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「ファストフードが世界を食いつくす」マクドナルド方式の功罪 [本ノンフィクションいろいろ]

ファストフードが世界を食いつくす

ファストフードが世界を食いつくす

  • 作者: エリック シュローサー
  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2001/08/09
  • メディア: 単行本
  • 7.5点

 

映画化されたらしい→「ファーストフード・ネイション」。

マクドナルドをはじめとした、ファストフードが、アメリカの社会構造にどれだけ影響を与えたのか、特にその悪影響について鋭く切り込んだ本。

世界に関する影響についても少し触れられているが、どちらかというと、アメリカ中心。でも、アメリカ国内で起きた事が世界全体に波及したら・・と考えると(日本でもその傾向が出ている)恐ろしい。

まず、ファストフードは、工場のベルトコンベア方式を外食産業に取り入れた点が成功の秘訣だと言う。

1人に1つの役目。店員を時間をかけて育てる必要が無いので、辞めてもすぐ代わりが見つかる。結果、スキルが無く低賃金で働く労働層が大幅に増えてしまった。格差の拡大だ。しかし、企業側にとっては、人件費を抑えられるので大助かり。また最低賃金アップの法律も、こういう企業のロビー活動により潰されてしまう。

また、マクドナルドの躍進は、アメリカの牛肉産業にも大きな影響を与えた。マクドナルドは、アメリカで一番牛肉の購入量が多い。完全に買い手市場になってしまった牛肉産業。生産者達は安く買い叩かれ、大量生産できる巨大な牛肉産業だけが生き残り、どんどん個人の牧場経営者達は消えていく。アメリカの代表の1つ、カウボーイは、いまや風前の灯火だという。

同じ様なことがじゃがいもの市場でも起きているという。

また牛肉の解体工場も、ファーストフード企業からの買い入れ量が大量になった事で、規模が大きくなり、数社が市場を独占。その影響力は強大になり、中国産玩具に鉛が入っていればすぐに回収騒動が起きるのに、O-157に汚染された牛肉を食べたことにより集団食中毒が発生したり死者がでたとしても、それを規制したり回収命令を出す法律は作れないでいる。そして、アメリカでは頻繁にこういう食中毒事件が起きているという。

 

牛肉の解体作業も、以前はある程度の給与で技術のある職人がやっていたが、ベルトコンベア方式導入により、低スキル・低賃金化し、移民が労働者の中心になっているという。そして、立場の弱い人々が労働者なので、劣悪な職場環境はなかなか改善されず、体の一部の切断、ナイフによる殺傷(早いスピードで動くベルトコンベアにあわせ作業する為、自分の持っている解体用のナイフで、自分や他人を誤って傷つけてしまう)、処理に失敗した内臓から飛びでた糞尿が散らばる不潔な作業場による感染症などの深刻な事例が蔓延しているという。本書では、最も危険な職場は、牛肉の解体工場だとも指摘している。そして、工場で怪我をしたり病気になったりしても、工場側は労働者を使い捨てにもしている。

日本で、アメリカ牛輸入再開をした後、何度も危険部位の混入事件が報道されたが、ある番組で、低賃金で危険な労働の為、スキルも教育もない人々が働いているのだから、こういう事は何度でも起きるという話を聞いたのだが、その背景にはこういう事があったのか・・・と思ってしまった。

もちろん、職場環境を整備し、頑張っている工場もある。でも、そうではない工場も多いという。

また、細菌などの汚染基準が厳しいクリーンな肉は、最大顧客であるファーストフード店が仕入れ、そうでない、作業過程で不潔な状態に放置されたり、糞尿にまみれた肉が一般に流通しているとも指摘している。

本書で描かれている不潔な状態の牛肉解体工場の描写は凄まじい。

他にもフランチャイズの企業側に有利で、出資者には不利な様々の事柄や、収益重視による環境破壊など、企業のモラルの無い行動を鋭く指摘している。

この本が翻訳されて出版されたのが2001年で、かなり前の事ではある。

2008年の現在、もしかしたら、いろいろな面が改善されているのかもしれない。しかし、絶対改善されているはずだと思ったことが、そのままになっていることも多いのだ。

「ファーストフード」というよりは、現在グローバルな活動をしている大企業全体のモラルを考えさせられる本だった。


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