「凶悪―ある死刑囚の告発」映画化もされた、ドキュメンタリー。死刑囚の告白によって明るみになった連続殺人事件! [本ノンフィクション:実録犯罪・犯罪史]
死刑囚後藤良次から、他の殺人事件の告白を受けた雑誌記者。
被害者は、1人ではなく、何人もいる。
その上、それらの犯罪は、事件にすらなっておらず、周囲から「先生」と呼ばれていた、
主犯格の男は、のうのうと生活している。
死刑執行を引き伸ばすための虚言ではないか・・・そう疑いつつも、
後藤の告白に沿って、事件を調べ始める記者。
徐々に明らかになる、犯罪の全貌。
そして、それは警察をも動かした!
まるで小説のような「実話」!
狙われたのは、土地などの財産はあるが、借金まみれだったり、身寄りが無かったりする、
年老いた人達。
それらの人々を救うような素振りを見せ、最後には、その死を金に変えてしまう「先生」。
記者の丹念な取材により、曖昧だった後藤被告の記憶の裏付けがとれ、
点と点が結びつき、徐々に「先生」を包囲して行く様は、自分で謎解きをしているような
高揚感と、目の前の霧がどんどん晴れていくような爽快感を与えてくれ、
ページをめくる手が止まらなかった。
これは面白いO(≧▽≦)O!
新潮社の実録犯罪シリーズは、面白いものが多いけど、その中でも、これはすごく面白かった!
また雑誌記者である、著者の取材への真摯な態度、心構えなども、とても興味深く読め、
とてもとてもお勧めの一冊です(^-^)ノ!!
「図説 現代殺人事件史」福田洋著:終戦直後から2010年までの日本の殺人事件史。 [本ノンフィクション:実録犯罪・犯罪史]
終戦直後の昭和21年(1946年)~2010年までの、日本で起きた有名殺人事件をまとめた本。
終戦直後10人の女性を強姦殺害した「小平事件」、青酸化合物で12人が殺された「帝銀事件」、
女性八人を殺害し第二の小平と呼ばれた「大久保清事件」、「連合赤軍あさま山荘事件」、
6人が焼死した「新宿バス放火事件」、少年が両親を殺害した「予備校生金属バット殺人事件」、
日本人留学生がオランダ人女性を殺害し食べた「パリ人肉事件」、
立ち退き問題で起きた「練馬一家五人殺人事件」、「ロス疑惑」、マスコミが見守る中で殺人が起きた
「豊田商事永野会長惨殺事件」、「女子高生コンクリート詰め殺人事件」、「宮崎勤事件」、
当時は誰もオウムを疑わなかった「坂本弁護士一家殺害事件」、「松本サリン事件」、
「地下鉄サリン事件」、「和歌山毒カレー殺人事件」、
同級生の母親が犯人だった「文京有名幼稚園女児殺害事件」、
17歳の少年による「西鉄バス乗っ取り事件」、物的証拠が多かったにも関わらず未解決な
「世田谷一家殺害事件」、「大阪池田小児童殺傷事件」、洗脳による家族による家族殺し
「北九州一家七人連続監禁殺人事件」(この事件に関する本の感想はこちらとこちら)、
「自殺サイト連続殺人事件」、「秋葉原無差別殺傷事件」など、言われれば事件を思い出す
有名な事件が、上記した以外にもたくさん載ってます。
「文京有名幼稚園女児殺害事件」が起きた時、丁度息子も幼稚園生。
それまで、かなり大雑把だった園児の引取りが厳しくなり、保護者が園庭に入れなくなりました。
他の保護者が代わりに引き取るのも、保護者が直接園に連絡しないとダメに。
他の事件も、社会的影響が大きかったものが多く、読みながらその事件の影響についても、
思い出しました。
また、時代順に事件が紹介されており、時代の大きな節目節目で、
その時代どのような犯罪が多かったか、どのように世相を反映したかなどのまとめが載っています。
戦後の混乱期、高度成長期、管理社会、高度情報化時代・・・時代によって起きる事件の性質が
変わる事がよくわかります。
ただ、少年が絡む大きな犯罪が続けて起きると、少年犯罪が激増しているように思えたりしますが、
統計ではそうでも無いということに注意。
