食事と睡眠時間合わせて4~5時間で、連日働かされたり・・・と、状況が頻繁に変わる。
これは著者が、新人民で、水路の開発など、いろいろな過酷な現場に、労働力として派遣
されていたからなようだ。

1つの決断が、家族全体の不幸を招き、母親は家族の不幸を嘆きつつ衰弱死し、
父親もまた苦悩の中、衰えて死んでいった。
幼い姪達もまた衰弱死する。
その他にも、弟が理由不明なまま処刑されたり、姉がほんの少し葉を盗んだだけでも殺されたり、
4年間で、プノンペンを一緒に脱出した家族・親戚12人の内、生き残れたのは著者と弟1人だけだったようだ。
本書を読むと、家族や親戚の繋がりの強さが垣間見える分、その辛さは想像を絶するものだったろう。

共産主義とは名ばかりの地獄の政権は、一部人間が圧倒的な権力を持った時の怖さを見せてくれる。
「正義」「理想」の名の元に行われる残虐行為は、いろいろな国のケースを見ても恐ろしい。
毛沢東支配下の文化大革命、ナチスドイツのユダヤ人虐殺、そして様々な戦争・・・、
どれも、「正義のため」「理想のため」と必ず大義名分がついて回る。
それを極端に、短期間、自国民に対し行ったのが、ポル・ポト政権だ。
普通は対外的に行われる事を、自国民に対して行なっているのは、毛沢東支配下の中国に似ている。
毛沢東支配は長かったので、犠牲者数もポル・ポト政権下の30倍~40倍(諸説あり)だし。

また、地域によって、著者のように飢えや病にずっと苛まれていた場所もあれば、
圧政下にはあったが、そこまで苦労せず、食べ物にも困らず暮らしていた地域もあり、
情報が分断されていたせいで、他の地域の事をお互いに知らないというのが普通だったようだ。

著者の生活を綴ったものなので、大きなメリハリにはかけるが、
ポル・ポト政権下での人々の生活の様子を、垣間見る事ができる一冊。

最初に書いたように、一個人の視点からなので、全体の様子は見えづらい。

ポル・ポト政権では、拷問による虐殺なども日常的に行われ、それに関しては
「ポル・ポト死の監獄S21」「インドシナの元年」(リンク先感想)などに詳しい。

全体を捉えるには「ポル・ポト〈革命〉史―虐殺と破壊の四年間 (講談社選書メチエ 305)」、
個々の具体的な事例は「カンボジア・ゼロ年」、
革命組織側からの視点は「ポル・ポト伝」が参考になると、
本書の訳者あとがきに書いてあった。

ポル・ポト政権に関して、多少下知識が無いと、本書を読んでもよくわからない部分が多いと思うので、
ある程度概略を掴んでから読むのがお勧め。
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「カンボジア、いま-クメール・ルージュと内戦の大地」 [本ノンフィクション:ジェノサイド]

カンボジア、いま―クメール・ルージュと内戦の大地

カンボジア、いま―クメール・ルージュと内戦の大地

  • 作者: 高沢 皓司
  • 出版社/メーカー: 新泉社
  • 発売日: 1993/06
  • メディア: 単行本

6.5点

ポルポト派・クメール・ルージュにより、国民の大量虐殺が行われたカンボジア。

現在のカンボジアはどうなってるのかなーと思ったので、図書館で借りて読んだんだけど、出版が1993年、自分が読みたかったのは「いま」なので、古すぎたみたい(^^;)。

内容も、半分が写真、また仕方がないんだけど、ポルポト派支配下のカンボジアの様子の説明も多く、ポルポト支配から脱した直後のカンボジアの様子を知るとしても、少し物足りないものに。

ポルポト派が駆逐され、それでもタイ国境付近に潜伏し、抵抗を続けていた時期、選挙にもポルポト派がでようとしていた時期、ポルポト派支配からの開放直後のカンボジアの情勢をざっと知りたい人向け。

大量虐殺を行ったポルポト派が、選挙に候補者を出そうとしたり、またポルポト派を指示する人が残っていたりというのを、当時不思議に思っていたんだけど、その辺りの理由が書いてあるのは、参考になった。


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「生かされて」トイレに3ヶ月篭ってルワンダ虐殺から逃れた女性 [本ノンフィクション:ジェノサイド]

生かされて。

生かされて。

  • 作者: イマキュレー・イリバギザ, スティーヴ・アーウィン
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2006/10/06
  • メディア: 単行本
7.8点
 
