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「汚れた檻」高田侑著:すえた匂いのする怖さ [本:ホラー&ミステリー]

汚れた檻      (角川ホラー文庫)

汚れた檻     (角川ホラー文庫)

  • 作者: 高田 侑
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/02/25
  • メディア: 文庫
7.5点

うなぎ鬼」(リンク先感想)が面白かったので、これも読んでみた。

単調な仕事、安い給料、上司の陰湿な嫌がらせ、プレス工場で働く一郎は鬱屈した思いを抱えていた。
しかし、偶然、幼なじみの牛木に会ったことで一郎の運命は変わりだす。
牛木の父親が経営する会社に、破格の給料で誘われた一郎は、その話に乗る。
ところが、その後、一郎の家や、祖父の形見である牛小屋に、会社の者が勝手に出入りしはじめる。
牛木と関わった人間は不幸になる・・・そんな噂をきいた一郎を不気味な不安が襲う・・。

高田侑の作品は、錆びたトタン屋根のバラックが並び、廃墟みたいな工場が稼働する下町、
漂うドブ川の異臭、そしてそこで生活する人々・・・そんな雰囲気がいつも漂っている。

この作品の主人公も、プレス工場で安い給料で働かされ、将来が見えないジレンマ、
普通の仕事と家庭を持つ同年代の人達への劣等感などを感じている。
不景気の昨今、今はそうじゃなくても、いつそうなっても不思議じゃないと、
誰もが感じているような不安や閉塞感。
そういう部分が、読者の気持ちをより暗い方に揺さぶる気が。

八方塞がり的状態で、目の前に差し出された、破格の待遇。
疑心暗鬼になりつつも、ついついそれに乗ってしまう主人公の心情がリアルに描かれていて、
これまた、自分だってそうなるかも・・・と思ってしまう部分がある。

オカルトものではなく、実際にあるかも・・・・と思える、
現代社会のどこかに口を開けて待っていそうな落とし穴、利益の為なら何でもやる組織の不気味さ、
人は落ちる時は転がり落ちるように落ちる、そんな怖さが、リアルに描かれていて、
読んでいてぞっとする。

現代の実録犯罪物などに載っている、個人や組織に、周囲を固められ、
逃れられず被害者になっていく人の立場と、主人公の立場はすごく似通っているし。
お金にこまっている時に、ポンとお金を出してくれたり、親切にしてくれた相手を、無下にはできない・・・・
そういう普通の人としての感覚が、主人公を泥沼に引きずり込んでいくさまが怖い。

「うなぎ鬼」同様、人の心の弱さや愚かさが克明に描かれ、
人間や、現代社会の怖さを垣間見せてくれる、読んでて、ズーンと暗い気分、
言いようのない不安に包まれる一冊。
お勧め!
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コメント 2

rudies

読んでみたい気がしますが
今の私は、仕事の事で
不安を少し感じていまして(^_^;

なんか、ドッスーーーーンと
一気に落ち込みキツくなるかもです。f(^ー^;

by rudies (2011-05-16 19:27) 

choko

rudiesさん

高田侑は、読むとどよ~んとした気分になるので、
確かに注意が必要です。

どんどんドツボにはまっていく主人公の心理状態の描写が、すごくリアルな分、
逆にこういう心理が悪い深みにはまりやすいんだなーという反面教師にもできるので、
その点ではいいかもです(^^)。


by choko (2011-05-16 21:42) 

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