「やってくれるね、ロシア人! 不思議ワールドとのつきあい方」ロシアの不思議が見えてくる [本ノンフィクションいろいろ]
7点
撮影のためロシアを訪問したカメラマンによる、ロシア紀行。
ソ連時代、ロシア時代両方の話が載っている。
ロシア+カメラマンというと、宮嶋茂樹氏のロシア訪問中の話を以前読んで、
ロシアの管理体制と外国のカメラマンは宿敵同士という印象があったので、
この本もスリリングな展開が満載なのかな?と思ったけど、
国家体制VSカメラマンではなく、ロシアの人々との交流がメインで、全体的にはほのぼの。
知らずに軍事施設を撮影しちゃって拘束される話などもあるけど、
著者は、上手いこと逃れ、ちょっとした特権まで手に入れたりしている。
ロシアの一般の人々の、大らかさ(悪い言えばいい加減さ)とか、
優しさとかが書かれ、著者のロシアに対する親愛の情が伝わってくる本でもある。
特に、厳しい時代を耐え生き抜いてきた、ふてぶてしいとも思える
おばさん・おばあさんに対する著者の目が優しくて、読んでいて心地よい。
自分の顎の高さにある洗面台、ベッドを入れたらしまらなくなったドア、
中国でもありそうな(社会主義的なのか?でもベトナムではあまり聞かないな)
いい加減さに多々遭遇する。
最初に泊まった時は、お湯が出ず、次に泊まった時は、暖房が効かず
というホテルでの受付とのやり取りでも、
「ごめんなさい。でも、前回はお湯がなくて暖房があった、
今回はその逆。だから我慢しなさい」
なんて対応をされても、「ごめんなさい」の一言から、
ソ連時代とロシア時代の差を感じ、許してしまう著者。
「撮影禁止」にも何度も遭遇するが、ロシア人の、おおらかさ(いい加減さ)を
上手に利用し、あの手、この手で撮ろうと目論んだりもする。
ほのぼのした話も多いが、政治犯が2千万人近く粛清されたという、
ソロフキを訪れるシリアスな章もあった。
拷問や虐殺で無くなった人の多くが冤罪であったとも言われる。
この虐殺を世界に知らしめた告発本「収容所群島(1) 1918-1956 文学的考察」を読みたいと思ったけど、6巻もある大作なので、暇な時に借りよう。
この事件を追った「聖地ソロフキの悲劇―ラーゲリの知られざる歴史をたどる」を先に読もうと思う。
カメラマンだけあって、本に掲載されている写真はすごくいい。
また写真を撮る前に、著者が頭で描くイメージに関する表現も、
イメージが伝わって来てすごい。
ただ、文章自体は、それほど上手ではなく、無駄話と思える部分がちらほらあるのは気になる。
それと、文体がですます調でとても丁寧。
著者のイメージも、自然に温厚で紳士的なものを思い描いてしまう。
しかし、実際は、かなり短気らしい。
禁煙ではない飛行機内で「禁煙なのを知らないのか」と頭ごなしに注意をしてきた相手への
嫌がらせのため、延々とタバコを吸ったり、安定が悪く座った途端にひっくり返ってオオアザを
作るもとになったイスを窓から投げ捨てたり、とんでもない行動をいきなりとるので
(この時の文章もですます調)、文体とのイメージの乖離には何度も戸惑った。
ロシアというと、閉鎖的で官僚的な国家イメージが先行し、国民1人1人のイメージは捉えにくい。
そんな、ロシア人にスポットを当てた本として、面白いと思った。
イヤガラセのタバコ、イスのポイ捨て、
「やってくれるね」はむしろ、この作者さんなのではないか、と(笑
by コステロ (2009-05-12 12:32)
コステロさん
ナイス!!確かにそうかも(爆笑)!
by choko (2009-05-13 12:32)