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「人間がいっぱい」 ハリィ・ハリスン [本:SF]

 

人間がいっぱい

  • 作者: ハリイ ハリスン
  • 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 1986/02 メディア: 文庫 7点

チャールトン・ヘストン主演のSF映画「ソイレントグリーン」を見て、読みたいなと思っていた原作小説。

映画「ソイレントグリーン」の方は、ストーリーがちょっと陳腐だったけど、人口増加によって人が路上にまで溢れ、食料難に陥る未来社会の雰囲気が出ていて良かった。また記憶に残る名シーンもいくつかあり(ほとんど老人ソル-エドワード・G・ロビンソン-のシーン)、SF映画の秀作と言える。

原作「人間がいっぱい」の方も、住宅難から家も無く路上に溢れる人々と、資源浪費や環境破壊が進み、食料難から合成食が普通の食事になっている1999年、世紀末のアメリカ・ニューヨークの様子を描いている。プランクトンから作られる合成食すら配給制。電気も水(給水所に汲みに行く)の供給も不安定。カミソリなどの日常生活物資もまともに無い世界。現金さえあれば、牛肉なども購入でき、エアコンの効いた部屋に住む事が出来るが、それは一部の特権階級の人間にだけ可能な事である。読んでいてつい北朝鮮を思い出してしまった(^^;)。

書かれたのは1966年。現在、先進国では少子化による人口減が心配されているが、当時はそんな事になるとは想像すらされていなかった気がする。ただ、先進国は人口減だけど、先進国以外は人口が増え続けている国はいっぱいあるし、過剰生産、過剰消費による資源の枯渇や、環境破壊による食料不足の心配というのは、いまなおある。この作品を過去の作品と軽く見る事は出来ないと思う。逆にもっと未来同じ様な状況になる可能性はあるのだ。
この作品の中に「その責任は、叩かれるのが嫌さに、かまうもんか、どうせ結果がでるのは何年も先の話でおれの知ったこっちゃない、という調子でこの問題を避けて通り、臭いものにふたをした、くそったれな政治家といわゆる民衆のリーダーにあるんだ」という台詞がある。もう40年近くも前に書かれた作品だけど、今の政治の状況と全く同じだよなぁと思ってしまった。何でも問題を先送りにしている現在、未来は暗いのかもしれない・・。この世界では、配給により人々がかろうじて生きられるよう政府が対策をしているが、もし同じ様になった時、政府はそこまでして人を救おうとしてくれるかすら疑問である。
映画では、「ソイレントグリーン」と呼ばれる合成食の謎を刑事である主人公がひょんな事から知ってしまう話であるが、原作は、合成食は脇役でしかなく、同じく刑事である主人公の日常を描く事から、近未来世界の様子を見せてくれている。原題は「Make Room! Make Room!」、映画「ソイレントグリーン」とは舞台設定も登場人物も同じでも、ストーリーはかなり違うものだった。救いの無い未来世界を描いているという点では同じだったけど。

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