多数派民族フツ族が、少数派であるツチ族を虐殺し、3ヶ月で100万人のツチ族が殺されたという「ルワンダ虐殺」。
 
この本の著者は、フツ族の牧師宅のトイレに、同じ様に逃げてきた7人の女性達と一緒に3ヶ月隠れ続け、助かったのである。
ギュウギュウ詰め状態のトイレに3ヶ月。何度もフツ族の男達が牧師の家を家探しし、満足な食べ物も得られず、牧師以外の家人に気づかれても命が危ない緊迫した状態で過ごした3ヶ月間の恐怖が語られている。
 
「ルワンダ虐殺」に関しては、「ジェノサイドの丘」「ルワンダ虐殺-世界で一番悲しい光景を見た青年の手記」「漂泊のルワンダ」と今までも何冊かこれに関しての本を読んだ。
「ジェノサイドの丘」「漂泊のルワンダ」は記者によるルポであるが、この本は「世界で一番悲しい光景・・」と同じく、虐殺の被害者であるツチ族の生き残りによる手記。
 
同じ手記でありながら「世界で一番悲しい・・・」と対極にあるような内容だった。
「世界で一番悲しい・・・」の著者が、家族を目の前で殺した人間、フツ族、神、全てに対し憎しみを捨てられず、暗いトンネルの中で足掻いているのに比べ(その悲しみの深さ、辛さが胸を打つ)、この本の著者、イマキュレーは、どんな究極の状況になっても前向きである。絶対絶命の絶望的な状況の中でも、神を信じ、光を自分で見つけそれに向かって努力する。その姿は、力強く素晴らしい。
 
「世界で一番・・」の著者が偶然の積み重ねによって生き残ったとすれば、イマキュレーは、自分の力で生きる道を切り開いたように思える。
そして、家族を殺した隣人(ルワンダ虐殺では、長年仲良くしていた隣人(フツ族)が隣人(ツチ族)を虐殺したという事が、その後の国の修復を難しくしている)を許す。
 
イマキュレーのように生きられれば、どんな困難でも乗り切れそうな気がする。そういう風に生きるのは、とても難しいことだけど、勇気を、生きる力を与えてくれる本だ。
 
 
点数が8点まで行かなかったのは、信仰心に関しては、いまいち共感できなかったから。
でもいい本です。

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「漂泊のルワンダ」何が真実で何が嘘なのか・・ [本ノンフィクション:ジェノサイド]

漂泊のルワンダ

漂泊のルワンダ

  • 作者: 吉岡 逸夫
  • 出版社/メーカー: 牧野出版
  • 発売日: 2006/03
  • メディア: 単行本
  • 6.5点

 

 

1994年ルワンダ大虐殺が起きた直後にザイール難民キャンプ→ルワンダ国内と取材した本。

載っている情報の多くが現地の噂話が元で、裏付けを取っていないものが多いのが気になる。

虐殺の発端になったフツ族のルワンダ大統領暗殺に関しても、ある本ではフツ族が周到に計画したものとなっていて、この本で語られているツチ族によるものだという説と全く正反対である。

どちらが正しいのかは、いまだに答えが出ていないが、別の本の方が、暗殺前の社会変化、大統領周辺の力の均衡の崩れなどにまで言及していて説得力があるものになっていた(後書きで、フランス判事が「大統領暗殺は現大統領でツチ族のカガメが関わっている」と判決を下したという補足があるが、フランスは虐殺前フツ族に武器を提供しており、虐殺をここまで大きくした責任を問われているので、フランスの判断はその分差し引いて考えなければならいとと思うのだが、それも考慮されていない)。

また、フツ族難民が虐殺されているという事に関しても、この本ではツチ族の勢力によるもの、別の本ではフツ族の逃亡勢力が難民が帰国すればツチ族政権を認める事になる為帰ろうとしている難民を虐殺しているとしている。

これは、どちらがより真実に近いのか(両方がフツ族難民を殺しているというのもありえる)、私がいろいろ読んだ限りでは判断できない。

でも、噂を噂として裏付けも取らず載せてしまうのは、虐殺直後なので情報が錯綜していたので仕方がないのかな?と思う半面、もう少し掘り下げた取材が欲しかったと思うのは確か。

