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「零下51度からの生還エヴェレストの悲劇」「空へ」「デスゾーン」 [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

零下51度からの生還 エヴェレストの悲劇――死の淵から蘇った男

零下51度からの生還 エヴェレストの悲劇――死の淵から蘇った男

  • 作者: B・ウェザーズ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/02/09
  • メディア: 文庫
  • 6.5点
空へ―エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか

空へ―エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか

  • 作者: ジョン クラカワー
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2000/12
  • メディア: 文庫
8.5点
デス・ゾーン8848M―エヴェレスト大量遭難の真実

デス・ゾーン8848M―エヴェレスト大量遭難の真実

  • 作者: アナトリ ブクレーエフ, G.ウェストン デウォルト
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1998/09
  • メディア: 単行本
8点
 
3冊とも1996年、エベレストで多数の死者を出した大量遭難事故について書かれた本。
 
 
最初に読んだのは「零下51度からの生還 エヴェレストの悲劇」
死んだと思ってそのまま雪原に放置された著者べック・ウエザーズが、奇跡的に自力でキャンプまで辿り付いたというのにちょっと興味を引かれ、本屋で手に取った。
これがきっかけで、上記三冊以外にも、ヒマラヤ登山の本やら遭難絡みの本を何冊も読むことになった。現在のマイブーム「登山本」のきっかけになった本。
 
読んで見てびっくりしたのは、この1996年の大量遭難事故に関して、それと知らず、部分的には知っていた事。
 
1つは、日本人難波康子さんが、エヴェレスト登頂成功直後遭難死した事件。
登頂成功のニュースを聞いてすぐ、遭難死のニュースが入って来たので、かなり印象に残ったのと、キャンプからそれほど離れていない場所での遭難だと聞いて、キャンプの近くまで来ていたのに何で助からなかったのだろうと・・とかなり残念に思ったので、覚えていたのだ。
 
もう1つは、「世界まるみえテレビ」だったか何かで見た、エヴェレストで遭難し下山できなくなった男性が、エヴェレスト頂上付近から、衛星回線を使って妻と最後の別れの会話をしたという話である。
この男性こそ、べック・ウエザーズが参加した隊のリーダー、ロブ・ホールだったのだ。
絶望的な状況の中、これから生まれてくる子ども(妻は妊娠中だった)の名前を決めた別れの会話は、とても切なかった。
また、こうやって会話ができるのに助けられない状況というのは、どういうものなんだろう?と私の少ない登山に関する知識では、想像しきれなかった。
 
ただ、この本は、この事件について詳しく書かれた「空へ」の後に出されており、事件についてはあまり詳しく触れられておらず、凍傷で指と鼻を失った著者が、エヴェレスト登山時には崩壊しかかっていた家庭をもう一度まとめようと努力する姿を、中心に描かれていた。
「死ぬ為に山に登っていたようなものだ」と後になって回想する著者が、奇跡の生還の後、死の影をふっきり、力強く生きていく姿は感動的であったが、事件について詳しく知りたかった私にとってはちょっと物足りない一冊となった。
 
 

 
 
なので、次に、「零下51度・・・」で紹介されていた「空へ」を購入して読んでみた。
こちらは、元々最近流行りの「ガイド付き登山」に関するレポートを登山後書く予定で、ロブ・ホール隊に参加し、登っていた著者による筆なので、かなり詳細に事件の事が書いてある。
ガイド付きで、お金さえ積めばそれほど力量が無いのに安易に8000m級の高い山に登る事ができるようになってしまった最近の風潮をもう一度考えさせる内容にもなっており、かなり読み応えのある一冊だった。
 
この本を読むと、高度8000M以上というのは、そこにいるだけで体力が削られ、死に向かっていく過酷な環境である事が伝わってくる。
また山で嵐にあった場合、ほんの数分(晴れていれば)の距離が命取りになる事が、読んでよくわかった。
過酷としかいいようがない高度8000M以上の環境や、助けに行きたくても行けないもどかしさ、大量遭難が起きてしまった背景などが詳しく書いてあるので、もしこの事件に興味を持ったら、まずこれを読んでみるのが一番な気がする。
 
 

 
 
そして「デス・ゾーン8848M」。
前述の「空へ」で、ガイドなのに無酸素で登頂したと非難されていた(無酸素では顧客の世話が充分に出来ない)、アナトリ・ ブクレーエフの本。
「空へ」で、この内容に関してかなり批判的な事が書いてあり、最初はブクレーエフの自己弁護の本なのかと思ったが、読んでみると、そんな事は感じず、山に生きる一人の男の生き様が伝わってくる良書であった。
 
