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「図説 食人全書」マルタン モネスティエ著:カニバリズムに関する資料がたっくさん! [本:歴史]

図説 食人全書

図説 食人全書

  • 作者: マルタン モネスティエ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2001/03
  • メディア: 単行本
7.5点

カニバリズムに関する資料や写真、絵などを大量に集めた本。

ざっと章の見出しを紹介すると
「胃の記憶」「食人の起源」「なぜ人食い人種は人を食べるのか?」
「人食い人種たちの食人風習」「人食い人種の慣例的料理」「食糧としての食人」「復讐のための食人」
「神々と信者たちの食人」「悪魔とその使徒たちの食人」「食人療法」「食人犯たちのリスト」
「産業化・組織化された食人 21世紀の食糧難に対する答え」
と、こんな感じ。

とにかく膨大。

食人が太古から行われていた事が、「食人の起源」では触れられている。

また、人食い人種が人を食べる理由として、食糧として、相手の勇気を得る為、
死者肉体を滅ぼし魂が悪さをしないようにする為、身内の死体が虫に喰われないように・・・etc、
など部族によって違う様々な理由が記されている。

食人の儀式や料理法、味の感想なども詳しく載っている。
中世ヨーロッパなどにおける、宗教や悪魔崇拝による食人、
人の肉や骨を薬として使用する事についても、触れている。
大航海時代以降、冒険者や宣教師たちが遭遇した食人族に関する記述も多い。

戦争中や飢餓による食人、20世紀に入ってからの集団による食人などの事例や
(第二次世界大戦中のスターリングラードでの食人の話は初めて知った)、
カニバリズムで有名な殺人者たちの紹介もいくつか。

ただ、引用されている文献の信ぴょう性に関しては深い考察はしておらず、
真偽取り混ぜて、カニバリズム関する事例・文献をずらずら並べてあるという感じがする。
カニバリズムで有名な殺人犯に関しての記述も、
この本のテーマにあった部分だけが強調されたり、抜粋されてるものも。
ハードカバーの装丁であることもあって一見学術書っぽく思えるが、
実際はショッキングなカニバリズムの話を集めただけ、コンビニペーパーバックに近い気も。

それでも、この本を読む事でカニバリズムに関して、いろいろ考えさせられるのは確か。

人肉を食べるのと、獣肉を食べる事の違いは?
なぜ、その行為は現代社会で忌み嫌われるのか?
先入観が無いとしても、人肉を食べる行為に嫌悪感を感じるのか?
この本で、その明確な回答はなされていないが、何度も繰り返し問いかけられる疑問である。

また、遭難などで生き延びる為、人肉を食べた事件をも取り上げて、
「人を食べるために殺すのは罪だが、生き延びるために死体を食べるのは罪なのか?」
と、緊急の場合なら許されるのか?とも問いかける。

そして、最後に著者は、地球の60億人の内40億人が飢えている現状を打破するのは、
食人かもしれない・・・という考察を最後の章で展開している。
食用肉1人分を作るのに7人分の飼料が必要であり、アメリカで10%肉を食べるのを減らせば、
6000万の人が餓死から救われるとなっている。
ハンバーガー一個の為に、平均5m2の熱帯雨林を焼き払わなければならず、
家畜を飼育するために、多くの土地が焼畑地となっているという。
世界中の人に家畜の肉を提供するのは、水の問題、飼料の問題から考えて無理。
(全員が菜食主義になるというのは、あまり検討されずに数行で却下されてるのは気になるけど)、
しかし、手っ取り早く手に入る肉がある・・・それが人肉だという事だ。
それは、映画「ソイレント・グリーン」(原作ハリイ・ハリスン「人間がいっぱい」-リンク先感想-)の世界。
「食糧危機を救う=食人」の論理展開はつめの甘さも感じるが、価値観なんて変化するもの。

鯨捕鯨反対や、食用犬の反対など、価値観が違う食文化に対する反発に対しては、
いろいろ考えていたけど、

食人=それは最も嫌悪すべき行為

と、当たり前のように受け入れていた価値観を、そして食のタブー全般に関して、
もう一度考え直させてくれる本。
カニバリズムに興味がある方、食のタブーに関して考える事がある方にお勧め♪
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