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「羆撃ち」久保俊治著:日本で唯一の熊ハンターによる自伝。自然のすごさとその中で生きるハンターの姿が臨場感・躍動感に溢れ描かれている! [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

羆撃ち (小学館文庫)

羆撃ち (小学館文庫)

  • 作者: 久保 俊治
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2012/02/03
  • メディア: 文庫
7.8点

長野で猟師として生活する著者の生活を描いたコミックエッセイ「山賊ダイアリー」(リンク先感想)。
現在3巻まで出ており、猟師トリビア満載で、新鮮な驚きに満ちた内容と、厳しい自然と相対しつつも、
ちょっととぼけた登場人物達の行動や姿が、良い味を出していて(84歳、銃の腕も、罠の腕前も
達人な佐々木さんは、ヒートテックも知っている←著者は佐々木さんに教えて貰った)、
1~3巻、どれも外れ無し!かなり好きなマンガ。

で、そのマンガに触発されて読んだのが「羆撃ち」。
「羆(ひぐま)」だけど、「くま」と読む。

著者は、子供の頃からハンターになることを目指し、それを実現する。
第一章は、子供の頃から持っていたハンターへの憧れの気持ちや、いかにしてハンターに
なったか、自分の銃を初めて手に入れた時の興奮などが描かれている・・・・んだけど、
著者にまだ興味を持っていなかった私は、第一章を読んで、著者の思い入れが延々と語られるのに
ひいてしまい、この本を読んで失敗だったかな?とちょっと思った(^^;)。

しかーーーし、第二章以降、実際の猟の描写になって、その思いは完全に払拭!!
北海道の自然の中、鹿と相対する描写、命を奪うという行為、そして獲物への敬意・・・、
目の前で展開される緊迫感あふれる描写と、著者の自分を律し鍛錬していく姿に感動。

羆を追うようになってからは、より緊迫感・臨場感に溢れ、著者がいる大自然の臭いが、
木々の音が、山の中を歩く著者の気配が、感じられそうな気が。

そして、羆の猟がびっくりするぐらい厳しいことも知った。
羆の怖さは、大正時代に羆に襲われた村の恐怖を描いたドキュメンタリー「羆嵐」(リンク先感想)で、
知っているんだけど、そんな羆がいる森の中に、一ヶ月以上キャンプ、一匹の羆を追い、
数日間は森の中でビバークが当たり前・・・という、想像以上に過酷な猟。
羆がいる森、それも近くにいる可能性が高いのに、そこで寝るって・・・・それだけで怖い(^_^;)。
一人で猟をしているので、羆を倒したとしても、肉を全部運ぶため、倒した場所との往復だけで
4日・4回も費やしたり・・・・・・・厳しいっ!!

「山賊ダイアリー」は、自宅から通える場所に行き、夜になる前に帰宅するという猟だったので、
この「羆撃ち」を読んで、同じ猟でも、全く違うものなんだなーとも驚いた。

中盤からは、著者が猟犬として育て上げたフチとのエピソードも加わり、これがまたいいっ!!
著者のフチへの愛情が行間からこぼれ出るようで、それが過酷すぎるとも言える羆猟の
エピソードと合わさり、物語に奥行きを出している。

後半は、アメリカに渡りハンティングガイドの学校に通い、アメリカでハンティングガイドの
仕事に従事するエピソードなども書かれていて、アメリカのハンティングの実情が見えて、
これも興味深かったけど、やっぱり、すごいのは、北海道の大自然の中で、たった一人で
羆と戦う著者の姿。

自然の中で生きる事の大変さ、凄さだけでなく、他の生き物の命を奪って生きている事を
実感せず生きている自分たちのことも、改めて認識できる本。
「山賊ダイアリー」が好きな人に、とってもお勧め(^-^)ノ。
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「ヒマラヤ初登頂物語」岡山まさあき画・上村信太郎構成・文:マンガがつまらない・・・ [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

新装版Yama-kei COMICS SPECIAL ヒマラヤ初登頂物語 アンナプルナ、エベレスト、マナスル編 (Yama‐Kei COMICS SPECIAL)

新装版Yama-kei COMICS SPECIAL ヒマラヤ初登頂物語 アンナプルナ、エベレスト、マナスル編 (Yama‐Kei COMICS SPECIAL)

  • 作者: 岡本まさあき=絵
  • 出版社/メーカー: 山と渓谷社
  • 発売日: 2010/08/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
4点

ヒマラヤ8000m峰の中の、アンナプルナ・エベレスト・マナスルの初登頂物語をマンガに、
また3つの山の登山史が文章でまとめてある本。

メインはマンガなんだけど、これが「学習まんが」そのままの、古臭くて、
ストーリーをなぞりました的内容。
歴史学習マンガも、マンガとして読むにはかなりできが悪く、一応勉強になるから・・と
息子には読ませたけど、これも内容はそんな感じで、学習ではなく、娯楽として読むには厳しい。

登場人物は、絵柄も、キャラクターも、どちらにも全く魅力がなく、演出もダメダメ。
また、同じ服装(登山スタイルで)の登場人物の見分けがつきにくいのも問題。
マンガの元ネタ「処女峰アンナプルナ」(リンク先感想)は、
冒険心に溢れ、すごく面白かったのに、これではそれが全く伝わって来ない。

エベレスト・マナスルに関しても、元の話は、もっと盛り上がるんだろうけど、同じく面白く無い。

各山の登山史のまとめは、簡潔にまとめてあるので、参考にはなったけど、メインのマンガがダメ過ぎ。
帯に「登山史上最高のドラマ!」って書いてあるし、元になった実話はそうなんだろうけど、
それを描ける力量のある漫画家さんを使って欲しいな~。

実話をベースに描かれたマンガでマイナーなものは、この手のものが多くてがっかりさせられる(-_-;)。
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「空白の五マイル-チベット世界最大の、ツアンポー渓谷に挑む」角幡唯介著:まだ世界には未踏の地があった! [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む

空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む

  • 作者: 角幡 唯介
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2010/11/17
  • メディア: 単行本
7.3点

第8回開高健ノンフィクション賞受賞作。

チベットと中国の国境地帯にあるツアンポー渓谷。
謎の川とも呼ばれた「ツアンポー川」沿いの渓谷は世界最大の規模を誇り、
ヒマラヤ山脈山麓の厳しい環境条件が、多くの冒険家の侵入を拒んでいた。
1924年、ウォードがその無人地帯を突破したが、それでも探索できなかった場所は、
「空白の五マイル」と呼ばれ、冒険家達の夢をかきたてた。
2003年、その空白の五マイルに挑んだ著者。
そして2009年の再訪。
今まで多くの冒険家達を拒んできたツアンポー渓谷の自然環境の厳しさが伝わってくるルポを、
ツアンポー渓谷に挑んだ冒険者達の事も紹介しつつ、まとめた一冊。
探検ルポだけではなく、冒険とは何かや、何故危険を冒してまで冒険に挑むのかという
気持ちを教えてくれる本。

今まで冒険ものはいろいろ読んできたけど、元が新聞記者だけあって、
章の構成がとても上手い事に感心。
ツアンポー渓谷探検史は、いろいろな人物が登場してくる上に、そのエピソードも長い。
著者自身の行動のルポの合間に、それらエピソードがうまくはめこまれていて、
著者のツアンポーへの情熱や、著者が挑んだ冒険の危険さ、困難さが、
より鮮明に伝わってくる構成になっている。

2003年に訪れた時と、2009年の再訪の時とで、携帯の普及により、
超辺境の寒村の様子が、大きく変貌しているのが衝撃だった。
2009年、中国政府の許可を取らず、無許可で侵入した著者に対し、
顔見知りであっても村人たちが「誰かが携帯で即通報するかもしれない」と
協力しようとしないというエピソードが続くのは、悲しいものを感じてしまった。
冒険譚としては2009年の再訪時の方が、上記のような理由で手助けが得られなかった為に、
困難に継ぐ困難、命すら危険な状態になり、緊迫感に溢れている。

でも、新たなる発見を求めて「空白の五マイル」を探索する2003年のルポも、
発見の期待に胸踊らせるような内容になっていて、面白い。

そういえば、ツアンポー渓谷探検の歴史の中に、デビッド・プリーシャーズが出てきてびっくりした。
この人、エベレストで起きた大量遭難のルポ「空へ」や、
エベレスト―非情の最高峰」(どちらもリンク先感想)などにも出てくる。
多岐にわたって活躍している人なんだなーと思ってしまった。

ヒマラヤ山脈山麓の探検に関しては「処女峰アンナプルナ」(リンク先感想)でも、
アンナプルナへたどり着く為の道を求めて(それすら発見されてなかった)
山麓を探検する話が載っており、この話が面白かったのなら、「処女峰アンナプルナ」も楽しめると思う。
山麓探検ものは、登山物とはまた違う、自然が創りだす厳しい環境について述べられていて、
新鮮でもあった。

人跡未踏の地はほとんど無くなってしまって、冒険譚は過去のもの・・・と思っていたけど、
まだまだ冒険する場所があったんだという驚きと、感動を与えてくれる本。
しっかりまとまっていて読みやすいし、お薦めです(^-^)ノ。
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「グレートジャーニー人類400万年の旅」1巻~7巻 [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

人類400万年の旅―南米編〈1〉 (グレートジャーニー)

人類400万年の旅―南米編〈1〉 (グレートジャーニー)

  • 作者: 関野 吉晴
  • 出版社/メーカー: 毎日新聞社
  • 発売日: 1995/04
  • メディア: 大型本


文庫版「グレートジャーニー 人類5万キロの旅 1 (角川文庫)」も出ているようです。

数百年前、アフリカから始まった人類の軌跡を、反対からなぞろうという壮大な旅「グレートジャーニー」。
フジテレビで、この旅について以前放送してた。

全8巻の内、まず4巻まで読んでみた。
1・2巻-南米
3巻-中・北米
4巻アラスカ
という内容。

図書館で借りる時、ページ数が一冊100p前後と少ないので、すぐ読めると4冊まとめて借りて大失敗。
写真メインの図鑑のような本で、一冊一冊が重いっ( ̄□ ̄;)!!!
2/3ぐらいがカラー写真、残りが旅の紀行文というのは、
同著者による「インカの末裔と暮らす」(リンク先感想)と同じ。
ただ、「インカの末裔と暮らす」がケロ村という1つの村についてのみ書かれているのと違い、
こちらは、どんどん場所が移動する。

南米最南端の島から、パタゴニアをぬけ、アンデス山脈、アマゾン・・という風に。
そのため、非常にあっさり、悪く言えば物足りない、説明不足という印象が強い。
以前フジテレビで放送された「グレートジャーニー」を見た時も同じ事を思った。
駆け足で旅のルートを辿っているように見えてしまう。
本当は、かなり時間がかかってる場所もあるらしいし、途中立ち寄った村々での、
いろいろなエピソードもあるのだが、ちょっと触れられているだけというのも多く、
バタバタと場面が変わって行くのを傍観している気分になってしまうことが多かった。

全部が全部そういう印象ではないけど、じっくり書いてある部分が少ない。
1巻最初のほうの、パタゴニアの雪原を抜ける時の、命の危険を感じるような緊迫感とか、
それだけでたくさん書けそうなんだけど、あっさり。
それでも、ここの記述は長い方。
アラスカを扱った4巻で一番印象に残った文章は、
「-10度以上になると、熱くて犬も(犬ぞりを使っている)疲れやすい」だった。
-10度以下がデフォルトってすごいなーーー(^^;)。

