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「狂風世界」 J・G・バラード [本:SF]

狂風世界

狂風世界

  • 作者: 宇野 利泰, J.G.バラード
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2000
  • メディア: 文庫
8点
 
バラードの作品は、本屋で創元SF文庫の棚を見ればよく見かけるものだったので、「いつでも買えるさ」と思っていたのに、いざ読もうとしたら、なんと品切れ( ̄□ ̄;)がーん。
ネットで古本に送料をプラスして買うのも、あれだけよく見かけた本なのに・・って悔しさがあって購入に踏み切れず(変な意地)、近所の古本屋を探したりしていたんだけど、近くの図書館で、その図書館に無くても市内の図書館にあれば取り寄せして貰えることがわかり、それにてゲットv(≧∇≦)v。
バラードの初期の作品というと「結晶世界」「沈んだ世界」「燃える世界」の破滅三部作が有名。
世界が結晶化し静かに静かに破滅に向かっていく世界を描いた「結晶世界」、地球の高温多湿化により世界中の都市が水に沈んだ世界を描いた「沈んだ世界」、雨が全く降らなくなり海が干上がっていく世界を描いた「燃える世界」、3作ともとても好き。
でも、止む事の無い度を越えた狂風により世界が破滅していく様を描いたこの「狂風世界」が、どうしてその三部作に組み入れられていないのか不思議でした。
読んで見て、少しは納得。
そして「狂風世界」は好き嫌いが分かれる上記の3作に比べると、まだ一般向けの気もした。
破滅三部作は、かなり淡々とした内容で、結晶世界は、忍び寄る破滅、ほとんどの人が気が付かない所で破滅への過程が進行していく様を描いているし(この作品が一番好き)、「燃える世界」「沈んだ世界」は既に破滅しかかっている世界に住む人々の生活を描いた作品で、この世界で人々は破滅しか待っていない厳しい世界の中ですら順応して生きている。世界の破滅という出来事に見合ったほどの大きな事件なども無く、破滅の原因を解明する科学者や、地球を救うような英雄も不在のまま物語は進むので、単調で面白くないと思う人がいるのもわかる気がする。淡々と描く事によって、世界が破滅に向かった場合、人間の力など微々たる物であろうというリアルさが際立っているような気がするのだが、その辺は好みが分かれる所なのだろう。
で、この「狂風世界」の場合、世界中で強風が吹くようになり、それが日増しに強くなり、最初は日常生活への影響ぐらいだったものが、徐々に破滅の臭いをかもし出すようになる。それに対しての人々の反応や行動、政府の対策、狂風に立ち向かおうとする怪しげな民間組織など、ストーリーの起承転結が3作品に比べはっきりしているし、物語のメリハリもある。
「ディ アフター トモロー」や「ディープインパクト」、etc・・と映画や小説などでたくさんある地球の危機を扱った作品などの元祖という感じ。
でもバラードの作品らしく、英雄もいないし、狂風の原因もわからないままではあるんだけど、逆にそれがいい。
 結晶化する世界、洪水の世界、干上がる世界、狂風の世界、4つの世界の中では、全く地表に出られなくなる狂風の世界が一番嫌だなぁと思った。地下に避難し閉じ込められるという閉塞感が非常に嫌な感じで・・・。

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