「デス・ゾーン」とは標高7000m~8000m以上の場所の事。
薄い酸素のせいで、思考能力も運動能力も体力も著しく削られる、正に標高8848Mのエヴェレスト頂上はデスゾーンなのだ。
 
無酸素で登ったのが悪かったのか(「空へ」では完全に悪と決め付けている)、良かったのかはわからないが、無酸素で登ったせいで、早めにキャンプに戻り体力を回復していたブクレーエフのおかげで、遭難したメンバーの数人は助かっている。
嵐の中、二重遭難の危険も省みず1人救出に向かったブクレーエフの行動は賞賛に値すると思うし、酸素ボンベを使っていれば、顧客にずっと着いている事になり、自分も他のメンバーと同様遭難したであろうというブクレーエフ の主張も理解できる。
「空へ」は9点でも良かったぐらいなのだが、ブクレーエフへの強い非難に関しては、完全に賛同できるものではなかったので、-0.5してみた。
 
1996年の大量遭難に関して別の視点(空への著者とは違うパーティに所属していたせいもある)から捉えている本でもあるので、「空へ」を読んで面白かったら、こちらもお勧め。
 
ちなみに、ブクレーエフは、数年後、別の山への登山の最中雪崩に巻き込まれて亡くなっている。
 

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「面白南極料理人」と「不肖・宮嶋南極観測隊ニ同行ス」 [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

面白南極料理人

面白南極料理人

  • 作者: 西村 淳
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/09
  • メディア: 文庫

6.5点(+1点)

不肖・宮嶋南極観測隊ニ同行ス

不肖・宮嶋南極観測隊ニ同行ス

  • 作者: 勝谷 誠彦, 宮嶋 茂樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/07
  • メディア: 文庫
8点
 
「面白南極料理人」というのは、第38次南極観測隊ドーム基地越冬隊に参加した著者による、南極ドームでの体験レポートである。
タイトルにもあるように、南極観測隊が南極にてどんな料理を食べているのか、というのがメインになっている。
南極観測隊についてのあれこれや、行く準備の苦労(食べ物など持っていく物だけでも物凄い量らしい)、氷点下-50度にもなる場所でのドラム缶風呂、などなかなか興味深いエピソードが満載で面白いのだが、本の半分ぐらい料理に裂かれてしまっている上、その料理が南極ならではのものがほとんど無いのが残念。
「面白南極料理人」というタイトルなので、南極でしか食べられない料理がたくさん紹介されているかと期待したんだけどそうじゃなく、かなり豪華な食材を持ち込んでいて、こんな凄いメニューが南極でも食べられるんだよという内容が中心なのだ。
でも、あまり知られていない南極観測隊の様子などはよくわかるので、南極観測隊や南極に関して興味がある人は読んで見てもいいと思う。
 
で、この本は、もう1つ、私に別の作者との出会いをもたらしてくれた。
それがカメラマンの宮嶋茂樹氏。
 
この南極観測隊ドーム基地越冬隊には、1人のカメラマンが同行しておりそれが宮嶋茂樹氏だったのだ。
あの「南極一号(二号だったか??)」を持ち込んで記念撮影したり、観測隊の行いを先に帰国してから好き勝手書いたり(「不肖・宮嶋南極観測隊ニ同行ス」と読み比べて見るとかなり楽しい。どちらが真実を書いているのか??という事で別の意味で楽しめたので+1点がついてる)、とにかくとんでもないカメラマンとして紹介されている宮嶋茂樹氏。
 
「あっ!?」と思って「面白南極料理人」の前に読んでいた本を確認してみると「不肖・宮嶋空爆されたらサヨウナラ―戦場コソボ、決死の撮影記 」だ。
この「面白南極料理人」同行したと紹介されているカメラマンではないか!!
なんて奇遇な。
 
こちらの本に関しては、戦場のカメラマンのかっこいい危機迫るルポを期待して読んでしまったので、何となく期待と違って印象に残っていなかった本なのだ(でも戦場のカメラマンってこういうモノなんだってのもよくわかった)。
しかし、「面白南極・・・」をきっかけに「南極観測隊ニ同行ス」を読んで、別の視点で読めばムチャクチャ楽しめるという事に気が付いたのであった。
 
という事で、この後、宮島茂樹の本はかなーーり読みました。
丁度昔出た単行本が文庫化された時期でもあり、手に入れやすかったというのもあるかも。
こういう、本を読んで別の本を読むきっかけができるというのも楽しい。
「空爆されたらサヨウナラ」→「面白南極料理人」→「南極観測隊ニ同行ス」という順番で読んでなかったら宮嶋茂樹をここまで大量に読むというのは無かった気がする(出ている本の8割ぐらいは読んだ)。

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