※2・3巻、感想をメモしてなかった。
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で、以下が5~7巻を読んだ感想。

5巻は、シベリア。
殺したばかりのトナカイの脳と目玉を生で食べちゃうシーンにびっくり。
でも記述は、数行・・・・食エッセイストなら、これだけで一章使っちゃうよ(^^;)。
雪原で、アザラシなどを解体した跡は、雪の上の血が生々しい。
ここで生活している人は、こういうのが普通なんだろうなぁと思うと、カルチャーギャップも感じる。

6巻もシベリアからモンゴルへ。
トナカイのソリってサンタクロースでとってもメジャーなのに、実際使っている話は、
この本で始めて読んだかも。
4巻・5巻は犬ぞりで移動していたので、植村直己の犬ぞりの話を思い出しつつ読んだけど
(植村直己の本の方が犬ぞりに関しては詳しい)、トナカイの引くソリの話は新鮮。
馬に乗るみたいにトナカイに乗っている写真もあった。

7巻はゴビ・チベット・ヒマラヤ
今度はラクダで移動。モンゴルの紀行文はいくつか読んでいるので、あまり新鮮味はなかった。
6巻だったか7巻だったかの、巻末についている対談が面白かったんだけど、
どっちの本か忘れた(^^;)こういう時、確認できないのは、図書館から借りるデメリットだな~。

ほんと、すごい体験をしてるのに、それに関しての記述が詳しくないのが残念。
あーー、勿体無い勿体無い、もっと詳しく知りたい!と思いつつ読んだ。
カラー写真が多いのは良かったけど。

かなり前に書いた感想のサルベージです。
後一巻なのに、8巻何で読んでないんだろ?ヽ(゚◇。)ノ?
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「エベレスト登頂請負い業」村口徳行著:登山のスケジュール管理がメイン? [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

エベレスト登頂請負い業

エベレスト登頂請負い業

  • 作者: 村口徳行
  • 出版社/メーカー: 山と渓谷社
  • 発売日: 2011/04/15
  • メディア: 単行本

5点

映像カメラマンとして、多くのエベレスト登頂に同行した著者による、登頂同行記。
著者本人によるエベレスト登山他、三浦洋一、野口健、渡辺玉枝、
三浦雄一郎との同行記が載っている。

帯に「日本人最多登頂の映像カメラマンが明らかにするサミッターたちの登り方」というキャッチと、
上記4名の名前が。

今まで読んだ登山物で、アルピニストの性格によって登山スタイルや、
登山中の行動がずいぶん違うのは知っていたし、その違いは面白かったので、
そういうのを期待したのだけど、違ってました。

登山スタイルや行動ではなく、登山スケジュールの詳細がこの本のメイン。
順応に高度○○メートルで×日、休養△日・・・というのが、細かく書いてある。
順応と休養に関する話が中心という感じが。
自分が登山をする訳ではないので、あまりスケジュールには興味が持てなかったので点数低め。

サミッター一人一人に関しては、「体力があって強い」「信頼できる」などの無難な印象が語られていて、
ほとんど得るものは無かった。
野口健に関してだけは「何も考えていないヤツ」とか、ちょっと辛口な部分もあったけど、
ちょっとだけだったし、「いいやつ」というフォローも。

4人のサミッター、登山の様子、登山のスケージュルと実際の行動、
そして著者の映像カメラマンとしての心構え、行動、登山時の撮影など・・・いろいろ書いてあるけど、
どれもあっさりし過ぎていて、読み物というより「記録」という感じ。
著者の登山に対する考えはちょこちょこ述べられているので、記録エッセイ??
状況説明がかなり少ないので、エベレスト登山の臨場感をあまり感じられなかったのも残念。
補足説明も少ないので、登山をしなくて、登山物をあまり読んでいない人だと、
状況がかなりつかみにくい気も。

著者が考える順応・休養のスケジュールや、著者が考える登山スタイルを知りたい人や、
本書で取り上げられている4人に関してちょっとした情報でも欲しいって人向け。
読み物として「エベレスト登山物」を読みたい人は、別の本を読んだ方が楽しめると思う。
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「でこでこてっぺん-元祖(元)女子山マンガ」ゲキ著:登山のちょっとしたエピソード満載!怪談も・・・ [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]


元祖女子山マンガ でこでこてっぺん

元祖女子山マンガ でこでこてっぺん

  • 作者: ゲキ
  • 出版社/メーカー: 山と渓谷社
  • 発売日: 2010/03/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
7.3点

雑誌「山と渓谷」に1993年1月から連載されていたコミックエッセイをまとめた本。
1ページマンガなので、1993年1月~2009年10月まで、一冊で16年分載ってます。
タイトルに(元)が付いているのは、連載開始時は女子だったのが、
現在は女子では無くなってしまっている(お子さんもいらっしゃる)からだと(^^;)。

登山でのちょっとしたエピソード、個性的な人々ネタが満載で面白かった。
登山に向いてる髪型とか、ファッション、著者が滑落して大怪我をした時の話なども載ってます。
山登りをする人の、普通とはちょっと違う下界(日常)生活ネタも笑える。
冬、シェラフを足にまいたまま(温かいらしい)家の中で移動したり、
寒い日に用をたすのに使ったコッヘルを普通に食事でも使ってたり、
山と下界のファッションが違い過ぎる人もいれば、同じ人がいたり。
山登りをする人と、沢登り、岩登りをする人とでは、かなり考え方が違うのも知りました。
山での怪談ネタもいくつか載ってます。

厳しい登山のエピソードはあまりなく、読んでてくすくす笑ってしまう、
そんなまったりしたエピソードが満載。
山登りをしない人でも楽しめます(^^)。
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「トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか」羽根田治他:遭難の状況、低体温症や当時の気象の解説などを詳しく述べた本 [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか

トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか

  • 作者: 羽根田治
  • 出版社/メーカー: 山と渓谷社
  • 発売日: 2010/07/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
7点

ちょびさんのブログ「自転車に乗って」で知りました。

2009年7月、北海道トムラウシ山の登山ツアーで、ガイドを含む18人の内、
8人が死亡するという痛ましい遭難事故が発生。

本書では、ガイドや参加者の証言から当時の状況を詳細に振り返ると共に、
気象や低体温症、そして運動生理学的視点からの詳しい解説や、
事故の再発を防ぐための考察がされている。

最初、羽根田治の他の著書「ドキュメント気象遭難」に書かれている
2002年トムラウシ山での遭難とごっちゃになってしまった。
「あ、別の遭難事故だ!」と気がついた時、同じ山で、同じ低体温症が原因の、
似たような遭難事故がおきている事に驚いた。

ツアー参加者の証言から、低体温症になった場合の状態や思考の状態が、詳細にわかり、
状況によっては非常に早いペースで低体温症になる事、
なってしまうと運動・思考能力、その両方が阻害され、大変危険であることがよくわかる。

突然意識が朦朧として、ちゃんと話せなくなったり、
あとから考えると明らかにおかしい状態でも、それに気がつかなかったり、
低体温症の思考能力への影響の大きさが、とても怖いものだと知った。

この遭難事故の報道では、「装備の差が明暗を分けた」と言われていたが、
実際には、それほど装備の差は無かったらしい。
ただ、持っていても着ていないというのは、あったらしい。

ちゃんと話せなくなり、思考もおかしくなった状態から回復し下山できた人、
そのまま動けなくなってしまった人、その明暗を分けたのはなんだったのか?

また、ガイド3人の内、2人が体調が悪くなった人に付き添ったりで、1人しかいなくなり、
その残ったガイドも低体温症で行動がおかしくなった、
そんな状況の中、ツアー客が動けなくなった他の客を一生懸命下山させようとする姿は、
感動的でもある。

著者は、ツアー登山のリスクマネジメントに関して、言及しているが、
ツアー会社のスタンスだけでなく、参加者側の意識も大きい為、
ツアー登山の危険を減らすのは、難しいと改めて実感できる内容になってもいる。

低体温症や、運動生理学、気象条件などに関しては、細かいデータも提示され、
ちょっと詳しすぎる内容になってると思ったが、登山をする人なら、読んでおいて損は無いと思ったし、
低体温症の怖さや、ツアー登山に参加する心構えに関しては、読んでおくべきものだとも思った。
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「エベレスト―非情の最高峰」ブロートン コバーン著:「空へ」を別の視点から見た章も [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

エベレスト―非情の最高峰

エベレスト―非情の最高峰

  • 作者: ブロートン コバーン
  • 出版社/メーカー: 日経BP出版センター
  • 発売日: 1998/05/01
  • メディア: 大型本
7点

ちょびさんのブログ「自転車に乗って」で紹介されていたのを読みました。

ちょびさんに「重かったでしょ?」って聞かれたけど、本気で重かった(-_-;)。
でかいし、カラー画像メインの図鑑タイプだし、ずーーーっしり。
持ち運んで読むのは不可能なタイプ。
図書館で受け取った時、重くて焦った。

1996年5月、2つのパーティーが多数の遭難者を出したエベレスト。
遭難したパーティに加わっていたジョン・クラカワーが、
この事故を詳細に記録した「空へ」(リンク先感想)が有名。
他にも何冊か本がでてるし(上記リンク先でいくつか紹介)、
遭難した一方のパーティーのリーダー、ロブ・ホールが、
エベレスト山頂付近に取り残された絶望的状態で、
携帯電話で身重の妻と最後の会話するエピソードなども知っている人が多いかと思う。
日本人女性二人目のエベレスト登頂成功者が、下山を果たせず亡くなった事故でもある。

この事故が起きた時、撮影の為にエベレストにいたデビッド・ブレッシャーズのパーティは、
遭難者の救出の為、奔走する。
それは「空へ」などでも触れられている。

この本は、そのデビッド・ブレッシャーズのパーティが、1996年5月、エベレストの風景を、
大型フィルムIMAXに収める為にエベレスト登頂に挑んだ経過を、
鮮やかな写真と共にまとめたものである。

上記の遭難事故の話も、かなりのページを裂いて書いてあり、
その年は、登頂許可が出たパーティが多すぎた事、事故当日、登頂を目指したパーティも多すぎる事、
パーティ同士の話し合いを無視した自分勝手なパーティがいた事、
遭難したパーティは2つともガイド付きパーティで、明らかに力不足のメンバーがいたこと・・・etc、
別の視点で事故を見ることができたのは、興味深かった。

また、アイスフォール、ヒラリーステップ、ウェスタンクウムなど、エベレスト登山の本を読むと
必ず出てくる場所が、美しい写真でドカーン(本でかいから)と掲載されており、
その様子がよくわかったのも良かった。

事故当日だけではなく、シェルパの生活や伝統にも注目し、それを紹介しているのも面白い。

本筋とは関係ないコラムなどが要所要所に突然入ってきて、
本筋を切ってしまうのはすごく読みにくかったけど。
もうちょっと構成でどうにかならなかったのか??

