「イメージを読む」【美術史入門】 [本:歴史]
ここのトップに読書の覚書とか書いておきながら、感想を書くのが面倒で、なかなか書かなかったりしています。その上、しばらく書かないでいると何を思ったのか曖昧になっちゃうという・・脳細胞がガンガン死滅中って感じです。
この本も、読んで一ヶ月以上書かずに放置しちゃいました(^^;)。
で、副題にある「美術史入門」というのは、かなり的を射ているんじゃないかと。美術史に興味があるけど、何から始めれば・・と思っている人、これからヨーロッパ旅行で美術館に行くなんて人にお勧めの本。文庫なので値段も手頃♪元々はハードカバーで出ていたようだけど、「ダヴィンチコード」などで絵画の持つ意味に着目する人が増えたたとかそんな理由で文庫として出されたのかな。
内容はミケランジェロ、ダヴィンチ、デューラーなど巨匠の作品が隠し持つ思想を、描かれた時代の思想や社会状況も踏まえて読み解こうというもの。著者本人の解釈だけでなく、いろいろな諸説も列記してあるので、一つの絵からいろいろな解釈が出るものだと思って読むのも楽しい。
最初に取り上げられているのがミケランジェロ作、バチカンのシスティーナ礼拝堂の天井に描かれている「天地創造」のフレスコ画。本書でも言っているけど、天井いっぱいに描かれたこのフレスコ画は、見た人誰もを圧倒すると思う。私も圧倒されました。ただ、私が見た時は、その巨大さに圧倒され、細部まではあまり見ていなかったので、この本を読んで、もっと細部まで見れば良かったと後悔(私が見たのは修復前だったので、修復後のも見てみたい)。海外旅行の時、システィーナ礼拝堂に行く予定の方がいたら、行く前にこの本を読んでいくと、より楽しめると思う。
ミケランジェロの「天地創造」は、旧約聖書に基づき、神が天地を創造した瞬間、アダムとイブの伝説から、罪を多き人類に神が罰を与えるノアの箱舟の伝説と、キリスト教に詳しくない人間でもよく知っているシーンが描かれている。
作者のこの絵の中のノアの箱舟のシーンをピックアップしている。カトリック教会的に見れば、「箱舟は教会であり、風雨の中のテントはユダヤ教、裸体の人々は異教徒であり、カトリック教会を信じる者だけが救われる」となる。
しかし、作者はミケランジェロが生きていた時代とカトリック教会腐敗を強烈に非難したサヴォナローラが活動していた時代が重なる事から、風雨に晒されるテントこそカトリック教会であり、フランス軍(洪水)がイタリアに攻め込み腐敗したカトリック教会は沈み、今こそ新しい教会を作るべきだという事を暗に示しているという。
2章目ではダ・ヴィンチの「最後の晩餐」のドラマ性の高さや「岩窟の聖母」におけるダ・ヴィンチ個人の母性の追及や、当時の聖母信仰のあり方、そして最近話題の「モナリザ」の秘密についての考察などを扱っていて、これもまた面白かった。
3章では、難解と言われているらしいアルブレヒト・デューラーの作品「メランコリア1」を、絵の中に描かれるシンボルの意味と、それが描かれた当時の世相から、解読しようとしている。
想像力と歴史などの知識を総動員させ、絵画の隠し持つ意味を推理するというのが、美術史の一つの醍醐味という事を、いろいろな例をあげ説明してくれている。
作者が既に亡くなってしまっている名画の解釈に正解は無いが、「このような解釈が出来るのね!」と推理小説を読むような気分で読め、なかなか面白い一冊だった。
美術史を学びはじめるにはいいという参考文献なども載っているので、ちょっと美術史に興味があるなぁと思っている人にはお勧め。
会社の近所の本屋で平積みでしたー。ダヴィンチコードと関連書籍と並んで。んで、このブログを思い出し、つい買ってしまいました。
面白かったんですが、デューラーの「メランコリア」が難解という内容の文章が・・・難解でした(笑)頭悪いぞ!<自分
このあと、「モナ・リザは高脂血症だった肖像画29枚のカルテ 」という新潮新書を読みました。美術がプチ・マイブーム?
by ちょび (2005-07-20 13:37)
ちょびさん、読まれたんですね~♪
やっぱりダヴィンチコードの影響大って事でしょうか。
メランコリアの所はシンボリズムとかその辺りの予備知識が無いと辛いかもですよね。私の場合、学生の頃、西洋中世史、それもその辺の事も調べていたのに、それでもあれれ??と読み直す事ありました(^^;)。
美術史関連は読むと楽しそうですよね。テレビでやってるのも見ていると面白いし。ただ、カラー図版がついている方が分かりやすいけど、カラーが多いと高いというのがこまりものな気が。
お勧めの美術本あったら教えて下さいませ(^_^)。
by choko (2005-07-21 11:52)