「ケニア!彼らはなぜ速いのか」忠鉢 信一著:長距離で圧倒的強さのケニア人、その秘密は遺伝?環境?それとも・・ [本ノンフィクションいろいろ]
7.5点
「サンチャイ☆ブログ」さんで紹介されていて、面白そうだったので読みました。
マラソンなどで圧倒的な強さを誇るケニア人。
特に、多くのマラソン大会で優勝者を出しているのがケニアのカレンジン族。
ケニア人の10%にしか満たないカレンジン族の偉業。
著者は、その秘密に興味を持ち、取材を始める。
その速さの理由を遺伝子に求め研究を進めるサルティン教授などの説に真っ向から反対し、
「遺伝は全く関係ない」と遺伝子のデータを集めているヤニス教授の所を、著者は訪ねる。
「ケニアの生活と厳しい自然を生き抜く為に淘汰されて残った遺伝子」が理由・・・って
すごく説得力があるので、そう言われると納得してしまう。
最近、ヒマラヤのシェルパに、酸素の薄い場所でも活動できる遺伝子(かなりうろ覚え)が
見つかったなんて記事も読んだし。
でも、「遺伝子は関係ない」、「彼らの生活習慣の影響が大きい」と、
様々なデータを出して来るヤニス・ピツィラディス教授のインタビューに思わず納得。
まだまだ研究・調査段階のピツィラディス教授の研究を追うのかと思えば、
その後、著者は、「遺伝子が理由」という研究をしているサルティン教授も訪ねる。
サルティン教授のインタビューを読むと、「遺伝子説」が正しくて、前述したピツィラディス教授の意見が、
実は偏った見方・データの抽出による推測なんじゃないかと思えてしまう。
その上、サルティン教授の元で研究する、ラーション研究員は「足の形」が理由だと説明する。
どれもこれも、説明されると、なんとなく納得できてしまうのが怖い(^^;)。
興味深かったのは、どの科学者も自分の説が正しいと信念を持ち、
長年にわたって、半端じゃない苦労を重ねデータを取り、調査していることだ。
そして、著者は、ケニアの陸上選手達のキャンプも訪ねる。
ケニアのキャンプの中でも、特に孤立している、電気すら通ってないというキャンプ「カプサイト」で、
選手たちの練習や生活を見、コーチや選手たちにインタビューすると、
欧米の研究者達が主張していることとは、また違った「ケニア人の足の速さの理由」が見えてくる。
キャンプで互いに切磋琢磨しあう選手たち。
先進国方式で、練習メニューを細かく組んで、一人一人にあったメニューを・・・なんていうのとは、
全く違う練習をしている彼ら。
コーチは「彼らは体の調子・体の声を自分たちで聞いてペースなどを判断している」という。
「そこに速さの秘密が!!」と思うと、別のケニアのキャンプでは、
一人一人にあったメニューを組んでたりする。
読んでいくと、どれもが納得できる答え、でも、どれもが決め手ではない。
とにかく、いろいろな視点から「ケニア人の速さ」を考察していて、すごく面白い。
また、失業率が高いケニアで、走ることは仕事なのだという意識の違いや、
ケニア人の「だれだって練習すれば速くなる」という超ポジティブな考え方にも驚いた。
欧米では科学的根拠がある理論を元に指導されるが、ケニア人たちには全くそれが通じないという。
ケニア人達は分析が嫌いだという。
それに、この本、走っている時はこまめに水分を摂る、ペース配分する、
個々人にあった指導をする・・・・etc、マラソンの常識的なモノがほとんどケニア人には、
通用しないということも書かれている。
特に水分補給に関して、「水分補給をあまりしないほうがタイムが伸びる」という説の
ピツィラディス教授の論文が却下されたくだりは興味深い。
「水分をこまめに摂らないと脱水症状が起きて危険ですよ」という考えは、
スポーツ飲料メーカーが広めたものだという。
そして、「一般に言われているより、水分補給は少ない方が、
軽い脱水症状状態のほうがタイムが伸びる」という論文は、スポーツ飲料メーカーにとっては困る話だ。
この論文を提出した先のスポンサーがゲータレードだった事が、
却下の理由だろうとピツィラディス教授は推測している。
一般的に浸透している多くの常識が、企業の思惑によって操作されてるのが垣間見えて興味深い
(ダイエットの常識なんて、そういうのばっかりだし)。
マラソンをする人なら、一般的に言われているマラソンの常識と、ケニア人達の違い、
その辺だけでもすごく面白く読めるんじゃないかと思う。
マラソンをしない人も、「ケニア人の速さ」の理由に、これほどまで多数のアプローチがある事、
社会によって人の考え方は違う事、そして指導の仕方も全く違う事など、
物事の捉え方の多面性が見えて楽しめると思う(^^)。
お勧め~(^-^)ノ!