エベレストの壮大な風景、ヒマラヤ登山を助けるシェルパ達の生活や文化、そして1996年5月の事故、
いろいろな意味で楽しめる本。
お勧めです(^^)。
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「ドキュメント滑落遭難」羽根田治著:「いのちの代償 山岳史上最大級の遭難事故の全貌!」川嶋康男著:「雪山100のリスク」近藤謙司著 [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

ドキュメント 滑落遭難

ドキュメント 滑落遭難

  • 作者: 羽根田 治
  • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
  • 発売日: 2008/06/27
  • メディア: 単行本
7点

いのちの代償 (ポプラ文庫)

いのちの代償 (ポプラ文庫)

  • 作者: 川嶋 康男
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2009/09
  • メディア: 新書
7点

雪山100のリスク

雪山100のリスク

  • 作者: 近藤 謙司
  • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
  • 発売日: 2008/12/12
  • メディア: 単行本
7点

登山関係3冊。

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「ドキュメント滑落遭難」は7件の滑落遭難事故を取り上げ、原因、予防方法を探る本。

この著者の本には「山の遭難―あなたの山登りは大丈夫か「気象遭難」「生還-山岳遭難からの救出」(リンク先は感想)などもあります。

今まで読んだ遭難物との違いは、「滑落遭難」は一瞬で運命が決まる事が多いということ。

道迷い遭難や、気象遭難などは、状況が悪化する前に対処法があったり、
遭難という状態に陥ってからの過ごし方なども、大きなファクターとなる。

しかし、「滑落遭難」の場合は、ほんの一瞬の油断、不注意、それが事故につながる。
つまずいたり、転んだり、ちょっとしたことが滑落につながり、
滑落して助かるかは、運次第の部分が大きい。

それを避ける為には、どんなベテランであろうが、登山中いつも気を抜かないという事が必要になる。

危険な難所を抜けた直後ホッとした瞬間、焦って前に追いつこうとした時、
滑落の危険はすぐ側に迫っている。

また、道迷いから山中をさまよっている最中の滑落事故(多いらしい)の例や、
同行者が滑落した時の対処方法などについても載っている。

先日読んだ「雪崩遭難」(阿部幹雄著)に比べると、専門用語も少なく、
山登りに詳しくない人でも分かりやすい内容で書いてあるのも良かった。
さくさく読めるし、登山をする人なら読んでおいて損は無いと思う。

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「いのちの代償」は、以前「凍(しば)れるいのち」として出されていた本を、改題・再構成したもの。

1962年、北海道大雪山で、北海道学芸大学函館分校山岳部のパーティ11人が遭難し、
10人が死亡、リーダー野呂のみが生還した。

この本では、生還した野呂からのインタビューを元に、
この遭難事故当時の状況を、克明に描き出している。

またリーダーだけが生還したという事から非難され、
凍傷により足のかかと部分より前を切断し障害者となった野呂の、
そのハンデを物ともしない見事な生き様を、出生から社会人になってまでを追っている本でもある。

遭難事故の記録は、要所要所で仲間との強いつながり、信頼感が、感じられる分、
遭難する前、これからの運命も知らず、パーティメンバーが和気あいあいと
雪山登山を楽しんでいる過程を読んでいる間も、より辛く切ない気分になってしまう。

弱った仲間の為、まだ下山出来る状態であるのにビバークしたことをきっかけに、
パーティのメンバーを襲う自然の驚異と災い。

猛烈な吹雪の中、弱った仲間を見捨てず、サポートしながらの試行錯誤が、
結局元気だったメンバーの体力すら奪い、悲劇的な結末へと繋がっていく様子は、
「その時、彼らはどうすればよかったのだろうか?」とすごく考えさせられた。

また生還後の野呂の生き様も、あの雪山を一人生き延びた理由がわかる、
どんな困難な状況でも試行錯誤し、目的に向かい道を切り開き、目的を達成するという生き方で
(樺太で生まれロシア軍に追われ・・という幼い頃の体験もすごいが)、
感銘出来る部分も多かった。
ただ、本の半分がそれに裂かれてしまっており、野呂の人生自体が、
興味の範囲外でもあった為、もう少し短くても・・・と思ってしまう自分がいた。

困難にぶち当たった時、読むと勇気づけられる本ではある。

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「雪山100のリスク」は、雪山でどう行動すべきかのハウツー本。

雪質の確かめ方や、雪山でのリスク回避の為のあれこれ、
ビーコンの使い方、雪崩に巻き込まれた仲間を探す時の方法、手当の仕方・・・・などが100個。

なので、雪山登山をする人や、バックカントリースキーヤー・スノーボーダーなら、
読むべき本。

逆に、そういうのを全くやらない私にとっては無用な物に近い本なのだけど、
先日読んだ、専門用語が多くよくわからない部分があった「雪崩遭難」の内容が、
これを読むと、おおおおおーーー、という感じでよくわかる部分があった。
また、雪洞、スノーブリッジ、ウインドスラブなど、今までぼんやりとしかわかってなかった事が、
絵や写真付きで解説してあるので、はっきり認識することができた。
特に、滑落した時、ピッケルを雪面にさして体を確保する滑落防止技術については、
想像していたのと、かなり違っていて驚いた。
「滑落防止技術」や、「ロープで滑落した人を釣り上げる」「骨折した時の応急処置」などは、
思っていたより複雑で難しく、何度も練習しないとできないものなんだなーと実感。

そういう意味で、本来なら実践の助けになるものだけど、
私の場合、雪山登山の本を読むベースになる知識を得た本でした(^^)。

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「ドキュメント 雪崩遭難」阿部幹雄著:雪崩遭難事故8件を検証、実際に山登りしてる人向け [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

ドキュメント雪崩遭難

ドキュメント雪崩遭難

  • 作者: 阿部 幹雄
  • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
  • 発売日: 2003/01/01
  • メディア: 単行本
7点
生と死のミニャ・コンガ

生と死のミニャ・コンガ

  • 作者: 阿部 幹雄
  • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
  • 発売日: 2000/08
  • メディア: 単行本
7点

「ドキュメント 雪崩遭難」は、

北海道・尻別岳2001年2月6日3人巻き込まれる
青森・岩木山2002年1月19日3人巻き込まれ2名死亡
八幡平・源太ヶ岳2002年1月13日4人巻き込まれ1名死亡
北アルプス・唐松岳八方尾根2000年2月19日ニュージーランド人3名死亡
北アルプス・劔岳早月尾根1997年12月31日5人死亡
北アルプス・蒲田川左保谷2001年12月31日テントが巻き込まれる
石鎚山系・笹ヶ峰1997年2月11日1名死亡
石鎚山系・石鎚山2001年2月14日山岳救助隊訓練中3名が巻き込まれる

の8例を検証し、その原因や避ける方法は無かったのかを言及している本。

雪崩に巻き込まれた人は「雪崩が起きるとは思わなかった」「そこで雪崩が起きたことはない」の
どちらかを言うという。

経験だけに頼る危なさ、慣れによる油断、雪崩に対する危機意識の弱さ、知識の欠如、
どのケースも、上記のいくつかに当てはまる。
雪崩に巻き込まれたら泳ぐ、エアポケットを作る・・・など巻き込まれた時の対処法も書いてあり、
実際それで助かった人もいるが、流されている最中に木にぶつかったり、
対処法を知っていてもどうにもならないことも多い事が、
実際雪崩に巻き込まれた人の体験を読むとよくわかる。

著者は、雪崩遭難を避ける為、装備の充実、科学的な知識、現場での検査等の必要性を
繰り返し問いている。
雪山に登る人や、雪山でスキー場以外でスキー・スノボーをする人は読んでおきたい本。
ただ、地形、装備など専門用語も多くその解説がほとんど無い為、
登山をしない人だと、わかりにくい部分が多いのが残念。

---------------------------------------------------------------------------------------

「生と死のミニャ・コンガ」は、同じ著者による、本人の体験を綴った本。

1981年ミニヤコンカ登山のパーティーに参加した著者は、目の前で7人が滑落していくのを目撃する。
一瞬に7人の命が消えていった出来事。
それも、一緒に滑落していて不思議ではなかったのに、自分だけが助かったという運命のいたずら。
著者は自分が生き残った・生かされたという理由についてずっと悩む。
この本は、この事故が起きるまでの登山の様子、原因などを書いた前半と、
発見されない遺体探索や、遺族とのやり取りの中で、
著者が自分が生かされた理由を模索する後半に分かれている。

山での遭難は、生き残ったものの心にも、深い傷跡を残す。
少しでも遭難事故を減らそうと「ドキュメント 雪崩遭難」を書いた著者の気持ちが、
これを読むとよくわかる。

こちらは、かなり前に読んだ本だけど、「ドキュメント 雪崩遭難」を読んで思い出したので、
参考に載せておきます。

ミニヤコンカに関する本は、他に、ミニヤコンカで遭難し19日目に奇跡的に生還した体験を綴った
「ミニヤコンカ奇跡の生還 」があります。

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「死者は還らず-山岳遭難の現実」丸山直樹著:遭難しない為に・・・ [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]


死者は還らず―山岳遭難の現実

死者は還らず―山岳遭難の現実

  • 作者: 丸山 直樹
  • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
  • 発売日: 1998/03
  • メディア: 単行本

6.5点

いろいろな山岳遭難を、事件や当事者に取材し、その原因と予防に関して考察した本。

早稲田大学山岳パーティーの4人が劔岳で遭難し3人が死亡した事故では、
リーダーシップと危機管理(特に天気予報とその後の天候の予測)のあり方について。

明治大学山岳部の2人が利尻岳で雪庇を踏み抜き、一人が死亡、
一人が自力で下山しながら、連絡を怠った為、遺体の発見まで時間がかかってしまった事故では、
助かった一人に取材し、当時の心理状態を推測すると共に、今の気持ちも語って貰っている。

吾妻連山スキー場で起きた7人遭難、5人死亡の事故では、
そのグループのリーダーの人となりや、メンバーの和気あいあいとした関係から、
事故の原因を推測している。

「道迷い」による遭難に関しては、いろいろな事例をあげ、道迷いの時、多くの人が陥りやすい罠や、
ベテランですらもちょっとした勘違いで遭難することなど、道迷いの怖さについて語っている。

「沢登り」「ウォータークライミング」による事故では、川の流れ、滝つぼの水の流れの怖さが
水死体が滝つぼの渦に囚われ、引き上げ作業が困難だったという事例を通して語られている。

ヒマラヤトレッキングの途中高山病で亡くなった単独旅行者の話では、
高山病の恐ろしさや、単独であることの問題点が指摘されている。

「道迷い」の章は、ちょっとしたハイキング登山などをする人でも参考になると思った。
人は迷うと、その道を引き返すより、先に進みたがる。
特に下山の時は、坂を登って戻るのは嫌なので、多くの人がもう少し降りれば何とかなるだろう・・
とそのまま進んでしまうという。
しかし、こういう時、上に上にと登って行くのが正解らしい。
下山途中で、道に迷い、ルートもわからず山を下った場合、悲惨な状況に陥る事が多いというのが、
この章を読むとよくわかる。
私も、来た道を引き返すより、そのまま進んでしまうだろうし、
特に坂道を登って引き返すのは、すごく嫌だと思う。
後ちょっと行けば・・・ってのも、日常的によくあるし。
ただ、市街地では、それほど問題にならない事でも、
山ではそれが大問題になるんだなーというのがよくわかった。

川の怖さも、川遊びなどをする人には、参考になると思う。
膝下くらいの水でも流れによっては、溺れる事がある川の濁流。
そういう怖さを認識しておくのは重要だと。

全部の話が参考になるかというと、そうでもない。
でも、道迷いや川や滝の怖さなどは読んで知っておくのもいいと思う。
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「長谷川恒男-虚空の登攀者」佐藤稔著:アルプス三大北壁を制覇した男の生涯 [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]


