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「イギリス人は「理想」がお好き」「おしゃべりなイギリス」イギリスについての本、2冊 [本ノンフィクションいろいろ]


イギリス人は「理想」がお好き

イギリス人は「理想」がお好き

  • 作者: 緑 ゆうこ
  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 2002/03
  • メディア: 単行本

7.5点


おしゃべりなイギリス

おしゃべりなイギリス

  • 作者: 高月 園子
  • 出版社/メーカー: 清流出版
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 単行本

5点

イギリスに滞在経験がある著者が、イギリスと日本の違いや、
イギリスの文化、社会などについて書いた本2冊。

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「イギリス人は「理想」がお好き」は作家であり、イギリス人と結婚した著者によるイギリス文化論。

「イギリス人はとにかく理想を追い求め、それ故、社会は大変な状態に陥ってしまっている」
と著者が思うようになったいろいろな事柄を、そう思うようになった理由も含め取り上げている。

・移民は文化を豊かにするから、移民の増加を歓迎する
・移民は文化を破壊するので、移民の増加は阻止すべきである

イギリスでは、この相反する原則にのっとって
・移民をイギリス社会に融けこませ、
・それぞれのアイデンティティーを守らせる
という実現困難なことをイギリス社会でやろうとしている(本にはもう少し詳しく載っている)。

なので、どんどんわけがわからない状態になってしまっているという。

社会に融けこませるため、移民の英語教育を義務化すれば、
それは帝国主義的言語統一だという非難がでるなど、
両方とも正しいが、両立はできないことを一生懸命やっているのがイギリスだという。

イギリスの医療制度についても、理想を追うあまり、現実がついていかない現状をついている。
誰でも「無料」で診察を受けられるが、その為、病院はいつも大混雑。
ちょっとした手術に何ヶ月も待たされたり、全然診て貰えず、やっと診て貰えた時には
「もっと早く診ることができれば・・・」と言われてしまったりする。

それでも、イギリス人は「医療費無料」というのは当たり前のことという考えを捨てないという。

意外だったのは、イギリスではパールハーバーは「9.11」と同じ「テロ」であると受け止められている事。
第二次世界大戦の終戦記念日は、対日戦勝記念日として
「日本がいかに卑怯だったか」というような特集のテレビ番組が流され、記事が書かれ、
大々的にマスコミで報じられているという。
イギリス人にとって、ヒロヒトもヒトラーも同じ。
日本人は悪人。

イギリス人にとっては、戦争もルールがあり、それを破るということは、とんでもないことらしい。
それが自分達が作ったルールの押し付けだったとしても。

イギリスのベジタリアンの実態も面白かった。
ベジタリアン=菜食主義者というイメージがあるが、
イギリスのベジタリアンには、「牛肉を食べない!」という選択肢は無い。
なので、限りなく牛肉に似せた大豆などでできた「まがい物の肉」を食べるという。
これは、アメリカでも、同じような状況みたいだけど、アメリカの方が細分化しているような。
本当に菜食主義者だったり、魚は食べる、卵は食べるなど多種多様のベジタリアンがいるらしい。
著者が気がついていないだけで、イギリスもそうなのかもしれないけど。

一番印象に残ったのは、イギリスの家についての話。
日本では「衣食住」だが、イギリスは「住住住」なのだそうだ。
「食」(悲惨なのは有名)や「衣」を捨てて、「住居」にすべてをかける。
著者は「住住住病」と評している。
とにかく、「家」の持つ重さは日本の比ではないらしい。

新聞の記事には犯罪を犯した人間の、住所や、家の広さ、間取り、家の値段などが載っているという。
どこに住んでいるか、どれくらいの価値の家か、それらが人のレベルを判断する基準となるという。

「ボロは着てても心は錦」というのは日英共通でも、「狭いながらも楽しい我が家」というのは
イギリス人には考えられないらしい。
「いい家、それも持ち家に住む」というのが大切で、持ち家が無いというだけで、
甲斐性が無い人間であるとレッテルを張られてしまうという。