フツ族難民キャンプを最初に取材しているのだが、ツチ族虐殺に関してのフツ族のコメントはほとんど取っていないし(難民キャンプの中にも、虐殺に加担したフツ族が混じっていたと思うのだが)、唯一取った軍の将校の「虐殺の原因は数年前に起きたツチ族の行動」というコメントも、ツチ族虐殺が、もっと昔から定期的に行われていたことを知っていれば、突っ込む事ができたと思うのだが、それもしていない。

評価すべきは、まだまだ混乱している危険な現地に乗り込んだ勇気だろう。作中にも、治安も悪く命がけという場面が何度もでてくる。そんな危険を冒して現地入りしていたのだから、もう少し突っ込んだ取材をして欲しかったなぁと残念に思った。 

ルワンダ虐殺の1番恐ろしい部分は、軍隊でもなく、長年仲良く付き合っていたごく普通のお隣さんが、突然隣人を襲って虐殺したという部分だと思うのだが、見た目や態度でいい人悪い人を判断しているのでは、ルワンダ虐殺の本当の姿というのはわからないのではないかと思ってしまった。

取材記として読むなら面白いと思うが、背景が重過ぎる。

 


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「ルワンダ大虐殺~世界で一番悲しい光景を見た青年の手記~」 [本ノンフィクション:ジェノサイド]

ルワンダ大虐殺 〜世界で一番悲しい光景を見た青年の手記〜

ルワンダ大虐殺 〜世界で一番悲しい光景を見た青年の手記〜

  • 作者: レヴェリアン・ルラングァ
  • 出版社/メーカー: 晋遊舎
  • 発売日: 2006/12/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • 7点

 

1994年ルワンダで起きた、多数派フツ族による、少数派ツチ族の大虐殺。

3ヶ月で80万~100万人、ルワンダ国内にいるツチ族の3/4もが虐殺されたと言われ、映画「ホテル・ルワンダ プレミアム・エディション 」や「ルワンダの涙 」の題材ともなっている。

 

本書は、ルワンダ虐殺の時、目の前で家族全員を殺害され、奇跡的に生き延びたツチ族の青年の心の叫びを綴った本である。

この本には、虐殺当時のルワンダの凄惨な状況と、青年の憤怒、絶望に満ちている。

突然隣人が殺人者となって襲ってくる恐怖、何の罪も無い家族が目の前で惨殺された事への絶望、惨殺現場で受けた醜い傷跡に対する苦悩、家族を殺した人間が何の罰も受けず平穏に暮らしている事に対する怒り、そして何度も繰り返される大虐殺が起きるまで信仰していた神への問いかけ・・・。

ルワンダでは、国民のほとんどが虐殺の加害者、もしくは被害者の立場に立つ。事体を収拾するため、大統領は、虐殺に加担した人々に対し、軽い罰で対応している。もし、虐殺加担者を全員厳罰に処すれば、国民の大多数がその対象となり、国が維持できないからだ。

この辺は、「ジェノサイドの丘〈上〉―ルワンダ虐殺の隠された真実 」に詳しく載っており、こちらを読めば「そうするしかないのかも・・」と納得できるのであるが、被害者である著者にとっては、とても納得できるものではない。自分が同じ立場に立ったとしたら、やはり青年のようにどこにもぶつけようがない怒りと悲しみにのた打ち回る気がする。

青年の心の叫びの吐露である本は、ルワンダの虐殺で多くの人が味わったであろう気持ちを教えてくれる。彼の心にいまだ平安は訪れていない。家族を惨殺した人間が罪を償わない限り、心の平安は無いと彼は言う。しかし、それは今のルワンダの現状を考えれば不可能に近いことである。もし犯人に復讐したとしても、復讐は復讐を呼ぶ。虐殺の残した重い後遺症を解決する難しさを考えさせられる。

そして、虐殺が行われていた当時の、人間が人間をゴキブリ(フツ族はツチ族をそうよんでいた)を殺すように、殺す事が害虫を駆除する事のように正当なこととして行われる様子は、人間の持つ残虐性をこれでもかっと思うほど見せてくれ、そちらも恐ろしい。

ただ、ルワンダ虐殺の歴史的背景などについては詳しく書いていないので、そういうのが知りたい人は別の本を読んだ方がいいと思う。  

 

 


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「ジェノサイドの丘-ルワンダ虐殺の隠された真実」知らなければ良かった真実 [本ノンフィクション:ジェノサイド]