年代による犯罪の種類と増減についてはこちらのサイトが参考になります。
上記サイトで見ると、近年は強盗が急増しており、不景気な世相を反映しているとも言えます。
各事件、見開き一頁なので、簡単な説明だけですが、写真などもあり、日本の殺人事件史を、
ざっと追うには良い本です。
また、その事件がどうなったか、判決がどうだったかなども、簡単にですが補足されています。
「コロンバイン銃乱射事件の真実」デイヴ・カリン著:この事件の根底はマスコミの報道とは違っていた! [本ノンフィクション:実録犯罪・犯罪史]
生徒二人が、コロンバイン高校内で銃を乱射し13人が殺害された。
映画「ボウリング・フォー・コロンバイン」のタイトルの元にもなっているこの事件。
落第生でいじめられっ子だった二人が、復讐をはかった・・・その他いろいろなエピソードが、
マスコミを通して広められた。
しかし、真相は、全く違っていた。
捜査当局が隠蔽していた様々な証拠、膨大な資料やインタビューを通して、
この事件の真相と、何故二人が、このような事件を起こしたのか、
どうしてマスコミが真実とはかけ離れた報道をすることになったのかを追求している。
Wikiのコロンバイン高校銃乱射事件の記述ともいくつかの違いが見られる。
頑張って調べているのはわかるんだけど、事件当日の事、犯人のエリックと、ディランが、
犯行に至るまでの行動や生育歴、被害者や被害者の身内、捜査官、犯人の親などの詳細、
マスコミの報道、この事件への教会の関与、全米の反応・・・・・とあれもこれもと載せている上、
話題も時間軸もあちこちに飛ぶため、とても散漫な印象で読みにくい。
もっと、章ごとにテーマがまとまっていれば、もう少し読みやすかった気が。
調べたことを全部伝えたい!!って事なのかもしれないけど、
この本の一番のテーマ、犯行に至った犯人二人の心理すら、分散して書かれている為、
本書で取り上げられている多くの話題の中に埋もれてしまっている感が。
エリックがサイコパスであり、それを示す兆候を、彼の日記や周囲への態度から紐解いているので、
それなりに面白いんだけど、「サイコパスだから何?」という印象が。
「サイコパスであった」=「衝撃的事実」って扱いを本書ではしているのだけど、
サイコパスであったことが衝撃的事実とつながる話の展開になっていないというか、
雑多な情報に埋もれてサイコパスの怖さが伝わって来ないというか・・・。
またアメリカでは、かなり衝撃的な事件だったようだけど、日本ではそこまででも無かったので、
あまり細かいところまで説明されてしまって、少し食傷気味な部分も。
この事件について、元々興味があってより詳しく知りたい人向け。
「刑務所の中」花輪和一著:懲役3年の著者による刑務所実録漫画!詳しい! [本ノンフィクション:実録犯罪・犯罪史]
7.5点
少し前に読んだ「31年ぶりにムショを出た-私と過ごした1000人の犯罪者たち」は面白かったけど、
刑務所内で出会った有名犯罪者との話が中心で、刑務所内部の事はよくわからなかった。
と言う事で、「自転車に乗って」のちょびさんに教えていただいた、
刑務所内部の事を詳細に書き記したこの本を読んでみました。
元々漫画家だった著者は、銃刀法違反で、予想よりも重い懲役3年の実刑を言い渡され刑務所に。
刑務所は刑期によって収容される場所が違うらしく、
「31年ぶりにムショを出た」の著者が収容された殺人などの重罪犯ばかりの所とは違う、
懲役数年の比較的刑が軽い犯罪者が収容される刑務所だったけど、
刑務所の持つ独特の雰囲気が手にとるように伝わってきて興味深かった。
毎日の献立、部屋の整理整頓の決まり、お風呂での刑務官とのやりとり、
同室の犯罪者達との付き合い、刑務所内での楽しみ、独房での体験、刑務所での作業・・etc
とにかく、コマコマとデータが載っており詳しい!