「サンチャイ☆ブログ」さんで紹介されていて、面白そうだったので読みました。
マラソンなどで圧倒的な強さを誇るケニア人。
特に、多くのマラソン大会で優勝者を出しているのがケニアのカレンジン族。
ケニア人の10%にしか満たないカレンジン族の偉業。
著者は、その秘密に興味を持ち、取材を始める。
その速さの理由を遺伝子に求め研究を進めるサルティン教授などの説に真っ向から反対し、
「遺伝は全く関係ない」と遺伝子のデータを集めているヤニス教授の所を、著者は訪ねる。
「ケニアの生活と厳しい自然を生き抜く為に淘汰されて残った遺伝子」が理由・・・って
すごく説得力があるので、そう言われると納得してしまう。
最近、ヒマラヤのシェルパに、酸素の薄い場所でも活動できる遺伝子(かなりうろ覚え)が
見つかったなんて記事も読んだし。
でも、「遺伝子は関係ない」、「彼らの生活習慣の影響が大きい」と、
様々なデータを出して来るヤニス・ピツィラディス教授のインタビューに思わず納得。
まだまだ研究・調査段階のピツィラディス教授の研究を追うのかと思えば、
その後、著者は、「遺伝子が理由」という研究をしているサルティン教授も訪ねる。
サルティン教授のインタビューを読むと、「遺伝子説」が正しくて、前述したピツィラディス教授の意見が、
実は偏った見方・データの抽出による推測なんじゃないかと思えてしまう。
その上、サルティン教授の元で研究する、ラーション研究員は「足の形」が理由だと説明する。
どれもこれも、説明されると、なんとなく納得できてしまうのが怖い(^^;)。
興味深かったのは、どの科学者も自分の説が正しいと信念を持ち、
長年にわたって、半端じゃない苦労を重ねデータを取り、調査していることだ。
そして、著者は、ケニアの陸上選手達のキャンプも訪ねる。
ケニアのキャンプの中でも、特に孤立している、電気すら通ってないというキャンプ「カプサイト」で、
選手たちの練習や生活を見、コーチや選手たちにインタビューすると、
欧米の研究者達が主張していることとは、また違った「ケニア人の足の速さの理由」が見えてくる。
キャンプで互いに切磋琢磨しあう選手たち。
先進国方式で、練習メニューを細かく組んで、一人一人にあったメニューを・・・なんていうのとは、
全く違う練習をしている彼ら。
コーチは「彼らは体の調子・体の声を自分たちで聞いてペースなどを判断している」という。
「そこに速さの秘密が!!」と思うと、別のケニアのキャンプでは、
一人一人にあったメニューを組んでたりする。
読んでいくと、どれもが納得できる答え、でも、どれもが決め手ではない。
とにかく、いろいろな視点から「ケニア人の速さ」を考察していて、すごく面白い。
また、失業率が高いケニアで、走ることは仕事なのだという意識の違いや、
ケニア人の「だれだって練習すれば速くなる」という超ポジティブな考え方にも驚いた。
欧米では科学的根拠がある理論を元に指導されるが、ケニア人たちには全くそれが通じないという。
ケニア人達は分析が嫌いだという。
それに、この本、走っている時はこまめに水分を摂る、ペース配分する、
個々人にあった指導をする・・・・etc、マラソンの常識的なモノがほとんどケニア人には、
通用しないということも書かれている。
特に水分補給に関して、「水分補給をあまりしないほうがタイムが伸びる」という説の
ピツィラディス教授の論文が却下されたくだりは興味深い。
「水分をこまめに摂らないと脱水症状が起きて危険ですよ」という考えは、
スポーツ飲料メーカーが広めたものだという。
そして、「一般に言われているより、水分補給は少ない方が、
軽い脱水症状状態のほうがタイムが伸びる」という論文は、スポーツ飲料メーカーにとっては困る話だ。
この論文を提出した先のスポンサーがゲータレードだった事が、
却下の理由だろうとピツィラディス教授は推測している。
一般的に浸透している多くの常識が、企業の思惑によって操作されてるのが垣間見えて興味深い
(ダイエットの常識なんて、そういうのばっかりだし)。
マラソンをする人なら、一般的に言われているマラソンの常識と、ケニア人達の違い、
その辺だけでもすごく面白く読めるんじゃないかと思う。
マラソンをしない人も、「ケニア人の速さ」の理由に、これほどまで多数のアプローチがある事、
社会によって人の考え方は違う事、そして指導の仕方も全く違う事など、
物事の捉え方の多面性が見えて楽しめると思う(^^)。
お勧め~(^-^)ノ!
おもしろい
by NO NAME (2013-07-26 10:11)