長谷川恒男 虚空の登攀者 (中公文庫)

長谷川恒男 虚空の登攀者 (中公文庫)

  • 作者: 佐瀬 稔
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1998/05
  • メディア: 文庫
6点

同著者による「狼は帰らず―アルピニスト・森田勝の生と死」が面白かったので、
森田勝がライバル視していた長谷川恒男に関しての本も読んでみました。

長谷川恒男は、アルプス三大北壁を制し、いくつかの著書を著し、記録映画も撮られ、
自分が興した山岳ガイドの会社も起動にのり・・とアルピニストとしては、
かなり成功した人である。

長谷川恒男に関しては、温厚で、物静か・・・そんなイメージがあったけど、
本書では、そういう面だけでなく、プライドが高く、一番に固執した彼の別の面も描かれている。
またロッククライミングに関しては、天賦の才があったようだ。

ただ、長谷川恒男自身について、予想していたより掘り下げて書かれてはおらず、
日本の登山や登山会の歴史の変遷が中心・・・という感じで残念。

また森田勝に関する記述は、「狼は帰らず」とほぼ同じ文章が使われていると思われる場所も多かった。

長谷川恒男に関して知りたいと思って読むと、物足りなさがかなり残る。

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「狼は帰らず―アルピニスト・森田勝の生と死」佐瀬稔著 [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]


狼は帰らず―アルピニスト・森田勝の生と死 (中公文庫)

狼は帰らず―アルピニスト・森田勝の生と死 (中公文庫)

  • 作者: 佐瀬 稔
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1998/11
  • メディア: 文庫

7点

夢枕獏の「神々の山嶺」の主人公のモデルと言われている、
アルピニスト森田勝の生き様を描いた一冊。

森田勝は、タイトルにもある「狼」と呼ばれていたアルピニスト。
激しい性格で、周囲と摩擦を何度も繰り返したが、
山に信じられないほどの情熱を傾けた登山家・・・
今まで読んだ彼のエピソードから伝わってくるのは、そんなイメージだった。

しかし、この本には、今まで抱いていた彼のイメージとは全く違う姿が描かれていて愕然。

裏表がなく、思ったことをそのまま口に出し、自己中心的な思考の持ち主でもあった為、
周囲との摩擦が耐えない。
また、自分の不遇を嘆き、強いコンプレックスを持っていた。
我が強い為、一人で登山をする方が向いているタイプなのにも関わらず、
いつも人と一緒にいたい、ガキ大将のように持ち上げられて一番でいたい・・
そんな人物像が描かれている。
「狼」と呼ばれていた事から、「寡黙な孤高のアルピニスト」と勝手に抱いていたイメージが
崩れてしまいがっかり。

しかし、読み進めると、森田勝のそういう部分の魅力や、内面が変化して行く様も描かれていた。

若い頃は、アンザイレンした相手を、自分が助かる為なら即ザイルを切って見捨てられる、
そのためにナイフをいつも持っているとはっきり言った森田が、
登攀途中で怪我をした仲間を思い涙を流す。
奥さんへの愛情、真摯な気持ちも、裏表がない性格だけに、ストレートに伝わってくる。

残された山靴」「みんな山が大好きだった」でも、森田勝の話は読んだが、ここまで深く掘り下げている本は始めて。

森田勝の姿は、夢を追う事はここまでの情熱と覚悟が必要なのだと教えてくれる。

山に対するひたむきな情熱、周囲からは呆れられるほど純真、悪く言えば子どもっぽいその性格、
そんな森田勝の姿、生き様が、彼の登山・登攀経歴と共に、生き生きと描き出されている本。

森田勝がライバル視していた、長谷川恒男の本「長谷川恒男 虚空の登攀者」も
この本の著者は書いている(「残された山靴」もこの著者の本)。
そちらも読んでみたくなった。
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「山の遭難-あなたの山登りは大丈夫か」羽根田治著:高尾山に登る程度でも読むべきかも [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]


山の遭難―あなたの山登りは大丈夫か (平凡社新書)

山の遭難―あなたの山登りは大丈夫か (平凡社新書)

  • 作者: 羽根田 治
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2010/01/15
  • メディア: 新書

7.5点

日本国内での数々の遭難事故-死亡者が出たものだけでなく、単なる道迷いも-を検証しながら、
山に登る人の心得について述べた本。

山登りらしい山登りはしたことがないけど、高尾山には登ったことがあります。
特に何を用意するでもなく、ピクニック気分で。

でも、この本を読むと、どんな低い山であろうが危険であり、
レジャー気分で登ってはいけないというのがわかる。

平地で転んだら膝をすりむく程度でも、山道で転べば大怪我をしたり、
滑落し、死亡事故につながったりする。

急病になっても、すぐ救急車は来てくれない。
それを認識せず、体調が悪いのに山に登って具合が悪くなったりという例が後を絶たないという。
山登りは健康の為と登る人がいるが、危険と隣合わせの山登りは、
日頃、運動し体調を整えている人が登るべきだとも著者は述べている。

最近は、安易にヘリコプターや警察に救助を求める人も多いという
(最近問題になっている救急車をタクシー替わりにと同じ)。
その弊害、それらの安易な要請により多額の税金が使われている事なども、
これを読んで知るべきだと思った。
また、救助を求める際の心得などについても述べられている。

山登り(とまでも言えない低い山でも)のちょっとした油断が、命に関わる事、
多くの人に迷惑をかけることになることが、様々な実例をあげて述べてある。
著者自身も、自分の甘さから大変な状況に陥った体験談を語っている。

実例自体は、どれも短くかいつまんで語られているが、その分件数が多く、
「あっ、こういう状況は自分もなるかも」と思える部分も。

どんな低い山でも、山に登る人なら、一度は読んでおくべき本だと思った。
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「運命の雪稜-高陵に逝った友へのレクイエム」神長幹雄著: [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]


運命の雪稜―高峰に逝った友へのレクイエム

運命の雪稜―高峰に逝った友へのレクイエム

  • 作者: 神長 幹雄
  • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
  • 発売日: 1999/12
  • メディア: 単行本

6.5点

著者は「山と渓谷」編集長。
「山と渓谷」誌上に掲載された、著者による国内外の山岳遭難に関する記事を集めたもの。

「空へ」「デスゾーン」などで有名なエベレストの大量遭難事故に関するものもあるが、
これも、日本人女性2人目のエベレスト登頂成功者難波洋子さんを中心に書いたもので、
基本は日本人の国内外の遭難事故がメイン。

ナンガ・パルバット、鳥取(?)大山地獄谷、ヒマラヤ・トゥインズのヒドンクレバス、
冬期富士の突風、ネパール・トレッキング、ウルタル、カンチェンジュンガなどが舞台。

登山などをする人向けだと思われる「山と渓谷」に掲載されていたせいか、
専門用語なども多く、情景描写も簡単で、登山をしないものにとっては状況がわかりにくい事も。
また、一つ一つの記事もじっくり取材してというよりは、あっさりまとめたという感じなので、
物足りなさを感じる。

記事を一冊の本にまとめるのにあたって、関係者(ほとんどが遺族)からの寄稿文を掲載したり、
数年後の関係者を取材しているのは、興味深く読めたけど。

でも、もうメインの記事にもう少し読み応えが欲しかった。

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「凍る体-低体温症の恐怖」船木上総著:錯乱、運動障害・・想像以上に早く発症するらしい [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]


凍る体―低体温症の恐怖

凍る体―低体温症の恐怖

  • 作者: 船木 上総
  • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
  • 発売日: 2002/02
  • メディア: 単行本

7点

大学生の頃、モン・ブランでヒドンクレバスに落ち、
重度の低体温症に陥りながらも九死に一生を得た著者が、
自分の体験と、低体温症について詳しく解説した本。

前半は、遭難とリハビリの話。

著者は、ヒドン・クレバスに落ちたが運良く途中でリックが引っ掛かり、16時間後に救出された。
それだけを聞くと、「助かって良かった良かった」という感想で終わってしまいがちだけど、
救出されるまでは、生存はほぼ絶望視されていた状況。
また救助後も、想像以上に体のあちこちがダメージを受けており、そのリハビリに1年近くを費やしている。

右腕側のリックの紐で引っかかった為、長期間圧迫されていた右手は重度の麻痺。
回復するかわからない状況。
また、救出された直後は、重度の低体温症に陥っていたが、命に別状は無しという診断だったのが、
その後、リックの紐で圧迫されていた右腕からクラッシュシンドロームを発症し、昏睡状態に。
左手にも麻痺があり、落ちた時に、頭をぶつけ頭蓋骨骨折した為に記憶障害も。

回復するかはっきりしない状態で、リハビリに励む様子や回復の過程を詳細にメモしているので、
リハビリの記録としても参考になる。
著者は、医大生だった為、メモの内容が一般の人が書くより詳しいのもいい。

後半は、低体温症に関する詳しい解説。
著者が医者なせいか、詳しくなり過ぎて、大学の講義を聞いてるみたいな内容になってます(^_^;)。

体が熱を発生する仕組みや、その時使われる栄養素の種類、
その分解の過程とか、その辺りから詳しく解説(^^;)詳しすぎな感じが。

低体温症とは、体のコア部分の温度が35度以下になった状態
(普通体温を測る時は、皮膚表面などの温度「シェル温度」を測る)。

最初は、体の震え、軽度の錯乱、無関心、眠くなる、歩行のフラつきなど。
体のコア部分が35度以下の軽症の状態でもこうなるらしいが、
低体温症になっているのに気がつかない事も多いらしい。

33度以下になると、直前の事が記憶できなくなったり、頭の回転が鈍くなり、
何を言われているかわからなくなることも。
また、体がまともに動かせなくなったりもする。

31度以下になると、精神錯乱(雪山で遭難時、服を脱いだり、幻覚を見たりする例があるがその状態)、
歩けなくなる、反応が無くなるなどの状態に。

29度以下なら、半昏睡状態から意識不明に。反応は無く、死んだような状態になるという。

夏の登山でも嵐・雨などで体が濡れ冷えると、数時間で低体温症を発症してしまったりするらしい。
少し体温が下がっただけで思考力や運動能力が下がってしまうというのが恐ろしい。

水に入っている場合、水温0度以下だと15分以内に意識不明の状態になってしまうという。
タイタニックの沈没の際海に投げ出された人や、飛行機が冬の川に落ちて、川の中で救助を待つ人が、
どんどん力尽きて行ったのは、低体温症を発症していたのだなとこれを読んで思った。

また以前読んだイラクに派遣されたイギリスの特殊部隊が最悪の状況に陥った時の事を綴った話、
ブラボー・ツー・ゼロ」の中で、予想以上に厳しい寒さの中、体を冷やさない為、
兵士達は、無理してでも歩き続けていたがこれも低体温症を警戒しての事だったのだと、改めて思った。

この本では、低体温症の症状から、その治療法や予防法、発症事例などが、詳細に述べられている。
一緒に山に登り、低体温症で亡くなった人と助かった人、
その差は、下着が「綿」だったか「毛」だったかの違いくらいだったりもするらしい。
登山をする人なら、誰でも陥る可能性がある低体温症(特に北海道の夏山で多いらしい)。
登山をするなら、自分の身を守る為にも、読んでおいて損は無い本。

読み物というより教科書みたいなので(特に後半)、取っ付きにくいかもしれないけど(^^;)。



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「サハラに死す-上温湯隆の一生」日本版イントゥ ザ ワイルド?? [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