作業で一日に貰える手当とそのランクによる違いの表とか
(最初の一ヶ月は440円or723円、4ヶ月目だと作業などで違いがあるが4723円)、
刑務所内で購入できる備品の種類と内容、そして月に使える限度額
(最初の一ヶ月は88円だよ(^_^;)、4ヶ月目だと1574円)なども載っている。
献立も、かなりの種類が絵入りで説明されているし、
甘いものに対する受刑者達の執着の話などもすごい。
最初の方に、刑務所での食事の話が載っていて、
その充実した内容に(給食の延長みたいではあるけど)、
「刑務所生活って思ったより楽?」と一瞬思ってしまったけど、
徹底的な管理の元、何をするにも許可がいり(まず挙手して「願います!」と大声で叫ぶ)、
ここまでと思うほど細かい規則があることが後になるほど語られていて、
「あーー、やっぱり刑務所は大変なんだー」と思った。
元々独特の絵柄と雰囲気を持つ著者の作風が、刑務所内部を描くのにマッチしていて、
趣きあふれる作品にもなっている。
お薦め(^^)。
「判決から見る-猟奇殺人ファイル」丸山佑介著:判決が載っているのは面白いけど [本ノンフィクション:実録犯罪・犯罪史]
6点
日本国内の有名な殺人事件を、その判決まで追った本。
確かに、犯罪の内容は知っていても、その判決まで知っている事件は少ないので、
その意味では参考になる。
ただ、新潮45編集部による「悪魔が殺せとささやいた」「殺戮者は二度笑う」などの、
国内の殺人事件を扱ったシリーズを読んでいると、事件内容自体に目新しい物が少なく、
判決の数ページだけが新鮮という結果にも。
判決の考察も、ページ数が少なく、掘り下げきれていない感じ。
それら国内の犯罪関係の本を読んでいない場合、事件の概要が詳細ではない為、
それはそれで、物足りないだろうし。
ちょっと中途半端な印象がぬぐえない。
扱っている事件は、
・練馬一家五人殺人事件
・深川通り魔殺人事件
・連合赤軍山岳ベース事件
・寿産院もらい子殺し
・自殺サイト連続殺人事件
・広島タクシー運転手殺人事件
・北九州監禁殺害事件
・逆恨み殺人事件
・藤沢悪魔祓い殺人事件
・パリ人肉殺人事件
・奈良小一女児誘拐殺人事件
・佐世保小6同級生殺害事件
・市川一家殺人事件
・名古屋アベック殺人事件
・大阪姉妹殺害事件
・淀川ダンベル殺人事件
・ロボトミー殺人事件
・栃木実父殺し事件
・日野OL放火殺人事件
・尾上力連続強姦放火事件
・夕張保険金殺人事件
・トリカブト保険金殺人事件
・和歌山毒カレー殺人事件
と、件数はかなり多め。
サクサク読めるので、この手の国内犯罪とその判決をザッとチェックしたい・・って人はいいかな。
「大量殺人者」(TRUE CRIMEシリーズ)他、「実録犯罪本」いろいろ [本ノンフィクション:実録犯罪・犯罪史]
それを記念(?)して、実録犯罪本に関してまとめようかと思い立ちました。
「実録犯罪本」は好きなジャンル。
このブログで犯罪本がほとんど取り上げられていないのは、
ここを始める前に、はまっていろいろ読んでしまっていたから。
このところあまり読んでいなかったけど、最近ヴィレッジヴァンガードで「殺人王―世界殺人鬼ファイル」などのシリーズや、「死体入門! 」などを見つけて、またちょっと読みたい気分がムクムク。
その前に、今まで読んだ実録犯罪本をまとめてみました。
かなり前に読んだのが多く、内容が曖昧になってるものも多いので、リストだけですみません。
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TRUE CRIMEシリーズ:同朋社出版
「大量殺人者」
「連続殺人者」
「未解決殺人事件」
「続・連続殺人者」
「有名人殺人事件」