ジェノサイドの丘〈上〉―ルワンダ虐殺の隠された真実

ジェノサイドの丘〈上〉―ルワンダ虐殺の隠された真実

  • 作者: フィリップ ゴーレイヴィッチ
  • 出版社/メーカー: WAVE出版
  • 発売日: 2003/06
  • メディア: 単行本

ジェノサイドの丘〈下〉―ルワンダ虐殺の隠された真実

ジェノサイドの丘〈下〉―ルワンダ虐殺の隠された真実

  • 作者: フィリップ ゴーレイヴィッチ
  • 出版社/メーカー: WAVE出版
  • 発売日: 2003/06
  • メディア: 単行本
  • 10点
 
ホテル・ルワンダ (プレミアム・エディション) 」という映画がある。この映画は、この本のある一部分を映画化したものである。興行成績が見込めないと日本では劇場公開されなかったのを、有志による署名活動の結果、公開されたというのでも有名である。
ルワンダに住む、フツ族とツチ族。人口の8割を占めるフツ族がツチ族を虐殺し、3ヶ月で100万人ものツチ族が虐殺されたとも言われている。言語も同じ、見た目もかなり似ている二つの民族。元々は農耕民族と遊牧民族という違いがあるだけで、共存していた。しかし、ヨーロッパの植民地支配の中、支配をしやすくする為、最初にツチ族を「高貴な血が混ざっている」と優遇しはじめた事から民族の対立が始まる。優遇され富みを集めたツチ族に対し、フツ族の反発は増し、その上後になり、フツ族が支配階級になった事から、ますます自体は複雑になる。
驚くのは、ここまで大規模な虐殺は無かったとは言え、定期的にフツ族によるツチ族の虐殺が行われていたということである。虐殺されるのに慣れている民族がいる・・そう考えるだけでも恐ろしい事だと思う。
そして、この虐殺、フツ族の大統領が暗殺された事をきっかけに、それがツチ族の仕業だという事で始まったのだが、それ自体計画されていたらしく(大統領を暗殺したのは、フツ族だとも言われている)、大統領が暗殺される数日前から、虐殺の準備が始まっていたという。
そして虐殺が始まると、今まで仲良く暮らしていた隣人達が次々に武器を持ち、顔見知りのツチ族を殺し始める。生き残ったツチ族が、虐殺が始まる前は人間としても素晴らしい人だった人が、平気で人を殺すようになるそのギャップを証言している。
とにかく、どこまで読んでも辛い本である。今年読んだ本の中ではナンバーワンに衝撃だった本。そして、今まで読んだ中で、もっとも読後感が悪かった本でもある。

読後感が最悪として有名なケッチャムの「隣の家の少女」は、少女を襲った運命の残酷さと救いの無さ 、そして実話に基づいているという事実が、最悪の読後感を作っていると思う。

しかし、この本の場合、ルワンダで虐殺された人々の悲惨な運命も然る事ながら、「ジェノサイド」という行為に、自分も何かしら関係しているのかもしれない・・と思える所、そして「ジェノサイド」に対して自分がいかに無力かというのを思い知らされる事に、読後感の悪さがあると思う。

難民を救済する為の募金活動、PKO、国の税金から出される発展途上国への援助、こういうモノが虐殺した側の人間を助け、また虐殺行為の準備に使われているとしたら???その事実がわかっていても、何の手も打てず援助が続けられているとしたら??

カンボジアで虐殺の限りを尽くしたポルポト派は、ベトナム軍の進行により敗走した後、タイの難民キャンプに逃げ込んだ。

そこで武器を持つポルポト派の兵は、本当のカンボジア難民を盾にして、難民に対しての援助物資を得、甘い汁を吸い、のうのうと生き延びていた・・・というのは、知っていたが、それは昔の話だと思っていた。今はそういう事は無いだろうと思っていた私が無知だった。今でもそういう状況は変わってないのをこの本は教えてくれる。

難民キャンプで起きる殺人。それは、ルワンダから逃げてきた虐殺犯達の行為である事がわかっていて、それが目の前で行われているとしても、いろいろな協定やらなにやらで全く手を出せないPKOや救済機関。そういう中で、虐殺犯達は、力を蓄え、またルワンダで虐殺に加担する準備をしている。しかし、援助を打ち切れば、本当に非難してきた人々達も被害に合う。

それに、このルワンダの「ジェノサイド」は、それが起きている事実を知っていても国連が関与を拒み「ジェノサイド」が行われているという事から目をそらし続けていた事で被害を大きくしたとも言われている。ルワンダに兵を派遣しても得る物はほとんどなく、どの国も嫌がったのだ。平和維持という名の元に派兵が行われているが、それは自国にメリットがあってこそ。真に平和維持の為などではないのだ。