サハラに死す―上温湯隆の一生 (講談社文庫)

サハラに死す―上温湯隆の一生 (講談社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1987/07
  • メディア: 文庫

7点

若干22歳で、サハラ砂漠単身横断を試み、志し半ばで、逝ってしまった青年の旅行日記をまとめた本。

アフリカ大陸の1/3を締めるサハラ砂漠。
世界最大級の砂漠である。
そのサハラ砂漠を、大西洋側から太平洋側に単独でラクダに乗り横断しようとした青年。
誰も成しえなかったこの偉業を達成する事によって、自分に自信を持ち、将来への大きなステップアップにしようとする、青年の心の動きが日記の中から伝わってくる。

イントゥ ザ ワイルド」の邦題で映画化された、荒野に単身飛び込み、逝ってしまった青年の軌跡を丁寧な取材で追った、ジョン・クラカワーの「荒野へ」を彷彿とさせる内容でもあった。

青年の真摯な、真摯過ぎる悩み、何かを成し遂げたいという強い気持ち、それに向かって突き進むパワー、そして若さ故の無知と無謀な行動。
共通する部分がかなり多い。
「荒野への」著者クラカワーもまた若い頃、同じ様に無謀な命がけの冒険に挑んでいる。

冒険物は、植村直己の北極圏犬ぞり探検など、いくつか読んでいる。 エスキモーの村に滞在し、かなりの期間犬ぞりの練習をしたりと、入念な準備を重ねる植村直己を知っていたので、この青年が、あまりにも準備不足な状態で命をかけた冒険にチャレンジしていることに、最初は驚いてしまった。

若いというのはそういうことなのかもしれない・・とも思う。

でも、私は、青年の母親の視点で読んでしまうので、どうしても否定的な目線でみてしまう。

タムタムアフリカ」の著者が、この本を読んでアフリカに惹かれたというのとは正反対である(この本を読んで、「サハラに死す」を読もうと思った)。

若い時に読んでいたら、きっと感想は違っただろう。
昔はよく「なんとかなるさ」と多少無謀に思える事もチャレンジした。
いまは、「○○になったらどうしよう」と、細かい事でも気になってなかなかそう思えない自分がいる。
青年のチャレンジ精神に共感できない自分が少し悲しい。

将来に悩んでいる、思い切ったことがしたい(命をかけるようなのはダメだけど)なんて思っている、若い人に読んで欲しい本。


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「ミニヤコンカ奇跡の生還」人の生命力・精神力に驚愕! [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

ミニヤコンカ奇跡の生還 (yama‐kei classics)

ミニヤコンカ奇跡の生還 (yama‐kei classics)

  • 作者: 松田 宏也
  • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
  • 発売日: 2000/10/01
  • メディア: 単行本
  • 7.5点
  •  

    中国ヒマラヤ東部にある7,556mのミニヤコンカ(ミニャコンガとも言うらしい)。

    その山頂付近で遭難した著者の奇跡の生還を綴った本。

    いや、本当に奇跡なのだ、これが。

    山頂付近でビバークしている最中、無線機が凍結の為か壊れキャンプと連絡が取れなくなった著者とパートナー。

    すると後方支援してくれるはずのキャンプは、早々に遭難と判断し、撤退してしまう。

    これぐらいの高い山になると、山のふもとのベースキャンプを始め、登山途中途中にキャンプを作り、支援する人が待機したりする。

    遭難した著者達は、その支援を宛にして必死で下山するのだが、辿り付くキャンプ、辿り付くキャンプ、どれももぬけの空状態。

    食料も水も燃料も尽きた状態になり、ついにパートナーは帰らぬ人となる。それでも下山を続ける著者の精神力と体力、技術(元気な人でも技術がなければ通れないような場所を通過している)には感嘆するしかない。

    結局19日後に著者は救助される。19日。19日だよ!

    過酷な高山で、19日間、まともな水も食料もなく、体力が非常に必要な下山を続けられたという事実は、想像をはるかに越えている。

    また悲惨な状況を描きながらも、著者の筆が明るいのも良い。そして、凍傷の為、足のかなりの部分を切断したにも関わらずまた山登りを続けている著者の姿にも感動。

    とにかく、人間のすごさを実感させてくれる一冊。

    (書いてた感想を途中で吹っ飛ばしてしまって、しばらく感想を書くのを放置してしまった。やっと書いた)。

     


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    「感謝されない医者-ある凍傷Dr.のモノローグ」 [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

    感謝されない医者―ある凍傷Dr.のモノローグ

    感謝されない医者―ある凍傷Dr.のモノローグ

    • 作者: 金田 正樹
    • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
    • 発売日: 2007/02
    • メディア: 単行本

    8点

     

     

    登山関係の本を読むと必ず出てくる凍傷の話。
    凍傷で指を失ったり、鼻を失ったり、遭難した時、凍傷になる事を心配したり、凍傷にかかった仲間を必死で治療したり、凍傷に関するエピソードは物凄く多いのだが、凍傷についてあまり知らないので、この本を読んだ。

    自分自身が登山をしたりする為なのか、望んだ訳でもないのに凍傷の専門家と言われるようになってしまったドクターの本。
    凍傷に関しては詳しく、治療経験も豊富なのに、著者は凍傷の治療が嫌いだという。

    何故なら凍傷の治療では、患部を切断してしまう事が多いから。治療の為とはいえ、体の一部を切断する行為というのは、生み出すものもなく、非常に辛いのだという。できれば避けて通りたいと、一度もやらずに済んだら済ませたいと著者は望む。
    でも、凍傷治療に詳しいという評判が、著者の元に、次々と凍傷患者をひきつける。

    凍傷に詳しい医者に見てもらえば切断しなくても済むのではないか?と希望を持って受診してきた患者に、切断の事実を告げる著者の気持ち。
    そして、治療して貰っても素直に感謝できない患者の気持ち。

    そんな著者の気持ちを交えながら、凍傷の原因や治療法、治療に来た患者のエピソードなどを綴ったのがこの本だ。

    何枚か患部の写真が載っているが、その衝撃的な様相にはびっくりした。重度の凍傷は患部が黒ずむとは知っていたが、本当に真黒である。まるで体の一部が炭化してしまったような状況。 

    アルピニストとして有名な加藤保男(人跡未踏のエベレスト冬季登頂に成功した直後遭難)が、始めてエベレストに登った時、重度の凍傷になり、足の指を全部切ったという話は知っていたが、その治療をしたのもこのドクターであった。
    加藤保男の患部の写真もあった。写真で真黒になっている部分を切除したとの事だったが、写真を見ると、足の指だけではなく、足全体の1/3以上を切ったことがわかる。これほど足を切断してしまっても登山を続けることができることに、そして数々の偉業を成し遂げたことにびっくりした。
    もちろん、加藤保男の並々ならぬ努力があったからの復帰ではあると思うけど。

    他にも手の指や足の指を切断してしまった後立ち直り力強く生きている人達のエピソードが語られている。

    また表面上はぶっきらぼうで頑固者っぽいドクターの、暖かく責任感が強い人柄がそこかしこから覗いている、そんな本でもある。


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    「いまだ下山せず!」冬山で行方不明になった3人はどこに・・ [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

    いまだ下山せず!

    いまだ下山せず!

    • 作者: 泉 康子
    • 出版社/メーカー: 宝島社
    • 発売日: 2004/09
    • メディア: 文庫
    7.5点
     
    冬の北アルプスで行方不明になった3人。山の経験をそれなりに積んでいた3人が、何故、どこで遭難したのか?
    行方不明になった3人と同じ登山同好会に所属していたメンバーによる、必死の情報収集と捜索作業が続けられる。彼らを発見する事ができるのか?
    3人遭難の報が届き、仕事を投げ出してまで現地にかけつけるメンバー達。
    生存に望みをかけ必死に捜索活動を続ける。
    時間が経てば経つほど生還の可能性は減っていく。余裕はない。焦るメンバーの気持ちが伝わってくる。
     
    結局、無常にも時間は過ぎ3人の生存は絶望的になってしまう。
    しかし、雪山遭難捜査活動というのは、そこで終わりではないというのを始めて知った。
    3人の遺体を見つけたいなら、雪が全部溶ける前、早春に見つけなければならないという。メンバーは3人の遭難への軌跡を追う為、当日登山していた他のグループに対しての聞き込みや目撃情報、地形、天候、などからの推理を繰り広げ、ある驚愕すべき結論に達する。
     
    まるで推理物を読んでいるような展開と、行方不明になった仲間への思い、残された家族の切ない叫び、まだ雪残る山へ入っての決死の捜索活動と、最後までぐいぐいと読ませる内容になっていた。
     
    雪山で遭難した場合、ここまで周囲が苦労する事を始めて知った。そして登山仲間に対しての強い強い気持ちも。人は人のためにここまで出来るのか!と感動させてくれる作品。
     

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    「K2 非情の頂-5人の女性サミッターの生と死」5人の生き方は凄いと思ったけど [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

    K2 非情の頂―5人の女性サミッターの生と死

    K2 非情の頂―5人の女性サミッターの生と死

    • 作者: ジェニファー ジョーダン
    • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
    • 発売日: 2006/03
    • メディア: 単行本
    • 6.5点

     

     

    世界で2番目に高い山K2。

    元々、遭難率が高い山ではあるのだけど、登頂に成功した女性5人の内、数人は下山途中に亡くなり、生還した女性達も全員山で亡くなっている(現在は、他にも女性登頂成功者がいるらしいが)。

    K2登頂に成功した女性5人にスポットをあて、その生き様と登山界における女性の扱いに対しての疑問を描いた本。

    K2での遭難事故と言えば、「K2嵐の夏」で描かれている1986年の大量遭難が有名で、この年、女性が始めてK2登頂に成功したが、女性登頂成功者3人の内2人が下山途中で亡くなっている。「非情の頂」でもこの時の登頂成功者3人を取り上げている。 

    遭難事故から生還した人物による手記「K2嵐の夏」と、この本でかなり大量にページを割かれて描かれている1986年の遭難事故を読み比べて見るのも別の面が見えて来て、興味深い。

    特に山頂付近で遭難した時、献身的にみんなの世話をし、結果的に力尽き見捨てられたイギリスの有名クライマー、アラン・ラウスに関しては、当事者が書いている「K2嵐の夏」より、この本の視点の方が納得できる。

    この本で描かれている5人の女性登山家の生き様は面白かった。

    山に生きた5人の女性の、情熱、夢、野心、嫉妬、家庭、そして登山界における女性差別による壁・・・等が様々に入り乱れた波乱万丈な人生が描かれている。「家庭」と「差別」の部分を除くと、男性登山家の生涯と被る部分も多いなぁと思った。

    登山というのはとにかくお金がかかる。世間に注目される事をしないとスポンサーがつかない。そのためどんどん無謀な事に挑戦していく・・という流れは、植村直己氏の話でも読んだが、ここでもそういう事から、無理をしてしまうという話がいくつかあった。

    山が好き、登りたい、情熱だけは誰にも負けない、しかしそれだけではどうにもならない登山家達の辛さが見え隠れする。

    そして女性の場合、そこに「家庭と子供」という存在も大きく圧し掛かってくる。男性が家庭を顧みず登山に打ち込んでも世間の批判は集まらないが、女性がそれをすると、あっという間に非難の嵐。そんな中でも、夢を追いかけた女性を凄いと思う半面、やはり子供がいるのに・・・と思ってしまう自分がいるのも確か。

    著者もそんな感じだったのだろうか?