「愛欲殺人事件」
「暗殺者」
「特別指名手配」
「世界殺人者名鑑」
「マフィアの興亡」未読
※有名な事件の多くが取り上げられています。
私が最初に読んだ、実録殺人に関するシリーズ物。
面白かったです。
TRUE CRIME Japan
「誘拐殺人事件」
「営利殺人事件」
「情痴殺人事件」
「迷宮入り事件」
「連続殺人事件」
※TRUE CRIMEの日本の事件版。
実録・ヨーロッパ殺人シリーズ:ジョン・ダニング著(中央アート出版社)
1.正真正銘の殺人
2.奇怪な殺人
3.女性殺人犯
4.狂気の殺人
5.倒錯殺人
6.冷血殺人
7.秘儀(オカルト)殺人
コリン・ウィルソン
「殺人百科」(彌生書房)
「現代殺人百科」(青土社)
※「現代殺人百科」は、一つ一つのページ数は少ないけど、
かなり多くの殺人事件が取り上げられてます。
※文庫版が出ているようです「異常快楽殺人 (角川ホラー文庫)」
ロバート・K・レスラー
快楽殺人の心理―FBI心理分析官のノートより (講談社プラスアルファ文庫)
- 作者: ロバート・K. レスラー
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1998/06
- メディア: 文庫
※ロバート・K・レスラーのこのシリーズはいろいろ出てますよね。
どれを読んだのか忘れたので、本棚から出てきたのだけ。
※ジョン・ウェイン・ゲーシーについての本
※フレッド&ローズ・ウェストによる事件の本
ロシアの死神(レッド・リッパー) (ノンフィクション・ミステリー・シリーズ)
- 作者: ピーター コンラッディ
- 出版社/メーカー: 中央アート出版社
- 発売日: 1994/02
- メディア: 単行本
※アンドレイ・チカチーロについての本2冊。
「子供たちは森に消えた (ハヤカワ文庫NF)」は文庫版もでています。
※ジェフリー・ダーマーについての本
別冊宝島
「殺人百貨店(410)」
「身の毛もよだつ殺人読本(368)」
※「別冊宝島」は、これ以外にも殺人事件関連の本がいくつか。
ワニの穴
「消えた殺人者たち」
その他
※「日本の狂気誌 (講談社学術文庫)」は文庫でも出ています。
最近は図書館で借りているので、手元にあってチェックできた本は古い本が多いです。
切り裂きジャック関係とか、他にも読んでいるけど、手元に本が無かったり、探しきれなかったり。
文庫の方は今回はチェックせず。
できれば、その内ちゃんと確認したいな。
ディアゴスティーニから週刊で「マーダーケースブック(全96刊)」も出てたけど、
60刊前後で揃えるのを挫折(^_^;)。
有名な殺人事件に関しては「殺人博物館」というサイトが素晴らしい!
感心するくらいよくまとめてあります。
上記の本で知らなかった事件も取り上げられていました。
「火災鑑定-放火犯は自宅に火を放つ!」小林良夫著:保険金狙いの放火犯との戦い [本ノンフィクション:実録犯罪・犯罪史]
7点
年間1万件ある放火の疑いのある火災の3割が、保険金狙いで自宅などに火をつけたものだという。
死傷者が出なかった火事の場合、簡単な調査で、警察・消防は失火による火災と
結論づけてしまう事が多いらしい。
しかし、その中でも放火の疑いが濃いものに関して、保険会社からの依頼により、
放火なのか失火なのかを調査するのが著者の仕事である。
現場に残された放火の痕跡がどのようなものか、
どうやってその痕跡を探し出すのか、
どのような点から放火な可能性が高いと推測するかなどが、解説されている。
一部警察から依頼された死傷者が出た事件の話なども取り上げられている。
延焼の度合いによる火元の鑑定、火災現場の調査については、