国連が派兵を渋った理由の一つに、その前に起きたソマリアの内乱が関係しているのは知らなかった。このソマリア内乱で派兵されたアメリカ兵が作戦の失敗により、何人も命を失った(映画「ブラックホーク・ダウン 」はこの作戦の失敗を描いている)。これに懲りたという。

私自身、ルワンダの虐殺に関して、当時小さな記事を新聞で読んだ気がしたが、それ以外ほとんど扱われず、その上、記事が「○○らしい」という仮定の表現だったので、真実はどうなんだろう?と思いつつ、忘れてしまっていた。

でも、多くの人が興味を持てば国際世論も変わり、国連も早く動いただろう。

何かまとまらなくて、読んでからずっと書けないでいたけど、今年ナンバーワンだった本として、今年中に感想を書きたいとまとめてみた。やっぱりまとまってないけど、知らなければ良かったと思う、でも知らなければいけない真実としてこの本を読んで欲しいと思う。

そして、世界には、このように知らないけど、知らなくてはいけない事がたくさんある。紛争はそこかしこで起きているのだ。そして、そこで苦しむのは、何も罪のない人々なのである。


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「アメリカ・インディアンの歴史」「アメリカ・インディアン悲史」白人による搾取と虐殺 [本ノンフィクション:ジェノサイド]

アメリカ・インディアン悲史

アメリカ・インディアン悲史

  • 作者: 藤永 茂
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社出版局
  • 発売日: 1974/01
アメリカ・インディアンの歴史

アメリカ・インディアンの歴史

  • 作者: 富田 虎男
  • 出版社/メーカー: 雄山閣出版
  • 発売日: 1997/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • 前に読んだ本多勝一氏のベトナム関係の本で、アメリカとの和平調停に関して、北ベトナム側がアメリカをほとんど信じていないというのがあった。最終的に、北ベトナム側が予測していたよう、停戦の約束は守られず、北爆は酷くなった。
それに関し、「アメリカインディアンの歴史でも、同じ様に約束が破られ、多くのインディアンが虐殺された」という記述があったので、アメリカ・インディアン絡みの歴史書を読んでみた。
アメリカ・インディアンが住んでいた土地を奪い取り、今のアメリカが建国された事は知っていたが、「アメリカ・インディアンの歴史」を読んでここまで酷い事をしていたとは!と正直驚いた。
 
移民直後の白人達が飢えていれば、何の見返りもなく食べ物を分けてくれたアメリカインディアン達に、白人達が与えたのは病気(ヨーロッパから持ち込んだインディアン達には免疫が無い病気、またそれをわざわざ移すような策謀までしている)、土地や権利の剥奪などの惨い仕打ちであったという。
 
アメリカインディアンもいろいろな部族がおり、白人と敵対していた部族ももちろんいるので、一概に一方的に白人がアメリカインディアンを・・・とは言えないが、侵略者である白人と戦うインディアン達の姿勢もわかるし、また敵対していた部族への復讐ついでに、友好的な態度をずっと取っていた部族まで虐殺したりと、白人が行った数々の残虐行為は目を覆いたくなるほどだ。
 
「アメリカ・インディアンの歴史」では、アメリカ先住民たちが、ヨーロッパの国々の争いに巻き込まれ、徐々に土地や権利を剥奪され、不公平な契約や、全く守られない契約の為に、土地を追われ、徐々に住む場所を限定されていく過程や、それと同時に、土地の所有という概念が無かった先住民達の文化に、ヨーロッパの概念を持ち込み、先住民達の文化が徐々に破壊されていく様子が描かれている。
 
 一番辛いのは、その虐殺行為が全く省みられず、アメリカが今現在も似たような事を他の国に対して行っている事だ。
 
「アメリカ・インディアン悲史」は、より詳細にアメリカインディアンの侵略される姿を描いた物だと思うんだけど、これを読み出す直前に「ジェノサイドの丘〈上〉―ルワンダ虐殺の隠された真実 」を読み、ちょっと精神的に参ってしまったので(珍しい)、途中で挫折し、図書館で借りていた為、返却期限が来てしまった。
 
機会があったらまたトライしたい。
 

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「ポル・ポト死の監獄S21」「インドシナの元年」大量虐殺監獄ツゥールスレン [本ノンフィクション:ジェノサイド]