    この本で扱った5人の女性に関してのエピソードの中には、傍目から見ても非難されるべき事がいくつか取り上げられている。そういう事例を取り上げている部分で、著者自身の言葉による彼女達への批判がほとんど無い。逆に男性からの女性登山家差別に関しては、これでもかっ!と思うぐらい攻撃しているので、余計に気になる。

    5人の女性登山家達に対する尊敬と羨望、そして嫉妬と批判、それらが混ぜこぜになって著者の中に存在したのだろうか。

    このどっちつかずの態度と、かなり攻撃的とも思える男性登山家批判のバランスが悪いのが点数が低い理由。

    男性社会に女性が入っていく事の難しさ、大変さはわかるが、一方(女性)の訴えだけを中心に話を勧めても、あまり説得力が無いと思うのだが・・・。

    また、客観と主観、、引用、想像の区別が曖昧で、「こんなやり取りが最後の時あったのか」と思った部分が作者による創作らしかったり、登山家の自伝などから引用したと思われる登山家の主観的な思いが、客観的事実のように語られていたりというのが気になった。

    気になった点はいろいろあったが、それでも、この本で取り上げられている5人の生きた軌跡は面白い。特に、山に命をかけ、壮絶な人生を送ったと思えるワンダ・ルトキェヴィッチの生き様は一読の価値あり。

    K2登山がエベレストに比べ、困難な理由なども取り上げてあり、ヒマラヤ登山に興味があるなら読んで損は無いと思う。

    そういえば、エベレストに最初に登頂した女性は日本人だったのをこの本ではじめて知った。

    以前「ヒマラヤへの挑戦―8000m峰登頂記録〈1〉 」を読んだ時、この登頂の話は読んでいたのだが、「記録」という事もあり、「女性世界初の登頂」という事にはほとんど触れられていなかったので、わからなかったよ。

     

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    「荒野へ」ジョン・クラカワー 緊迫感溢れるドキュメンタリー [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

    荒野へ

    荒野へ

    • 作者: ジョン・クラカワー
    • 出版社/メーカー: 集英社
    • 発売日: 2007/03
    • メディア: 文庫
    8点
     
    ロマンティストで理想主義で無謀な若者が、文明を捨て自然に挑戦しようとし、悲惨な最期を遂げた、それをお涙頂戴もの的にまとめた話・・・読む前はそんな内容だと思っていた(^^;)。
    あまり食指がそそられない内容だったけど、ジョン・クラカワーの別の著作「空へ」がとても面白かったので、買ってみた。
     
    いやぁ大正解!面白いっ!!
    クラカワーは、綿密な取材によって得た情報を積み上げ、臨場感溢れるルポを書く作家である。
    この作品でも、その部分は生きている。
    最後には悲劇が待ち受けているこの事件、そのせいで、この作品のそこかしこに悲壮感・緊迫感が漂っている。そして、その雰囲気を上手く維持しながら、青年の生き方を見事に描いている。
     
    人というのは誰もがいろいろな顔を持っている。しかし、事件・事故の被害者を扱う場合、ある一面だけを強調する事になりやすい。
    しかし、クラカワーは、アラスカの荒野で死亡した青年の成育暦や放浪の軌跡を辿り、いろいろな人の視点からその青年を語る事により、その青年の持つ多面性を見事に描いている。
    そして、青年の残した手記から垣間見ることができる、青年の孤独と、孤独への賞賛。
    たった一人、荒野に入り、青年は孤独の中で何を見たのだろう。
    クラカワーは、綿密な取材により、青年の心にあった物に近付こうと努力している。
     
    また、クラカワーは、この事件の後、多くの人が思った「愚かな若者が、自分の力量も省みず、無謀な行動をとった末、命を落とした」という意見に、この本で反論している。
     
    青年は確かにロマンチストであった。文明を否定し、自然の中で生きる事を最上の事と考えた理想主義者でもあった。思い立つと周囲から見れば無謀とも思える行動をとる人間でもあった。学業で優秀な成績を収めた頭の良い青年でもあった。彼が放浪中会った人の多くが、彼を知的で、礼儀正しい、印象のよい青年だったと記憶している。その半面、孤独を好み、周囲にあわせるのが難しいタイプだと感じた人間もいた。自然の中で生き抜く力を自分は持っていると自信過剰気味な部分もあれば、サバイバルの為の知識を習得しようと努力していた跡も見える。
    様々な視点から青年を捉える事で、複雑な青年の姿が見えてくる。そして、彼が何故荒野に行ったのか、何故死ななければならなかったのかを、複雑な青年の性格や思考と絡めながら、今まで誰も知らなかった青年の放浪の軌跡をまるで映画を見ているかのように、再現してくれている。
     
    そこには文明の中で忘れ去られたロマンがある。自分の生きたいように生きようとするパワーがある。
    もちろん、著者であるクラカワーがそれを手放しで賞賛している訳ではない。でも、青年の行動を「自然を甘く見ていた為の報い」「愚かである」と断罪する前に、青年の事をもっと知って、再考して欲しいという願いが感じられる。
     
    クラカワーが青年を弁護する裏には、青年の行動が、若い頃の自分の行動と重なる部分が多いという事がある。
    その著者の行動は、この本の中でもかなり詳しく述べられているが、「エヴェレストより高い山―登山をめぐる12の話 」という短編集の中の「デヴィルズ・サム」でも語られている。
    単身デヴィルズ・サムの登頂に挑んだ著者は、死んでも不思議では無い極限の状況に自ら飛び込んでいるのだ。
     
    著者は言う。
    「彼は運が悪く、私は良かった。私が運悪く死んでいたら、青年と同じ様に無謀であると非難されたであろう」と。
     
    荒野に1人入り命を落とした青年の生き方を追う事により、荒野に魅せられる人々の気持ちを、無謀とも思える冒険に身を投じる心理を、探ろうとした一冊。地味ではあるが面白い。
     

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    「植村直己の冒険」「エベレストを越えて」 [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

    • 作者: 本多勝一・武田文男
    • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
    • 発売日: 1991/09
    • メディア: 文庫
    7点
     
    エベレストを越えて

    エベレストを越えて

    • 作者: 植村 直己
    • 出版社/メーカー: 文芸春秋
    • 発売日: 1984/12
    • メディア: 文庫 7点
    • 植村直己関連2冊続けて読んでみた。

    1つは、本多勝一・武田文男編纂による、「植村直己の冒険」。

    これは植村直己本人を含むインタビュー記事などを中心にまとめられたもの。

    植村直己の冒険を肯定・否定の両面から見た本として面白いが、後半は、電通批判の本となってしまっていて、それがくどいほど何度も繰り返されるのがちょっと・・。

    いろいろな記事を集めているので、重複する内容が多いのも残念。

     それでも、植村直己の軌跡を多角的に見れるというのは、興味深い。

    それにしても、植村直己という人は、ほんとうにいい人だったらしい。それに関しては、どの人も口を揃えて褒めているのは凄いと思う。

    日本に、サバイバルスクールを作る計画も立てていたらしく、志半ばで逝ってしまったのが、ますます悔やまれる。


    エベレストを越えて」の方は、1970年のエベレスト初登頂を含め、植村直己のエベレストでの体験を語る一冊。シェルパの家にしばらく滞在してトレーニングしていた話など、他の本で少しは知っていた部分が詳しく書いてあった。

    ただ、大まかな部分は、いろいろな本で既に知っている事が多く、新鮮さに欠けてしまい、あまり印象に残らなかった(>_<)。
    普通に読めば面白いと思うんだけど。
     

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    「そして謎は残った-伝説の登山家マロリー発見記」 [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

    そして謎は残った―伝説の登山家マロリー発見記

    そして謎は残った―伝説の登山家マロリー発見記

    • 作者: ヨッヘン ヘムレブ, エリック・R. サイモンスン, ラリー・A. ジョンソン
    • 出版社/メーカー: 文藝春秋
    • 発売日: 1999/12
    • メディア: 単行本
    • 7.5点

     

    登山家ジョージ・マロリーの名前は知らなくても、

    「何故山に登るのか?」

    「そこに山があるからだ」

    というやりとりを知っている人は多いと思う。

    そう、この台詞を言ったのがジョージ・マロリーである。

    マロリーは1923年にエベレストで8200mまで登り、史上初めて8000m以上に到達した人でもある。

    彼は、1924年、エベレスト山頂付近にて行方不明になった。エドモンド・ヒラリーが人類史上初めてエベレストに登頂成功したのが1953年なので、それの30年近く前という事になる。

    そしてマロリーがエベレストの登頂に成功したのか、そうでないのかは、登山史上永遠の謎とされてきた。

    この謎を解明しようと、マロリーの遺体捜索チームを結成したのが、著者である、ヨッヘン、エリック、サイモンスンの三人である。
    この本では、遺体探索チームをエベレストに送り出すまでの苦労、マロリーの経歴や人となり、そして遺体が発見された事によってわかった新事実について書かれている。
    マロリーに関しては、エベレスト登山に関する本を読むと一度は名前を目にするので、少しは知っていたが、経歴をまとめて読めたというのは、よかったと思う。
    エベレスト初登頂を成功させたヒラリー達ですら、今と比べれば装備は貧弱なのだが、その30年前という事で、マロリー達が高所を目指していた頃は、今では信じられないぐらいの軽装でエベレストの高所に臨み、登頂に成功してはいないが、ある程度の実績を残しているというのが凄い。

    エベレストで遭難し、発見されていない遺体というのは、数多くあるとは聞いていたが、エベレストで遺体捜索をするというだけで、信じられないくらい大変な準備と資金と労力が必要だと言う事をこの本を読んで知った。実際、この本の1/3~半分ぐらいは、その準備にまつわるトラブルや駆け引きについて書かれているのだ。エベレスト初登頂にまつわる謎を解こうと奔走する3人の情熱には心打たれるものがある。

    ただ、マロリー遺体発見により、新たにわかった事実に対して割いているページは思ったより少なく、その部分をもっと書いて欲しかったなぁと思ってしまうのが、ちょっと残念。

    この本の表紙の写真は、発見されたマロリーの遺体なのだが、死後75年以上経っているのにかなりキレイな状態なのは驚かされる。高所で遭難した場合、遺体はここまでキレイに残るのか?など、そいう部分の説明も欲しかった。

    マロリーの遺体は、岩肌にしがみ付き頂上を目指すような姿勢で発見されている。

    死ぬ直前まで高みを目指していたと思われる伝説の登山家の最後を想像するだけでも、胸が熱くなる本でもあった。


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    「青春を山に賭けて」「処女峰アンナプルナ」 [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

    青春を山に賭けて

    青春を山に賭けて

    • 作者: 植村 直己
    • 出版社/メーカー: 文藝春秋
    • 発売日: 1977/01
    • メディア: 文庫
    • 8点
     
    処女峰アンナプルナ―最初の8000m峰登頂

    処女峰アンナプルナ―最初の8000m峰登頂

    • 作者: モーリス エルゾーグ
    • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
    • 発売日: 2000/03
    • メディア: 単行本
    • 8.5点
     
