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「空白の天気図」柳田 邦男著:原爆・終戦直後の広島の台風被害を描いたドキュメンタリー!面白い!! [本ノンフィクションいろいろ]

空白の天気図―核と災害1945・8・6/9・17 (文春文庫)

空白の天気図―核と災害1945・8・6/9・17 (文春文庫)

  • 作者: 柳田 邦男
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/09/02
  • メディア: 文庫
8点

ちょびさんのブログ「自転車に乗って」で紹介されていたので、読みました。

昭和20年9月17日。
敗戦直後、原爆の被害から全く立ち直っていない広島を直撃した「枕崎台風」。
全国の死者行方不明3000人以上、その内2000人以上が広島での被害だった。
原爆による設備・装置の破損、職員の怪我や放射線による障害、戦争の為、足りない物資・食料・・・、
様々な困難のもと、地道に観測と調査を続けた広島気象台隊員の姿を描いたノンフィクション。

広島気象台を舞台にはしているが、気象情報が戦争の作戦行動に重要だった事から、
徐々に軍の支配下に組み込まれつつあった気象庁や気象情報の扱いなど、
第二次世界大戦下で、日本の気象台が置かれた立場などにも詳しく触れられている。

また、原爆投下直後、気象台職員が体験した爆風の凄さ、爆風で設備が破壊され、
怪我人も出た広島気象台の惨状や、その後の放射能の影響により次々に体調不良を起こす
職員が続出した中で、業務を続けた気象台職員達の苦闘。
それと合わせて、原爆を落とされた広島の壮絶な状況や、放射能がどのように人体に影響を
与えたか、原爆病の症状などについても、語られている。

通信網が破壊され、気象データを観測しても、予報を流せない状況の中でも、
気象台職員達は「一日も欠かさずデータをとる」という地味な業務を堅実に続けていく。
その考え方が、後に、地道な聞き取り調査により、黒い雨の降雨範囲や
火災による突風が起きた地域を把握できる資料の作成へともつながっていく。

そして、戦後の通信網の貧弱さが、勢力の強い台風の襲来や進路をを適切に把握できず、
また一般の人々に知らせることもままならず、大きな被害へとつながっていった過程も描かれている。
日頃何気なく見ている天気予報、それが膨大なデータの集積の結果であり、
その背後には多くの人々の地道な仕事があること、気象情報の大切さなどが改めて実感された。

このドキュメンタリーを通して、職業意識をしっかり持ち、地味で目立たない仕事を着実に
こなすことの素晴らしさ、そういう意識を持ち仕事をしている人々が社会を支える礎になっている
ということも伝わってくる。

著者が「ノンフィクションの作品性は、単なる取材の記録でも羅列でもなく、
歴史的真実の部分に関して、どれだけ読者の心のなかに澱を残すことができるかに関わっている」
ということをあとがきで書いている。
そして、その著者の目指す作品性が、本書にはしっかり反映されている。
また少しでも調べられる事は追求して調べるという著者の緻密な取材態度により、
原爆投下直後から、室戸台風襲来、そして放射能の与えた影響まで、
広島の人々の様子が臨場感あふれる筆で描かれ、ドキュメンタリーとして、素晴らしい内容になっている。
すごくお勧めです(^-^)ノ。
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