ポル・ポト 死の監獄S21―クメール・ルージュと大量虐殺

ポル・ポト 死の監獄S21―クメール・ルージュと大量虐殺

  • 作者: デーヴィッド チャンドラー
  • 出版社/メーカー: 白揚社
  • 発売日: 2002/11
  • メディア: 単行本
8点
 
インドシナの元年 作者:小倉貞男 大月書店  7.5点
 
ポルポト政権下のカンボジアに存在した、監獄ツゥールスレン(暗号名:S21)に関する書籍を続けて読んでみた。
ツゥールスレンは現在ポルポト派の虐殺の証拠として博物館となっている。ここに連れてこられた1万5千~2万人にものぼる人々のほとんどが拷問の末虐殺され生還できたのはたった7名。加害者である看守の中にも、途中何かしらの罪に問われ虐殺される側になってしまったものが多くいるという。
そして生還者の1人が、この「ツゥールスレン虐殺博物館」の館長をしている。
この監獄の特徴は、連れてこられた人の多くに自白を強要し、調書をとった事、また虐殺される前と、虐殺後の写真もかなり残されている事である。
「ツゥールスレン虐殺博物館」には被害者の頭蓋骨で出来たカンボジア地図や、拷問の様子を書いた絵、虐殺された人々の写真などが展示されている。
上記の2冊とも、残された調書などを元に、S21で行われた事を詳細に調べているが、アプローチの方法はかなり違う。

「インドシナの元年」の方は、拷問虐殺の実態や、被害者数の検証だけでなく、被害者達一人一人を丹念に調べる事により、ポルポト派内部での動きを追いかけようとしている。
ポルポト派支配化のカンボジアの全体情勢はあまり分かっておらず、 この著者は、ポルポト派の中で権力をもっていたと思われる人物が粛清された時期とポルポト派の権力闘争の歴史を推測したり、ある時期、特定の地区からこのS21に連れて来られる人が増えた事から、その地区で何かしらの動きがあったのでは無いかなどを調べたりしている。
今まで何冊かのポルポト関係の本を読んだが、ポルポト派に属している兵士の叛乱に関してはっきり書いてある本は無かった。しかし、この本では、上記のような事から、ポルポト派兵士による中央に対しての叛乱があったと思われると推測しているのだ。
他の本を読むと、ポルポト派兵士は、完全に中央の言いなりになり、民衆の弾圧、虐殺を行ったように取れる事が多いが、そうではなく、中央のやり方に疑問を持ち反旗を翻した部隊もあったと思うと、少し救われたような気がする。
また、この本に載っている数々の調書は、ポルポト派の指導の元、普通に生活し、自分が何故捕まったのか全くわからないまま拷問による自白を強要され虐殺されていった人々の悲しい末路を垣間見させてくれる。

「ポルポト死の監獄S21」の方は「何故人は虐殺するのか」という文化人類学的な切り口で責めている。
ポルポト派の拷問の方法や、調書の取り方、処刑の方法などのルーツを探り、普通の人であった看守が「S21」のルールに染まっていく様子などから、人を虐殺に駆り立てる心理を探っている。
ナチスドイツのユダヤ人虐殺や、映画「es[エス] 」の元になった、立場の違いと心理的変化を検証するため囚人と看守という立場を試験的に作り出し悲惨な結末を迎えたスタンフォード監獄実、指導者がいる場合、人は被験者に危害が及ぶと思われても指導者の指示通りに行動するという衝撃的な結果を出したアイヒマン実験などにも言及する内容となっている。
誰でも虐殺者になる可能性があるという事実、そしてその恐ろしさ、この本が言いたかったのは、それなのだろう。
同じ監獄を調査しながらも、全く違う内容となっている2冊。両方ともお勧め。
「インドシナの元年」は絶版なので、図書館でどうぞ。

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「カンボジア大虐殺」「ポルポト<革命>史」「最初に父が殺された」カンボジア虐殺と破壊の歴史 [本ノンフィクション:ジェノサイド]

検証・カンボジア大虐殺

検証・カンボジア大虐殺

  • 作者: 本多 勝一
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 1989/11
  • メディア: 文庫  7.5点
305 ポル・ポト<革命>史 虐殺と破壊の四年間

305 ポル・ポト<革命>史 虐殺と破壊の四年間

  • 作者: 山田 寛
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/07/10
  • メディア: 単行本
7.5点
 