    先日「極北に駆ける」が面白かった植村直己の本の中でも、「面白かった」という評が多い(と思われる)「青春を山に賭けて」を読んでみた。
    とにかく冒険談テンコ盛である。
    植村直己は、こんなにいろいろチャレンジしていたのか!!とびっくりするぐらいだ。
    海外登山の資金を稼ごうと単身アメリカに乗り込み、違法とわかりつつ農場でお金を稼ぎ、逮捕されれば、移民調査官相手に自分の山への情熱を語る事により日本への強制送還を免れ、その後フランスに飛び・・・。
    舞台は、アメリカ、フランス、アフリカ、アマゾン、ヒマラヤ・・・とめまぐるしく変わり、そのどれもが冒険である。
    アフリカでは、危険なジャングルに山に登る為に入り、アマゾンでは単身でアマゾン川下りをする。
    エベレストへの初登頂の話や、グランド・ジェラス北壁への挑戦談も載っている。
     
    短い中にこれだけの内容がつまっているので、「1つ1つが短いなぁ。もっと詳しく読みたい」と思ってしまう部分もあるが、その分どんどん読んでしまう。
     
    凄い冒険の連続の間には、その資金を貯める為、節約に節約を重ねる植村直己の地味な努力の様子が入っているのが、メリハリがあってまた面白い。
    自分の夢の為に、必死に突き進み努力する姿、これが一番感動的なのかもしれない。
     
    また植村直己の謙虚な姿勢にも、親しみを覚えた。
    自分で書いているから、どうにでも書ける・・と受取る事もできるが、日本隊エベレスト初登頂の時も、日本人初のエベレスト初登頂の名誉を、一緒にアタックした先輩である松浦氏に譲っているのを、松浦氏の手記(ヒマラヤへの挑戦1)で読んで凄いなぁと思っていたので、素直に読む事ができた。
     

     
    アンナプルナは、標高8091m。
    人類史上初めて、標高8000m以上の山の登頂に成功した山でもある。
     
    処女峰アンナプルナ」は、アンナプルナ初登頂を果たしたフランス隊の隊長エルゾーグにより書かれた本だ。
    登頂に成功したのは1950年。
    まずびっくりしたのは、この遠征隊が出発した時点では、ダウラギリ(8167m)、アンナプルナのどちらにアタックするか決まってなかったという事である。
    それ以前に、どちらの山に対しても山の麓に達する道すらわかっていなかったのだ。
     
    という事で、まずこの隊は現地に入ってから、目指す山へたどり着くルートを探索する。
    これから登ろうという山への道を探す・・・って考えると凄い(^^;)。
     
    結局ダウラギリへのルートは無理と判断され、目標はアンナプルナに絞られる。
    しかし、まだ8000m以上への登頂が成功していない時代の事である。
    今に比べれば貧弱な装備で、頂上を目指す姿は、無謀とも思える部分も多々あるのだが、目的に向かって突き進む姿というのは、やはり感動的である。
     
    一番盛り上がる登頂シーンは「われ生還す―登山家たちのサバイバル 」で読んでしまっていたので、自分の中ではすこーーし盛り上がりに欠けちゃったのだが(初めて読めば面白いと思う)、登頂後、帰国目指しての道のりも恐ろしい程大変で、そちらの方がドキドキしてしまった。
     
    登頂の時、手や足を凍傷におかされたエルゾーグは、シェルパの運ぶタンカにて超危険な難所を通過する。その上、帰路の劣悪な環境から(何週間もかけて大都市までシェルパのタンカで運ばれている)、凍傷におかされた部分もどんどん悪化していき、旅の途中で次々に指を切断されてしまうのである。
     
    何かあればヘリコプターで病院へ・・・というのが無い時代なんだなぁというのを、この部分からはっきり認識した。
     
    人類が8000m未登頂の時代の、勇気ある冒険談であった。

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    「気象遭難」「生還-山岳遭難からの救出」 [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

    ドキュメント気象遭難

    ドキュメント気象遭難

    • 作者: 羽根田 治
    • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
    • 発売日: 2003/05
    • メディア: 単行本
    • 7.5点
    生還―山岳遭難からの救出

    生還―山岳遭難からの救出

    • 作者: 羽根田 治
    • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
    • 発売日: 2000/10
    • メディア: 単行本(ソフトカバー)
    8点
     
    同じ著者による山岳遭難を扱った本を読んでみた。
     
    最初に読んだのは「気象遭難」。
    山岳遭難といっても原因はいろいろ。その1つ1つに対して事例を取り上げ遭難しない為にはどうすればよいかという事を考察している。
     
    「落雷」「雪崩」「低体温症」「凍死」「異常降雪」「突風」「暴風雪」などが原因の遭難について、その時の詳細が取り上げられている。
    山の天気は変わりやすいと言われるが、その恐ろしさがわかる本でもある。
    また、山登りをするのなら、天候の変化を事前に予測できる事が大切という事で、遭難事故が起きた時の天気図も掲載されている。
     
    印象に残ったのは、ヒマラヤ登山の経験もある面々が揃ったパーティの遭難だ。
    このパーティの4人は、遭難してもあまり悲壮感が無い。すぐに、1日に食べる食料の配分を決め、救助を要請するべきか、ここで諦めるべきかの相談をしていたりする。
    前にも後ろにも行けなくなってしまい雪山で遭難したのに、どこか余裕があるのが凄いと思ってしまった。
     
    また「凍死」の項目では、中高年登山ブームに冷水を浴びせた、中高年の登山パーティによる大量遭難死が取り上げられている。
    ここで生死を分けた理由の1つは装備のよさだったとも言われている。
    山に登るのであれば、最低限の装備は必要という事なのだろう。
     

    生還-山岳遭難からの救出」の方は、遭難したが助かった人々の話である。
     
    数日から数週間にわたる遭難から生還した人の精神力は、尊敬に値すると思った。
     
    ほんのちょっとした判断ミスから道に迷い遭難する・・登山をしていれば誰でも可能性がある事と本書では言っている。
     
    道に迷った時、人は「後少し行けば、後少し行けば」と引き返さずに進んでしまい、結局どうにもならない状況に陥ってしまうという。
    道に迷ったと思ったら即引き返すのが重要なのだという。
     
    また動き回らないのも大切なのだという。自力下山できる確率と、定位置に留まり救助を待つのでは、救助を待つ方が助かる確率が高いという。
     
    両方とも耳が痛い(^^;)。
    登山はしないけど、もし山登りの最中「道に迷った」と思っても、「もうちょっと行けば・・」と前進しそうだし(日常ではそういう事はよくある、で結局迷う(爆))、遭難だと思っても、どうにかして自力で下山しようとしてしまいそうな、いや絶対じたばた悪あがきすると思われる自分がいる。
     
    その場でじっとして、救助を待つというのは、並大抵の努力でできるものではないと思う。
    まだ元気で動けるのに、その場でいつ来るかわからない救助を待つというのは、出来そうで出来ない事だろう。
     
    救助を待つ間の精神状態、救助につながった工夫、心のより所となった物など、生還した人達の話からは、登山だけでなく、極限状態における心構えを学ぶ事ができると思った。
     
    どちらか読むならこちらの方がお勧め。
    極限状態におかれても冷静に対応し(最初から冷静だったら遭難しなかった訳なんだけど、極限状態に近付くにつれ冷静になれるというのは凄いと思った)生還した人々の素晴らしさにも感動できる。
     

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    「アムンセンとスコット」「極北に駆ける」極寒の中の探検 [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

    アムンセンとスコット

    アムンセンとスコット

    • 作者: 本多 勝一
    • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
    • 発売日: 1999/03
    • メディア: 単行本
    • 8点
     
    • 作者: 植村 直己
    • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
    • 発売日: 2000/06   メディア: 単行本
    • 8.5点

     
    南極点初到達を目指して南極を冒険した、アムンセンとスコットについては知っていたが、どっちが成功してどっちが遭難したのかは、かなーり曖昧だった私(^^;)。
    前にテレビで、遭難した隊の敗因は、犬ぞりではなく馬を使った事、もう1つが皮などの自然素材の服ではなく、最新の化学繊維を使った防寒着を使用していた事だと言っていたので、ちょっと詳細が気になってはいた。
    前に読んだ「リーダーは何をしていたか」の中に、その本の著者である本多 勝一氏が、アムンセンとスコットに関しての本も出していると書いてあったので、丁度いいきっかけかなと思い「アムンセンとスコット」を読んでみた。
    まず、冒険自体が好きでたまらず、生粋の冒険家であったと思われるアムンセンと、軍人で命令により南極点を目指したスコットでは資質の点でも大きな差があったと思われる。
    バクチ的な部分も持つ人生を歩んでいたアムンセンは、ここぞという時には思い切った行動も取るが、計画段階では詳細な調査し、それに自分の創意工夫も加え、入念に準備をするタイプの人間であったらしい。今まで読んだ登山本でも、危険といわれる雪山に臨む登山家達は、その時考えられる限りの準備をして挑んでいる。冒険するには、その前の準備や研究がとても大切なのが読んでいると伝わってくる。
    逆に、スコットは、どちらかというと真面目で、準備を怠るようなタイプでは無いが、役人タイプで、今までの判例をそのまま流用してしまうタイプだったようだ。
    このような2人がほぼ同時期に南極点を目指して出発。
    南極の厳しい自然の中、両者とも苦労を重ね南極点に向かう。いろいろな苦労はあっても、致命的なトラブルもなく順調に旅を続けるアムンセンに比べ、スコット隊の方は馬が次々に死に、最初から予定が狂いっぱなし、途中からは徒歩で極点を目指す悲惨な旅となってしまう。
    馬と犬の極寒の地での違いなどもこの本では比較されている。残念ながら、防寒着に関しての記述はあまりなかったが。
    そして、一番の悲劇は、スコット隊が極点からの帰路、後少しという所で力尽き全滅してしまった事だろう。尽きた食べ物、漏れた燃料、隊員の病気・・・何か1つでもどうにかなっていれば生還できたかもしれないスコット隊。運命の非情さを感じてしまう。
    まだ誰も行ったことの無い極点を目指した2つの隊の冒険は、悲しくも勇気とロマンに溢れ、充分楽しめる内容だった。

    「アムンセンとスコット」の最後の方に、いろいろな対談などがまとめてあり、その中で植村直己氏の極寒地での活躍に関する記述があった。
    少々批判的な内容であったが、それで興味を持ったのと、「もやしもん 1 (1)  」絡みでアザラシの中に海鳥をいれて発酵させるという「キビヤック」を調べていたら、植村直己がキビヤックを大好物としていたというのを読んで、植村直己の北極付近での本を読んでみようと思い立った。
    で、読んだのが「極北に駆ける 」である。
    南極の犬ぞりによる単独横断を目指していた植村直己が、まずは犬ぞりの技術を習得しようと、エスキモーの村に滞在する話である。
    現代文明とはかけ離れたエスキモー達の中に、単身入り込んでしまう植村直己の行動力と根性にまず脱帽。
    またエスキモーの生活習慣に関しての記述も驚く事ばかりで面白かった。私だったら絶対生活できないなぁという感じ。臭い生肉なんて食べるの無理そうだし・・・(-_-;)。
    また犬ぞりに使用される犬との、全く心温まらない話も新鮮だった。犬ぞりに使う犬を甘やかしてはいけないそうなのだ。元々イヌをかわいがる文化の中で育った植村直己の戸惑いや、迷いがよくわかる。
    また南極点を目指したアムンセンは、犬ぞりの犬も食料として考えており、途中半分以上の犬を殺して食料としてデポしていたりするのだが、植村直己も、その話を知っており、「南極横断を目指すならそこまでしなくてはいけないんだ!」と自分に発破をかけるシーンが印象的だった。
    植村直己の本ははじめて読んだのだが、本人の迷い、悩み、夢、希望いろいろなものが、生き生きと描かれる現地の人とのふれあいや、大自然の様子と一緒に詰まっており、かなり面白い一冊だった。
    他のも読んでみたいと思っているのだが、なぜか図書館ではどれも貸し出し中。
    その内他のも読んでみようと思う。
     