少し前に読んだ「実録・死体農場」の方が、詳しく書かれていて面白かった。
でも、放火犯と思われる被害者(加害者)との駆け引きや裁判の様子、
プロの火付け人と思われる人物や組織の話など、興味深いネタが多かった。
それにしても、保険金目当ての自宅への放火がこんなに多いとは、びっくりでした。
大工さんと結託して、ものすごく安く建てた家に多額の保険金をかけて
入居前に放火するなんて事もあるらしい。
保険会社の方も、3000万の保険金の支払いに対して、
5000万以上の調査費用をかけて調査したりもするという。
世の中、思った以上にいろいろな犯罪があるのだと実感する一冊でした。
「31年ぶりにムショを出た-私と過ごした1000人の殺人者たち」金原龍一著:有名な犯罪者達の獄中の姿 [本ノンフィクション:実録犯罪・犯罪史]
31年ぶりにムショを出た―私と過ごした1000人の殺人者たち
- 作者: 金原 龍一
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2009/08/31
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
7点
強盗殺人事件を起こし無期懲役の刑を科せられた著者が、出所後、
獄中の生活や、獄中で出会った様々な犯罪者達の様子を綴った本。
サブタイトルをちゃんと読まなかったので、タイトルから、31年も服役して、
出所後、大幅に変わった社会に戸惑う気持ちを、
獄中記も交えながら語るタイプかと思ってたら違いました。
最初の章では、出所後戸惑う著者の姿が書かれてますが、その後はほぼ全部獄中の話。
それにしても、30年というのは、社会が大きく変わるには十分な年月なのだと、
著者の戸惑いから知った。
自動改札、変化したファッション、小さな駅が、ビルが乱立する町へと発展、
100円ショップの衝撃・・・・などなど。
獄中の生活については、詳細に書いてある訳ではないけど、逆に読みやすかった。
食事の詳しい内容、一日のスケジュール、工場での作業などを、
事細かに書いてあるわけではないので、この本の場合、そういうのを期待すると肩透かしをくらうかも。
例えば、獄中であると言われている「いじめ」は、
「いじめられていた」と書いてはあるけど、それを具体的には説明していない・・って感じ。
全体的に、獄中の生活に関してはざっくりあっさりという感じ。
大まかな様子は語られているので、獄中の様子を想像できるし、興味深い話も多かったけど。
この本のメインは、サブタイトルにもあるように、獄中で出会った他の犯罪者達の様子。
「金嬉老事件」の金嬉老、三菱重工ビル爆破事件の大道寺、金属バットで両親を殺害した青年一柳、
日本赤軍「あさま山荘事件」の吉野、「新宿バス放火事件」の丸山、
「女子高生コンクリート事件」の宮野、オウム信者であった医師林などなど、
有名な事件の犯人の獄中での生活・様子や、著者と交わした会話などが、語られている。
一人一人の扱いは長くはないけど、
己の罪を悔いているのかほとんど何も語らず過ごしていたオウムの林医師、
屈託なく明るい青年と著者が感じた「女子高生コンクリート事件」の宮野、
在日に対する差別への恨みの塊のようであった金嬉老
(著者も在日韓国人で、金嬉老をヒーローと思っていたが、彼のあまりの犯罪歴の多さに、
彼が世間を恨むのは筋違いだと思うようになったらしい)などなど、
普通なら知ることができない有名な犯罪者達の獄中の様子が伺え、
その中には、犯罪に走った背景が想像できるものも。
「狭山事件」、「足利事件」、共に冤罪が疑われている(「足利事件」は無実が確定)事件だが、
この事件の犯人とされた二人の獄中の様子が、全く違うことにも驚いた。