 
最初に父が殺された―飢餓と虐殺の恐怖を越えて

最初に父が殺された―飢餓と虐殺の恐怖を越えて

  • 作者: 小林 千枝子, ルオン・ウン
  • 出版社/メーカー: 無名舎
  • 発売日: 2000/09
  • メディア: 単行本
  • 7点
1970年代カンボジアを支配し、国民を虐殺したとされるポルポト派に関する本3冊。

最初に読んだのは「検証・カンボジア大虐殺 」。
難民キャンプや、ポルポト政権崩壊後のカンボジア国内での民衆へのインタビューにより、虐殺の有無、虐殺された人の数などを検証している。
この本の著者、本多勝一氏の本は、最近かなり読んでいるんだけど、気になる点があったので、調べてみたら、やっぱり賛否両論あった(^^;)。
このポルポト派の大虐殺に関しては、最初懐疑的であったらしいのだが、この「検証・カンボジア大虐殺」では全くその点には触れられていないばかりか、本書の最後では、ポルポト派の大虐殺は無いという人達の主張の粗を指摘していたりする。
「取材しない事は書けない」と何度も記事の中で主張している為、著者の推測すら、取材してきた事、しっかり裏を取った事のように錯覚してしまうのが怖い。
実際いろいろ読んでいて、上記のような主張をしているのに、これはちゃんと調べてないな?と思える部分があったりしたし。
それでも、自らの危険を顧みず現地に赴き真実を取材しようとする姿は評価に値するとは思うが。
 この本では、難民キャンプ、解放後のプノンペン、農村などいろいろまわり、ポルポト政権下で亡くなった人数、原因を詳細に調べ、数十万~数百万まで開きがある、虐殺された人々の数をなるべく正確に推測しようと努力している。
多くの人の口から語られるポルポト政権下の過酷な体験や、惨い家族の死は、生々しい。
ただ、多くのデータを集める為、一人一人のインタビューは、あっさりした物になっているのがちょっと残念。

これは、ポルポト派支配下の飢餓と虐殺の恐怖の中、生き延びた少女の手記である。
プノンペンで裕福な暮らしをしていた少女が、プノンペン陥落、ポルポト派支配が始まると同時に都市を追い出され、粛清と過酷な生活環境の中次々に家族を失っていく。
ポルポト支配下で人々が体験した事を少女の視点で描いているこの本は、少女の視点という事で、ポルポト支配に関する全体像は見え難いが、逆に多くの人々がこの少女が体験したような悲惨な生活を強いられていたのだという事が想像できる。
北朝鮮を脱北した人の手記と重なる部分は多いのだが、虐殺された人の数の多さや、殺すのが目的とも思われるような重労働を人々に強いた事などを考えると、北朝鮮以上に人権が無視されていたように思える。
ポルポト政権下での、人々の悲惨な生活の現状を知りたいという人は、これがお勧め。
政権というのは暴走した場合、このような地獄を作り出してしまうのだと思うと、とても怖い。

305 ポル・ポト<革命>史 虐殺と破壊の四年間 」の方は、ポルポト派の活動を、指導者の生い立ち、党の設立から、方針の変化、虐殺と破壊の実態、外交政策、支配崩壊、裁判まで追いかけた本で、ポルポト派に関する全体像を少しでもつかみたいなら、こちらがお勧め。
 ポルポト派が、知識人を嫌悪し、学者、教師、医者、看護婦、学生、留学経験があるものなど、少しでも知識人階層にいた人ほとんど全てを虐殺、無知で無学な農民を国民が目指すべき存在として優遇したのは有名である。
知識人を虐殺した理由の1つに、無学な方が御しやすいという考えがあったのだろうが、それでも、病院、農業改革など社会機能の円滑な運営に支障を来すほどほとんどの知識人を殺害したのは、何故なんだろうという疑問はあった。
この本では、ポルポト派の中心をになった人達は、どんな人物だったのかなどを詳しく追っている。
知識人を弾圧し、虐殺した指導者達、驚いた事に、その多くが、フランスなどへの留学経験がある知識人なのだった。
 現在裁判中でもあり、その多くが口を閉ざしたままであるので、何故ポルポト派がここまで暴走してしまったのか、はっきりとした事は、この本でも述べられていないが、国民の多くを虐殺するに到った背景が、おぼろげにも見えて来る本である。

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「チモール-知られざる虐殺の島」 [本ノンフィクション:ジェノサイド]

