SSブログ

「爛れた闇の帝国」飴村行著:人間の嫌な部分を見せつけられ、どよよ~んとした気分になる作品。 [本:ホラー&ミステリー]

爛れた闇の帝国

爛れた闇の帝国

  • 作者: 飴村 行
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/01/28
  • メディア: 単行本
7点

著者飴村行は、「粘膜人間」「粘膜蜥蜴」「粘膜兄弟」など、粘膜シリーズの残酷でグロテスク、
そして奇抜というか、突飛過ぎる設定や世界観が有名な作家。
まだ、新人だけど、ホラー小説としての評価も高い。

三作の内、最初の「粘膜人間」を手に取ったんだけど、どうも合わず読みかけで放置中。
元々、好き嫌いがはっきりでそうな作家。
でも、自分は、残酷もエログロも平気なので、何故合わないか不思議だったんだけど、
どうもファンタジーの要素(「河童」が出てくる)が入ってたのが原因な気が。
妖怪物も嫌いじゃないんだけど、人間のドロドロした嫌な面を前面に出した世界観に、
河童が出てくるのがダメだったんじゃないかと(^^;)。

飴村行の作風は嫌いじゃなさそうなので、同作家の「爛れた闇の帝国」で再チャレンジ!

高校二年生の正也。
素行の悪さで有名な先輩山崎と、自分の母親が付き合いだし、「再婚しないのは、正也がいるから」
と言っていた優しかった母親は、正也がいても、家に山崎を連れ込むように。
突然高校を中退してしまった正也を、小学生からずっと一緒である親友二人は励ますのだが・・・。
一方、記憶を失った男が独房に監禁されていた。
そして、憲兵と思われる男が彼の前に現れ、失った記憶を思い出せと、壮絶な拷問を行う。
断片的に思い出す記憶。
第二次世界大戦中の東南アジアの戦場。
逃亡兵を追う自分・・・・・いや、自分が逃亡兵だったのか?
記憶は曖昧で、混乱する男。
記憶がすべて戻るまでと、繰り返される拷問。
絶望の淵に立たされた二人は、夢で出会う。
二人の関係には、恐ろしい秘密があったのだ・・・。

人間の卑屈さとか、厭らしさとか、表面に見えている部分とは全く違うドロドロした部分とか、
そういう部分がこれでもかっ!!って感じで描かれてます。
人間って悪い部分と良い部分があるけど、作中に出てくる人のほとんどが、
少年漫画の悪役のように全部表も裏も全部真っ黒、もしくは、表面は良く見えても、
中味真っ黒みたいなタイプが多い。
主人公の正也も、普通の人間の感性は持っているけど、強いものには巻かれろタイプ。
卑怯だとわかっていても、保身の為には「しょうがない」と助けてくれた人間を、
あまり葛藤もせず、裏切る人間だし。

話しのテンポはよく楽しめたし、読んでる時はどよーんとした気分を満喫できるし、
読後感も悪いんだけど(←これは悪い点ではない)が、そのあと特に残るものが無い話だった。
「何でそんな酷い事するんだろ」→「悪い人間だったから」って単純な解だけが残るというか、
人間の持つドロドロした部分だけが突出しすぎてて、現実感が薄い。
あまりに「心の中が真っ黒な人間」が多すぎて、笑っちゃった(^^;)←それが醍醐味か?

どよ~んとした気分を味わいたいなら、いいかもです。
残酷描写や突飛感など、粘膜シリーズに比べるとかなり弱いようなので、
飴村行作品をちゃんと知りたいなら、粘膜シリーズを読むべきなんだろうなー。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。