また「無期懲役」の重さについても考えさせられた。
「死刑」か「無期懲役」かと比較されることが多いので、「無期懲役」は軽い刑罰のように感じるが、
最近は仮釈放の条件が非常に厳しくなり、仮釈放まで30年以上かかるという。
30年以上服役していても仮釈放されるのは、ほんの数人だという。
服役前と出所後の社会の違い、獄中生活、有名事件の犯人達の獄中の様子など
内容盛りだくさんで、興味深く読めます。
当たり障りの無い内容が多いのは、著者の立場を考えるとしょうがないのかな。
「実録・死体農場」ビル・バス著:死体はどのように腐敗していくのか・・実際にある研究施設の話 [本ノンフィクション:実録犯罪・犯罪史]
7.8点
ミステリー作家、パトリシア・コーンウェルの著書に「死体農場」という作品がある。
その作品に出てくる死体農場。
死体を放置し、死体の腐敗の経過や、死体につくウジの調査など、死体を使った研究を行い、
法医学の進歩や犯罪解決などに貢献している施設である。
P・コーンウェルの「死体農場」の後書きか何かで、
この「死体農場」なるものが実際にあるというのは知っていた。
この本は、その現実に存在する「死体農場」ができるまでや、そこで行われている研究、
またそこでの研究がどのようにして事件解決の手助けをしたのか・・などが書かれている。
著者のビル・バスは、この「死体農場」という研究施設を作り上げた人間である。
この施設ができる前、彼は、腐乱死体に残った肉を取り去り骨を調べる為、
自宅のキッチンで、鍋を使って死体を長時間煮たりもしていたらしい。
帰宅したら家のキッチンで、人の頭が鍋でぐつぐつ煮えてたら誰だって嫌だろう。
嫌がった奥さんから、鍋は専用の物を使うという条件をつけられたらしい。
奥さんも研究者だったおかげで、研究への理解があり、この程度の譲歩で済んだのだと思う。
普通だったら離婚だってありえそう(^_^;)。
最初の方で語られた上記のエピソードだけでも衝撃的だし、それだけ法医学というものが、
昔は研究施設にも恵まれず、大変だったのが伺われる。
そんな著者が、100年近く昔の死体を、死後数ヶ月と間違って鑑定したことをきっかけに、
「死体の腐敗などの経過を観察する施設」を作ろうと思い立ち、それを実現させていく。
「死体農場」を作るに当たっていろいろな困難があったようだが、
それらにはさほどページを割いておらず、メインは、実際に起きた様々な事件と、
その解明に役立った観察・研究内容の説明や、実際の法廷でのやり取りになっており、
ミステリー小説や、犯罪記録を読んでいるような気持ちで読める。
ミステリー小説や犯罪史と違うのは、死体がどのように腐敗していくのか、気温の影響、
埋められている死体と、放置されている死体の変化の違い、ハエなど虫の影響・・etc、
いろいろなケースについて、詳しく語られていることだろう。
乾燥した死体の指の皮膚から指紋を取るのに、アメリカのダウニー社の柔軟材(私も使ってる)が
大活躍しているなんて話も載ってた。
洗濯物だけじゃなく、死体の皮まで柔らかくしちゃうダウニー、すごい(笑)。
腐乱したり、白骨化した遺体から、ここまでいろいろな事が判明するのかとびっくりもした。
上野正彦の「死体は語る」など一連の著作と傾向は似ているけど、
それでは語られていない、いろいろな研究結果が載っているので、
上野正彦の著作を面白いと思った人、法医学に興味がある人にお勧めっ!
「悪の遺伝子-人はいつ天使から悪魔に変わるのか」バーバラ・オークレイ博士:根っからの悪人と遺伝子の関係は?? [本ノンフィクション:実録犯罪・犯罪史]
7点
ヒトラー・ポルポト・毛沢東などの「邪悪な成功者」には、共通する遺伝子があるのか?