チモール―知られざる虐殺の島

チモール―知られざる虐殺の島

  • 作者: 田中 淳夫
  • 出版社/メーカー: 彩流社
  • 発売日: 1999/10
  • メディア: 単行本
  • 6点
 
最近、首都で暴動が起き、外務省の海外安全ホームページでも、首都デリが退去勧告、それ以外の全土が渡航延期お勧め状態になっている東チモール。
オーストラリアのかなり近くにあるこの島国チモールは、二国によって植民地化されていたのもあり、丁度島の真ん中ぐらいを境に、インドネシアと東チモールにわかれている。
あまりよく知らない国だった東チモールに関するこの本を読んだきっかけは、最近読んでいるベトナム戦争絡みの本に、カンボジアにおけるポルポトの話が載っていて、そういえば、ポルポトもよく知らないなぁと、ポルポトの本を探していた事からである。
国民を虐殺したとして(一説には、国民の半分近く300万~400万人が虐殺されたと言われている)有名なポルポト派支配下のカンボジアより悲惨な国がある!という説明に興味を引かれたからなのだ。
東チモールは現在は独立国家であるが(独立したのは1999年で最近)、その前はインドネシアの統治下におかれ、ポルポト以上の弾圧と虐殺が行われていたのに、どの国もマスコミもそれにほとんど触れず、東チモールの現状を無視してきた。その酷い状況を少しでも多くの人に知って貰おうという志の元、書かれた本である。
第二次世界大戦時、この島に日本軍が駐屯していた事などについて、かなりページを割いて語られている。激戦地ではなかった為、あまり戦記では取り上げられなかった場所なので、私自身ここに日本軍が駐屯し、一時期は占領していた事を知らなかった。その影響で、日本語が話せる人もいるらしい。
東チモールの悲劇は、表面上は人道人道と叫んでいても、国というものは、自国にメリットが無い場合、その国でいかに非道な事が行われていても介入しないという事から来ているのだと思う。見て見ぬふりという奴である。
そういう悲劇を知って欲しいと書かれたこの本の狙いは素晴らしいと思うのだが、かなりのページを第二次世界大戦時の日本軍の行動に割いてしまったりしている為(戦記物を読んでいる気分になった)、虐殺の実態、その背景、東チモールの現状などの掘り下げが浅い気がした。
この本が書かれた当時、東チモールへの入国もままならなかったらしいので、しょうがないのかとも思うが、やっぱり物足りなさが残る。
ただ、今現在混乱の最中にある東チモールを見ると、独立できたから終わりではなく、その後の方が大変なんだという事が実感でき、独立の為、命を失った人の事を考えると、複雑な気持ちでもある。 

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「夜と霧」(ドイツ強制収容所の体験記録) [本ノンフィクション:ジェノサイド]

夜と霧―ドイツ強制収容所の体験記録

夜と霧―ドイツ強制収容所の体験記録

  • 作者: 霜山 徳爾, V.E.フランクル
  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 1985/01
  • 9点
 
少し前「ドイツは苦悩する」という本を読んで、最近のヨーロッパ事情にとても疎い自分に愕然とし、少しヨーロッパ関係の本を読もう・・と思って、結局読んだのがこれ(^_^;)。
現代ドイツではなく第二次世界大戦中のドイツ強制収容所-その中でも悪名高い「アウシュビッツ」に収容された精神科医である著者の体験記である。
最初に「解説」のページがかなりあり、この中で、ドイツ国内外に作られた収容所の実体が、収容所毎に詳しく解説してあるので、アウシュビッツだけでなく、収容所全体の状況が知りたいという場合にも参考になる。
著者が精神科医である為、収容所に入れられた人間の心の動きを、自分の体験を踏まえつつも、できる限り客観的に捕らえようとしており、とても興味深い、そして考えさせられる事の多い一冊だった。
収容所に向かう列車の中、収容所についた時、収容所初日、収容所でしばらく過ごした後、そして解放後、人の気持ちは見事なまでに変化する。
収容所に入って間もない頃は、他の囚人が看守から暴力を振るわれるのを見て、衝撃を受けたり、憤ったりするのが、その内、全く関心を持たなくなっていく経過や、その理由の推察、極限状態でも生き延びられる人間のタイプの考察、心のより所になる物、解放されてからも残る収容所の体験、それら様々な状況を描きながら、人はいかに人生を歩むかまで深く突っ込んだ一冊だと思う。
訳がちょっと読み憎いのが(誤植や、文章の辻褄があってない部分がかなりある)ちょっと残念だが、それでもいい本だと思う。

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