「アフリカ・レポート　壊れる国、生きる人々」アフリカの国々の暗い未来、そして希望：ＣＨＯＫＯＢＡＬＬＣＡＦＥ-本や映画の感想♪：SSブログ

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「アフリカ・レポート　壊れる国、生きる人々」アフリカの国々の暗い未来、そして希望　[本ノンフィクションいろいろ] [編集]

作者: 松本仁一
出版社/メーカー: 岩波書店
発売日: 2008/08
メディア: 新書

8点

新聞記者としてアフリカに滞在経験のある著者の、アフリカレポート。

最も恵まれた独立と言われたジンバブエが、１人の独裁者の元、
豊かだった国がどんどん崩壊し、いまや兆を越えたインフレに苦しんでいる。
その中で生きる人々の声や生活の変化が、生々しく語られている。

ジンバブエと言えば、ハイパーが有名な国でもある。
2009年末には、１兆ジンバブエ・ドルが新１ジンバブエ・ドルになるという凄まじいデノミを行った。
１兆円が１円って・・・。
デノミは何回も行われているので、実際はもっと桁が大きいんだけど。
Wikによると、2009年には２４時間で物価が倍になる計算のインフレが起きていたらしい。
ねずみ算式インフレってすごすぎる。

またアパルトヘイトを撤廃し、整備されたインフラでアフリカ国家の明るい未来を見せてくれるかと
期待されていた南アフリカでは、あっという間に役人の腐敗が始まり、治安が蔑ろにされた結果、
経済も悪化している状況のレポートもある。

この二つの国で見られる事、独裁者による政治や、役人の腐敗は、アフリカの多くの国で見られる。
何故、こうなってしまうのか、アフリカの文化的な土壌からそれを分析している。

また、経済インフラが全く整っていない中、立身出世を夢見、
果敢に商売をはじめる中国人達の姿とその問題点も扱っている。
中国華僑のたくましさは、戦記ものなどを読んでいても感心する。
前線近く、危険で店など開けない場所に店があったら、まず中国人の店だったりする。

部族主義や腐敗、資源が豊富であることが逆に貧困を産んでいるなど、
アフリカ諸国が抱える問題点に関しては「最底辺の１０億人」「大地」などで、もっと詳しく書かれている。

この本の特色は、「分析」中心ではなく、現地の人の声を聞き、
今の悲惨な現状を伝えてくれることである。

救いのない国の現状だけでなく、ＮＧＯなどが、
国ではなく「人の自立」の援助をしているという話が印象的だった。
政府は腐敗し、そこに援助しても、ほとんど効果が期待できないなか、
ＮＧＯによる、村単位などの小規模な援助で、少しずつ生活が改善し効果がでているところもあるという。

「アフリカで寝る」でも書かれていたが、無償の援助は弊害が大きいということがここでも
繰り返し述べられている。
無償の援助を受けた人々はそれに依存してしまい、
援助した側がひいてしまえば、元に戻ってしまうという。

少し前、「行列のできる法律相談所」で、島田紳助の呼び掛けでカンボジアに寄贈された学校も、
今は荒れ果てていると週刊誌で報じられていたし。

学校建設でも、農業援助でも、助言をしたり、技術指導はするが、現地の人に考えさせ、
行動させるという改革の効果は、目をみはるほどだ。
まだこのような援助を受けている場所は少なく、また政府からの妨害などもあるため、
アフリカの国々の現状を改善する力はないが、こいう小さなことが積み重なって、
大きな力になるといいと思った。

最後の章では、日本人がアフリカで作った工場の話を扱っている。
賃金の支払の遅延をしない（アフリカでは遅延が当たり前）、
現地の人間を使い（これは中国人と違ってアフリカで働こうという日本人が少ない為でもある）
昇給・昇進もあるという、日本では当たり前のシステムを取り入れる事により、
工場で働く人々にやる気と真面目さ、誇り、そして希望を持たせたという。

今、日本では、給料の遅延はないにせよ、先の見えない派遣社員が増えているのを考えると、
複雑な気分でもあった。

アフリカの抱える深刻な問題、それに苦しむ人々、しかし、
そのような絶望的な状況の中でもたくましく生きる人々の姿や、
全く希望がないわけではないことを教えてくれる本。

お勧めです(^^)！！

2010-02-26 01:42 nice!(0) コメント(4) トラックバック(0)
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