彼らほど有名ではなくても、世の中には「邪悪な成功者」がいる。
周囲の人を魅了し振り回した自分の姉から、「邪悪な成功者」の影を見た著者が
「邪悪な成功者」を作り上げるものは環境なのか、遺伝子なのか、
近年の遺伝子研究の結果も交え、推測した本。
といっても、著者は遺伝子や生物、医療の専門の学者ではなく、全く畑違いの工学博士である。
なので、自分の研究ではなく、他の人が研究したことを調べたり、
インタビューしたりしてまとめた本になっている。
このメリットは、本の内容が「専門的で難解になり過ぎないこと」。
専門の人が書くと、重箱の隅をつつくような遺伝子の詳しすぎる話が大量に載っていたりするけど、
そういうのが無く読みやすい。
逆に、より専門的なことが知りたければ、物足りない本になるだろう。
遺伝子の話では、まだまだ全容はよくわかっていない遺伝子ではあるが、
少しは解明している遺伝子の個々人の影響について述べられていて面白かった。
例えば、COMET遺伝子(ドーパミンやその他の神経伝達物質の分解に関係する)には、
VAL型(分解が早い)とMET型(分解が遅い)がある。
VAL/VALだと頭の回転が少し遅く、統合失調症を発病しやすかったり、
反社会的な行動を取りやすい(攻撃的)。
MET/METだと、頭の回転が早く、記憶力は明らかに優れているという。
VAL/METはその中間。
VAL/VALはよくないように思えるけど、気分の切り替えが早く、
状況の急激な変化への対応が優れているという。
逆にMET/METはくよくよ型で、嫌な事や苦痛に対し痛みをより強く長く感じるという。
不安症や神経症になりやすいらしい。
もちろん、他の遺伝子からの影響も複雑に絡まりあい、
この遺伝子だけですべてが決まるわけではない。
でも、幼児期に虐待を受けて育った子供のうち、ある遺伝子のタイプであると、
大人になって反社会的な人間に育つ可能性が高いらしい。
この遺伝子を持っていても、普通に育てばそうはならないらしい。
環境と遺伝子の関係も無視できないらしい。
著者は姉が「パーソナリティ障害」だったのではないかと推測し、
「邪悪な成功者」の一人として毛沢東の行動と「境界性パーソナリティ障害特徴」の
類似点について考察しており、なかなか面白かった。
毛沢東の行い(悪行)についての本は一冊読んでいて、あまりの鬼畜さに
驚いたことがあるのだけど、「境界性パーソナリティ障害」と照らし合わせると
なるほどなーと思うことも多かった。
他にも、サイコパスなどと通常の人の脳の反応の違いについてのデータなども載っている。
各章それぞれ面白くはあるのだが、調べた事柄を羅列してあるだけという感じで、
「遺伝子と悪」(生まれながらに悪人とか)についての、総合的なまとめはない。
いろいろな内容が平行して置いてあるだけという感じも。
結局、今のところまだわからない部分が多いってことなんだろうけど、
ちょっと物足りない感が残る。
でも、翻訳物にしては読みやすいし、雑学的な知識を得るなら(深い話は無い)いい一冊。
「消された一家 ――北九州・連続監禁殺人事件」この事件は恐ろし過ぎる [本ノンフィクション:実録犯罪・犯罪史]
8.5点
以前読んだ「なぜ家族は殺し合ったのか」と同じく、北九州監禁殺人事件を扱った本。
最近、 文庫 にもなった。
1人の少女が「父親が殺された」と訴えたことから発覚したこの事件。
逮捕された男女は、最初黙秘を続けてたが、身元が明らかになると、女性の方の家族(両親・妹とその夫や2人の子供)6人が行方不明になっていることがわかる。
そして、女性の家族がお互いを殺し合うという、想像を絶する事件全貌が裁判で明らかになった。
この事件の特筆すべきところは、主犯であると見られる男性が手も下していないし、明確な指示をしているわけでも無いこと。
しかし、女性の家族は、主犯の男に操られるように、1人・また1人と家族を殺していったのだ。
カルト宗教内で起きる殺人事件と似ているのだが、この事件の場合、言葉や拷問による洗脳は行われていたが、宗教絡みではないというのが怖い。
宗教絡みであればそれに近寄らなければいいが、この男の場合、言葉巧みに人に取入って、徐々に支配下に置いていくので、家族が1人でもその毒牙にかかれば、巻き込まれる可能性が高いともいえる。