    そういえば、当初の目的(^^;)だったキビヤックに関しての記述はあまり無く、そちらはちょっと残念だった。

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    「K2-嵐の夏」「エヴェレストより高い山」「山頂に立つ」etc・・ [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

    K2嵐の夏

    K2嵐の夏

    • 作者: クルト ディームベルガー
    • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
    • 発売日: 2000/08
    • メディア: 単行本
    8点
     
    エヴェレストより高い山―登山をめぐる12の話

    エヴェレストより高い山―登山をめぐる12の話

    • 作者: ジョン クラカワー
    • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
    • 発売日: 2000/04
    • メディア: 文庫
    8.5点
     
    山頂に立つ―登山家たちのサバイバル

    山頂に立つ―登山家たちのサバイバル

    • 作者:
    • 出版社/メーカー: 扶桑社
    • 発売日: 2003/11
    • メディア: 文庫   7点
    われ生還す―登山家たちのサバイバル

    われ生還す―登山家たちのサバイバル

    • 作者:
    • 出版社/メーカー: 扶桑社
    • 発売日: 2003/11
    • メディア: 文庫   7点
    • リーダーは何をしていたか

      リーダーは何をしていたか

      • 作者: 本多 勝一
      • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
      • 発売日: 1997/06
      • メディア: 文庫  7.5点
    • 零下51度からの生還 エヴェレストの悲劇――死の淵から蘇った男」を読んでから、しばらく登山本、遭難本をいくつか読み漁っていた私(^^;)。どうも同じジャンルの本をダラダラ読む傾向があるらしい。

    • K2嵐の夏 」は、 1983年、K2を登頂を目指した世界有数の登山家達が次々に命を落とす中、生還したクルト・ディームベルガーによる手記である。ディームベルガーがBCにいる最中から事故が相次ぎ、不吉な影が見え隠れしていたその夏、登頂に成功したいくつものパーティが嵐で、山頂近くのキャンプの閉じ込められてしまう。
    • 極限状態の中、次々に命を落とす登山家達。精力的に他の人を介抱していた人が、最後には衰弱し錯乱してしまったり、嵐の中を生き延びたのに下山の途中死んでしまったり、極限の中の人間ドラマが描かれている。読み応えのある一冊。

    • エヴェレストより高い山―登山をめぐる12の話」は、ジョン・クラカワーによる、自分の体験も交えた登山エッセイ集で、著者自身の登山手記や、ロッククライミングに関するあれこれ、アクの強い登山家達の話など、今まで知らなかった事がいろいろ取り上げてあり、かなり面白く読めた一冊。
    • 遭難本は悲壮すぎて苦手・・・という人でも楽しめる登山関係のエッセイ本。

    山頂に立つ―登山家たちのサバイバル」「われ生還す―登山家たちのサバイバル 」は、いろいろな登山本の名シーンを集めた本。
    短編なら全編載っているが、長い本の場合、クライマックス部分が掲載されている。
    クライマックスシーンが多いので、飽きずにぐいぐい読めるが、本一冊の中から一部抜粋だったりするので、状況や登場人物などの説明がほとんどなく、詳細はわからないという面も。
     「山頂に立つ」の最後に載っているマッキンリーでの遭難の話などは、その後が気になるのだが、オリジナルが見つからないし・・・(>_<)翻訳されてないのか?
    一番面白かったのは「われ生還す」の方に載っている、純粋な登山話ではない、インドのナンダ・デヴィという山に向かう為、盆地を抜けるルートを探し探検する話だった。

    リーダーは何をしていたか」は、日本国内で起きた遭難の中から、リーダーの力量不足で起きたと思われる遭難事件をピックアップし、その詳細や事件後の顛末をまとめた本である。
    この本で取り上げられている遭難の中には、リーダーが教師、犠牲者が生徒達という痛ましいものがいくつもある。
    教師の力量を信じて、子どもを雪山に送り出し、リーダーである教師の未熟さや無知さにより子供達を失った親達の気持ちを考えるといたたまれない気持ちになる。
    その上、学校側が最後までその責任を認めないケースも多く、この本の作者は、幾つかの学校側と保護者側との裁判で、いかに引率教師が未熟であったかを説明している。
    安易な気持ちでの登山を戒める本でもあった。

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    「残された山靴」「みんな山が大好きだった」登山家達の軌跡 [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

    残された山靴―佐瀬稔遺稿集

    残された山靴―佐瀬稔遺稿集

    • 作者: 佐瀬 稔
    • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
    • 発売日: 1999/06
    • メディア: 単行本
    7点
     
    みんな山が大好きだった

    みんな山が大好きだった

    • 作者: 山際 淳司
    • 出版社/メーカー: 中央公論新社
    • 発売日: 2003/05/23
    • メディア: 文庫
    7.5点
     
    有名なアルピニスト達の軌跡をまとめた本を2冊続けて読んでみた。
    両方に取り上げられている人もいるが、同じ人に関して書かれていても、本によって受ける印象がかなり違うのが興味深かった。
     
    「残された山靴」では
    森田勝・加藤保男・植村直己・鈴木紀夫・長谷川恒男・難波康子・山崎彰人・小西正嗣・そしてこの本の作者である佐藤稔氏の最後が取り上げられている。
     
    「みんな山が大好きだった」では
    加藤保男・森田勝・長谷川恒男・ロジェ・デュプラ・ヘルマン・ブール・ゲオルク・ウィンクラー・芳野満彦・モーリス・ウィルソン・ニコラ・ジャジュエール・松浪明・加藤文太郎などについて記されている。
     
    読む前に名前を知っていたのは、植村直己氏と、難波康子さん、加藤保男氏、ヘルマン・ブール、モーリス・ウィルソンぐらい。
     
    ところが、読んでいくと、両方で取り上げられているので、日本有数のアルピニストだと思われる、加藤保男、森田勝、長谷川恒男の3氏は、ヒマラヤへの挑戦―8000m峰登頂記録〈1〉に載っている1973年「第二次RCC」 (日本人による二度目のエベレスト登頂成功)に参加していたのだ。
     
    前にも書いたが、ヒマラヤへの挑戦は、記録的な意味合いが強く、隊員一人一人の経歴などに関してはほとんど触れられていない。
    加藤保男氏の1982年~83年の厳寒期エベレスト初登頂及び遭難に関して、加藤氏に向けた手記がいくつか載っているのが、ちょっと印象に残っていたぐらいだ。
     
    特に、長谷川恒男氏に関しては、言われてみれば、ヒマラヤに着いてあっという間に肝炎になって入院した隊員がいたなぁぐらいの印象で、その後有名なアルピニストになっているとは思いもしなかった(^^;)。
     
    「残された山靴」では、この「第二次RCC」における内紛(?)や、それによって長谷川恒男氏がソロクライマーを目指すようになった顛末がかなりはっきり書かれている。
    しかし、「みんな山が大好きだった」では、その部分が曖昧にされている。
     
    「みんな山が大好きだった」の作者の目は限りなく優しいのだ。
    無謀だと非難されがちな遭難した者達を擁護し、その冒険心を 称えている。
    「空へ」の著者であるクラカワーが、その無謀さを半ば呆れるよう記していた、何の予備知識もなくエベレストに挑み遭難したモーリス・ウィルソンに対しても、その熱烈なロマンへの探究心を賞賛している。
    無謀さを手放しで賞賛してしまう事には、疑問を感じてしまうが、その優しい目は読んでいて心地よい。
     
    それに比べると「残された山靴」の方は辛辣な部分が気にかかるが、現実はどちらかといえば、「残された山靴」の方に近いのだろう。
     
    「残された山靴」では、エベレスト大量遭難の時遭難した、難波康子さんの遭難に関しても取り上げられているが、この部分に関しては、事件の当事者が書いた「空へ」や「デスゾーン」と全く違っている部分がかなりあり気にかかる。
    ただ、事故直後は情報が混乱していたらしく、「空へ」などが出る前に書かれた物であるなら、しょうがないのかな?とも思う。
    そうでなければ、他の部分に関しての信憑性も怪しくなってしまうのだが・・・。
     
    かなり違ったスタンスで書かれたこの作品。読み比べて見ると、面白いと思う。

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    「ヒマラヤへの挑戦」1・2 [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

    ヒマラヤへの挑戦―8000m峰登頂記録〈1〉

    ヒマラヤへの挑戦―8000m峰登頂記録〈1〉

    • 作者: 日本ヒマラヤ協会
    • 出版社/メーカー: アテネ書房
    • 発売日: 2000/04
    • メディア: 単行本
    ヒマラヤへの挑戦〈2〉8000m峰登頂記録

    ヒマラヤへの挑戦〈2〉8000m峰登頂記録

    • 作者: 日本ヒマラヤ協会
    • 出版社/メーカー: アテネ書房
    • 発売日: 2000/11
    • メディア: 単行本
     
    前回書いたエベレスト大量遭難本を何冊か読んだ時、サウスコル、ヒラリーステップ、アイスフォールなどの地形がはっきりイメージできなかったので、カラー写真が巻頭に何枚も載っているこの本を図書館で借りてみた。
     
    内容は、日本の登山隊による、ヒマラヤ登頂成功記。
    登山参加者による手記がメインで、「記録」という雰囲気が強く、ちょっと単調に感じる部分も。
     
    でも、装備への工夫、予算の工面の苦労、ポーターやシェルパとの兼ね合い、など、興味深く読める部分も多い。
    また、1950年代から1980年代までの登山の方法の移り変わりが見て取れるのも面白い。
    初期の頃は、大量の物資と多人数の隊員とシェルパによる登山がメインだったのが、途中から、少人数で登るアルパインスタイルに変わっていく様子が、登頂成功の年代順に手記が並べられている為、よくわかった。
     
    またエベレスト大量遭難の作品に出てくる人物達より(多くが顧客)、さすがに一人一人力量がある人が揃っているなという印象を受けた。
     
    「空へ」などを読んでいると、顧客が1つのキャンプとキャンプの間を非常に苦労して登っているのに、ガイドは、登っている途中でトラブルなどで下まで降り、また高所へ戻ってきたりしていて、非常に登るのが大変な場所らしいのに、何でそんな事ができるのだろう?ちょっと違和感を感じたりしたのだが、この本を読むことで、本来ヒマラヤなどの高い山に登る人の多くは、それぐらいの事をこなせるのだという事が推測できた。
     
    1巻の方が、
    ・エベレスト 8848m
    ・カンチェンジェンガ 8586m
    ・マカルー 8463m
    ・ローツェ 8516m
    ・チョー・オユー 8201m
     
    2巻が
    ・ダウラギリ1 8167m
    ・マナスル 8163m
    ・アンナプルナ1 8091m
    ・シシャパンマ 8027m
     
    の登頂記が載っている。
    2巻最後のシシャパンマは、他では扱っていない中国側からの登山で、他の登山とは事情が違って興味深かった。
     
    まだ1巻のエベレスト登山では、植村直己氏の名前も見られる。
     
    5巻まで刊行予定で、世界2位のK2は、3巻に載っているのだが、図書館には2巻までしか入っておらずちょっと残念。 

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