だから、イギリス人は、無理してでも家を買い、日曜大工に励み家をキレイにし、
もっといい家が買えるようになれば、そちらに住み替えるというのを繰り返すという。

イギリス人は、休みの日には、庭をいじったり、日曜大工に精を出すというのを
別の本で読んだが、それもこの辺から来ているらしい。

他にも「イギリスのガーデニングの実態」や「イギリス人と犬の関係」など、
あまり日本では知られていない事を、著者独自の視点を交えながら語られていてとても面白い。

国によって価値観は全く違う。
そんなことがすごくよくわかる本。
お勧め!!

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「おしゃべりなイギリス」の著者はイギリス駐在員夫人。

第一章は、イギリス人は実はクリスマスが嫌いとか、大学のユニークな入学制度など
日本とはかなり違うイギリスの様子が書いてあり面白かった。

しかし、第二章では、イギリスに滞在する駐在員夫人達がどんな生活をしているかがメインに。
この辺に興味があるのならいいけど、興味が無い人には、うーんな内容。

そして後半は、かなり主観的な日本とイギリス比較エッセイになってしまっている。

その上、主張が、押し付けがましいというか、「こうなのが当たり前」という論調が気に障った。

例えば、日本では結婚しないと、それをあれこれ言ってくる人がいる。
結婚することが当たり前という価値観を押し付けてくるわけだ(親戚のおばちゃんに多いよね(^^;))。

著者は、そういう考えは否定している。
私も、人それぞれ価値観は違うと思うので、それには賛成。

しかし著者自身が、「自分の価値観が絶対で、それ以外を否定する」という論調。
言っていることは違うが、「結婚するのが当たり前という価値観を押し付けてくる人たち」と
同じ事をしているのだ。

「日本の女性は、働き出しても親と一緒に住んでいるなんて、自立していなくて情けない。
イギリスでは・・・」など、「自分はそう思う」ではなく、
「自分の価値観と合わないことはダメ」という前提から述べられている主張が多い。

日本にたまにきて、人気のスポットが混んでいるのを見て、「それは日本の家が狭くて、居心地が悪く、
家にいたくないからみんな外出するのだ。日本の家は狭くて・・・」と不満を言っているが、
「イギリス人は「理想」が・・」によれば、イギリス人の家にかけるお金や情熱は日本とは全く違うらしいので、
それを同じ土俵に乗せて、日本は、イギリスは・・・と言ってしまうのは、どうなのかなーと思ってしまうし。

主観的なエッセイの場合、それに共感できるかどうかが面白いかどうかの分かれ目だと思う。
私はあまり共感できずイマイチ。
著者と同じフィーリングの持ち主なら楽しめるかも。

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コメント 2

Yan

こんにちは
最近、イギリスを引き合いに「長期優良住宅」なんてのを聞くようになりましたが、本家は「住住住」のお国柄なんですね~。イギリスの住事情、そんな簡単によいトコ取りできるもんではなさそうだなぁ。(^^:)
by Yan (2009-12-06 17:42) 

choko

Yanさん、お久しぶりです(^_^)。

イギリスの家って、すっごく頑丈みたいです。
レンガと漆喰だけでできているのに。
でも、それは地震の無い国だから100年とか持つわけで、
日本だったら恐ろしくて住めない物件(^^;)。

そういう意味でも、地震のある国日本と、地震の無い国の家を
同じ土俵に乗せるのって無理ですよね。

「イギリス人は「理想」が・・」は、分不相応な家を買い、
買えるならすぐまたワンランク上の家を買い・・
と「家」に翻弄されるイギリス人の姿が詳しく書かれていたり、
他にも興味深いエピソードが多いのでお勧めです(^^)。
by choko (2009-12-06 21:49) 

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