加害者でもある女性や、女性の家族はみな真面目で勤勉、近所の評判もよく、仲も良かったらしい。
妹の夫は元警察官でもあったという。
そんな家族1人1人に取入り、ほんの少しでも弱みを握ればそれを最大限に利用し、家族同士には互いの悪口を吹き込みそれぞれ孤立させ(親族・親しい知人に関しても、罵詈雑言を言わせたり、借金をさせ踏み倒させたりして、孤立するよう仕向けている)、自分は頼れる相談役として立ち回る・・・そんな狡猾な男の罠にはまってしまった一家。
結果、その一家は、家族で殺し合うという、想像を絶する状況に追い込まれる。
それも、自分達が望んでいるわけでもなく、罪悪感もあるのに、家族を殺してしまうという異常な状況、そして殺害の様子や経過が詳しく述べられている。
男が起業した会社でも、従業員達は、お互いを監視し、密告しあい、強引な商法・違法な行為を男に気に入られるために繰り返していたらしい。
「なぜ家族は殺し合ったのか」は、事件の流れを淡々とドキュメンタリータッチで描いているが、こちらの方は、事件の流れだけでなく、事件以前の男の行動や生い立ち(両親・親族からの証言が全く得られていないらしく、詳細は載っていないが)など、事件の周辺に関してや、男に対する周辺の人物の印象に関しての、記述もある。
とても人当たりがよく、温厚で誠実そう・・・それが、拷問による洗脳により、家族を殺し合わせた男の印象だという。
この本の著者は、主犯格である男の心の深淵、本音を知りたがっているが、男の供述、裁判での発言では、全くそれが見えないのを残念がっている。
唯一、美人捜査官が取り調べに当った時、珍しく本音らしい事を言っているという。
これだけ陰惨な事件なのにも関わらず、裁判中、自分の保身に徹し、笑い話まで交え、嘘と思える供述をまくしたてる男の姿は、何よりも恐ろしい。
「サイコパス」というのは、彼のような男の事を言うのかもしれない。
人間の恐ろしさ、そして弱さを目の前に突きつけられるような本。
お勧め!
「切断-ブラック・ダリア殺人事件の真実」 [本ノンフィクション:実録犯罪・犯罪史]
「なぜ家族は殺し合ったのか」 (北九州・監禁連続殺人事件-地裁判決は死刑でした) [本ノンフィクション:実録犯罪・犯罪史]
「津山三十人殺し-日本犯罪史上空前の惨劇」 筑波 昭 [本ノンフィクション:実録犯罪・犯罪史]
「津山三十人殺し-日本犯罪史上空前の惨劇」 著:筑波 昭 (新潮OH!文庫) 8.5点
以前借りて読んだのだけど、購入して読み返してしまいました。
昭和13年、岡山県の農村で一晩に村人30人が殺害されるという猟奇的な大量殺人事件が起きた。この事件は「八つ墓村」(横溝正史)や「夜啼きの森」(岩井 志麻子)のモデルともなり、松本清張が「闇に駆ける猟銃」で取り上げている。他に「丑三つの村」として映画化され(見たけど、あまり印象に残ってません(^^;))、山岸涼子が「負の暗示」(「パイド・パイパー」収録)で、漫画化している。
この事件、大量殺人事件の被害者数としては、近年まで世界一の地位を保っていた。
現在でも、1982年韓国で起きた、警察官・禹範坤(ウ・ポムゴン)の55人(57人?)の大量殺人事件、1996年オーストラリアのポート・アーサーで起きた銃乱射事件の35人についで3位の記録である。
日本で、これほどまでに被害者を出す大量殺人事件が起きたというだけでも注目に値するが、学生服を着、ハチマキに懐中電灯を2つくくりつけ、胸には自転車用のライトをぶら下げ、刀、匕首、猟銃を持った犯人の犯行時の異様な様相がこの事件の不気味さを際立たせている気がする。
大量殺人というと、銃乱射などにより無関係な人間を次々に殺害するケースが多いが、この事件の場合、狭い集落の中で、襲う家、人をしっかり決めているのも興味深い。
この本では、当時の世相や、関係者の供述、犯人の成育暦、などかなり極め細やかに追って、冷静公平な目で事件の真相に迫ろうとしている。
山岸涼子の「負の暗示」では、閉鎖的な村の中で、肺病により兵役検査にも落ち、孤立していく犯人が狂気に駆られて行く様を描いているが、こちらでは、周囲の環境よりも、犯人の歪んだ性格が、最終的にこのような犯行に到った原因では無いかと推理している。
この事件に興味があるのなら、お勧めの一冊。