「シルクロードおもしろ商人スクラップ」浜井幸子:ウイグル暴動の理由が見える本。チベットの未来も? [本ノンフィクションいろいろ]
8点
中国のウイグル自治区の路上商人達を取材した本。
「旅行にちょっと行ってみました、体験記書きました!」という内容が多い中、
10年以上に渡ってウイグル何度も自治区を訪れ、その変化の様子を事細かに書き綴った本。
売っているもの、値段、街並み、働いている時間、一日の儲け・・・
そういう詳しいインタビューを、商人達の細かいスケッチも一緒に載せている。
ウイグル自治区の人々の素朴な人柄や生活が、伝わってくる本でもある。
著者と、ウイグル自治区に住む人々との交流エピソードもほのぼのとしていて心地よい。
しかし、この本で注目すべきは、10年近い年月で変化したウイグル自治区の人々の生活だ。
著者が、ウイグル自治区に初めて行った当時は、ウイグルの文化が生きていた。
屋台で物を売ったり、路上で散髪屋を営んだり、人々は貧しいながらも安定した生活を送っており、
子供達が親の職業を継ぐことも当たり前だったし、子供達もそれを誇りに思っていた。
しかし、中国政府の介入による再開発で、ウイグルの人々は、住む場所を追われ、
便利な場所には漢民族が住み、儲かる商売も漢民族が専有するように。
街並みもウイグル的なものから中国的なものに変化。
先祖代代引き継がれてきた職業では生活できない人が増え、
子供達は親の職業を軽んじるようになり、公務員になることを夢見るようになった。
しかし、公務員になれるのは、ほとんどが漢民族。
豊かな漢民族と、貧しいウイグル族の対比が目立つ様になり、
ウイグル族の人々の間には、先の見えない不安が蔓延するように・・。
長く続いてきた素朴なウイグルの人々の生活が、中国政府の介入により、
破壊されていく様が描かれている。
これを読んだ時、チベットへの鉄道が開通したことにより、同地区へ漢民族が大量流入、
それによるチベット人やチベット文化への影響が懸念されていた時期で、
そういう懸念が、先に表面化した地区がウイグル自治区なんだなーという印象を受けた。
今回のウイグル族暴動の背景が、この本を読むと見えてくる気がする。
旅行記としても、民族問題を扱った本としても読める本。
お勧め!
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